日本の重巡洋艦 

妙高型 重巡洋艦

妙高
---------------------------------------------------------------------
スペックデータ(竣工時)
排水量:(公)12,374t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×12基 燃料搭載量:重油 2500t
全長:192.39m
全幅:19.00m 主機:艦本式オールギヤードタービン×8基、4軸推進
吃水:5.90m
出力:130,000hp 武装:
50口径20cm連装砲5基、45口径12cm単装高角砲6基、
61cm魚雷3連装発射管4基12門、水偵2機搭載
最大速力:35.5kt
航続距離:14ktで7000浬
乗員定数:704名
スペックデータ(最終改装(昭和14~16年)後)
排水量:(公)14,984t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×12基 燃料搭載量:重油 2214t
全長:203.76m
全幅:20.73m 主機:艦本式オールギヤードタービン×8基、4軸推進
吃水:6.37m
出力:132,830hp 武装:
50口径20.3cm連装砲5基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃4基、13mm連装機銃2基、61cm魚雷4連装
発射管4基16門、水偵3機搭載
最大速力:33.88kt
航続距離:14ktで7463浬
乗員定数:891名


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
那智、足柄、羽黒

---------------------------------------------------------------------

妙高型重巡洋艦について
 ワシントン条約の締結によって巡洋艦は排水量1万トン以内・主砲は20.3cmまでという制限が設けられたために、条約各国は同一条件下での巡洋艦建造を行うことになり各国の建艦技術競争の様相を呈するようになっていた。
 こうしたなか各国の巡洋艦を上回る性能を盛り込んだ重巡洋艦を日本海軍は建造することとした。これが「妙高」型である。攻撃力は20cm砲10門で各国の巡洋艦より多く、魚雷も他国海軍が想像も付かないほど高性能の61cm魚雷を12門も搭載している。また防御力でも弾薬庫部の装甲は厚さ100mmを超え米海軍の重巡洋艦を上回り、速力も若干速かった。
 「妙高」型の4隻とも太平洋戦争の全期間を通して活躍し大きな戦果を挙げている。

高雄型 重巡洋艦

高雄

---------------------------------------------------------------------
スペックデータ(竣工時)
排水量:(公)12,986t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×12基 燃料搭載量:重油 2645t
全長:192.54m
全幅:19.00m 主機:艦本式オールギヤードタービン×8基、4軸推進
吃水:6.11m
出力:130,000hp 武装:
50口径20.3cm連装砲5基、45口径12cm単装高角砲4基、
40mm連装機銃2基、61cm魚雷連装発射管4基8門、
水偵3機搭載
最大速力:35.5kt
航続距離:14ktで7000浬
乗員定数:727名
スペックデータ(改装(昭和14年、「摩耶」は昭和19年)後:「鳥海」は未改装のため除く)
排水量:(公)14,838t
(「愛宕」は(公)15,152t)
(「摩耶」は(公)15,159t) ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×12基 燃料搭載量:重油 2318t
  (「摩耶」は重油 2406t)
全長:203.76m
全幅:20.73m
(「摩耶」は20.72m) 主機:艦本式オールギヤードタービン×8基、4軸推進
吃水:6.32m
(「摩耶」は6.44m)
出力:133,100hp
(「摩耶」は130,000hp) 武装:
50口径20.3cm連装砲5基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃4基、13mm連装機銃2基、
(「摩耶」は25mm3連装機銃13基)、
61cm魚雷4連装発射管4基16門、水偵3機(「摩耶」は2機)搭載
最大速力:34.25kt
航続距離:18ktで5049浬
(「摩耶」は18ktで5000浬)
乗員定数:835名
(「摩耶」は1,071名)


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
愛宕、摩耶、鳥海

---------------------------------------------------------------------

高雄型重巡洋艦について
 先に建造された重巡洋艦「妙高」型の準同型艦として設計された「高雄」型であったが、各所に改良が加えられている。特に艦橋部分は「妙高」型の3倍の大きさに設計されたが、これは海軍側が旗艦設備を要求したからである。「妙高」型が戦隊旗艦程度の設備しかなかったのに比べ「高雄」型では艦隊旗艦として司令部の要員約100名を収容できるスペースを持っていた。
 また攻撃面では水雷兵装が改良され、発射管の数は減少したものの次発装填装置を装備したことにより戦闘中でも魚雷の装填が可能となり、実質的には「妙高」型を上回ることになっている。主砲も対空戦闘も可能(といっても仰角を大きくとれるだけだが)な新型砲塔が採用されている。
 太平洋戦争直前に「高雄」「愛宕」は対空兵装の増強改修が行われており、「摩耶」「鳥海」も引き続き改装が行われる予定であったが開戦の影響で工事は行われなかった(ただし「摩耶」は1943年に損傷箇所の修理の際に改装が行われている)。
 1944年10月のレイテ沖海戦で同型艦4隻のうち3隻(「愛宕」「摩耶」「鳥海」)が戦没したが、「高雄」1隻は終戦まで生き残っている。


最上型 軽巡洋艦
最上
---------------------------------------------------------------------
スペックデータ(竣工時:軽巡)【 】内は「鈴谷」「熊野」のもの
排水量:(公)11,169t
     【(公)13,440t】 ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×8基 燃料搭載量:重油 2280t
全長:189.0m【187.7m】
全幅:18.22m【20.2m】 主機:艦本式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
吃水:5.50m【5.90m】
出力:152,000hp 武装:
60口径15.5cm3連装砲5基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃4基、13mm連装機銃2基、61cm魚雷3連装発射管4基12門、
水偵3機搭載
最大速力:37.0kt【35.0kt】
航続距離:14ktで8000浬
乗員定数:830名
スペックデータ(主砲換装(昭和14年)後:重巡)
排水量:(公)13,887t
(「最上」は14,146t) ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×8基
(「最上」「三隈」はロ号艦本式罐・重油焚×10基) 燃料搭載量:重油 2215t
全長:200.6m
全幅:20.51m
(「鈴谷」「熊野」は20.2m) 主機:艦本式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
吃水:6.10m
出力:152,000hp 武装:
50口径20.3cm連装砲5基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃4基、13mm連装機銃2基、61cm魚雷3連装発射管4基12門、
水偵3機搭載
最大速力:34.74kt
航続距離:14ktで8000浬
乗員定数:894名
スペックデータ(航空巡洋艦改装(昭和18年)後:「最上」のみ)
排水量:(公)14,142t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×10基 燃料搭載量:重油 2411t
全長:200.6m
全幅:20.51m 主機:艦本式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
吃水:6.10m
出力:152,000hp 武装:
50口径20.3cm連装砲3基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm3連装機銃10基、61cm魚雷3連装発射管4基12門、
水偵11機搭載
最大速力:35.0kt
航続距離:14ktで7700浬
乗員定数:930名


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
三隈、鈴谷、熊野

---------------------------------------------------------------------

最上型軽巡洋艦について
 先に建造した「高雄」型の完成によりロンドン条約での重巡洋艦の保有制限枠を使い果たした日本海軍だったが、重巡洋艦は戦艦に次ぐ主力艦として更に建造を続けたかった。そこでロンドン条約の規定では巡洋艦は重巡も軽巡も排水量は1万トン以下であり違いは主砲の口径だけであることに着目し、主砲を軽巡の規格である15.5cm砲にしてその他の船体構造は重巡と同じ艦を建造し、条約明けになったら主砲を20.3cmのものに積み換えることを考えついた。このようにして「最上」型は建造された。
 そしてロンドン条約の期限が切れた1939年(昭和14年)に予定通り主砲塔の換装を行っている。ちなみにこの時降ろした主砲塔は戦艦「大和」型の副砲として16基(4基×4艦)と軽巡「大淀」型の主砲4基(2基× 2艦)として使用されることになっていた(実際には「大和」型に8基、「大淀」型に2基使用されただけである)。
 1942年に「最上」と「三隈」が衝突事故をおこしたため、「最上」は修理の際に航空巡洋艦として改造され、後部甲板の4番・5番砲塔を降ろして飛行甲板を設置し11機の水偵を搭載できるようになったが、改装が完了した頃には戦局が悪化しており目立った活躍の場は残っていなかった。


利根型重巡洋艦
利根

---------------------------------------------------------------------
スペックデータ
排水量:(公)13,320t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×8基 燃料搭載量:重油 2690t
全長:189.10m
全幅:19.40m 主機:艦本式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
吃水:6.23m
出力:152,000hp 武装:
50口径20.3cm連装砲4基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃6基、61cm魚雷3連装発射管4基12門、
水偵5機搭載
最大速力:35.0kt
航続距離:18ktで8000浬
乗員定数:874名


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
筑摩
---------------------------------------------------------------------

利根型重巡洋艦について
 ロンドン条約の取り決めによる日本海軍の軽巡洋艦保有制限は「最上」型4隻が建造された時点で残り16,955トンとなっていた。そこで8,500トン型の「最上」型より少し小型の8,450トン型軽巡洋艦を2隻建造する予定を立てた。
 ところが建造開始直後に海軍当局側から砲塔を1基減らして代わりに水偵の搭載機数を増やすように要求が出された。これは仮想敵国であるアメリカの巡洋艦と比べて日本海軍の巡洋艦は水偵の搭載機数が少なく、偵察活動に不利であると考えられたからである。
 そこで「利根」型は建造に着手していた船体はそのままに、砲塔4基をすべて前部甲板に配置し後部甲板を水偵搭載用のスペースにすることにして水偵5機を搭載できるようにした。これは主砲の爆風範囲の外に航空機を配置することにもなり、おかげで戦闘状況に関わらず搭載機を運用できるようにもなった。
 建造途中で無理な軽量化をした部分の見直しも行われた結果、排水量が1万トンを超えロンドン条約に違反するようになってしまったが、竣工が条約期限明けになる予定のため問題ないとして工事は続行された。また条約に縛られる必要が無くなったので、主砲も15.5cm砲を20.3cm砲に変更して搭載したため当初の計画(軽巡として建造し条約明け後に重巡へ改装する)と異なり最初から重巡洋艦として竣工することになった。

古鷹型 重巡洋艦

古鷹

---------------------------------------------------------------------
スペックデータ
排水量:(公)8,585t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×10基
  ロ号艦本式罐・石炭重油混焼×2基 燃料搭載量:石炭  400t
        重油 1400t
全長:176.78m
全幅:15.77m 主機:三菱・パーソンス式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
(「加古」は川崎・ブラウン式オールギヤードタービン×4基、4軸推進)
吃水:5.56m
出力:102,000hp 武装:
50口径20cm単装砲5基、40口径7.6cm単装高角砲4基、
61cm魚雷連装発射管6基12門、水偵1機搭載
最大速力:34.5kt
航続距離:14ktで7000浬
乗員定数:616名


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
加古、準同型艦「青葉」衣笠

---------------------------------------------------------------------

古鷹型重巡洋艦について
 駆逐艦の進歩に従い主力艦隊へ敵駆逐艦を近づけさせないようにするための補助艦艇も進歩していくようになった。敵駆逐艦を排除するために駆逐艦より強力な砲を備えた軽巡洋艦が建造されたが、矛と盾の関係のように襲撃する側の駆逐艦部隊を率いる軽巡洋艦も進歩していったので、さらに強力な巡洋艦が必要となってきていた。
 日本海軍は八八艦隊計画で軽巡洋艦「球磨」型を量産していたが、仮想敵国である米国海軍の軽巡「オマハ」型が「球磨」型よりはるかに強力であったために、「オマハ」型に対抗しうる巡洋艦を建造する必要が生じていた。そこで建造が計画されたのがこの「古鷹」型である。
 「古鷹」型は「オマハ」型をうち破ることのできる強力な20cm砲を搭載するために、今までにない新設計を取り入れている。艦の重心を下げるために甲板中央部分を低くし、航行性を高めるために艦首と艦尾を高くした波形甲板の採用と、艦の中心線上に6基もの砲塔を装備するために中央構造物をコンパクトにまとめる必用があったので煙突を太く傾斜した形にするなどの上部構造物の工夫された配置である。
 後に砲塔を準同型艦の「青葉」型と同様の配置にしたために、「古鷹」型改装後は「青葉」型も同型と分類されている。なお2番艦「加古」は重巡洋艦としては珍しく河川名がつけられているが、これは当初の計画では「川内」型軽巡の1艦として建造予定であったものが、軍縮条約の締結により建造艦整理が行われ「古鷹」型重巡として建造されたためである。

---------------------------------------------------------------------

青葉型 重巡洋艦
青葉

---------------------------------------------------------------------
スペックデータ
排水量:(公)8,900t ボイラー:ロ号艦本式罐・重油焚×10基
   ロ号艦本式罐:石炭重油混焼×2基 燃料搭載量:石炭  400t
        重油 1400t
全長:177.48m
全幅:15.83m 主機:三菱・パーソンス式オールギヤードタービン×4基、4軸推進
(「衣笠」は川崎・ブラウン式オールギヤードタービン×4基、4軸推進)
吃水:5.71m
出力:102,000hp 武装:
50口径20cm連装砲3基、45口径12cm単装高角砲4基
61cm魚雷連装発射管6基12門、水偵1機搭載
最大速力:34.5kt
航続距離:14ktで7000浬
乗員定数:632名


---------------------------------------------------------------------

同型艦名
衣笠、古鷹、加古

---------------------------------------------------------------------

青葉型重巡洋艦について
 先に建造された重巡洋艦「古鷹」型は20cm単装砲6基という重武装であったが、砲塔の軽量化のため弾薬庫から弾薬を供給する際、一度に砲塔へ弾薬を搬送せずに中甲板まで弾薬を揚げてから更に砲塔へ弾薬を搬送するという2段階方式を採用していた。このため大がかりな給弾装置が不要となり砲塔の軽量化には成功したものの、中甲板上での給弾装置間の移動を人力に頼ったために給弾速度が遅く長時間の戦闘で砲塔内の弾薬の備蓄が減ると砲の発射速度が遅くなる欠点を持っていた。
 ところがワシントン条約が締結され、補助艦艇は排水量1万トン以内・砲は最大20.3cmと定められたおかげで、「古鷹」型も無理な軽量化をせずに改良できる余地が残されたので火力の増大を図るために再設計が行われることになった。そこで「古鷹」型の3・4番艦として建造される予定であった「青葉」「衣笠」は、主砲を新設計の連装砲塔3基に変更して建造されることとなったのである。
 新しい連装砲塔は「古鷹」型の単装砲塔2基よりも重かったが、「古鷹」型の設計には余裕があったために性能の低下は起こらなかった。
 後にこの主砲塔の改装は「古鷹」「加古」の両艦にも行われ、最終的には「青葉」型と同型となり4隻合わせて「古鷹」型として分類されるようになっている。
 


© Rakuten Group, Inc.