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堀古英司の「米国株式の魅力」

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2016.03.07
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最近、米国株式相場が原油価格の騰落に振り回される展開が続いています。1バレル100ドル前後であった原油価格の急落が始まったのは2014年秋からですが、このように原油価格の下落が米国株式相場に影響を及ぼし、連動するようになったのは2015年に入ってから、原油価格が一旦50ドル近辺にまで下落してからの話です。

歴史的には、原油価格の急騰によって株式相場が下落するという、今と逆のパターンは数多く観測されます。というよりも、オイルショック時を含め、戦後起こったリセッションの前には必ず原油価格の急騰が起こっており、むしろ原油価格と株式相場は逆相関の関係にあるというのが通常のパターンでした。車社会であるアメリカでは、ガソリン価格の上昇が実質所得を引下げ、経済の約7割を占める個人消費が打撃を受けることによってリセッションが起こるという、いわば経済原理からして当然の結果につながっていたのです。

市場は短期的には需給がエラーを生み出すことが多い一方、長期的にはそれが修正されるはずであり、その点ではこの、経済原理からして不思議な原油価格と株式相場の順相関が1年以上も続いているというのは、大きなミステリーです。今ではメディア等でも「原油価格の下落が嫌気され株価下落」などと当然のように報じられていますが、納得できるロジックの説明を殆ど見たことがありません。

しかし私はやはり、原油価格と株式相場の順相関は短期的な市場のエラーであり、早晩経済原理に沿った逆相関、即ち原油価格の下落を株式相場が好感する関係に戻ると考えています。そうだとすれば今後、時間を利用した裁定によって、米国株式投資に非常に有利な展開になるはずです。

それではエラーにせよ、なぜこれまで1年以上も原油価格と株式相場が連動してきたのでしょうか。それは恐らく、原油価格の下落の影響が先に出てくる性質を持っているからでしょう。株価というのはどうやって決まるのかを思い出してみて下さい。これはその企業から生まれる将来のキャッシュフローを現在価値に引き直した合計です。これを産油国や石油開発プロジェクト、石油関連企業に置き換えてみるとどうなるでしょう。将来のキャッシュフローというのは恐らく原油価格に連動しているでしょうから、原油価格の下落はそのまま、産油国の資産やプロジェクトの価値、石油関連企業の株価に跳ね返ります。即ち、資本の価値は直ちに反映される性質を持っているということです。

これによって様々な分野に影響が及びます。よく言われるように、原油価格下落によりエネルギー業界向けの融資が焦げ付いたり、投資の価値が大きく毀損するというものです。また産油国が収入減穴埋めのために、これまでソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を通じて世界の金融市場で運用していた資産を売却せざるを得なくなっている、という動きもあるのでしょう。実際に、ノルウェーのSWFの運用はその積極性で有名ですが、2016年度予算の一部は、SWFを売却する事によって賄うことを発表しています。

これらの影響が比較的早く金融市場に影響してくるというのはその通りで、だからこそ原油価格の下落が先に、株式相場にも下落という影響で表れてきたのでしょう。しかしその影響度合いについてはよく吟味する必要があります。まずエネルギー業界向けの融資と、サブプライム住宅ローンが金融システムに与えた影響というのは、全く規模が異なります。今年1月、決算発表時に大手銀行が開示したエネルギー業界向けの融資は、全融資のせいぜい2-3%の規模でした。しかもエネルギー業界だからといって全て原油価格下落の影響を受けるわけではなく、リスクが高いのはそのうち約4割を占める油田サービス、開発・生産の分野のみです。金融危機時のショックがあまりに大きかったのは分かりますが、エネルギーを2007-9年の金融危機と結び付けるにはかなり無理があります。

また恐らく、産油国を中心とするSWFがその一部を売却しなければならなくなっているのもその通りでしょう。そしてそのようなファンドの動きは短期的な需給には少なからず影響を与えるでしょう。しかし本来、株価というのは中長期的にはその企業のファンダメンタルズによって決まるものであって、短期的な「誰が売った、誰が買った」で決まるものではありません。そのようなSWFの動きによって株価が割安になるのであれば、それを割安と見て拾う投資家が必ず出てきて、中長期的にはその企業のファンダメンタルズを反映した株価に戻るのが普通の動きであるはずです。

それではその、「割安と見て拾う投資家」の動きが遅れている、又ははっきり見えないのは何故でしょう。それは最終的にはエネルギー業界が受けた打撃を上回るメリットを受けるものの、そのメリットは時間をかけて少しずつ表われる性質のものだからです。それではそのメリットを受ける主体は?もうお分かりですね。そう、アメリカ経済の7割を占める消費者です。ガソリン価格の下落は着実にアメリカ消費者の財布を少しずつ潤していて、これは既に最近の消費関連指標にも表われています。そしてこのシナリオが正しいとすれば、アメリカ経済の成長は年後半にかけて加速し、それは株価にも反映されるはずです。経済原理に逆らった原油価格と株式相場は順相関のミステリーはこうして、最終的には解決されるものと見ています。

(2016年3月4日記)






最終更新日  2016.03.11 06:33:42
2016.02.01
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日銀は1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」を発表しました。日銀はインフレ目標2%を掲げる限り、その達成見込みが低いと見れば策を講じるべきであり、その点で私は今回の決定を高く評価しています。マイナス金利政策は日本史上初ということで市場関係者の多くにとって未知の世界であることから期待が膨らみやすく、当面市場は好意的に反応するでしょう。しかし残念ながら、その効果は長続きしないと見ています。その理由は第一に、時期的に導入が遅すぎたからであり、第二に、水準的にまだまだ足りないから、そして第三に、外的要因です。

ご存知の通り、ヨーロッパにはここ数年でゼロ金利になり、マイナス金利に移行した国がいくつかあります。一方日本は、ゼロ金利政策が始まってから、ほぼゼロ金利という時期も含めると17年近くになるという「ゼロ金利の大先輩」です。そう考えると、デフレ退治に向けて果敢に取り組んでいるヨーロッパに比べて、マイナス金利政策の導入はかなり遅れたことになります。この点は、既成概念にとらわれてゼロ以下の金利を想定するというクリエイティブな発想ができない、日本の弱点が出てしまったと認めざるを得ません。マイナス金利政策は、日本だけで見れば史上初かもしれませんが、世界的に見れば日本は「マイナス金利の後輩」なのです。

私はいつも金融政策の遅れを、「誤診」と、「副作用を恐れる医者」に例えます。診察を間違える(インフレ目標達成可能と油断する)→病状が悪化する→副作用を恐れてなかなか薬を処方しない→病状が悪化する→ようやく薬を処方するが病状が悪化しているためなかなか効かない→もっと薬が必要になる。。。そもそも診察を間違えたのも問題ですが、薬の処方が遅れたことによって、かえって後になって大量の薬が必要になっているというパターンの繰り返しです。副作用ばかり恐れて薬を処方しなかったツケが今に回ってきているということで、かねてから申し上げている通り、タイミングは非常に重要だと思います。

さらに今回の程度のマイナス金利では、実質的な効果は殆ど期待できません。ご存知の通り、アベノミクス開始以降、ドル円と日経平均株価の動きはほぼ完璧に連動しており、ドル円が1%上昇すれば、日経平均株価は概ね2.3%上昇する計算です。これは感覚的にも分かりやすいと思います。円が安くなれば、ドル建てで見た日本の株価が安くなるのでそれを修正しようという動きが働きます。日本の物が割安になるので、海外で売れるようになるだけでなく、海外から人が来るようになります。日本の労働者も割安になるので、海外から企業が来るように、と円安はビジネスに相乗効果をもたらします。その点では、今後の日本経済を占うにあたって為替は非常に大きな要素です。そしてその為替の大きな決定要因となっているのは日米実質金利差です。

実質金利とは、名目金利から期待インフレ率を差し引いたものです。要するに、資金を円で運用するのとドルで運用するのと、実質ベースでどちらが有利か考えて、どちらも有利・不利にならないような水準で為替レートが決まる、というものです。現在のように、資本の移動が自由な状況においてはこの考え方は極めて自然であり、ここ10年ほどのドル円レートを見ても、短期的な乖離はあるにせよ、中長期的には極めて日米実質金利差の変化に忠実な動きをしていることが分かります。

その日米実質金利差から、我々が算出したドル円レートは現在、107円を示しています。これはもちろん、日銀がマイナス金利政策を導入した後の数字です。それでは日銀がマイナス金利政策を導入したのに、なぜこんなに円高の水準を示しているのでしょうか?

実は日本の実質金利は、この程度のマイナス金利を導入してもほとんど変わらないのです。というのは、特に年初からの世界的な株安等もあり、日本の期待インフレ率はジリジリ低下してきていたので、そもそも名目金利を引き下げないと、実質金利が上昇してしまうような状況だったのです。1月29日、日本の5年物国債利回りは0.08%だけ低下しましたが、それでようやく日本の実質金利が一定に保たれた形です。

問題はアメリカの実質金利です。米インフレ連動国債から見た実質金利は、去年12月の利上げに向けて上昇しましたが、その後年初来から低下の一途を辿っています。これは大きなドル安・円高要因で、主にアメリカの実質金利低下が要因で、適正ドル円レートが107円にまで低下したというわけです。一方で実際のドル円レートは、というと、日銀のマイナス金利政策導入による「期待」で逆に円安に振れ121円台を付けています。このような状況は過去にも何度もありましたが、いずれも最終的には日米実質金利差を反映した水準に落ち着いています。市場というのは短期的には期待が大きく影響するものですが、中長期的にはファンダメンタルズを反映した水準に落ち着くものだからです。そうなれば当然、日本の株価やビジネスにも影響し、マイナス金利の効果は打ち消されてしまうはずです。

私は前述のように、今回の日銀の決定は高く評価しています。しかし市場の「期待」とは裏腹に、実質的には今回のマイナス金利の効果は殆ど無いと思います。それはタイミングが遅いことに加えて、外的要因が大きすぎて、もちろんやらないよりは良いのですが、今回の程度のマイナス金利では、殆ど解決策にならないからなのです。

(2016年1月29日記)






最終更新日  2016.02.02 07:13:51
2015.12.30
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16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は約9年半ぶりとなる利上げを発表しました。昨年10月に量的金融緩和が終了して以来、1年以上「利上げはいつか」が市場のテーマとなり、時には利上げに対する警戒感から、また時には利上げ時期に対する不透明感から株式相場が上昇しなくなったり、下落したり、という展開が続いてきました。ウォール街でも、3月の利上げを予想するエコノミストは一部だったにしても、6月や9月を予想するエコノミストは8割以上に上る時もありました。そういう意味では、これほど長期間に渡って市場に織り込まれ、満を持して実施された利上げも珍しいと思います。

金融引き締めに対する市場参加者の反応といえば、2000年前半にかけての利上げがその後ナスダックを中心とする株式相場の急落につながったり、また2006年半ばにかけての利上げから約1年経って金融危機が始まったりと、やはり警戒感が真っ先に来るのは当然でしょう。他の条件が一定であれば、金利が上昇すれば相対的に株式の魅力が薄れますし、今回の景気回復局面は既に7年と、過去と比べても長いものとなっていますから、いつ後退局面に差し掛かってもおかしくない、という警戒感もあると思います。実際私も、米国株式相場を本格的に下落させるのは、中国経済でもギリシャ危機でも地政学的リスクでもなく、結局はアメリカの景気が後退局面に入る時であり、それは今回も恐らく、最終的には金融引き締めが起こす現象だと思います。

一方で現段階で「利上げを気にし過ぎるリスク」は非常に大きいものであることも忘れてはなりません。1994年から2000年にかけての金融引き締め局面においては、S&P500指数は約3.3倍になりましたし、2004年から2007年にかけても40%近く上昇しています。そもそも利上げをする理由は景気が良いからであり、少なくとも金融引き締め局面の初期においての投資スタンスは順張りであるべき、ということです。しかし前述の通り、金融引き締めが進んでいくと、いずれは株価が下落し始めたり、実体経済がスローダウンしてきたり、ということが起こります。要するに重要なのは、この利上げの初期の場面から警戒感を抱くことではなく、いつまで株価が上昇するのかを注視しておく、ということなのです。

これは一見難しい判断のように見えますが、実はそれほど難しいことではありません。一言で申し上げれば、「イールドカーブ(利回り曲線)が右肩下がりになる、又は長短金利差が逆転するまで」なのです。通常、金融引き締めの初期の場面では、景気が良いという株式にとってプラスの影響が、金利が上昇するというマイナスの影響を上回ります。しかし金融引き締めが進んでいくとやがて金利が上昇するという株式にとってマイナスの影響が、景気が良いという株式にとってプラスの影響を上回るようになります。即ち重要なのは、マイナスの影響がプラスの影響を上回る時点をどうやって見付けるか、ということで、その時点を見付けるに当たって大きな参考となるのが、イールドカーブの傾きです。

これは直感的にも理解しやすいと思います。政策金利というのはFRBが決定して、その水準に誘導していきますが、金融引き締めが進んでいって、経済の実力に見合わないような水準にまで金利が上昇してしまったら、やがて景気が冷え込んで後退局面に入る、というのは自然な現象です。短期の金利がFRBの影響を大きく受けるのに対して長期の金利は市場の需給によって決まりますから、短期の金利が長期の金利よりも高くなるというのは、「その金利水準は経済の実力に見合いませんよ」というシグナルになるのです。

バーナンキFRB元議長は、量的緩和を巡っては様々な意見や批判をよく受けていますが、2006年にかけての金融引き締め局面についての批判は殆ど目にすることがありません。しかし私は、2006年初の時点で既にイールドカーブが右肩下がりになる兆候が出ていたにもかかわらず、何故その後3回もの利上げに踏み切ったのか、ずっと疑問に思っています。その後金融危機が経済に与えたダメージを考えれば、あの局面での利上げは少なくとも2回分は余計であったと考えています。

さてそれでは今回の場合、金融引き締めがどこまで進めばイールドカーブが右肩下がりになると考えられるでしょうか。利上げ後、5年物国債の利回りは1.7%前後で取引されています。この水準を元にシュミレーションしてみると、利上げペースが年4回の場合は最終的な政策金利の水準は2.0%、利上げペースが年2回の場合は2.5%程度という結果が出てきます。一方で長期金利である10年物国債利回りは2.2%前後で取引されていますから、政策金利の水準が2.5%になった時には長短金利差はマイナスとなり、イールドカーブが右肩下がりになっている可能性が高いでしょう。しかし年2回の利上げペースで政策金利が2.5%に到達するのは、今から4年先の話です。4年あれば株式相場はどれだけ上昇できるかを考えればやはり今は、利上げを気にし過ぎるリスクの方が大きいと言えます。

(2015年12月25日記)






最終更新日  2015.12.30 06:04:38
2015.10.30
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アメリカで「2003年以降に創業し、10億ドル以上の価値を持つ企業」のことを「ユニコーン」と呼びます。これは2年前、アイリーン・リーというベンチャーキャピタルの創業者が付けた呼び名です。ベンチャー・キャピタルにとって、将来大成功を収める企業を見極めることは、伝説の生き物であるユニコーン(一角獣)を見付けるほど難しい、との例えから来ています。

2003年以降に創業して大成功を収めている企業としてフェイスブックやリンクドイン、ツイッターなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が続々と現れているように見えますが、実際にはこのように大成功を収める企業はごく一部、というのが現実だということです。そしてここに来て、最近頭角を表してくるユニコーンにはある共通の特徴が見られるようになってきています。それは「テクノロジーを用いて、需要サイドと供給サイドを効率的に結び付けることを可能にしている企業」だということです。

現在株式が非公開で最大の企業は配車サービスのウーバーで、8兆円の価値があると言われています。これまでタクシーを利用したい人はタクシー乗り場に行くか、流しのタクシーを待つか、電話で予約するしかありませんでした。タクシーの運転手は空車のままタクシー乗り場に戻るか、手を挙げてくれる客を見付けるか、会社の配車係からの連絡を待つしかないという、需要サイドにとっても供給サイドにとっても非常に非効率なシステムだったのです。ウーバーは利用者がスマートフォンで空車の位置を確認でき、近くに走っている空車をいち早く利用者のもとに向かわせるというシステムを開発し、同様のシステムを取り入れる会社が世界中に広がっています。

3兆円の価値があると言われるエアビーアンドビーは宿泊施設で需要サイドと供給サイドをマッチさせるビジネスです。とりわけ個人でも空き家をホテルのように貸し出せるようになっていることは画期的で、少しでも安く、少しでも質の良い宿泊施設に泊まりたい需要サイドと、空き家を有効利用して賃貸料を得たい供給サイドを効率的に結び付ける役割を果たしています。

この他、アメリカ、カナダ、イギリスの大都市で掃除サービスを展開するハンディ・ドットコムも同様で、基本的には家を掃除して欲しい需要サイドと、掃除サービスを提供して所得を得たい供給サイドをマッチさせるビジネスです。掃除サービスといっても、従来のように掃除夫を従業員として雇って派遣する形ではなく、もっぱら斡旋に特化しているのが大きな特徴です。

このように、数年前までのユニコーンはSNSが中心だったのに対し、最近のユニコーンには需要サイドと供給サイドを効率的に結び付けることを可能にするテクノロジー、という共通点があります。ペイパルの共同創業者、ピーター・シールの「空飛ぶ自動車が欲しかったのに、代わりに手にしたのは140文字だ」という有名な言葉があります。SNSにしろ、最近の需給を効率的に結び付けるテクノロジーにしろ、もちろん簡単なものではないでしょうが、逆に言えば、ユニコーンになるのに、空飛ぶ自動車を開発するほど飛躍したテクノロジーが必要なわけでもない、と考えることもできるでしょう。

さてこのように需要サイドと供給サイドのマッチングの効率化が進んでいく中、社会ではどのような変化が起こるでしょうか?ウーバーにしろ、エアビーアンドビーにしろ、ハンディ・ドットコムにしろ、需要にそれほど変化が無い中、これまでは参入していなかった供給サイドがどんどん市場に参入可能になってきている、ということです。ウーバーは既存のタクシーに上乗せされる形で供給増となっていますし、エアビーアンドビーではこれまで市場に出回っていなかった空き家が宿泊施設として出てきています。ハンディ・ドットコムは学生や主婦の空き時間を利用したアルバイトとして有効に利用されています。それに加えて、タクシーもホテルも、掃除サービス会社もこれまで通り存在しているのです。

この結果何が起こるのか。それは供給サイドが急速に需要サイドにさや寄せされていっている、すなわち価格が下落している、ということなのです。もちろん需要サイドと供給サイドが効率的にマッチする、というのは経済全体にとって望ましい状態です。人間の体で言えば、ダイエットが成功している状態ということが出来るでしょう。ある程度までダイエットが進んで脂肪がすっかり取れてしまえば、その後、今度は次第に筋肉を付けていくというステージに移ることもできるでしょう。しかし最近のユニコーンの急速な出現によって、足元では先に体重が減少していくことは避けられない状態です。

これまでアメリカでは、失業率がある程度以下に低下すれば、インフレ率が加速的に上昇していく、というのが経験則でした。現在失業率は5.1%と金融危機以来の最低水準であるため、「経験則から」FRB関係者は年内に利上げを実施したくて仕方ないようです。期待インフレ率は1.1%台と、目標の2%を大きく下回っていますが、「経験則から」必ず上昇すると信じているようです。しかしユニコーンが次々とアメリカ経済を変えていく中、本当に近々、インフレ率が安定的に2%を超えてくる時など来るのでしょうか? 私は甚だ疑問です。

(2015年10月29日記)






最終更新日  2015.10.31 01:00:07
2015.10.17
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8月下旬から9月末にかけて、米国株式相場は大荒れの展開となりました。株式相場が大きく動くと、人々は何が理由なのかを探し始めます。人間は心理的に、理由が分からないことがとても不安になる生き物だからです。そしてメディアはそのような需要を満たそうと、「それらしき」理由を挙げていきます。その結果皆さんが目にすることになったニュースは、中国経済の減速懸念や米国利上げ時期に対する不透明感、さらにはフォルクスワーゲンの排ガス規制に関する不正問題などだったと思います。

しかし中国経済の減速懸念については前号で記した通りですし、米国の利上げ時期など、既に今年初めからずっと市場のメインテーマです。フォルクスワーゲンに至っては、当事者でさえ既に売られ過ぎだと思いますが、ましてやあのような手の込んだ詐欺を外国の他の会社もやっていたかのような株価の反応は、どう見ても行き過ぎでしょう。ただ市場心理が悪化している市場においては、そのような本来反応すべきでないニュースにも反応してしまう傾向があります。これは正に、多くの人がそれらしき理由を付けようとする結果起こる現象だと思います。

株式相場というのはいわば波のようなもので、上がる時もあれば下がる時もありますし、長い間小動きの相場が続いていると大荒れの相場も訪れるものです。人間にはProximity Biasというのがあって、例えば上昇相場に慣れてしまうと下落相場の準備を怠る結果、実際に下落が起こったり、小動きの相場に慣れてしまうと大荒れ相場の準備を怠り、実際に大荒れになったりするものです。そして今回はここ4年近くも比較的小動きが続いた結果の大荒れであって、そこに特に理由はないと考えるのが自然だと思います。それでは8月下旬に起こったのは何かというと、実はこういう事でした。

米国株式市場では株式そのもののほかに、一定価格で「株式を買う権利」(コールオプション)や「株式を売る権利」(プットオプション)が取引されています。オプションの決済日は毎月第3金曜日で、8月の場合だと8月21日金曜日でした。この日の時点で、その権利を買っていた人は、権利を行使した方が有利だと思えば行使するし、行使しない方が有利だと思えば行使しないという判断を下します。権利を持ってる人に選択権があるので、オプションと呼びます。ただ、誰もが権利は欲しいし、義務からは逃れたいものですよ。なので通常、このオプションの価格というのは結構高く、売り手は十分な代金をもらっていることから、長期的にはむしろ、売り手の方が儲かることが多いのです。

このように、そもそも売り手の方が儲かることが多い上に、長い間小動きの相場に慣れてしまっていた反動からでしょう。8月21日は逆の状況がやってきました。市場ではそれまでの数週間、S&P500指数で2000ポイントのプットオプションが大量に取引されていました。前日になってもS&P500指数は2036ポイントと、2000ポイントから結構離れていたため、このプットオプションを売っていた人は油断していたのでしょう。多くの市場関係者が夏休みを取っていてまとまった買いが無い中、株式相場はするすると下がり、とうとう2000ポイントを割れて引けてしまいました。8月21日の決済日、当然のことながら2000ポイントでプットオプションを買っていた人はその権利を行使します。するとこのプットオプションを売っていた人は2000ポイントで大量に株式を保有することになります。大量に株式を持たされた人が、次に市場が開く8月24日月曜日に何をしなければならないか、明らかですよね。結果ご覧の通りになった、というわけです。

このように、ヘッジをしていないオプションの売りの状態をショートガンマといいます。簡単に言えば、下がれば下がるほど売らないといけない、上がれば上がるほど買わないといけない状態です。そして現在の市場では、実質的なショートガンマはオプションの他にも存在しています。

例えばマクロのヘッジファンドやCTA等で「トレンドフォロー型」のものはその一つの例です。トレンドを追うので、下がれば下がるほど売るし、上がれば上がるほど買う操作になります。またリスクを一定に保つよう、ポートフォリオをコントロールしている年金等もあります。これはポートフォリオ全体のリスクを一定に保つため、リスクが上昇した資産を自動的に売らなければならなくなります。株式のリスクが上昇するのは相場が下落する時ですので、こちらも下がれば下がるほど売り、上がれば上がるほど買い、という操作になります。恐らく8月下旬から9月末にかけてはこのようなショートガンマが相場変動の主因だったと見てよいと思います。

それではこのようなショートガンマは、どうなれば市場で暴れなくてすむようになるのでしょうか。それは株式相場の変動率が低下することです。変動率が低下すると、オプションが安く買えるようになりますので、ショートガンマはもう市場で暴れなくてすむようになります。むしろオプション購入に費やしたお金を取り戻すために、今度は相対的に「上がったら売り、下がったら買い」の操作をやる人が増えるので、相場はますます安定していくことになります。現在の市場で言えば変動率指数(VIX)が20を割るかどうかがその基準となるでしょう。その意味では、8月下旬に始まったドタバタは、10月5日をもって終了したと見て良いということになります。

(2015年10月15日記)






最終更新日  2015.10.17 06:08:52
2015.08.19
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ギリシャ問題が峠を越してから、ここ数週間は中国株の下落、そしてそれに伴う中国経済の先行き懸念が金融市場を賑わす大きな要因となっています。特にNY株式市場が中国株の影響を受けるなど、これまではほとんど無かったことです。それではアメリカは、本当に中国の影響を受けるべきものなのでしょうか?

そもそも去年の7月から上海総合指数が2.5倍に上昇する過程でさえ、その事実はアメリカのニュース等でも殆ど報じられることはありませんでしたし、当然のことながらそれが米国株の上昇要因となることはありませんでした。しかし上海総合指数が下落を始めた途端に一斉にメディアで報じられるようになり、恐らくメディアで報じられたのが理由で、米国株式相場にも影響するようになったといっても過言ではないでしょう。ニュースだけを見ていると、この1年間、上海総合指数の上昇が異常であったことの説明が抜けているので、最近の急落は適正値に戻る正常な過程にもかかわらず、あたかも大変なことが起こっているような錯覚を起こします。「2014年3月14日 第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」で記した通り、最近のメディアは悲観的な情報を優先的に取り上げる傾向が強いですから、無理もないことだと思います。

このように、中国株の下落から受ける本質的な影響は無いにしても、それに対する中国政府の対応を見ていると、確かに心配になってしまいます。中国はこの1年間で4回にわたる利下げを実施し、大手投資家は株式の売却を制限され、政府系機関は株式を購入するよう勧告を受け、株価が急落している会社は取引停止を認められ、人民元は切り下げを開始、等々、正にアメリカの金融危機時顔負けのパニック対応を次々と講じています。しかし果たして、上海総合指数バブルが適正値に戻る正常な過程で、ここまでの措置を講じる必要はあるのでしょうか?

中国がここ25年近く、7%以上の成長を続けてきた大きな原動力は設備投資でした。金融危機前くらいまでは設備投資がGDPに占める比率はせいぜい40%強かそれ以下で、それでもかなり高い比率ですが、中国がまだまだ発展途上にあったことを考えれば理解の範囲内だったと思います。しかしその後、世界第二位の経済大国にのし上がり、かつ設備投資の比率が50%近くに跳ね上がった状態が続いているというのは、どう見ても維持可能とは考えられません。個人消費がその大きな穴を埋められるような画期的なイベントでもない限り、早晩(低成長までいかなくても)中成長へのシフトは不可避であるはずです。しかし中国政府は、中成長へのシフトや個人消費活性化に向けた政策を講じる代わりに、小手先の株価対策に腐心してしまっています。まるで株価が下がっているのは、我々の政策が間違っているのではない、株式市場が間違っているのだ、とでも言うかのように。

実際のところ、中国経済が急速に減速したとしても、アメリカ経済にそれほど影響があるとは思えません。というのは中国はアメリカに次ぐ世界第二位の経済力を持つ国になったとはいえ、アメリカ経済は中国の需要にほとんど頼っていないからです。2014年時点で、アメリカの全輸出に占める対中輸出の割合は7%に過ぎず、これはGDP(国内総生産)のわずか1%です。要するに仮に今回、中国経済が壊滅的な状態に陥ったとしても、アメリカのGDPは1%低下するだけなのです。逆に、アメリカの全輸入に占める中国の割合は、直近の統計では22%に上っています。中国経済の減速によってモノの値段が下落すれば、それはアメリカがモノを安く買えることになるため、総合的に見れば、アメリカ経済にとってメリットが生じることさえ考えられます。

さらにアメリカの代表的株価指数であるS&P500採用企業の売上のうち、アジア地域全体を合わせても8%弱に過ぎません。対中ビジネスはまだまだ利益マージンが薄いことも考え合わせれば、利益は恐らく、GDPと同じく1%程度と見て差し支えないでしょう。もちろんアメリカの上場企業の中には中国からの売上が50%近い会社もあり、最近そのような会社の株価がメディアに狙い撃ちされている感がありますが、全体で見れば、実際にはそのような会社はごく一部なのです。

それでは何故ここ数週間、中国株・経済の動向が金融市場を賑わしているのか。それは恐らく、アメリカ経済や企業のファンダメンタルズに変わりがない一方で、メディアの悲観報道や中国政府のパニック的な対応によって投資家の感情が動かされてしまっているから、要するに変わったのはアメリカ経済でも企業でもなく、投資家の方だと考えるのが自然だと思います。

(2015年8月13日記)






最終更新日  2015.08.19 07:38:23
2015.06.29
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(この原稿は日本時間6月29日(月)午前5時現在の情報を元に執筆しています)

膠着状態が続いていたギリシャ問題は先週末、大きな展開を見せました。週末のEUとの会合を前にした26日金曜夜、ギリシャは突然、債権者からの提案を受け入れるかどうかの国民投票を実施することを発表。ゲーム理論的に言えば「囚人のジレンマ」状態に陥っていた両者ですが、ギリシャの出方が決まったことで、ほぼ自動的にEUの出方も決まることになり、EUは全会一致でギリシャへの救済措置を6月30日で終了させることを決定しました。私はここ数ヶ月間、ギリシャ情勢について聞かれることがあっても、あまりに政治色が強くコメントを控えてきたのですが、この決定で今後の、少なくとも中長期的な展開が見えてきたような気がします。

3年前になりますが、2012年「06月15日 第298回 ギリシャ選挙を前に」で記した通り、私は遅かれ早かれ、ギリシャのユーロ離脱は不可避だと考えていましたし、恐らく中長期的には市場参加者の多くもそう考えていたと思います。この3-4年の間、ギリシャには巨額の支援がなされ、その多くがギリシャの銀行を通じて欧州の銀行に還流することによって金融システム的にも準備が出来、3-4年前にギリシャがユーロ離脱、となるよりもかなり、市場の織り込み具合は進んできたと思います。しかし先週の市場(債券、変動率、スプレッド)の動きを見るにつけ、EUとギリシャの交渉に楽観的ムードが漂っていたことからすると、週明けの市場が荒れ模様となることは避けられそうにありません。感覚的には恐らく、あと1-2年先延ばしすることができればこの問題の殆どは織り込まれていたでしょうが、現在の市場にはまだ、その準備は出来ていなかったでしょう。ただ、もちろん今後の展開次第ではありますが、私は日本やアメリカのように当事者でない国については、短期的な影響を別にすれば、それほど悲観視する必要も無いと考えています。これで恐らく9月の米利上げは無くなったでしょうし、そもそもここ3-4年市場を悩ませてきたギリシャ問題とお別れできるという側面もあります。

今回「ギリシャはバカな事をやってしまった」と考える人が多いようです。もちろん短期的な影響としては、交渉がまとまる方が両者にとって良かったとは思いますが、長期的に見た場合、私はこの「ゲーム」は実はむしろギリシャに有利と考えています。というのは、前出「ギリシャ選挙を前に」で記した通り、ギリシャにはいずれにしろ(程度の差はあれ)抜本的な改革が必要でした。それならば、緊縮財政を強いられながら長年に渡って借金を返すためだけのような生活をするよりも、自国通貨に切り替えれば、ある程度柔軟に財政をコントロールさせていくことができます。自国通貨はインフレを伴い、導入当時に大きな痛みを伴うでしょうが、将来的に財政を健全化していけばインフレ率低下という形でご褒美が返ってくるので良い動機にもなります。為替レートも利用して、徐々に競争力を回復していく作戦は理にかなっているように思います。

一方でこの先、今回の決断が本当に正しかったかを検証されるのはEUではないでしょうか。「ギリシャ選挙を前に」で記した通り、ユーロというのは本来、言語や文化、経済状況の異なる国の集まりです。にもかかわらずこれまで16年間、ユーロという制度を維持できてきたのは、それはそれで凄いことだと思いますが、今後時間が経つにつれて歪みが大きくなってきて、延いてはこの先「第二のギリシャ」が市場に意識される場面が到来する可能性は否定できません。今回ギリシャの経済規模で、しかも3-4年かけて織り込んできた末でこの状況なので、IやSに飛び火した時にEUのコストは、ギリシャ支援とは比べ物にならないものとなるでしょう。もちろんギリシャ問題は粉飾決算に端を発する問題なので、EUとしては「ギリシャだけは特別」と強調したいところでしょう。しかし将来、市場で同様の問題が意識されるようになった時、結局「あの時ギリシャを救済しておいた方が安くついた」となる可能性は十分考えられます。

こう考えれば、EUとしては今からでも、ある程度譲歩する価値はあると思います。ツィプラス首相の、自己保身を狙った国民投票をみすみす受け入れるのも納得がいかないかもしれませんが、上述のようにギリシャが置かれた(やや有利な)立場を考えれば仕方ないのではないかと思います。EUの人たちは、そこまでのコストなど負担できない、と言うかもしれません。しかしその人たちはよく理解しなくてはなりません。統一通貨を作るということはそういうことなのですよ、そしてそれに賛成票を投じたのは自分達なのですよ、という事実を。

(2015年6月28日記)






最終更新日  2015.06.30 00:15:58
2015.06.01
カテゴリ:カテゴリ未分類
金融危機時、一時10%に上ったアメリカの失業率は昨年秋以降、2008年9月リーマンショック前の水準にまで低下しています。非伝統的金融政策-量的緩和-は金融危機を受けた緊急的措置であったため、当然のごとく昨年秋で終了。その後も雇用情勢は改善を続ける中、市場の関心はFRBの次の一手、即ち利上げの時期に集まっています。ただ、確かにFRBの動向は債券はもちろん、株式や為替市場に大きな影響を与えるのですが、今回の場合はやや市場の関心が行き過ぎで、要するに利上げを気にし過ぎの兆候が見られます。

市場が利上げを気にし過ぎる理由は第一に、今年利上げが実施されれば9年以上ぶりであり、過去の利上げ局面の記憶に乏しいことや、市場関係者の一部には「利上げ局面は初めて」という人もいて、何が起こるか分からないという不透明感があるからでしょう。第二に、利上げが実施される時期に関する不透明性です。例えば現在、ウォール街のエコノミストが予想する利上げ時期のコンセンサスは今年9月ですが、シカゴ・マーカンタイル取引所で取引されているフェデラルファンド金利先物市場の取引値(5/29時点)から計算すると、利上げの確率が初めて50%を超えるのは今年12月です。しかも来年3月でも80%で、市場は来年春になっても、利上げが実施されていることに確固たる自信を持っているわけではない、ということです。

一方で市場の関心が行き過ぎている理由は恐らく、今年1-3月期に悪天候、ドル高、原油安という、いずれも一時的要因がアメリカの景気を押し下げましたが(GDP改定値はマイナス0.7%)、その結果現在表れている反動高をそのまま受けてしまっているからでしょう。その証拠に、債券市場も年初来、それらがあたかも一時的要因でないような上下動を繰り返しています。このように現在、FRBの次の一手、即ち利上げをめぐって市場自体が揺れている状況ですので、雰囲気に惑わされず、本質を見極めることが非常に重要と考えています。

そこでまず株式に関して、過去の利上げ局面でどのようなパフォーマンスとなっていたかをお示ししましょう。現在は市場のコンセンサスによると、利上げ6カ月前に近いタイミングです。1990年以降、最初の利上げとなったのは1994年2月、1999年6月、2004年6月の3回ですが、各局面での利上げ6カ月前から利上げまでのS&P500指数の騰落率を見てみると、+2.8%から+11.4%までバラツキはあるものの、全てプラスになっています。半年でこの数字ですから、年換算すると無視できない上昇率になります。上記の通り、利上げに対する市場の警戒感は強いものの、そのような警戒感とは裏腹に、歴史的に利上げ前の株式相場は強いものなのです。ちなみに過去3回について利上げ後1年間の騰落率を見てみても、全てプラスになっています。

9年以上ぶりということで市場の関心は利上げのマイナス面ばかりに目が向かいがちですが、一方で利上げが実施されるということは景気が回復してきていることの証でもあり、特に利上げの早期の局面では株式が好景気によって受けるプラスの効果が、金利上昇によるマイナスの効果を上回るパターンが多いということを示しています。これは過去の局面で、特にハイテクや景気敏感セクターなどがいずれもS&P500指数を大幅に上回るパフォーマンスを示す一方、公益など金利敏感セクターのパフォーマンスが劣っていることからも裏付けられます。

一方で少し気になるのが為替市場の動きです。第326回 「2015年米国経済・株式相場の見通し」(1)でもお示しした通り、今年のドル円の目標値は127~128円との見方に変わりはありません。また財政問題が足かせとなって長期間にわたって金利を引き上げられない日本とアメリカの金利差は拡大する運命にあり、中長期的にドル高・円安という見方にも変わりはありません。しかし短期的に見てみますと、足元の日米実質金利差は0.6%程度しかなく、その割には直近の円安は進行し過ぎのように見えます。

実は昨年、ちょうど逆のことが起こりました。私は日米実質金利差から、昨年末のドル円レートを120円と予測していたのですが、昨年の今頃はずっと102円近辺での取引が続いていてずっと「おかしいな」と思っていたのを覚えています(結果的に日米実質金利差を反映する形でその通り年末120円になりましたが)。ただ昨年末以降、日米実質金利差は急速に縮小していて、現在ドル円は110円以下でもおかしくない状況になっています。分かりやすく申し上げれば、「日米実質金利差は0.6%程度しかない中で、昨年102円でドルを買って20%も利益が出る人が市場にたくさん居る状況」「地に足ついた上昇ではなく、それより高く買ってくれる人が居るから買っている状況」ということです。

もちろん今後日米実質金利差が拡大していって、この乖離は解消されるかもしれません。一方で短期的には、為替市場の方にも「利上げを気にし過ぎるリスク」が内包されつつあることを忘れてはなりません。






最終更新日  2015.06.02 02:43:42
2015.04.15
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先週、日経平均株価は一時、およそ15年ぶりに2万円台の大台を回復しました。私は1月15日にテレビ東京に出演させていただいた際、日経平均株価は今年21,000円を目指すとの予想をお示ししましたが、今もその見方には変わりはありません。しかし同時に、長期的な日本の株価となると、やはり人口が減少していく中ではどうしても上昇余地は限られてしまうとの考えが拭えません。

実際、この10年間でアメリカのS&P500指数採用企業の利益が71%伸びているのに対し、日経平均採用企業は22%しか伸びていません。そもそも経済成長において最も重要な要素の一つである人口が減少していく中では、日本の企業利益の成長についても多くは望めません。株式の価値のほとんどは成長の価値ですから、成長が望めなければ株価が上昇するはずもないのです。このような中でも日経平均株価が2万円の大台を回復できたのは、やはり政府や日銀の役割によるところが大きく、今のところ官製相場の色彩が濃いと考えざるを得ません。

しかし今後、人口が減少していく中でも株価上昇が見込めるとすれば、それは独自に成長分野を見出して成長していく企業、人口が増加している海外の市場を開拓していく企業、そしてROE(Return on Equity:株主資本利益率)を高めていく企業だと思います。ちなみに2014年末時点でアメリカのS&P500指数採用企業の平均ROEは14.4%ですが、日経平均採用企業の平均ROEは8.7%に過ぎません。歴史的にも日経平均採用企業のROEはS&P500指数採用企業の半分近い水準です。

ROEというのは株主資本に対する利益の割合なので、一般にはどうしても「利益を上げるべき」というイメージが先走ってしまい、そのために問題の本質がボヤけてしまう傾向があるように感じます。しかし利益を上げるべきというのは、そもそも企業の目的ですので、そんなことを繰り返し強調することに意味はありません。私が今強調したいのは、「ROEを上げるよりEORを下げよ」ということなのです。

EORはEquity on Return(利益に対する株主資本の割合)の略で、ROEの逆数です。逆数にしただけで何の意味があるのかというと、株主資本が分子に来る事によってより、「利益が一定の中でも株主資本を減らす事が重要」という、日本企業の本質的な問題が分かりやすくなるからです。上述の通り、利益を増やすのは当然の如く日々企業が努力していることなので、今更繰り返す必要もありません。重要でかつ比較的難しくないのは、株主資本を減らす、という作業なのです。

株主資本とは、株主から払い込んで投資してもらった資金と、これまで生まれてきた利益のうち企業に留保されている資金の合計です。これら資金は現金である必要はありません。有価証券や不動産等をあわせた全ての資産から、負債を差し引いた部分です。即ち企業が清算されて全ての資産を売却し、負債を返済した後に株主に残る金額の合計です。利益が一定であれば、この株主資本が大きければ大きいほど、EORが大きくなってしまいます。EORを小さくしようと思えば、この株主資本を小さくすれば良いのです。具体的には、企業が通常の業務にとって優先度の低い資産は売却し、その資金を株主に配当や自社株買いの形で返してしまえば良いのです。

例えばある企業の資産が1.5億円(うち遊休資産が0.5億円)、負債が0.5億円、利益が500万円、よってEORが20倍(ROEが5%)だったとします。利益を上げることによってEORを下げる事は難しいかもしれませんが、遊休資産を0.5億円分売却して株主に返してしまえば、利益が一定でも、EORを20倍→10倍に下げることができます。通常の業務に必要以外の現金は、現在のようなゼロ金利の下では遊休資産と言えるでしょうし、5%以下のリターンしか生んでいない資産は売却して株主に返せばEORを下げることができます。

個々の企業によって事情は異なると思いますが、全体として見れば日本の企業は株主資本を溜め込み過ぎなのです。株主資本は株主のものですから、もしアメリカでこのような状態になれば、必ず株主から増配や自社株買い等の方法で株主資本を還元するよう、株主から圧力がかかります。しかし日本では相対的にそのような圧力がかかりにくい結果、過剰な資本が株式会社に残り、眠ってしまっているのです。

このように過剰な資本が会社に残ってしまっているというのは、日本経済全体にとって非常にもったいない状況です。この資本が成長産業等で有効利用されれば、延いては日本経済の成長につながるはずだからです。日本でよく政治家を中心に、これを設備投資や給与引き上げに回せとの呼びかけがありますが、それらは的が外れてしまっています。もともと経営計画に設備投資をする予定の無い会社が、無駄な設備投資を実行するとは思えませんし、給与というのは限界生産性によって決定されるものであって、株主資本の多寡によって決定されるものではないからです。

日本では8年ほど前に「物言う投資家」が圧力を高め、日経平均株価が2万円に近付いた時期がありました。しかしそのような投資家も、日本独特の株主持ち合いや司法判断に愛想を尽かし、日本を離れていったのは記憶に新しいところです。今回の日経平均株価2万円回復、10年後、20年後にまた同じニュースを聞くことが無いよう、官製相場と言われないよう、今回の上昇を確固たるものにしていくためにも、日本企業には全体としてEORを下げる努力が急務だと考えています。

(2015年4月12日記)






最終更新日  2015.04.15 06:23:29
2015.02.23
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これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

2000年のITバブル崩壊以降、アメリカ株式の株価収益倍率は概ねコンスタントに縮小してきました。S&P500指数の株価収益倍率は1999年の30倍を最高値として縮小に転じ、2011年には12倍を付けるにいたりました。そして2012年以降、株価収益倍率は拡大に転じ、2014年末には18倍近くにまで拡大しています。言うまでもなく、株価収益倍率は投資家の期待を示すものです。投資家の期待が高ければ高いほど株価収益倍率は拡大しますが、低ければ縮小します。それでは何故、2000年から2011年までの間、株価収益倍率は縮小してきたのでしょうか。

2000年から十数年間はアメリカ経済にとって大きな試練の時期でした。ITバブル崩壊に始まり、同時多発テロや金融危機といった「100年に一度」級の危機が2つも起こったほか、不正会計問題、イラク戦争、金融危機、米国債デフォルト危機等々、懸念材料という点では枚挙にいとまがない時期でした。自ずから投資家としても株式に期待を膨らませられるような状況ではなく、それが株価収益倍率の縮小という形で市場に表れてきたのです。

しかし2012年を境に、私はアメリカ経済はこの辛かった十数年と決別したと考えています。アメリカは上記のような試練に見舞われる度に経済をサポートするため財政政策を発動してきましたが、2012年末に問題となったいわゆる「財政の崖」や2013年の米国債デフォルト危機は、いわばそのような試練の総決算だったということです。そして案の定、2013年春にアメリカ株式相場はそれまで長く抜けられなかった高値をしっかり越え、現在新たな大きな上昇局面に入っている、投資家の期待が回復するに伴って株価収益倍率も拡大を始めた、という段階だと考えています。

過去の、8%を超えるような超高金利時代を除けば、S&P500指数の歴史的な株価収益倍率は平均20倍前後です。しかも現在、着実な株価収益倍率拡大局面にあることを考えると、今年についても一桁台後半の株価収益倍率拡大を見込むのは自然だと思います。また景気が着実に回復局面にあることから、企業の利益成長率についても、一桁台後半が見込めると考えています。これら一桁台後半の利益成長率と株価収益倍率拡大をあわせて、今年は16%程度、S&P500 指数で見て2,400程度までの株価上昇を予想しています。

さらに足元でも、先行き株価に対して非常に強気のシグナルが出ています。アメリカ株式相場は2014年10月及び12月に下値をトライしましたが、いずれも跳ね返されています。1月に入ってもS&P500指数が2,000を下回るのはごく数日の話です。要するに、相場は下値に行くのを嫌がっているのです。市場では欧州債務危機の再燃、エネルギー価格の下落、企業業績に対する懸念、量的緩和の終了等、様々な懸念材料が挙げられていますが、「第324回 市場が恐れる8つの“E”」で申し上げた通り、いずれも本質的な相場の下げ要因ではないので、下がらないのは当たり前なのです。そして当然ではありますが、過去を溯って見てみますと、このように市場が数カ月にわたって連続して下値を嫌がった後には、かなり高い確率でその後大きな上昇相場が訪れているのです。このような理由から、私は今年もアメリカ株式はとても魅力的な運用対象だと考えています。

このような状況にもかかわらず、私が特に近年気になっているのは、皆さんにこうした情報がしっかり伝わっているかどうか、ということなのです。というのはむしろここ数年、日本の皆さんには、アメリカ経済に対してネガティブな情報はたくさん伝わるものの、ポジティブな情報がなかなか伝わっていないと感じることがとても多いからです。私はしばしば「あの人はアメリカ株のファンドマネジャーだから強気なことを言っているのだ」と誤解されることがあります。しかし率直に申し上げて、私は買いも空売りも行うヘッジファンドのマネジャーですので、自分の考えを曲げてまでアメリカ株を強気に言うメリットなど何もありません。単に我々の分析結果を日本の皆さんにシェアし、役立てていただきたいだけです。

一方で特にここ数年顕著なのは、メディア間の競争の激化です。「第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」で申し上げた通り、今やメディア間の視聴者や購読者、利用者、クリック数を奪う競争は熾烈を極めており、人間の心理を利用してネガティブな情報を優先して伝えないと、視聴率もクリック数も稼げなくなっていているのです。身近な例で申し上げれば、アメリカで何らかの危機(最近では米国債デフォルト危機)が起こったり、株価が大きく下落したりすると、私はメディア関係の方から沢山インタビューや出演依頼をいただきます。一方でアメリカの株価が最高値を更新しても、そのようなことは全くありません。長年このようなパターンを見ていると、皆さんのもとには、アメリカ経済に対して悲観的な、アメリカ株式投資を躊躇させるような情報ばかりが伝わってしまっているのではないかと心配になってしまいます。

このような状況下では、皆さんはタダ、又はタダ同然の情報をご覧になる場合、それらの多くは広告収入に頼ったビジネスから来ているので、利用者やクリック数を増やすためにネガティブな情報が多くなっているという傾向を予め認識しておく必要があるということです。そうでないと、特にここ数年は顕著ですが「アメリカ株に投資しようと思ったのに、あの記事・番組を見て思いとどまってしまった」という勿体ないことになってしまいます。その間のアメリカ株の値上がり益は「リスクを取らないリスク」として皆さんが負担することになったわけですが、当然のことながら、メディアはそのような機会損失を弁償などしてくれません。

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.02.26 07:03:06

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