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2006.10.17
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カテゴリ:極東
きのうきょうと抜けるような青空がひろがった。きのうは部落の人間数名と隣人の裁判の傍聴に出かけた。手錠腰縄スリッパ履き姿で法廷に出て来た元隣人は、入口でこちらの姿を目にとめ目で会釈した。表情ははれやかで、ただいたずらっぽい丸い目がややとまどっているふうにみえたのは、傍聴席におもいのほか人が来ていたからだろう。裁判は一時間余でおわったが、はやくに車で着いたわれわれは時間をつぶすために裁判所ちかくのメシ屋で昼食がてらアルコールも少々入れていた。ひとりはよほど草臥れていたらしく、傍聴席に座るが早いか眠りだし、やがていびきをかき始める。まだひとつ前の被告の裁判(前科八犯覚醒剤所持容疑 判決言い渡し)だったから、となりに座ったわたしはほうって置いたが、いよいよ隣人の公判がはじまってもまだ眠りつづけている。右隣のもうひとりのわが仲間も、こちらはどうやら早朝から自宅で酒を浴びるほど飲んできたらしくはじめからロレツがあやしかったが、赤ら顔のままにわたしの右となり、傍聴人席最前列に座っている。居眠りこそしないがいっしょに来るあいだじゅう喋りつづけ、廷内でも声こそ落としてだが前に座った被告である隣人の背中越しに声を掛けたり肩を叩いたりして、そのたびごと両脇の衛視から注意を受けている。隣人の弁護士が弁論を開始したが、左の居眠り男はあいかわらずいびきをかいて眠りつづけ、右となりは赤い顔でときどきこちらをこづいたりする。わたしの後ろには新聞社の記者らしい若者ふたりが大学ノートを持って傍聴していた。

裁判が終わるとわたしたちは外に出た。官舎のほどよく手入れされた庭の一角の桜の老木が黒い老人のシルエットのように天をバックに風にすこし揺れている。午後三時をまわり、山の国の日は翳って庭の草木も立木も秋のななめの光線を浴びてゆるやかに大気の海のなかにたゆとうている。三人は裏の出入り口から庭をぬけて街の通りへ出た。ひなびた街の何軒かの店をのぞきながらぶらぶらと無言のままに駅まで歩き、わたしは途中の八百屋で安売りしていたサツマイモとキュウリをひと皿づつ買った。やがて、「あれならまんず執行猶予だんべさ」とずっと居眠りしていたはずの水谷豊似が背広にネクタイの余所行きスタイルで明るく言い、「ところ払いでしばらくは東京へ帰っておとなしくしてなきゃあさね」とずっと年長の猟友会のもうひとりが、まったく廻らぬ舌でもごもごもごと付け加えた。切符をめいめいが買ったあと、電車の到着するまでまだだいぶ間があったことに気づいて、わたしたちはつぎの駅まで歩くことになった。風に吹かれ線路づたいにすこし歩いたところにドアを開け放したスナックがあり、赤ら顔が、おゝ、とちいさく叫んで暗い店内に入ってゆく。つられるように入るとカウンターに女性のひとりが上がり天井を拭き掃除している。酒瓶のならんだ棚の前で還暦過ぎたくらいの女性が飛ぶ蚊もおちるくらいな迫力ある声で赤ら顔と話している。なつかしいねえ、とかにゃおとか言いながら。やがてまもなく赤ら顔が止まり木に座り、わたしたちふたりもつられて座って、そこでまた一杯やることになってしまった。あんたたち月曜からいったいどこへ行ってきたのよと、どうやら赤ら顔のむかしの馴染みらしいカウンターの還暦ママが笑顔を浮かべ、刑務所、とわたしがはぐらかしをぼそっと言えば、あはは!とまた嬌声が店内に響いて蚊が一匹落ちた。大掃除の最中だから何もないわよとママが言い冷蔵庫から冷えたビールを出した。昼前に入った店で出された隼人瓜の漬け物のお土産を赤ら顔がとくいそうに背広のポッケから取りだして、それが急場の肴になった。景気はどうさ?と話題もないから尋ねれば、マルイなんだけどさっぱりよ、と還暦ママがコップにビールを注ぎながらやけ気味に笑い、ううん「駅のそば」だから「マルイ」なんだわあ、とダジャレが寝覚めの味噌の中をかけまわっている水谷豊がにやけて解説する。こうしてわたしたちは、とりあえず懲役三年という検察側の量刑要求が、なんとかわが弁護士の活躍と住民有志の嘆願と真面目な被告の人柄などなどによって、罪一等を減じられ、かなりの情状となるだろうと勝手に楽観し、まだ判決言い渡しは先なのだがとりあえず乾杯したのだった。夜おそくひさしぶりに山の家にもどると、わたしは買ってきた芋をふかした。胡瓜は薄く切ってミネラル塩で浅漬けにした。玄関先に、どうぞ、といった風情で大きなビニール袋が置かれてあり、中を覗くと缶ビール11本と未使用の調味料、サラダ油、みりんや穀物酢などだ。隣人の連れあいがこちらの留守中に東京からやってきて、山荘の最後の後始末をすませて、残った食料をこちらに贈呈してくれたものらしかった。

そうしてきょうも朝から快晴の秋空がひろがり、わたしはすっかり片付いた隣人の山荘の前を通って散歩に出た、いや出ようとして石垣のうえの彼の庭先をなにげなく見あげた。庭先にクマクス殿下が作った木の一枚板のテーブルがあり、その上に彼が愛犬を亡くした後、大事に育てていた観葉植物が数鉢、烈しい秋日にさらされていた。もどってまだ息のありそうな鉢だけを選び出し、庭先の水道で水を与え、わたしの家の日陰へ移し置いた。すこし前のビーグル犬の死でカラになった犬小屋につづいて、こんどはその主じのほうの小屋もからっぽになった。その大小ふたつの小屋の無人のたたづまいが、色づきはじめた山の秋のざわめきのなか、なんだかむせび泣いているように見えた。昼のラヂオからは、米国の偵察機が集めた北朝鮮上空の大気のチリのなかから、核爆発で生じる放射性物質が見つかり、北朝鮮の核実験実施場所は北東部の豊渓里近くと断定、「1キロトン以下のちいさな核爆発はあった」と米国研究所が公式に発表したという外電が流れる。北朝鮮の発表いらいの、当事国の寡黙と国際社会の饒舌の、奇妙でまやかしな疑似歴史的な7日間は、こうして終わり、北東アジアにどうやら、「核を持つ国」がもうひとつ、メデタク生まれたわけである。






Last updated  2006.10.17 15:11:29
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秋の陽はつるべ落としに   木陰 さん
たいへんでしたね。
なんだか寂しいですね。 (2006.10.17 14:58:12)


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