REITファンドへの資金流入が、J-REIT市場の活況を促す
J-REITの価格動向を示すベンチマークに、東証REIT指数がある。3月末時点をベースに見ると、過去1年間の配当金込みで約50%もの値上がりになった。まだ日本国内全体には波及していないが、一部地域における地価高騰が、J-REITの価格上昇要因になっている。 そして、J-REITの価格上昇の裏側にあるのが、J-REITを組み入れて運用されているREITファンドだ。特にここ2~3年で新規設定が急増。現在では20本近いファンドが、新規設定・運用されている。 REITファンドには、おもに東証上場のREITに投資するタイプと、海外のREITに投資するタイプとに分かれる。もちろん、東証REIT市場の価格形成に強い影響を与えるのは、これらのうち前者のタイプだ。この純資産残高を合計すると、昨年3月末が3,291億6,800万円。これに対して、今年3月末が6,201億1,000万円へと増加した。 果たして、それが東証REIT市場の価格形成に、どの程度の影響を与えているのか。これは、東証REIT市場の時価総額を見れば、一目瞭然だ。3月末時点における東証REIT市場の時価総額は、上場銘柄数40銘柄の合計額で6兆3,014億200万円。これに対して、J-REITファンドの純資産残高合計額は、20ファンドで6,201億1,000万円。これは、東証REIT市場の時価総額に対して、約10%を占めていることになる。 まさに投資信託と、その投資先マーケットの価格形成との間に、ある種の好循環が生まれている。つまり、「ファンドが買われる→マーケットに資金流入→マーケットの価格上昇→ファンドの運用実績向上→さらにファンドが買われる」という流れが、上手く働いている。もちろん、J-REITファンドを通じての資金流入が、東証REIT市場の活性化のすべてなどというつもりはないが、少なくとも一因になっているのは事実だろう。 ただ、ひとつ注意しなければならないのは、好循環はいつ悪循環に変わってもおかしく無いということだ。たとえば、何らかの拍子で東証REIT市場の暴落が生じたとしよう。当然、上場不動産投資信託の市場価格は、大幅に下落することになる。当然、その市場に投資するタイプのファンドは、基準価額が大幅に下落し、再び長い冬に突入する恐れが非常に高い。 もちろん、基準価額が下落するだけであれば、まだ問題は小さくで済むが、実際には、ここに「解約」という問題が絡んでくる。解約に対応するためには、ファンドに組み入れられている銘柄の一部を売却して、解約代金を作らなければならない。 新規設定が相次ぎ、かつ短期間のうちに多額の資金が集まっている状況は、確かに好循環ではあるが、一方で、今の東証REIT市場の好調さは、かなり脆弱な基盤の上に成り立っていると考えることができそうだ。(金融ジャーナリスト:鈴木雅光)