株価収益率(PER)の使い方(3)
前号で、もし50年前に貴方が「低PER」と「高PER」にそれぞれ10万円投資していたら、複利効果を伴って現在いくらになっているか、という問題をお出ししました。まずその答え合わせをしたいと思います。低PER 年率平均上昇率: 16.22%10万円 × (1+0.1622)^50 = 18,367万円(^は「乗」、1.1622の50乗という意味)高PER 年率平均上昇率: 7.12%10万円 × (1+0.0712)^50 = 312万円年間たかが9%強の違いですが、50年間では1億8000万円もの差が出てしまう訳です。言うまでもなく、これは複利の力です。例えば年間の上昇率、16.22%分を毎年引き出してタンスに入れていたとしても、50年前の10万円は合計91万円にしかなっていません。しかし増えた分を引き出さずにそのままにしておくと複利効果が生まれます。もともと投資した10万円が増えるだけでなく、増えた分がまた増えるという現象がずっと続いていきます。即ちお金がお金を生むという好循環が生まれるのです。この好循環が生まれるようにするには、1.良い株を安く買う 2. 中長期的に投資し、複利効果を生ませる、の2点を守らなければなりません。「良い株を安く買う」が難しければ、単に「リスクプレミアムが成長率を上回っている=低PERの株を買う」を守るだけでも大きな差が出てくるのは上記の通り、歴史が証明しているところです。日本では長い間ゼロ金利時代が続いたので、投資においても複利効果に関しては見過ごされがちではないかと思います。もちろん金利がゼロの世界では複利効果は生まれません。しかしアメリカのように金利が5%で、長期的な株式投資の期待リターンが金利を大きく上回る世界では、長期的には大きな複利効果が表れてきます。さて今回までで、株式評価の代表的指標であるPER(株価収益率)の使い方を見てきました。PER(株価収益率)は株価評価の指標としては単純すぎますが、歴史的にはPERを利用する(低PER株を買う)だけでも指数を上回るリターンを得る事が証明されています。それではこの単純な PERでも役立つのは何故でしょうか?それは前号でも申し上げた通り、PERが低いという事は、少なくともリスクプレミアムが成長率を上回っているからです。言い換えれば不安が期待を上回っているからです。これは投資というのがお金を増やす手段である限り、非常に大切な事です。というのは、いくら良い会社の株でも、期待が先回りして「数年後にここまで上昇するであろう」という水準にまで既に上昇してしまっていたら、その株は数年間上昇する事はありません。ただPERではリスクプレミアムと成長率の相対的な関係しか分かりません。即ち低PERならリスクプレミアムが成長率を上回っている、という事実のみです。しかし、同じリスクプレミアムが成長率を上回っている状況でも、その成長率が低いよりも高い方が良いに決まっています。時間が経って市場のリスクプレミアム(不安)さえ後退すれば、高い成長率が期待できるからです。今回でPERは卒業し、次回以降はその辺の話に移りたいと思います。