第191回 サブプライム住宅ローンの真実(1)
2月末から始まった世界的株安の背景には「2つの流動性低下」が挙げられます。一つは日銀の利上げをきっかけとしたもの、そしてもう一つはアメリカのサブプライムと呼ばれる、信用力の低い人向け住宅ローン証券の急落をきっかけとしたものです。しかし後者に関してはかなり誤解があるか、よく分からないという理由で不安が増幅されている部分が大きいように感じます。実際日本の新聞等でも誤った記事が散見されます。ですので今一度アメリカの住宅ローン市場についてご理解いただき、少なくとも「よく分からないという理由で不安が増幅」する事のないようにしていただきたいと思います。アメリカの住宅ローン市場では下図のような仕組で資金が流れています。 (1)金融機関が住宅ローン専門会社に貸出し (2)住宅ローン専門会社が住宅ローン借入人を審査の上、貸出し (3)住宅ローン専門会社は住宅ローンをまとめて証券化 (4)住宅ローン専門会社は証券化した住宅ローンを投資家に売却 (5)住宅ローン専門会社が売却資金を得る (6)売却した資金を金融機関に返済このように、金融機関が直接住宅ローン借入人に貸すというよりも、間に住宅ローン専門会社が入ってそれを証券化して投資家に売却するという手法が主流になっています。これによって各主体の役割・責任を明確にする事ができるというメリットがあります。即ち、金融機関は住宅ローンを担保にした大口の貸出し、住宅ローン専門会社は各住宅ローン借入人の審査、投資家は住宅ローン証券のリスクを負う、といった構図です。実は今回のサブプライム住宅ローン問題を理解するにあたっては、住宅ローン市場がこのような仕組になっている事を予め理解しておく事が非常に重要なのです。何故ならこの仕組によって、ある主体にシワ寄せが行っても、その悪影響が住宅ローン市場全体に広がるのが防がれているからです。次号以降、アメリカの住宅ローン市場で何か起こっているのか、そしてそれによってどの主体に影響が出ているのをご説明したいと思います。しかし結論から申し上げるとすると、現在騒がれているサブプライム住宅ローン問題がアメリカ経済に悪影響を及ぼすほど重大な問題になるとは思えません。大きな理由は、現在起こっている問題が上記アメリカの住宅ローン市場の仕組によって十分吸収可能な範囲であるからです。