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堀古英司の「米国株式の魅力」

2020.11.02
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新自由の女神


(この原稿は大統領選挙前々日の11月1日に執筆したものです)
予想されたことではありますが、選挙が近付くにつれてメディア報道は大統領選挙一色となり、これによって市場も上下する展開となっています。とりわけ10月初めにはトランプ大統領自身が新型コロナウイルスに感染するというビッグ・サプライズが飛び出した事で、ますます注目度が高まっています。しかし市場への影響を考えた場合、恐らく現在、市場は大統領選挙の結果がもたらす影響を過大評価していて、実はもっともっと大きな市場のサポート材料を見過ごしているように見えます。

まず選挙戦についてですが、2016年同様、メディアの9割は民主党候補支持の姿勢を示しているほか、世論調査を見てもオッズを見てもバイデン氏が優勢であることは間違いありません。さらに2016年の選挙で、サプライズとなったトランプ氏の勝利を正確に予想していたいくつかの指標も、今回はバイデン氏の勝利を予想しています。しかし2016年大統領選挙の経験から、市場には「やはり結果は蓋を開けてみなければ分からない」という不安が台頭しているようです。

これはS&P500の変動率指数に表れていて、大統領選挙4日前の変動率指数は38という高水準を示しています。もちろん市場は選挙のような不透明要因を嫌がるものですが、金融危機と時期が重なっていた2008年以外では、大統領選挙4日前の変動率指数は概ね20前後に過ぎません。ちなみに2016年でも22.5で、今回は歴史的に見ても、如何に投資家の不安心理が高まっているかが分かります。感覚的には10%強程度のリスクプレミアムが織り込まれている形となり、要すれば大統領選挙が終了し、普通に結果が判明するだけで、(どちらが勝利したかにかかわらず)その後10%強程度のリターンは期待できる状態となっていると言えます。

次にそれぞれの候補の勝利となった場合、株式市場にはどの程度の影響があるのでしょうか。両候補は様々な公約を掲げていますが、仮にそれがそのまま実現されると考えた場合でも、株式市場に大きな影響を与えるのは法人税率とキャピタルゲイン税率の変更くらいではないかと考えています。ただ法人税率とキャピタルゲイン税率の変更はいずれも、企業が株式で資金を調達する際の資本コストに影響を与えるため、影響は小さくありません。

例えば税引き前利益が100円で、1,000円で取引されている株式があったとします。現行の税制では、法人税率は21%、キャピタルゲイン税率が23.8%ですから、法人レベルで21円の利益が差し引かれ、残った79円がそのままキャピタルゲインに結びついたとすると、キャピタルゲイン税19円(79円の23.8%)が差し引かれ、投資家には60円の利益が残る事になります。この結果、企業が投資家から資本を調達しているコストは10%(100円÷1,000円)、投資家が得ているリターンは6%(60円÷1,000円)という事になります。

もしバイデン候補が勝利すると共に、上下院で民主党が過半数を取り、バイデン候補の提唱する法人税率28%への引き上げ、及びキャピタルゲイン税率最高43.4%への引き上げが実現したらどうなるでしょうか。キャピタルゲイン税を引いた後に投資家の元に60円残るためには、企業は106円(60円÷(1-43.3%))の税引き後利益を上げなければなりません。これは税引き前利益として147円(106円÷(1-28%))上げなければならないことになります。この結果、企業が投資家から資本を調達しているコストは14.7%(147円÷1,000円)となります。

要するに、バイデン候補が勝利して公約通りの法人税率、キャピタルゲイン税率が適用されるようになると、企業の資本コストは10%から14.7%に上昇し、いわば企業にとっては資本の「利上げ」が行われるような状況になります。この5%近い資本コストの上昇は株式にとって小さな問題ではありません。公約通りの税制が実施されるのであれば、やはり中長期的にはトランプ大統領の方が株式市場に優しいと言えるでしょう。

ただそもそも、アメリカの株式市場には退職金など非課税の資金、年金、外国人の資金などが大半を占めており、キャピタルゲイン税率が上記の通り適用されるのはごく一部の投資家のみと見られます。またキャピタルゲイン税率の上昇を見込んで株式を売却したとしても、その資金は再び株式市場に流入してくる性質のものと見られることから、キャピタルゲイン税率上昇の影響はそれほど大きくないと見て良いと思います。

この結果、弊社では法人税率とキャピタルゲイン税率の変更による中長期的な株式市場への影響については、12%程度と試算しています。現在の市場は、いわゆるトリプルブルー(大統領-上院-下院の全てが民主党)を既に6割程度織り込んでいますから、トリプルブルーの場合は株式市場にとって4.8%(12%X40%)の下落要因、トランプ又は議会いずれか共和党勝利の場合は7.2%の上昇要因となります。これに先の、選挙が終わることによるリスクプレミアム低下分を加えると、トリプルブルーでも選挙後は5~10%の上昇が見込める計算になります。

要するに重要なことは、これだけ騒がれている大統領選挙ですが、株式市場に影響を与える要因を積み上げていっても、たかが数%に過ぎないということです。そして現在市場は、このたかが数%しか影響を与えない「木」を注目し過ぎているように見えます。それでは「森」とは何でしょうか。それは今年3月以降実施されている超低金利政策であり、空前の流動性供給です。「森」の影響は中長期的に少なくとも数十%、場合によっては100%以上の株価押し上げ要因だと考えていますが、こちらは選挙のような不透明要素はなく、今後数年続く事がほぼ確実です。たかが数%しか影響が無い不透明な「木」ばかり見て、それを大きく上回る確実な「森」を見失わないことが重要な段階と考えています。

(2020年11月1日記)

新自由の女神






最終更新日  2020.11.04 00:29:31


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