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堀古英司の「米国株式の魅力」

全207件 (207件中 31-40件目)

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2015.01.31
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これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

ここ10年近く、アメリカ株に投資しようと思っても、円高によって株価上昇による利益が相殺されるのでなかなか踏み切れない、という方が多かったと思います。確かに日本に居られる皆さんにとって、為替はアメリカ株投資を考えるにあたって重要な要素の一つですので、まず為替の見通しからお示ししたいと思います。私が2013年末にテレビ東京で示した2014年末のドル円、ダウ、日経平均予想値は、それぞれ120円、2万ドル、2万円でした。あいにくダウ、日経平均は届きませんでしたが、ドル円はピッタリ(2013年末105円に対し2014年末120円)予想値に一致しました。つい先日、機内で読んだ週刊誌で、市場関係者の2014年初の為替予想がいかにいい加減で、そもそも相場の予想など出来るわけが無いものだ、との記事があったので、敢えて昨年の予想を引っ張りだしてきた次第です。

近年のドル円相場は日米実質金利差が大きな決定要因となっています。2014年前半、ドル円はずっと101~103円近辺の推移でしたが、日米実質金利差によると2013年末時点で適正水準は110円近辺と示していました。為替相場というのは時に行き過ぎるものであり、過去を照らし合わせても適正水準から10円程度の乖離はしばしば観測されます。日米の景気格差は明らかであったので、適正水準から10円円安方向に乖離してもおかしくない、と考え予想したのが120円でした。

さて現時点では日米実質金利差から算出される適正水準は113円となっています。引き続き日米の景気格差は明らかであるものの、世界的に長期金利が低下傾向にあって、先進7カ国の中で10年物国債利回りはアメリカが最も高いこと、原油価格が急落していてディスインフレ傾向にあることを考えると、今年は日米実質金利差の拡大にも限界があると考えざるを得ません。この結果昨年ほどの円安は考え難く、せいぜい127~128円程度までの円安で、130円に届くのは難しいだろうという予想をしています。一方で適正水準が113円で、引き続き日米景気格差が明らかである以上、110円を大きく割るような円高は考え難く、もしあったとしてもそれはドル買い・円売りの格好のチャンスと見るべきと個人的には考えています。

いずれにしろ当コラム(第291回 2012年米国経済・株式相場の見通し(1)等)でも再三申し上げてきた通り、2007年7月に始まった円高は2012年で終了しており、その間に経験したような円高を恐れてアメリカ株投資になかなか踏み切れない、というのは勿体無いことです。今年に関しては昨年ほど為替で利益が上がることは無いかもしれませんが、財政状況が厳しく長期間にわたって金融政策に頼らざるを得ない日本と、金融危機と決別し新たな成長局面に入ったアメリカとの景気格差は明らかであり、長期的にドル円がドル高・円安方向にあることに変わりはないでしょう。

一方で、今年は特にアメリカ株の上昇が期待できる年になると見ています。アメリカの代表的株価指数であるS&P500のバリュエーションを見てみますと、2015年予想ベースの益利回り(株価収益倍率の逆数)が6%を超えてきています。一方アメリカの10年物国債利回りは1.8%を割ってきていますから、その差は4.2%に広がっています。もちろん株式には国債のような元本・利金保証はありませんが、代わりに国債にはない、利益(利金)の成長があります。長期的に見ると、この元本保証と利益成長の価値は概ね相殺される傾向があります。そのような中で、S&P500指数の益利回りと10年物国債利回りの差が4%以上というのは、これまでも無かったことではありません(過去1回、5%に拡大したことはあります)が、既に歴史的にもかなり拡大している状態、と見ることができます。

またS&P500指数の2015年予想ベース配当利回りは2%と、10年物国債利回りよりも高くなっています。利金の成長が無い国債と異なり、利益や配当の成長が期待できる株式の配当利回りが国債利回りを上回るというのは、かなり珍しい(株式が割安な)状態です。S&P500指数の配当利回りが10年物国債利回りを上回るのは金融危機時と2012年にのみあった現象であり、いずれのケースも、その後株式相場は大幅に上昇することによってこの珍しい状態は解消されているのです。

もっとも、去年まで続いてきた積極的な量的金融緩和の影響で、国債利回りが適正水準よりも人工的に低く抑えられているだけ、という見方もできます。一方で直近のFOMC(連邦公開市場委員会)でメンバーが示している長期的なFF金利の適正水準というのは3.75%です。とすれば量的金融緩和の影響が徐々に消え、10年物国債利回りが上昇していったとしても、長期的な適正水準は4%以下に落ち着く、というのが自然な見方でしょう。さらに原油価格下落を受けた世界的なディスインフレ傾向、世界的な長期金利低下傾向も勘案すれば、実際には、10年物国債利回りは4%よりも遥かに下の水準で推移する可能性の方が高いと思います。

(つづく)

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.01.31 05:55:00
カテゴリ:カテゴリ未分類
これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

ここ10年近く、アメリカ株に投資しようと思っても、円高によって株価上昇による利益が相殺されるのでなかなか踏み切れない、という方が多かったと思います。確かに日本に居られる皆さんにとって、為替はアメリカ株投資を考えるにあたって重要な要素の一つですので、まず為替の見通しからお示ししたいと思います。私が2013年末にテレビ東京で示した2014年末のドル円、ダウ、日経平均予想値は、それぞれ120円、2万ドル、2万円でした。あいにくダウ、日経平均は届きませんでしたが、ドル円はピッタリ(2013年末105円に対し2014年末120円)予想値に一致しました。つい先日、機内で読んだ週刊誌で、市場関係者の2014年初の為替予想がいかにいい加減で、そもそも相場の予想など出来るわけが無いものだ、との記事があったので、敢えて昨年の予想を引っ張りだしてきた次第です。

近年のドル円相場は日米実質金利差が大きな決定要因となっています。2014年前半、ドル円はずっと101~103円近辺の推移でしたが、日米実質金利差によると2013年末時点で適正水準は110円近辺と示していました。為替相場というのは時に行き過ぎるものであり、過去を照らし合わせても適正水準から10円程度の乖離はしばしば観測されます。日米の景気格差は明らかであったので、適正水準から10円円安方向に乖離してもおかしくない、と考え予想したのが120円でした。

さて現時点では日米実質金利差から算出される適正水準は113円となっています。引き続き日米の景気格差は明らかであるものの、世界的に長期金利が低下傾向にあって、先進7カ国の中で10年物国債利回りはアメリカが最も高いこと、原油価格が急落していてディスインフレ傾向にあることを考えると、今年は日米実質金利差の拡大にも限界があると考えざるを得ません。この結果昨年ほどの円安は考え難く、せいぜい127~128円程度までの円安で、130円に届くのは難しいだろうという予想をしています。一方で適正水準が113円で、引き続き日米景気格差が明らかである以上、110円を大きく割るような円高は考え難く、もしあったとしてもそれはドル買い・円売りの格好のチャンスと見るべきと個人的には考えています。

いずれにしろ当コラム(第291回 2012年米国経済・株式相場の見通し(1)等)でも再三申し上げてきた通り、2007年7月に始まった円高は2012年で終了しており、その間に経験したような円高を恐れてアメリカ株投資になかなか踏み切れない、というのは勿体無いことです。今年に関しては昨年ほど為替で利益が上がることは無いかもしれませんが、財政状況が厳しく長期間にわたって金融政策に頼らざるを得ない日本と、金融危機と決別し新たな成長局面に入ったアメリカとの景気格差は明らかであり、長期的にドル円がドル高・円安方向にあることに変わりはないでしょう。

一方で、今年は特にアメリカ株の上昇が期待できる年になると見ています。アメリカの代表的株価指数であるS&P500のバリュエーションを見てみますと、2015年予想ベースの益利回り(株価収益倍率の逆数)が6%を超えてきています。一方アメリカの10年物国債利回りは1.8%を割ってきていますから、その差は4.2%に広がっています。もちろん株式には国債のような元本・利金保証はありませんが、代わりに国債にはない、利益(利金)の成長があります。長期的に見ると、この元本保証と利益成長の価値は概ね相殺される傾向があります。そのような中で、S&P500指数の益利回りと10年物国債利回りの差が4%以上というのは、これまでも無かったことではありません(過去1回、5%に拡大したことはあります)が、既に歴史的にもかなり拡大している状態、と見ることができます。

またS&P500指数の2015年予想ベース配当利回りは2%と、10年物国債利回りよりも高くなっています。利金の成長が無い国債と異なり、利益や配当の成長が期待できる株式の配当利回りが国債利回りを上回るというのは、かなり珍しい(株式が割安な)状態です。S&P500指数の配当利回りが10年物国債利回りを上回るのは金融危機時と2012年にのみあった現象であり、いずれのケースも、その後株式相場は大幅に上昇することによってこの珍しい状態は解消されているのです。

もっとも、去年まで続いてきた積極的な量的金融緩和の影響で、国債利回りが適正水準よりも人工的に低く抑えられているだけ、という見方もできます。一方で直近のFOMC(連邦公開市場委員会)でメンバーが示している長期的なFF金利の適正水準というのは3.75%です。とすれば量的金融緩和の影響が徐々に消え、10年物国債利回りが上昇していったとしても、長期的な適正水準は4%以下に落ち着く、というのが自然な見方でしょう。さらに原油価格下落を受けた世界的なディスインフレ傾向、世界的な長期金利低下傾向も勘案すれば、実際には、10年物国債利回りは4%よりも遥かに下の水準で推移する可能性の方が高いと思います。

(つづく)

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.01.31 05:51:40
2014.11.15
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日本ではここに来てようやく、消費増税が見送られ、日銀が追加緩和に踏み切るという、正しい方向に経済政策の舵が切られようとしています。日本の経済政策決定において常々感じていることなのですが、我々のように金融・ファイナンスの世界に居る人間からすると当然と思われることでも、経済の専門家である経済学者やエコノミストの一部の方にはそう映っていないことが多く、それ故に賛成と反対が拮抗し、最悪の場合には正反対の政策が取られてしまうケースが日本では多々あります。 

そしてそれは多くの場合、経済を近視眼的に見てしまい、「そもそも」という視点が失われていることから来ることによるものだと考えています。例えばそもそも、経済を成長させるにおいて必要な要素は何でしょうか?最も重要な要素の一つは、人間が心理的に、昨日よりも今日が、今日よりも明日が、明日よりも明後日の方が良くなっていると思えることでしょう。将来の方が良くなっていると思えるからこそ、人々は消費をし、投資をし、会社は借り入れをし、設備投資をするのです。経済は人間が動かすものであり、この前提が崩れれば、経済など成長するわけがありません。国の財政は経済が成長することを前提に組まれていますから、成長がなければ財政が改善するはずもありません。 

日本の名目GDP(国内総生産)はこの20年間、ほとんど変わっていません。1994年に495兆円だった日本の名目GDPは、2013年に481兆円と、むしろ減少しています。理由は数え切れられないほどあるのでここでは省略しますが、大雑把に申し上げるとこの20年間、経済が成長しそうになると、不思議と必ず、それを抑え付けようとする力が現れてくるのです。それは消費税増税など財政引き締めの形を取ったり、実質的に金融引き締めの形を取ったり、時によってその姿は異なります。80年代バブルの教訓なのでしょうか?まるで景気が良くなることが悪いことであるかのように抑え付ける力が現れてくるのです。 

結果この20年間、アメリカのGDP2.5倍になる中、日本は全く成長しない国になってしまいました。このような状況の下で、人々の心理はどうなるでしょうか?消費や投資を増やしたり、借り入れや設備投資に踏み切ったりしたいと思うでしょうか?むしろ、消費や投資、借り入れや設備投資をしても報われないことに慣れてしまい、それが当たり前の国になってしまうのではないでしょうか?そして経済が成長する国で生活したことがない学生が社会に出たら、そのような行動になってしまうのは当たり前ではないでしょうか? 

私は日本にとって今最も重要なこと、それはまず人々が自信を取り戻し、昨日よりも今日が、今日よりも明日が、明日よりも明後日の方が良くなっていると思えることだと思います。過去の辛かった20年と決別し、むしろそれが異常な20年だったと思えることです。その目的を達成するためであれば、景気が少々行き過ぎようとも、少々物価目標を超えようとも、大きな問題ではないと思います。目先の7-9月期GDPよりも、物価目標の達成よりも、ずっとずっと重要な課題だと考えています。 

20110418日 第281回 復興増税は人災」で記した通り、消費税増税の話が始まったきっかけは東日本大震災でした。私はその前号20110316日 第280回 財政・金融政策総動員を!がんばれ日本」で消費税減税を提言していただけに、「ああ、また日本は逆をやってしまうんだ」と驚きました。そして後日、当時民主党のブレーンを務めていた経済学者がこう言っていたのを聞いて二度驚きました。「いずれ震災復興需要が起こる。それが消費税を徴収するチャンスだ。」私は「あ~あ、また経済成長を抑え付ける力が現れてきた」と感じました。 

日銀の追加緩和についても同じです。メディアが「異次元」とか「バズーカ」とか報道するので、多くの方はあたかも2013年春以降の日銀の量的緩和が十分という印象を持たれていたのではないでしょうか。しかし、私の見立ては全く違います。以下は2013年の私のツイートです。

@horikocapital  ·  201344日 堀古:日銀の緩和策、ようやく小出しが終わって市場の期待を上回った事は大きな前進だ。しかし実数を比較すると、アメリカが100兆円に対して日本は50兆円。日本の経済規模は3分の1でもマネーストックは2.5倍。中長期的には恐らくまだ足りないくらいだろう。

@horikocapital  ·  201387日 堀古:繰り返しになるが、日銀の緩和量は足りない。例えばアメリカの年間緩和量のM1に対する比率は40%、日本は12%、期待インフレ率はアメリカ2%、日本1.2%。 

さらに、直近の追加緩和は予想外、市場の期待を上回った、との声が多いのにも驚いています。というのは、市場取引から算出される日本の期待インフレ率はこの10月、0.8%近くにまで急落しており、むしろ私は「何故日銀の追加緩和はこんなの遅いのだろう」と思っていたからです。ちなみに今年の1月、私はテレビ東京のシンポジウムで、日銀の2015年度消費者物価上昇率予想は1.9%、民間の予想は1%以下、市場の期待インフレ率も1%程度であることをご紹介し、追加緩和が遅れる可能性について述べさせていただきました。予想が外れるのは民間の会社でもあることで仕方ないかもしれませんが、今後はより現実的な見通しを前提とし、タイムリーな政策を期待したいものです。 

とはいえ、結果的に消費増税が見送られ、日銀が追加緩和に踏み切るという方向性は歓迎すべきだと思います。願わくば、消費増税見送り判断が専門家間であれほど拮抗したものでなく、また日銀の追加緩和が賛成5反対4とギリギリの決定ではなく、即ち、それらの決定が近視眼的なものでなく、もっと大きな「そもそも」を考えて、のものであればさらに良かったと思います。 

 20141115日記

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最終更新日  2014.11.18 13:54:39
2014.10.20
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先週15日、ダウは一時16,000ドル割れ、S&P500指数が1820まで売り込まれる展開となりました。この要因について、市場では色々挙げられていますが、私は大部分が需給要因によるものと考えています。要するにここ2年以上、10%規模の調整が無かったとか、10月末はアメリカの投資信託の決算が集中していて損益通算の売りが出やすい等。私は普段「ヘッジファンドが~」で始まる記事ほどいい加減なものは無いと思っていますが、実際、知人のヘッジファンドでも11月末の解約が多目に出たようで、それに応じてポジションを減らさざるを得なかったと聞いています。

しかし幽霊と同じで、市場は見えないものを怖がる傾向があります。「需給要因」では納得せず、はっきりした下落要因がないと安心しないのです。それ故に今回も、実際には気にしなくて良いような様々な要因が挙げられています。そこで今号では、敢えてそれら要因を以下「8つの”E“」としてまとめ、それらが本当に相場の下落につながる本質的問題なのかどうか、私の考えをお示ししておきたいと思います。

8つの“E”

1. Ebola:エボラ出血熱
生物である人間にとって、命にかかわる情報は最も心理的影響が大きく、市場で言えば過剰反応に発展しやすい性質を持っています。伝染病は「目に見えない」ため尚更で、過去、炭疽菌 、SARS、鳥インフルエンザなどは多かれ少なかれ市場に影響を与えてきました。ただ空気感染しないエボラ出血熱の患者が医療先進国の病院で隔離され、ホワイトハウスが対策に乗り出している以上、過去の伝染病と同じく、既に「反応しすぎるリスク」の方が大きくなっているように見えます。

2. Earning:業績
現在、米企業7-9月期の決算発表が本格化しています。事前に予想がやや引下げられたのは確かですが、先週末までに決算を発表したS&P500指数採用企業のうち、71%が事前予想を上回っています。これは過去の決算発表シーズンと比べても全く遜色の無い割合であり、決算を株価下落要因の一つとするのは無理があります。

3. Europe:ヨーロッパ
ヨーロッパ経済の減速は既に様々な経済指標に表われています。確かに数年前までであればS&P500指数採用企業の売上全体に占めるヨーロッパの割合は10-15%ほどありました。しかし直近の2013年ではこの割合は6.8%に低下しています。恐らく市場は、ヨーロッパから受ける影響を実際よりも過大に評価していると思われます。

4. Economy:景気
ニュースでは、15日に発表された9月の小売売上高が株価急落の一つの要因とされました。しかしもともと変動のある指標である上に、前月比マイナスとなった大きな要因はガソリン価格の下落によるものです。車社会であるアメリカでは、これはむしろ今後、消費に大きな追い風となる可能性が高くなります。また先行指標を含め、他の経済指標も概ね堅調です。

5. Energy:エネルギー
以前テレビでも申し上げましたが、私は原油価格は中長期的に下落方向に向かうと考えています。ここ数年、OPEC加盟国の石油産出量が殆ど変わらない一方で、シェール革命の影響で、アメリカやカナダの産出量が急速に増加し、需給関係に構造的な変化が生じてきているからです。この影響を受けて最近、比較的損益分岐点の高い石油関連企業の株価下落が目立つのは確かですが、中長期的にはアメリカの消費者に及ぼす好影響の方がずっと大きい事を忘れてはなりません。

6. Election:(中間)選挙
アメリカでは来月初、中間選挙が実施されます。中間選挙については前号をご参照下さい。選挙というのは市場にとって不透明要因の一つですので、そういう意味では選挙前の10月は少しは影響を受けたのかもしれません。しかし2週間後にはこのマイナス要因は無くなり、その後はむしろ、中間選挙後特有の非常に強い相場が期待できることになります。

7. (Quantitative) Easing: 量的金融緩和の終了
量的金融緩和第一弾、第二弾の終了を前後して、いずれも株式相場が下落したことから、今回も第三弾の終了を前にして下落、という説もあります。しかし今回は第三弾の終了を前にしても年初からずっと10年物米国債利回りは低下しており、むしろ株式の割安が目立ってきています。さらに重要なことは、第一弾、第二弾とも、そもそも経済がそれほど良くなっていない時点での終了であった点で、今回とは異なります。また利上げはまだかなり先の話だと思いますが、歴史的に、株式は利上げ局面の方が上昇しやすいことを忘れてはなりません。

8. (Middle) East: 中東の地政学的リスク
8つの“E”の中で、この地政学的リスクだけが何とも予想し難く、分析が困難なものだと思います。しかし考えてみれば、特に今年は新興国に始まり、ウクライナ、イラク、パレスチナ、香港と、中小規模の地政学的リスクがあちこちで頻発していて、既に市場にはかなり織り込まれてきていると考えられます。株式に投資する限り、これは避けて通れないリスクであり、この要因については腹をくくるしかないでしょう。リターンはリスクと表裏一体の関係にあります。リスクを避けるためにリターンも諦めるか、それともリターンを得るためにこのリスクを取るか、これは皆さんの判断に委ねるしかありません。

(2014年10月19日記)
 
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最終更新日  2014.10.22 03:19:44
2014.10.08
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11月4日に実施される米中間選挙まであと1ヶ月を切りました。前号でお示しした通り、アメリカの株式相場は中長期的に見て割安な水準にありますが、中間選挙はその割安を修正する、即ちファンダメンタルズから見て株式相場が適正な水準に向かって上昇する、一つのきっかけになると考えています。

簡単に今回の中間選挙の注目点をお示ししておきます。現在上院は民主党53議席・共和党45議席・無所属2議席で、民主党が過半数を占めています。これに対して下院では共和党233議席・民主党199議席・空席3議席と共和党が過半数を占め、上下院でいわゆるネジレた状態となっています。2年に一度選挙が行われる下院では共和党が34議席リードの上、現時点で殆ど議席を守る可能性が高いと見られているため、下院での共和党過半数維持はほぼ確実とされています。

注目は6年に一度の再選を賭けた上院で、今回は共和党が過半数を奪回する可能性が高まってきています。理由は第一に、歴史的に政権を握っている政党は中間選挙では不利とされています。今回再選にかけられるのはオバマ大統領が勝利した選挙で同時に勝利した議員ですが、その一部は単にオバマ・バブルに便乗していた可能性が高いと見られるからです。第二に、今回再選の対象となる共和党議員が15人なのに対し、民主党は21人にも上り、そのうち7つの州は2年前の大統領選挙で共和党のロムニー候補を支持しています。第三に、オバマ政権が推進してきた医療保険制度改革、通称「オバマケア」に対する国民の不満は根強く、また2期目の課題としてあげた政策目標の多くが頓挫していることも民主党にとって逆風となっています。

このような状況を受けて、9月末時点でワシントンポスト紙が76%の確率、NYタイムズ紙が67%の確率で上院での共和党過半数を予想しています。オンラインのギャンブルサイトではこの確率が80%超えで取引されており、今回の中間選挙では下院に加え、上院も共和党が過半数を占める可能性がかなり高いと見られています。

さてこの通り、上院も下院も共和党が過半数を取った場合、一体何が変わるのでしょうか?結論から言えば、あまり変わりはありません。多くの政策の変更には上院での賛成票60票が必要となりますが、いくら共和党有利とはいえ、今回の中間選挙で15議席も確保するのはほぼ不可能だからです。さらにオバマ大統領による拒否権を覆すのには67票が必要となりますが、これは共和党が、今回再選にかけられる民主党の議席全てを獲得したとしても数字的に足りません。大統領が民主党の下では、上院・下院とも共和党が過半数を獲得したとしても思う通りの政策を実行できるわけでなく、基本的にはこれまで通りネジレと似た状態が続く、ということなのです。

しかし政治の「雰囲気」はやや変わったものになりそうです。というのは共和党としては、国民の支持が高いと思われるトピックについて上下院で法案を通し、オバマ大統領に「踏み絵」を迫る、という戦術が使えるようになるからです。当然の事ながらオバマ大統領には拒否権がありますが、あまり国民の支持が高い法案に対して拒否権を連発していると、2016年の大統領選挙に向けて民主党候補にとって不利に働くことになります。この結果、中間選挙の結果は表向きそれほど変化はないと見られるものの、国民の支持が高い、とりわけ景気にプラスと作用しそうな政策については実行される可能性が高まると見ることができます。特に今年問題となってきた「タックス・インバージョン」(07月30日 第321回 タックス・インバージョンが促す法人税減税 参照)について、その根本的な解決策である法人税減税などは、比較的受け入れられやすい政策の一つだと思います。

歴史的に中間選挙後、大統領就任3年目は大統領任期サイクルの中で最もパフォーマンスが良い年とされています。過去50年のS&P500指数の平均上昇率は大統領就任1年目が7.2%、2年目が0.8%、3年目が17.0%、4年目が7.2%と、3年目の上昇率の高さが際立っています。選挙というのは株式相場にとって不透明要因の一つですので、単に中間選挙という不透明要因が通過するという事実だけでも株式相場にとってプラス材料となります。さらに大統領選挙に向けて、景気に優しい政策が取られるという傾向も影響していると考えられます。

さらに中間選挙後、共和党が上下院の両方を支配したのは過去50年間で3回ありますが、その際の大統領就任3年目の上昇率は平均27%にも上っています。そして今回のケースも、その歴史が示す通りになる環境が整っているように見えます。というのは、年初からしばしば株価が調整しているのはバリュエーションの高い小型株が中心であり、大型株の割安は一貫して続いているからです。歴史的に大企業に有利と言われる共和党が上下院を掌握すれば、大型株の割安が見直されやすい展開になると考えています。

(2014年10月7日記)
 
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最終更新日  2014.10.10 04:57:07
2014.09.05
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8月下旬、ダウと並ぶアメリカの代表的株価指数であるS&P500指数が初めて2,000の大台に乗せました。金融危機のときには一時683まで下げていましたから、その後5年半で3倍近くになったことになります。5年半で3倍というとかなり大きな上昇率のように見えますが、年率にすると22%程度の上昇率で、それが5年半続いて3倍近くになったというだけです。

この間、皆さんは「アメリカ株は買いだ」と思いながらも、実際にアメリカ株に投資することを躊躇させるような多くのメディアを何度も目にされたことと思います。特に昨年春、S&P500指数は2000年のITバブル崩壊以来、初めて本格的に高値を更新しました。そしてそれ以降、断続的に最高値を更新する日が相次ぎ、より多くのメディアが「アメリカ株はバブルだ」などという報道を目にされているのではないかと思います。実際アメリカでもほぼ毎日「アメリカ株は今からXX%下落する」という記事や、テレビのコメンテーターを見ます。もちろん報道もコメントも自由だとは思いますが、「03月14日 第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」 で述べた通り、その結果アメリカ株への投資を見送ってしまっていたとしたら、とても残念なことです。

このような時代、そもそもアメリカの株式指数はどの辺が適正と言える水準なのか、そしてどの辺からがバブルと言える水準なのか、を皆さん自身で知っておく事は、そのような情報からの防衛手段として非常に重要だと思います。メディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇し、預金のまま置いていたとしても、資産は減らなかったかもしれませんが、本質を見抜いてアメリカ株に投資していた人と比べれば、「相対的に」資産は減少しているのです。リスクを取らなかったことによる損失は小さくない事を再認識し、同じ過ちを犯さぬよう、皆さん自身で割高・割安を判断できるようになっていただきたいということです。

アメリカ株の割高・割安を判断する方法の一つとして、通称FEDモデルと呼ばれるものを私の講演で何回かご紹介してきました。これはS&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りを比較する方法です。例えば現在、S&P500指数採用企業の今年の利益は120ドルと予想されていますが、S&P500指数は2,000ですので、益利回りは120÷2000=6%となります。これに対して10年物国債利回りは2.5%です。株式の益利回りが国債利回りを大きく上回っているので、株式は割安、ということができます。

ここで2つ注意点があります。まず国債と言うのは満期まで保有していれば元本は保証されますが、株式に元本保証はありません。一方で国債の利息は満期まで一定ですが、株式では、企業の利益は経済の成長と共に毎年増加していきます。例えばS&P指数採用企業の場合ですと、ここ5年ほどは年平均9%のペースで増加しています。そしてもし、株式の「元本は保証されない」というマイナス要因と、「利益は成長する」というプラス要因が相殺できるとしたら、S&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りは同じような水準に落ち着く、という仮定を置くことができます。これがFEDモデルの基本的な考え方です。

シンプルな考え方ですが、このモデルは歴史的にはかなり当てはまっています。要するに、短期的なブレはあるものの、長期的には概ね、S&P500指数の益利回りとアメリカの10年物国債利回りが同じような水準に収束する傾向がある、ということです。一つコメントするとすれば、2002年以降、S&P500指数の益利回りがアメリカの10年物国債利回りを上回る状態(株式が割安な状態)が続いています。これは2000年ITバブル崩壊にはじまり、同時多発テロや金融危機などを経験し投資家がより元本保証を重視するようになった結果、株式を敬遠する一方で、国債を選好するようになっているから、と考えることができます。その結果が、現在のS&P500指数益利回り6%に対して10年物国債利回りは2.5%ということです。

もちろん10年物国債利回りの2.5%という水準は、FRBによる度重なる量的金融緩和の結果であって、金融政策が通常の状態に戻った水準はもっと上と考えるのが妥当でしょう。ただ6月のFOMCで、理事会メンバーによる政策金利の長期的均衡水準は3.75%が中間値となっているので、長期的な10年物国債利回りの均衡水準も4%程度と推定することができます。この推定の下、FEDモデルにおけるS&P500指数はいくらになれば適正と言えるでしょうか?

答えは120÷4%=3,000です。現在S&P500指数は2,000ですが、50%上昇してやっと、歴史的に適正と言える水準に到達するということです。さらに120ドルは今年の利益ですが、経済の成長と共に利益は増加していきます。例えば来年2015年の予想利益は133ドルとなっていますから、来年の適正水準は133÷4%=3325と、時間が経つほどS&P500指数の適正水準は上昇していくのです。一体、S&P500指数がいつになれば3,000に到達するのか見当が付きませんが、到達した頃には適正水準はさらにもっと上になっているはずだということです。

これまでメディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇してきた人にとって悪いニュースは、上昇を逃したことによって「相対的に」資産が減少してしまったことです。そして良いニュースは、今からでも挽回できる可能性があるということ、そして今後はもうメディアの「バブル」報道を気にしなくてよくなる、ということです。

(2014年9月5日記)
 
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最終更新日  2014.09.10 00:11:19
2014.07.30
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アメリカの金融市場で今、最もホットな話題と言えばこの、タックス・インバージョン(Tax Inversion: 節税のための本社移転)でしょう。これは法人税のより低い国に本社を移すことによって節税を図る、というものです。アメリカの法人税率は日本と並び、世界で最も高いことで知られていますが、2000年以前から主に、タックスヘイブン(税金がゼロかゼロに近い国・地域)に本社機能を移す動きは散見されていました。しかし今年に入ってからは、特にヨーロッパに狙いを定めたタックス・インバージョン目的と見られる大型の買収が立て続けに発表されています。

現在、アメリカの法人税率は州税を含むと(州税がゼロの州もありますが)、40%近くになります。これに対して、イギリスは2008年に30%であった法人税率の段階的引き下げを実施しており、来年には20%になる予定です。アイルランドの法人税率は以前から12.5%と低いことで知られています。

特にアメリカの製薬大手ファイザーが今年4月に、イギリスの同業アストラゼネカに買収提案を提示したことで、一気に注目度が高まりました。この他にも半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ、ペースメーカー製造のメドトロニック、ドラッグストアのウォルグリーン、製薬のマイランなどのアメリカの会社が次々に、主にヨーロッパの会社を買収することによってタックス・インバージョンを実現しようとしています。そして次の標的はどこか、を探す動きも活発で、実際イギリスやアイルランドの特に医療関連銘柄が大幅な上昇率を見せています。

これに対してオバマ大統領は先週末のインタビューで、アメリカ企業のこのような動きは「非愛国的だ」と非難しました。ルー財務長官も同様の発言を繰り返しています。果たして問題の本質はどこにあるのでしょうか?

私は、現行の枠組みの中で個別企業がこのような行動を取るのは当然で、口先で止められるものではないと思います。むしろここ数年の法人税を巡る議論を見ていると、オバマ大統領の方に問題があるとしか思えません。というのは2年前の大統領再選を賭けた選挙で、法人税減税の28%への引き下げを公約していたのは、オバマ大統領自身であったからです。25%への引き下げを公約に掲げていたロムニー候補に対抗するため、というのもあったでしょう。しかし私が度々演説で聞いていたのは、「雇用を海外に移すような愚かな税制は改めなければならない」という主張でした。当時はまだまだ雇用情勢が厳しい時でしたら、当然のことながら、アメリカのビジネス界は、オバマ大統領が再選されれば法人税も引きさげらると見込んでいたと思います。

しかし実際に再選されてから起こったのは2012年末にかけての「財政の崖」や2013年10月のアメリカ国債デフォルト危機です。いずれも法人税減税を求める共和党に対し、オバマ大統領は既に何度も延長されてきた失業保険給付の、更なる延長などと抱き合わせでしか応じない姿勢を貫き、その度に財政協議が暗礁に乗り上げてきたのです。

法人税の引き下げは世界的な傾向です。アメリカ企業は、当然この流れに従ってアメリカでも法人税率が引き下げられると我慢強く公約の実現を待っていましたが、中間選挙が迫ってきて公約は果たされそうに無いので遂に今年、シビレを切らして一気にこのような動きに出てきたのです。そのような意味では「非愛国的だ」と言われても、アメリカ企業にとっては「何を今さら」という感じでしょう。アメリカ企業が非愛国的なのではなく、そもそもオバマ大統領の公約違反が原因なのです。企業は淡々とやるべきことをやっているだけということです。

オバマ大統領の支持率低下もあり、中間選挙では上院で共和党の有利が伝えられています。下院の共和党過半数は間違いないでしょうし、これら一連のタックス・インバージョンの動きがきっかけとなる形で、徐々にアメリカの法人税引き下げ議論が活発化していくでしょう。言うまでもなく、法人税率の引き下げは上場企業全ての資本コストを下げますから、株価の上昇要因となります。

さて法人税引き下げ議論は、日本でも活発になっています。日本の報道でいつも気になる点がありますので、最後に一つ指摘しておきたいと思います。よくあるのは、法人税率が最も高いのはアメリカで40%、次に日本、という図が示されることですが、これはかなり誤解を招く比較だということです。というのはアメリカの会社で法人税がかかるのは、Cコーポレーションという形態を取っている会社のみで、全体の2割に過ぎません(上場企業は殆どがCコーポレーションですが)。他の8割の会社においてはパートナーシップなど、二重課税を避けるため法人税の対象外であることが認められている形態です。ですので確かに法人税率だけを見ると一見アメリカが高いように見えますが、実質的な課税対象を考慮すると、やはり日本の法人税は世界一なのです。法人税率を引き下げて海外に移ろうとする企業を引き留めるだけでなく、海外から企業を誘致して国内の雇用を増やし、経済の活性化を図るか。又は世界一の法人税を維持するあまり、法人税を払う企業自体が日本から居なくなってしまうか。この簡単な二択問題は間違わないようにしていただきたいものです。

(2014年7月28日)






最終更新日  2014.07.31 01:59:26
2014.06.27
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昨年はバーナンキ前FRB議長が議会証言で量的緩和縮小の可能性に言及して以来、5月から9月にかけて10年物米国債利回りが1.6%台から3%まで急上昇する場面がありました。しかし今年に入って低下を始め、ここ数カ月は概ね2.6%前後での落ち着いた動きとなっています。またS&P500指数の1日の変化率が4月半ば以降、1%以下にとどまる日がこれまで47営業日続いています。これを反映する形でシカゴで取引されているS&P500変動率指数も金融危機前以来の低水準となっています。この低長期金利、低変動率は今後の株価動向について、何を示しているのでしょうか。

まず長期金利の低下について考えたいと思います。連銀は今年から量的金融緩和の縮小を開始し、このまま行けばこの秋にも量的緩和は終了する事になります。そして早ければ来年の今頃から利上げが実施されるかもしれません。そのような時になぜ、金利が上昇しないのか。アメリカの景気が再び落ち込む事を債券市場が察知しているのではないか、と言う心配性の人もいます。

しかしよく考えれば、そもそも昨年の長期金利3%までの上昇場面が異常であった事が分かります。第一に、今回はまだ、通常の金融引き締め局面と異なり、金融危機を受けたショックから抜け出すための緊急手段である量的金融緩和が解除に向かっているだけの段階です。実際に政策金利の引上げが始まるといっても1年以上は先の話で、その間、10年物米国債を売り持ちにする債券ディーラーのコストを考えると、同情せざるを得ません。第二に、先日FOMC(連邦公開市場委員会)後に公表されたメンバーの長期目標の中間値は0.25%引き下げられ、3.75%となりました。10年間の中で、少なくとも手前の1年間は0%で、時間をかけて金利が上昇してもせいぜい4%手前までとすると、平均を3%と考えるのは、現時点では比較的積極的に見えます。

第三に、今年に入ってアメリカ政府が発行する市場性債券の金額は1,790億ドルの増加にとどまっています。これは昨年の同じ時期に比べると約半分で、明らかに景気が回復し、アメリカの財政状況が改善している事によるものです。一方で連銀は量的緩和の縮小を始めたとはいえ、今年に入って1,650億ドルもの米国債を購入しています。要するに、アメリカ政府は国債を1,790億ドル分しか新規発行していないのに、その92%を連銀が購入している計算になり、市場の需給がひっ迫するのも当然です。こうした状況を考えると、長期金利の低下はアメリカの先行き景気を占っているというよりも、需給要因によるところが大きい事が分かります。

次に変動率指数の低下について考えたいと思います。心配性の人はこう言います。「危機の前は必ず変動率が低下している。変動率の低下は危機の前ぶれだ。」これはかなり誤解を招く考え方です。何故なら、通常の市場環境では変動率指数というのは10%~15%で推移するものであって、何らかの危機やショックがあった時に30%以上に上昇するものです。なので30%以上に上昇する前は10%~15%で推移しているのが当たり前で、これを危機の前ぶれと考えるのは本末転倒です。例えて言えば、しばらく地震が無い平和の状態を、地震の前ぶれ、と表現するようなものです。

この15年ほど、市場は心配材料に事欠かない時期が続いてきました。ハイテクバブル崩壊、同時多発テロ、イラク戦争、金融危機、米国債デフォルト不安等。確かに今年に入っても新興国通貨不安に始まり、ウクライナ問題、イラク問題など、不透明要因が全く無い状態ではありません。しかし私がこれまでアメリカに21年居て間違いなく言えるのは、それまでの15年ほどと比べると、市場の不透明要因としては取るに足らないものばかりだという事です。そもそも市場に不透明要因が全く無い時期というのは殆どありませんし、現在言われているような不透明要因は市場にとって十分吸収可能であり、それが反映されている結果が現在の低変動率と言えます。

前回、S&P500指数の1日の変化率が1%以内にとどまる状態がこれほど続いたのは1995年で、当時は95営業日続きました。そして当時、同時に起こっていたのが長期金利の安定です。1995年初に連銀が一連の金利引き上げを終了した後、アメリカの財政改善とも相俟って長期金利が低下、その後の株式相場の大幅な上昇につながっていったのです。今から思えば、低長期金利、低変動率は株式相場上昇に向けての土壌をならしていたという事になります。

私はいずれ長期金利は上昇すると見ていますが、実際に金利引き上げが始まるまではなかなか動かないでしょう。また金融危機であれほどリスク回避的になった投資家を株式相場に戻って来させるのに、低変動率は大きな役割を果たすでしょう。いずれも時間が経過すればするほど、ボディブローのように市場に効いてくるはずです。低長期金利、低変動率、本来いずれも株式市場にとって大きな好材料です。素直に受け止めた者が、普通に報われる展開になると考えるのが自然だと思います。

(2014年6月25日記)






最終更新日  2014.07.31 01:58:02
2014.05.28
カテゴリ:カテゴリ未分類

フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた「21世紀の資本論」の英語版が先月出版され、経済学者の間で大論争を巻き起こしています。先週はNYタイムズ紙のハードカバー・ノンフィクション部門でベストセラーに躍り出ました。アメリカでこれだけ話題になっている本なので、日本語版が出版される日もそれほど遠くないのではないかと思いますが、私も発売後すぐに読みましたので簡単に感想を述べておきたいと思います。

本の内容を簡単にご紹介しますと、 

  • 資本主義の基本的な第一の法則
資本所得÷所得=資本収益率×(資本÷所得)
例えば資本収益率が5%で、資本の所得に対する割合が600%とすると、資本所得÷所得(資本所得が所得全体に占める割合)は30%。
  • 18世紀以降の主にヨーロッパとアメリカのデータを集め、(資本÷所得)がヨーロッパでは1910年までは600~700%、1920~70年まで300%前後に低下した後、現在500~600%に上昇、アメリカは歴史的に比較的安定していて、400~500%から300%台に低下した後、現在400%台に。日本は80年代後半に700%まで上昇後、現在600%。
  • 資本主義の基本的な第二の法則
資本÷所得=貯蓄率÷経済成長率
例えば貯蓄率が12%で成長率が2%とすると、その国の(資本÷所得)は600%に収束していく、という意味。ちなみに1970年から2010年のアメリカの純貯蓄率は7.7%、日本は14.6%。
  • 世界の経済成長率は21世紀後半に1.5%に低下する一方、貯蓄率は10%前後で安定すると予想。この結果(資本÷所得)は700%近くに上昇するだろう。
  • 先進国の(資本所得÷所得)は1970年には15~25%だったのが、現在25~30%(これ以外は労働所得)
  • 1930年、アメリカの所得上位1%が占める割合は20%前後だったのが、1950~80年は10%以下に低下し、その後現在の18%に上昇。ただこれはアメリカ含むアングロサクソン系の国に見られる「スーパー経営者」の出現によるもの。ヨーロッパや日本では現在でも10%以下で安定している。また所得格差は富の格差に比べると大した事はない。
  • 1910年、上位1%が保有する富の割合はヨーロッパで63%、アメリカで45%、1970年にかけてそれぞれ20%、28%に低下した後、現在24%、34%。富の集中は進行中。
  • 富のある者は優秀な投資アドバイザーを付けられるのでさらに富が膨らむ。
  • 21世紀後半にかけて、資本収益率が4%台前半となる一方で、経済成長率が1.5%に低下する。この資本収益率>経済成長率という状態は長期間に渡って続く可能性が高く、その結果、富を持つ者と持たざる者の格差は広がっていく。
  • 世界は20世紀前半に見られた「世襲資本主義」に戻りつつある。
  • この傾向を止めるのは政府の介入によってしか実現しない。具体的には世界各国協調による毎年最大2%の富裕税の導入、及び累進課税の強化など。

 

2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は「今年、いやこの10年で最も重要な経済書籍」と評価しています。アメリカでは特に金融危機以降、しばしば格差問題が取り上げられる事があり、クルーグマン教授も折に触れてNYタイムズ紙で取り上げてきました。しかし2011年に起こった「ウォール街を占拠せよ」運動でも見られるように、アメリカでは格差問題がそれほど広がりを見せる事もありませんでした。その意味ではこの本は、少なくともアメリカ人に格差問題を考えさせる、という点では大きな成功を収めたと言って良いでしょう。

そしてその理由は上記の通り、18世紀から今まで、ヨーロッパとアメリカをはじめとする全世界のデータに基づいているという点にあると思います。実際、この点は多くの経済学者の高い評価を得ています(最近になってフィナンシャル・タイムズ紙等がデータの問題点を指摘していますが)。また格差問題を論じる際によく見られるのは「金持ち」と総称してしまう事ですが、この本ではまず所得の偏在について調べ、次に富の偏在について調べる、というステップを踏んでいます。さらに投資アドバイザーが富の増加に重要な役割を果たしている事をデータによって示しているのも、他の読み物にはあまり見られない点でした。

ただ本全体を通じて疑問に思う事が多いのも事実で、実際の所、アメリカでの反響も真っ二つと言って良いでしょう。例えばピケティ氏はデータの収集方法やその定義についてはかなり慎重に前置きをしているのに対して、そこから導かれる結論や主張はややデータを離れ、時に感情的と見られる部分も散見されます。またそもそも、なぜ格差が問題なのか、について「このまま格差が広がると革命が起こってしまう」等以外に、特に突っ込んだ問題点を列挙しているわけではありません。さらに現在、格差が拡大傾向にある中で、それが経済に与えてきたメリットもあるはずですが、それらのメリットが殆ど語られないまま格差だけが問題視される内容になっています。具体的には特に金融危機を通じて、リスクを取る人を優遇しなければアメリカ経済は立ち直れない状況にあったからリスクテイカーが優遇されたわけですが、その結果として格差が生まれている経緯については語られていません。

さらにピケティ氏が最後に提唱している、世界が協調した富裕税の導入や累進課税の強化などの解決策を見るにつけ、格差問題の解決は非常に難しく、実現したとしても遠い遠い先の話と考えざるを得ませんでした。そのような世界協調が実現するには、多くの国で財政状態がかなり改善している事が条件になりますが、現状を見るにつけ、そのような状態は少なくともこの先10年や20年で想定できるものではないからです。しかし今回、社会主義に近いフランスの経済学者の本が、資本主義の最先端、アメリカに一石を投じ、格差問題を再考する大きなきっかけとなった事は確かです。将来に向け、皆さんの投資方針を考える上でも参考になる本だと思いますので、是非ご一読をお薦めします。

(2014年5月26日記)







最終更新日  2014.05.28 23:27:58
2014.04.18
カテゴリ:カテゴリ未分類
この1年半ほどで、アメリカの株式相場は5回のマイナーな調整局面を経験しました(マイナーな調整は、概ね5~7%の下落となります)。1回目は2012年末にかけて、いわゆる「財政の崖」に直面した場面、2回目は2013年5月、当時のバーナンキFRB議長が議会証言で量的緩和の縮小に言及した後、3回目は実際に量的緩和縮小が開始されると市場が見ていた9月のFOMC前、そして4回目は議会で財政協議が難航し、米国債がデフォルトするかもしれない、と大騒ぎになった10月でした。

いずれの局面も、S&P500指数で見て5~7%下落した後、前の安値を下回らないまま上昇するという、典型的な上昇相場の形となっています。即ち、上記の材料をもって売るのは誤りだった、という事になります。上記4つの局面を大きく分類すれば、1回目と4回目は財政政策、2回目と3回目は金融政策が要因である事が分かります。要するに市場は、財政政策も金融政策も、引き締めになるのを必要以上に嫌がっていた、という事です。それでは何故、このような材料をもって売る事が誤りになってしまうのでしょうか。

ここで簡単に、ここ十数年のアメリカ経済を振り返る必要があります。ここ十数年は、アメリカ経済にとっては非常に厳しい期間でした。2000年のハイテクバブル崩壊に始まり、2001年9月には同時多発テロ、2002年にはエンロンやワールドコムに代表される不正会計問題が市場を覆い、2003年3月にはイラク戦争が始まりました。アメリカ経済はその後数年かけて回復したものの、2007年7月に金融危機が始まり、2008年9月のリーマンショックに至りました。中でも同時多発テロや金融危機は間違いなく「100年に1度」級の大ショックであり、それがこの10年ほどの間に2回も訪れるという、大変な時期だったのです。

このような状況をそのままにしておけばアメリカ経済は恐慌に陥り、人々の生活水準は大きく低下、場合によっては命を脅かされる事態になるかもしれません。当然の事ながらアメリカ政府は、これらのショックを乗り越えるための措置を打ち出しました。財政においては同時多発テロを受けて2001年と2003年、いわゆるブッシュ減税が施行されました。また金融危機のショックを乗り越えるために2009年2月には、いわゆるオバマ景気対策が打ち出されました。また現在FRBが実施している、いわゆる量的金融緩和策が、金融危機をきっかけに始まった事は言うまでもありません。

このように、この十数年の間に実施された財政政策や金融政策は、あくまでも「100年に1度」級の大ショックを乗り越えるための緊急措置であったのです。ですので当然の事ながら、ショックが和らいでくれば解除していかなければなりません。人間に例えるとこういう事です。2001年と2008年、危篤状態で救急病棟に運ばれたものの、次第に体が回復してきた。ICUから一般病棟に移され、薬の量も次第に減らしても大丈夫になってきた。このまま行けば退院もそれほど先の話ではない-。

アメリカ経済は着実に回復してきている。本来はまず、この事実を喜ばなければなりません。アメリカは金融危機以降、870万もの雇用を失いました。しかし2010年以降、着実に回復し、このまま行けば今年5月頃には金融危機以降に失われた雇用を全て取り戻す事になります。特に2011年以降の回復ペースは月平均18万人であり、過去のアメリカの雇用増加ペースと比べても、何の遜色も無い状況です。

ブッシュ減税はもともと2010年末までの時限立法でしたが、オバマ大統領の下で2012年末まで延長されていました。金融危機に対応する形で実施されたオバマ景気対策は前倒し型であったため、2012年で殆どの効果が無くなる内容でした。そして、これら大型の財政政策が同時に失効するタイミングで訪れたのが2012年末の「財政の崖」であり、解決が一部先延ばしになって訪れたのが2013年10月の米国債デフォルト騒ぎだったのです。景気が悪ければ延長された可能性もあったでしょうが、それは必要ない状況です。金融政策も同様です。2013年春時点では既に、金融危機で失われた雇用の8割近くを取り戻し、しかも毎月着実に雇用が伸びている時期でした。量的緩和が金融危機という大きなショックをきっかけに導入された以上、継続していく意義が徐々に乏しくなっていたのです。

しかし市場は、薬の量が減る事、即ち緊急措置としての財政政策や金融政策が解除されていく事ばかりに目が行ってしまっているのです。実際、皆さんもメディアで目にされるのは、そういうニュースが圧倒的に多いと思います。言うまでもなく、財政政策や金融政策が解除されつつあるのは景気が回復しているからです。財政政策や金融政策の解除ばかりに目が行って、景気が回復している、という本質を見誤っていると、それを反映する株式相場の上昇に付いていけない事になるでしょう。

(2014年4月15日記)






最終更新日  2014.04.22 07:42:13

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