2186866 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

堀古英司の「米国株式の魅力」

全145件 (145件中 31-40件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ... 15 >

カテゴリ未分類

2015.06.29
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
(この原稿は日本時間6月29日(月)午前5時現在の情報を元に執筆しています)

膠着状態が続いていたギリシャ問題は先週末、大きな展開を見せました。週末のEUとの会合を前にした26日金曜夜、ギリシャは突然、債権者からの提案を受け入れるかどうかの国民投票を実施することを発表。ゲーム理論的に言えば「囚人のジレンマ」状態に陥っていた両者ですが、ギリシャの出方が決まったことで、ほぼ自動的にEUの出方も決まることになり、EUは全会一致でギリシャへの救済措置を6月30日で終了させることを決定しました。私はここ数ヶ月間、ギリシャ情勢について聞かれることがあっても、あまりに政治色が強くコメントを控えてきたのですが、この決定で今後の、少なくとも中長期的な展開が見えてきたような気がします。

3年前になりますが、2012年「06月15日 第298回 ギリシャ選挙を前に」で記した通り、私は遅かれ早かれ、ギリシャのユーロ離脱は不可避だと考えていましたし、恐らく中長期的には市場参加者の多くもそう考えていたと思います。この3-4年の間、ギリシャには巨額の支援がなされ、その多くがギリシャの銀行を通じて欧州の銀行に還流することによって金融システム的にも準備が出来、3-4年前にギリシャがユーロ離脱、となるよりもかなり、市場の織り込み具合は進んできたと思います。しかし先週の市場(債券、変動率、スプレッド)の動きを見るにつけ、EUとギリシャの交渉に楽観的ムードが漂っていたことからすると、週明けの市場が荒れ模様となることは避けられそうにありません。感覚的には恐らく、あと1-2年先延ばしすることができればこの問題の殆どは織り込まれていたでしょうが、現在の市場にはまだ、その準備は出来ていなかったでしょう。ただ、もちろん今後の展開次第ではありますが、私は日本やアメリカのように当事者でない国については、短期的な影響を別にすれば、それほど悲観視する必要も無いと考えています。これで恐らく9月の米利上げは無くなったでしょうし、そもそもここ3-4年市場を悩ませてきたギリシャ問題とお別れできるという側面もあります。

今回「ギリシャはバカな事をやってしまった」と考える人が多いようです。もちろん短期的な影響としては、交渉がまとまる方が両者にとって良かったとは思いますが、長期的に見た場合、私はこの「ゲーム」は実はむしろギリシャに有利と考えています。というのは、前出「ギリシャ選挙を前に」で記した通り、ギリシャにはいずれにしろ(程度の差はあれ)抜本的な改革が必要でした。それならば、緊縮財政を強いられながら長年に渡って借金を返すためだけのような生活をするよりも、自国通貨に切り替えれば、ある程度柔軟に財政をコントロールさせていくことができます。自国通貨はインフレを伴い、導入当時に大きな痛みを伴うでしょうが、将来的に財政を健全化していけばインフレ率低下という形でご褒美が返ってくるので良い動機にもなります。為替レートも利用して、徐々に競争力を回復していく作戦は理にかなっているように思います。

一方でこの先、今回の決断が本当に正しかったかを検証されるのはEUではないでしょうか。「ギリシャ選挙を前に」で記した通り、ユーロというのは本来、言語や文化、経済状況の異なる国の集まりです。にもかかわらずこれまで16年間、ユーロという制度を維持できてきたのは、それはそれで凄いことだと思いますが、今後時間が経つにつれて歪みが大きくなってきて、延いてはこの先「第二のギリシャ」が市場に意識される場面が到来する可能性は否定できません。今回ギリシャの経済規模で、しかも3-4年かけて織り込んできた末でこの状況なので、IやSに飛び火した時にEUのコストは、ギリシャ支援とは比べ物にならないものとなるでしょう。もちろんギリシャ問題は粉飾決算に端を発する問題なので、EUとしては「ギリシャだけは特別」と強調したいところでしょう。しかし将来、市場で同様の問題が意識されるようになった時、結局「あの時ギリシャを救済しておいた方が安くついた」となる可能性は十分考えられます。

こう考えれば、EUとしては今からでも、ある程度譲歩する価値はあると思います。ツィプラス首相の、自己保身を狙った国民投票をみすみす受け入れるのも納得がいかないかもしれませんが、上述のようにギリシャが置かれた(やや有利な)立場を考えれば仕方ないのではないかと思います。EUの人たちは、そこまでのコストなど負担できない、と言うかもしれません。しかしその人たちはよく理解しなくてはなりません。統一通貨を作るということはそういうことなのですよ、そしてそれに賛成票を投じたのは自分達なのですよ、という事実を。

(2015年6月28日記)






最終更新日  2015.06.30 00:15:58


2015.06.01
カテゴリ:カテゴリ未分類
金融危機時、一時10%に上ったアメリカの失業率は昨年秋以降、2008年9月リーマンショック前の水準にまで低下しています。非伝統的金融政策-量的緩和-は金融危機を受けた緊急的措置であったため、当然のごとく昨年秋で終了。その後も雇用情勢は改善を続ける中、市場の関心はFRBの次の一手、即ち利上げの時期に集まっています。ただ、確かにFRBの動向は債券はもちろん、株式や為替市場に大きな影響を与えるのですが、今回の場合はやや市場の関心が行き過ぎで、要するに利上げを気にし過ぎの兆候が見られます。

市場が利上げを気にし過ぎる理由は第一に、今年利上げが実施されれば9年以上ぶりであり、過去の利上げ局面の記憶に乏しいことや、市場関係者の一部には「利上げ局面は初めて」という人もいて、何が起こるか分からないという不透明感があるからでしょう。第二に、利上げが実施される時期に関する不透明性です。例えば現在、ウォール街のエコノミストが予想する利上げ時期のコンセンサスは今年9月ですが、シカゴ・マーカンタイル取引所で取引されているフェデラルファンド金利先物市場の取引値(5/29時点)から計算すると、利上げの確率が初めて50%を超えるのは今年12月です。しかも来年3月でも80%で、市場は来年春になっても、利上げが実施されていることに確固たる自信を持っているわけではない、ということです。

一方で市場の関心が行き過ぎている理由は恐らく、今年1-3月期に悪天候、ドル高、原油安という、いずれも一時的要因がアメリカの景気を押し下げましたが(GDP改定値はマイナス0.7%)、その結果現在表れている反動高をそのまま受けてしまっているからでしょう。その証拠に、債券市場も年初来、それらがあたかも一時的要因でないような上下動を繰り返しています。このように現在、FRBの次の一手、即ち利上げをめぐって市場自体が揺れている状況ですので、雰囲気に惑わされず、本質を見極めることが非常に重要と考えています。

そこでまず株式に関して、過去の利上げ局面でどのようなパフォーマンスとなっていたかをお示ししましょう。現在は市場のコンセンサスによると、利上げ6カ月前に近いタイミングです。1990年以降、最初の利上げとなったのは1994年2月、1999年6月、2004年6月の3回ですが、各局面での利上げ6カ月前から利上げまでのS&P500指数の騰落率を見てみると、+2.8%から+11.4%までバラツキはあるものの、全てプラスになっています。半年でこの数字ですから、年換算すると無視できない上昇率になります。上記の通り、利上げに対する市場の警戒感は強いものの、そのような警戒感とは裏腹に、歴史的に利上げ前の株式相場は強いものなのです。ちなみに過去3回について利上げ後1年間の騰落率を見てみても、全てプラスになっています。

9年以上ぶりということで市場の関心は利上げのマイナス面ばかりに目が向かいがちですが、一方で利上げが実施されるということは景気が回復してきていることの証でもあり、特に利上げの早期の局面では株式が好景気によって受けるプラスの効果が、金利上昇によるマイナスの効果を上回るパターンが多いということを示しています。これは過去の局面で、特にハイテクや景気敏感セクターなどがいずれもS&P500指数を大幅に上回るパフォーマンスを示す一方、公益など金利敏感セクターのパフォーマンスが劣っていることからも裏付けられます。

一方で少し気になるのが為替市場の動きです。第326回 「2015年米国経済・株式相場の見通し」(1)でもお示しした通り、今年のドル円の目標値は127~128円との見方に変わりはありません。また財政問題が足かせとなって長期間にわたって金利を引き上げられない日本とアメリカの金利差は拡大する運命にあり、中長期的にドル高・円安という見方にも変わりはありません。しかし短期的に見てみますと、足元の日米実質金利差は0.6%程度しかなく、その割には直近の円安は進行し過ぎのように見えます。

実は昨年、ちょうど逆のことが起こりました。私は日米実質金利差から、昨年末のドル円レートを120円と予測していたのですが、昨年の今頃はずっと102円近辺での取引が続いていてずっと「おかしいな」と思っていたのを覚えています(結果的に日米実質金利差を反映する形でその通り年末120円になりましたが)。ただ昨年末以降、日米実質金利差は急速に縮小していて、現在ドル円は110円以下でもおかしくない状況になっています。分かりやすく申し上げれば、「日米実質金利差は0.6%程度しかない中で、昨年102円でドルを買って20%も利益が出る人が市場にたくさん居る状況」「地に足ついた上昇ではなく、それより高く買ってくれる人が居るから買っている状況」ということです。

もちろん今後日米実質金利差が拡大していって、この乖離は解消されるかもしれません。一方で短期的には、為替市場の方にも「利上げを気にし過ぎるリスク」が内包されつつあることを忘れてはなりません。






最終更新日  2015.06.02 02:43:42
2015.04.15
カテゴリ:カテゴリ未分類
先週、日経平均株価は一時、およそ15年ぶりに2万円台の大台を回復しました。私は1月15日にテレビ東京に出演させていただいた際、日経平均株価は今年21,000円を目指すとの予想をお示ししましたが、今もその見方には変わりはありません。しかし同時に、長期的な日本の株価となると、やはり人口が減少していく中ではどうしても上昇余地は限られてしまうとの考えが拭えません。

実際、この10年間でアメリカのS&P500指数採用企業の利益が71%伸びているのに対し、日経平均採用企業は22%しか伸びていません。そもそも経済成長において最も重要な要素の一つである人口が減少していく中では、日本の企業利益の成長についても多くは望めません。株式の価値のほとんどは成長の価値ですから、成長が望めなければ株価が上昇するはずもないのです。このような中でも日経平均株価が2万円の大台を回復できたのは、やはり政府や日銀の役割によるところが大きく、今のところ官製相場の色彩が濃いと考えざるを得ません。

しかし今後、人口が減少していく中でも株価上昇が見込めるとすれば、それは独自に成長分野を見出して成長していく企業、人口が増加している海外の市場を開拓していく企業、そしてROE(Return on Equity:株主資本利益率)を高めていく企業だと思います。ちなみに2014年末時点でアメリカのS&P500指数採用企業の平均ROEは14.4%ですが、日経平均採用企業の平均ROEは8.7%に過ぎません。歴史的にも日経平均採用企業のROEはS&P500指数採用企業の半分近い水準です。

ROEというのは株主資本に対する利益の割合なので、一般にはどうしても「利益を上げるべき」というイメージが先走ってしまい、そのために問題の本質がボヤけてしまう傾向があるように感じます。しかし利益を上げるべきというのは、そもそも企業の目的ですので、そんなことを繰り返し強調することに意味はありません。私が今強調したいのは、「ROEを上げるよりEORを下げよ」ということなのです。

EORはEquity on Return(利益に対する株主資本の割合)の略で、ROEの逆数です。逆数にしただけで何の意味があるのかというと、株主資本が分子に来る事によってより、「利益が一定の中でも株主資本を減らす事が重要」という、日本企業の本質的な問題が分かりやすくなるからです。上述の通り、利益を増やすのは当然の如く日々企業が努力していることなので、今更繰り返す必要もありません。重要でかつ比較的難しくないのは、株主資本を減らす、という作業なのです。

株主資本とは、株主から払い込んで投資してもらった資金と、これまで生まれてきた利益のうち企業に留保されている資金の合計です。これら資金は現金である必要はありません。有価証券や不動産等をあわせた全ての資産から、負債を差し引いた部分です。即ち企業が清算されて全ての資産を売却し、負債を返済した後に株主に残る金額の合計です。利益が一定であれば、この株主資本が大きければ大きいほど、EORが大きくなってしまいます。EORを小さくしようと思えば、この株主資本を小さくすれば良いのです。具体的には、企業が通常の業務にとって優先度の低い資産は売却し、その資金を株主に配当や自社株買いの形で返してしまえば良いのです。

例えばある企業の資産が1.5億円(うち遊休資産が0.5億円)、負債が0.5億円、利益が500万円、よってEORが20倍(ROEが5%)だったとします。利益を上げることによってEORを下げる事は難しいかもしれませんが、遊休資産を0.5億円分売却して株主に返してしまえば、利益が一定でも、EORを20倍→10倍に下げることができます。通常の業務に必要以外の現金は、現在のようなゼロ金利の下では遊休資産と言えるでしょうし、5%以下のリターンしか生んでいない資産は売却して株主に返せばEORを下げることができます。

個々の企業によって事情は異なると思いますが、全体として見れば日本の企業は株主資本を溜め込み過ぎなのです。株主資本は株主のものですから、もしアメリカでこのような状態になれば、必ず株主から増配や自社株買い等の方法で株主資本を還元するよう、株主から圧力がかかります。しかし日本では相対的にそのような圧力がかかりにくい結果、過剰な資本が株式会社に残り、眠ってしまっているのです。

このように過剰な資本が会社に残ってしまっているというのは、日本経済全体にとって非常にもったいない状況です。この資本が成長産業等で有効利用されれば、延いては日本経済の成長につながるはずだからです。日本でよく政治家を中心に、これを設備投資や給与引き上げに回せとの呼びかけがありますが、それらは的が外れてしまっています。もともと経営計画に設備投資をする予定の無い会社が、無駄な設備投資を実行するとは思えませんし、給与というのは限界生産性によって決定されるものであって、株主資本の多寡によって決定されるものではないからです。

日本では8年ほど前に「物言う投資家」が圧力を高め、日経平均株価が2万円に近付いた時期がありました。しかしそのような投資家も、日本独特の株主持ち合いや司法判断に愛想を尽かし、日本を離れていったのは記憶に新しいところです。今回の日経平均株価2万円回復、10年後、20年後にまた同じニュースを聞くことが無いよう、官製相場と言われないよう、今回の上昇を確固たるものにしていくためにも、日本企業には全体としてEORを下げる努力が急務だと考えています。

(2015年4月12日記)






最終更新日  2015.04.15 06:23:29
2015.02.23
カテゴリ:カテゴリ未分類
これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

2000年のITバブル崩壊以降、アメリカ株式の株価収益倍率は概ねコンスタントに縮小してきました。S&P500指数の株価収益倍率は1999年の30倍を最高値として縮小に転じ、2011年には12倍を付けるにいたりました。そして2012年以降、株価収益倍率は拡大に転じ、2014年末には18倍近くにまで拡大しています。言うまでもなく、株価収益倍率は投資家の期待を示すものです。投資家の期待が高ければ高いほど株価収益倍率は拡大しますが、低ければ縮小します。それでは何故、2000年から2011年までの間、株価収益倍率は縮小してきたのでしょうか。

2000年から十数年間はアメリカ経済にとって大きな試練の時期でした。ITバブル崩壊に始まり、同時多発テロや金融危機といった「100年に一度」級の危機が2つも起こったほか、不正会計問題、イラク戦争、金融危機、米国債デフォルト危機等々、懸念材料という点では枚挙にいとまがない時期でした。自ずから投資家としても株式に期待を膨らませられるような状況ではなく、それが株価収益倍率の縮小という形で市場に表れてきたのです。

しかし2012年を境に、私はアメリカ経済はこの辛かった十数年と決別したと考えています。アメリカは上記のような試練に見舞われる度に経済をサポートするため財政政策を発動してきましたが、2012年末に問題となったいわゆる「財政の崖」や2013年の米国債デフォルト危機は、いわばそのような試練の総決算だったということです。そして案の定、2013年春にアメリカ株式相場はそれまで長く抜けられなかった高値をしっかり越え、現在新たな大きな上昇局面に入っている、投資家の期待が回復するに伴って株価収益倍率も拡大を始めた、という段階だと考えています。

過去の、8%を超えるような超高金利時代を除けば、S&P500指数の歴史的な株価収益倍率は平均20倍前後です。しかも現在、着実な株価収益倍率拡大局面にあることを考えると、今年についても一桁台後半の株価収益倍率拡大を見込むのは自然だと思います。また景気が着実に回復局面にあることから、企業の利益成長率についても、一桁台後半が見込めると考えています。これら一桁台後半の利益成長率と株価収益倍率拡大をあわせて、今年は16%程度、S&P500 指数で見て2,400程度までの株価上昇を予想しています。

さらに足元でも、先行き株価に対して非常に強気のシグナルが出ています。アメリカ株式相場は2014年10月及び12月に下値をトライしましたが、いずれも跳ね返されています。1月に入ってもS&P500指数が2,000を下回るのはごく数日の話です。要するに、相場は下値に行くのを嫌がっているのです。市場では欧州債務危機の再燃、エネルギー価格の下落、企業業績に対する懸念、量的緩和の終了等、様々な懸念材料が挙げられていますが、「第324回 市場が恐れる8つの“E”」で申し上げた通り、いずれも本質的な相場の下げ要因ではないので、下がらないのは当たり前なのです。そして当然ではありますが、過去を溯って見てみますと、このように市場が数カ月にわたって連続して下値を嫌がった後には、かなり高い確率でその後大きな上昇相場が訪れているのです。このような理由から、私は今年もアメリカ株式はとても魅力的な運用対象だと考えています。

このような状況にもかかわらず、私が特に近年気になっているのは、皆さんにこうした情報がしっかり伝わっているかどうか、ということなのです。というのはむしろここ数年、日本の皆さんには、アメリカ経済に対してネガティブな情報はたくさん伝わるものの、ポジティブな情報がなかなか伝わっていないと感じることがとても多いからです。私はしばしば「あの人はアメリカ株のファンドマネジャーだから強気なことを言っているのだ」と誤解されることがあります。しかし率直に申し上げて、私は買いも空売りも行うヘッジファンドのマネジャーですので、自分の考えを曲げてまでアメリカ株を強気に言うメリットなど何もありません。単に我々の分析結果を日本の皆さんにシェアし、役立てていただきたいだけです。

一方で特にここ数年顕著なのは、メディア間の競争の激化です。「第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」で申し上げた通り、今やメディア間の視聴者や購読者、利用者、クリック数を奪う競争は熾烈を極めており、人間の心理を利用してネガティブな情報を優先して伝えないと、視聴率もクリック数も稼げなくなっていているのです。身近な例で申し上げれば、アメリカで何らかの危機(最近では米国債デフォルト危機)が起こったり、株価が大きく下落したりすると、私はメディア関係の方から沢山インタビューや出演依頼をいただきます。一方でアメリカの株価が最高値を更新しても、そのようなことは全くありません。長年このようなパターンを見ていると、皆さんのもとには、アメリカ経済に対して悲観的な、アメリカ株式投資を躊躇させるような情報ばかりが伝わってしまっているのではないかと心配になってしまいます。

このような状況下では、皆さんはタダ、又はタダ同然の情報をご覧になる場合、それらの多くは広告収入に頼ったビジネスから来ているので、利用者やクリック数を増やすためにネガティブな情報が多くなっているという傾向を予め認識しておく必要があるということです。そうでないと、特にここ数年は顕著ですが「アメリカ株に投資しようと思ったのに、あの記事・番組を見て思いとどまってしまった」という勿体ないことになってしまいます。その間のアメリカ株の値上がり益は「リスクを取らないリスク」として皆さんが負担することになったわけですが、当然のことながら、メディアはそのような機会損失を弁償などしてくれません。

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.02.26 07:03:06
2015.01.31
カテゴリ:カテゴリ未分類
これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

ここ10年近く、アメリカ株に投資しようと思っても、円高によって株価上昇による利益が相殺されるのでなかなか踏み切れない、という方が多かったと思います。確かに日本に居られる皆さんにとって、為替はアメリカ株投資を考えるにあたって重要な要素の一つですので、まず為替の見通しからお示ししたいと思います。私が2013年末にテレビ東京で示した2014年末のドル円、ダウ、日経平均予想値は、それぞれ120円、2万ドル、2万円でした。あいにくダウ、日経平均は届きませんでしたが、ドル円はピッタリ(2013年末105円に対し2014年末120円)予想値に一致しました。つい先日、機内で読んだ週刊誌で、市場関係者の2014年初の為替予想がいかにいい加減で、そもそも相場の予想など出来るわけが無いものだ、との記事があったので、敢えて昨年の予想を引っ張りだしてきた次第です。

近年のドル円相場は日米実質金利差が大きな決定要因となっています。2014年前半、ドル円はずっと101~103円近辺の推移でしたが、日米実質金利差によると2013年末時点で適正水準は110円近辺と示していました。為替相場というのは時に行き過ぎるものであり、過去を照らし合わせても適正水準から10円程度の乖離はしばしば観測されます。日米の景気格差は明らかであったので、適正水準から10円円安方向に乖離してもおかしくない、と考え予想したのが120円でした。

さて現時点では日米実質金利差から算出される適正水準は113円となっています。引き続き日米の景気格差は明らかであるものの、世界的に長期金利が低下傾向にあって、先進7カ国の中で10年物国債利回りはアメリカが最も高いこと、原油価格が急落していてディスインフレ傾向にあることを考えると、今年は日米実質金利差の拡大にも限界があると考えざるを得ません。この結果昨年ほどの円安は考え難く、せいぜい127~128円程度までの円安で、130円に届くのは難しいだろうという予想をしています。一方で適正水準が113円で、引き続き日米景気格差が明らかである以上、110円を大きく割るような円高は考え難く、もしあったとしてもそれはドル買い・円売りの格好のチャンスと見るべきと個人的には考えています。

いずれにしろ当コラム(第291回 2012年米国経済・株式相場の見通し(1)等)でも再三申し上げてきた通り、2007年7月に始まった円高は2012年で終了しており、その間に経験したような円高を恐れてアメリカ株投資になかなか踏み切れない、というのは勿体無いことです。今年に関しては昨年ほど為替で利益が上がることは無いかもしれませんが、財政状況が厳しく長期間にわたって金融政策に頼らざるを得ない日本と、金融危機と決別し新たな成長局面に入ったアメリカとの景気格差は明らかであり、長期的にドル円がドル高・円安方向にあることに変わりはないでしょう。

一方で、今年は特にアメリカ株の上昇が期待できる年になると見ています。アメリカの代表的株価指数であるS&P500のバリュエーションを見てみますと、2015年予想ベースの益利回り(株価収益倍率の逆数)が6%を超えてきています。一方アメリカの10年物国債利回りは1.8%を割ってきていますから、その差は4.2%に広がっています。もちろん株式には国債のような元本・利金保証はありませんが、代わりに国債にはない、利益(利金)の成長があります。長期的に見ると、この元本保証と利益成長の価値は概ね相殺される傾向があります。そのような中で、S&P500指数の益利回りと10年物国債利回りの差が4%以上というのは、これまでも無かったことではありません(過去1回、5%に拡大したことはあります)が、既に歴史的にもかなり拡大している状態、と見ることができます。

またS&P500指数の2015年予想ベース配当利回りは2%と、10年物国債利回りよりも高くなっています。利金の成長が無い国債と異なり、利益や配当の成長が期待できる株式の配当利回りが国債利回りを上回るというのは、かなり珍しい(株式が割安な)状態です。S&P500指数の配当利回りが10年物国債利回りを上回るのは金融危機時と2012年にのみあった現象であり、いずれのケースも、その後株式相場は大幅に上昇することによってこの珍しい状態は解消されているのです。

もっとも、去年まで続いてきた積極的な量的金融緩和の影響で、国債利回りが適正水準よりも人工的に低く抑えられているだけ、という見方もできます。一方で直近のFOMC(連邦公開市場委員会)でメンバーが示している長期的なFF金利の適正水準というのは3.75%です。とすれば量的金融緩和の影響が徐々に消え、10年物国債利回りが上昇していったとしても、長期的な適正水準は4%以下に落ち着く、というのが自然な見方でしょう。さらに原油価格下落を受けた世界的なディスインフレ傾向、世界的な長期金利低下傾向も勘案すれば、実際には、10年物国債利回りは4%よりも遥かに下の水準で推移する可能性の方が高いと思います。

(つづく)

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.01.31 05:55:00
カテゴリ:カテゴリ未分類
これは去る1月18日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2015で講演させていただいた内容を要約したものです。

ここ10年近く、アメリカ株に投資しようと思っても、円高によって株価上昇による利益が相殺されるのでなかなか踏み切れない、という方が多かったと思います。確かに日本に居られる皆さんにとって、為替はアメリカ株投資を考えるにあたって重要な要素の一つですので、まず為替の見通しからお示ししたいと思います。私が2013年末にテレビ東京で示した2014年末のドル円、ダウ、日経平均予想値は、それぞれ120円、2万ドル、2万円でした。あいにくダウ、日経平均は届きませんでしたが、ドル円はピッタリ(2013年末105円に対し2014年末120円)予想値に一致しました。つい先日、機内で読んだ週刊誌で、市場関係者の2014年初の為替予想がいかにいい加減で、そもそも相場の予想など出来るわけが無いものだ、との記事があったので、敢えて昨年の予想を引っ張りだしてきた次第です。

近年のドル円相場は日米実質金利差が大きな決定要因となっています。2014年前半、ドル円はずっと101~103円近辺の推移でしたが、日米実質金利差によると2013年末時点で適正水準は110円近辺と示していました。為替相場というのは時に行き過ぎるものであり、過去を照らし合わせても適正水準から10円程度の乖離はしばしば観測されます。日米の景気格差は明らかであったので、適正水準から10円円安方向に乖離してもおかしくない、と考え予想したのが120円でした。

さて現時点では日米実質金利差から算出される適正水準は113円となっています。引き続き日米の景気格差は明らかであるものの、世界的に長期金利が低下傾向にあって、先進7カ国の中で10年物国債利回りはアメリカが最も高いこと、原油価格が急落していてディスインフレ傾向にあることを考えると、今年は日米実質金利差の拡大にも限界があると考えざるを得ません。この結果昨年ほどの円安は考え難く、せいぜい127~128円程度までの円安で、130円に届くのは難しいだろうという予想をしています。一方で適正水準が113円で、引き続き日米景気格差が明らかである以上、110円を大きく割るような円高は考え難く、もしあったとしてもそれはドル買い・円売りの格好のチャンスと見るべきと個人的には考えています。

いずれにしろ当コラム(第291回 2012年米国経済・株式相場の見通し(1)等)でも再三申し上げてきた通り、2007年7月に始まった円高は2012年で終了しており、その間に経験したような円高を恐れてアメリカ株投資になかなか踏み切れない、というのは勿体無いことです。今年に関しては昨年ほど為替で利益が上がることは無いかもしれませんが、財政状況が厳しく長期間にわたって金融政策に頼らざるを得ない日本と、金融危機と決別し新たな成長局面に入ったアメリカとの景気格差は明らかであり、長期的にドル円がドル高・円安方向にあることに変わりはないでしょう。

一方で、今年は特にアメリカ株の上昇が期待できる年になると見ています。アメリカの代表的株価指数であるS&P500のバリュエーションを見てみますと、2015年予想ベースの益利回り(株価収益倍率の逆数)が6%を超えてきています。一方アメリカの10年物国債利回りは1.8%を割ってきていますから、その差は4.2%に広がっています。もちろん株式には国債のような元本・利金保証はありませんが、代わりに国債にはない、利益(利金)の成長があります。長期的に見ると、この元本保証と利益成長の価値は概ね相殺される傾向があります。そのような中で、S&P500指数の益利回りと10年物国債利回りの差が4%以上というのは、これまでも無かったことではありません(過去1回、5%に拡大したことはあります)が、既に歴史的にもかなり拡大している状態、と見ることができます。

またS&P500指数の2015年予想ベース配当利回りは2%と、10年物国債利回りよりも高くなっています。利金の成長が無い国債と異なり、利益や配当の成長が期待できる株式の配当利回りが国債利回りを上回るというのは、かなり珍しい(株式が割安な)状態です。S&P500指数の配当利回りが10年物国債利回りを上回るのは金融危機時と2012年にのみあった現象であり、いずれのケースも、その後株式相場は大幅に上昇することによってこの珍しい状態は解消されているのです。

もっとも、去年まで続いてきた積極的な量的金融緩和の影響で、国債利回りが適正水準よりも人工的に低く抑えられているだけ、という見方もできます。一方で直近のFOMC(連邦公開市場委員会)でメンバーが示している長期的なFF金利の適正水準というのは3.75%です。とすれば量的金融緩和の影響が徐々に消え、10年物国債利回りが上昇していったとしても、長期的な適正水準は4%以下に落ち着く、というのが自然な見方でしょう。さらに原油価格下落を受けた世界的なディスインフレ傾向、世界的な長期金利低下傾向も勘案すれば、実際には、10年物国債利回りは4%よりも遥かに下の水準で推移する可能性の方が高いと思います。

(つづく)

(2015年1月18日横浜にて)






最終更新日  2015.01.31 05:51:40
2014.11.15
カテゴリ:カテゴリ未分類

日本ではここに来てようやく、消費増税が見送られ、日銀が追加緩和に踏み切るという、正しい方向に経済政策の舵が切られようとしています。日本の経済政策決定において常々感じていることなのですが、我々のように金融・ファイナンスの世界に居る人間からすると当然と思われることでも、経済の専門家である経済学者やエコノミストの一部の方にはそう映っていないことが多く、それ故に賛成と反対が拮抗し、最悪の場合には正反対の政策が取られてしまうケースが日本では多々あります。 

そしてそれは多くの場合、経済を近視眼的に見てしまい、「そもそも」という視点が失われていることから来ることによるものだと考えています。例えばそもそも、経済を成長させるにおいて必要な要素は何でしょうか?最も重要な要素の一つは、人間が心理的に、昨日よりも今日が、今日よりも明日が、明日よりも明後日の方が良くなっていると思えることでしょう。将来の方が良くなっていると思えるからこそ、人々は消費をし、投資をし、会社は借り入れをし、設備投資をするのです。経済は人間が動かすものであり、この前提が崩れれば、経済など成長するわけがありません。国の財政は経済が成長することを前提に組まれていますから、成長がなければ財政が改善するはずもありません。 

日本の名目GDP(国内総生産)はこの20年間、ほとんど変わっていません。1994年に495兆円だった日本の名目GDPは、2013年に481兆円と、むしろ減少しています。理由は数え切れられないほどあるのでここでは省略しますが、大雑把に申し上げるとこの20年間、経済が成長しそうになると、不思議と必ず、それを抑え付けようとする力が現れてくるのです。それは消費税増税など財政引き締めの形を取ったり、実質的に金融引き締めの形を取ったり、時によってその姿は異なります。80年代バブルの教訓なのでしょうか?まるで景気が良くなることが悪いことであるかのように抑え付ける力が現れてくるのです。 

結果この20年間、アメリカのGDP2.5倍になる中、日本は全く成長しない国になってしまいました。このような状況の下で、人々の心理はどうなるでしょうか?消費や投資を増やしたり、借り入れや設備投資に踏み切ったりしたいと思うでしょうか?むしろ、消費や投資、借り入れや設備投資をしても報われないことに慣れてしまい、それが当たり前の国になってしまうのではないでしょうか?そして経済が成長する国で生活したことがない学生が社会に出たら、そのような行動になってしまうのは当たり前ではないでしょうか? 

私は日本にとって今最も重要なこと、それはまず人々が自信を取り戻し、昨日よりも今日が、今日よりも明日が、明日よりも明後日の方が良くなっていると思えることだと思います。過去の辛かった20年と決別し、むしろそれが異常な20年だったと思えることです。その目的を達成するためであれば、景気が少々行き過ぎようとも、少々物価目標を超えようとも、大きな問題ではないと思います。目先の7-9月期GDPよりも、物価目標の達成よりも、ずっとずっと重要な課題だと考えています。 

20110418日 第281回 復興増税は人災」で記した通り、消費税増税の話が始まったきっかけは東日本大震災でした。私はその前号20110316日 第280回 財政・金融政策総動員を!がんばれ日本」で消費税減税を提言していただけに、「ああ、また日本は逆をやってしまうんだ」と驚きました。そして後日、当時民主党のブレーンを務めていた経済学者がこう言っていたのを聞いて二度驚きました。「いずれ震災復興需要が起こる。それが消費税を徴収するチャンスだ。」私は「あ~あ、また経済成長を抑え付ける力が現れてきた」と感じました。 

日銀の追加緩和についても同じです。メディアが「異次元」とか「バズーカ」とか報道するので、多くの方はあたかも2013年春以降の日銀の量的緩和が十分という印象を持たれていたのではないでしょうか。しかし、私の見立ては全く違います。以下は2013年の私のツイートです。

@horikocapital  ·  201344日 堀古:日銀の緩和策、ようやく小出しが終わって市場の期待を上回った事は大きな前進だ。しかし実数を比較すると、アメリカが100兆円に対して日本は50兆円。日本の経済規模は3分の1でもマネーストックは2.5倍。中長期的には恐らくまだ足りないくらいだろう。

@horikocapital  ·  201387日 堀古:繰り返しになるが、日銀の緩和量は足りない。例えばアメリカの年間緩和量のM1に対する比率は40%、日本は12%、期待インフレ率はアメリカ2%、日本1.2%。 

さらに、直近の追加緩和は予想外、市場の期待を上回った、との声が多いのにも驚いています。というのは、市場取引から算出される日本の期待インフレ率はこの10月、0.8%近くにまで急落しており、むしろ私は「何故日銀の追加緩和はこんなの遅いのだろう」と思っていたからです。ちなみに今年の1月、私はテレビ東京のシンポジウムで、日銀の2015年度消費者物価上昇率予想は1.9%、民間の予想は1%以下、市場の期待インフレ率も1%程度であることをご紹介し、追加緩和が遅れる可能性について述べさせていただきました。予想が外れるのは民間の会社でもあることで仕方ないかもしれませんが、今後はより現実的な見通しを前提とし、タイムリーな政策を期待したいものです。 

とはいえ、結果的に消費増税が見送られ、日銀が追加緩和に踏み切るという方向性は歓迎すべきだと思います。願わくば、消費増税見送り判断が専門家間であれほど拮抗したものでなく、また日銀の追加緩和が賛成5反対4とギリギリの決定ではなく、即ち、それらの決定が近視眼的なものでなく、もっと大きな「そもそも」を考えて、のものであればさらに良かったと思います。 

 20141115日記

 【新刊のお知らせ】

堀古英司氏の著書、「リスクを取らないリスク」(クロスメディア・パブリッシング)が発売になりました。
81f6qgctrhl (2).jpg






最終更新日  2014.11.18 13:54:39
2014.10.20
カテゴリ:カテゴリ未分類
先週15日、ダウは一時16,000ドル割れ、S&P500指数が1820まで売り込まれる展開となりました。この要因について、市場では色々挙げられていますが、私は大部分が需給要因によるものと考えています。要するにここ2年以上、10%規模の調整が無かったとか、10月末はアメリカの投資信託の決算が集中していて損益通算の売りが出やすい等。私は普段「ヘッジファンドが~」で始まる記事ほどいい加減なものは無いと思っていますが、実際、知人のヘッジファンドでも11月末の解約が多目に出たようで、それに応じてポジションを減らさざるを得なかったと聞いています。

しかし幽霊と同じで、市場は見えないものを怖がる傾向があります。「需給要因」では納得せず、はっきりした下落要因がないと安心しないのです。それ故に今回も、実際には気にしなくて良いような様々な要因が挙げられています。そこで今号では、敢えてそれら要因を以下「8つの”E“」としてまとめ、それらが本当に相場の下落につながる本質的問題なのかどうか、私の考えをお示ししておきたいと思います。

8つの“E”

1. Ebola:エボラ出血熱
生物である人間にとって、命にかかわる情報は最も心理的影響が大きく、市場で言えば過剰反応に発展しやすい性質を持っています。伝染病は「目に見えない」ため尚更で、過去、炭疽菌 、SARS、鳥インフルエンザなどは多かれ少なかれ市場に影響を与えてきました。ただ空気感染しないエボラ出血熱の患者が医療先進国の病院で隔離され、ホワイトハウスが対策に乗り出している以上、過去の伝染病と同じく、既に「反応しすぎるリスク」の方が大きくなっているように見えます。

2. Earning:業績
現在、米企業7-9月期の決算発表が本格化しています。事前に予想がやや引下げられたのは確かですが、先週末までに決算を発表したS&P500指数採用企業のうち、71%が事前予想を上回っています。これは過去の決算発表シーズンと比べても全く遜色の無い割合であり、決算を株価下落要因の一つとするのは無理があります。

3. Europe:ヨーロッパ
ヨーロッパ経済の減速は既に様々な経済指標に表われています。確かに数年前までであればS&P500指数採用企業の売上全体に占めるヨーロッパの割合は10-15%ほどありました。しかし直近の2013年ではこの割合は6.8%に低下しています。恐らく市場は、ヨーロッパから受ける影響を実際よりも過大に評価していると思われます。

4. Economy:景気
ニュースでは、15日に発表された9月の小売売上高が株価急落の一つの要因とされました。しかしもともと変動のある指標である上に、前月比マイナスとなった大きな要因はガソリン価格の下落によるものです。車社会であるアメリカでは、これはむしろ今後、消費に大きな追い風となる可能性が高くなります。また先行指標を含め、他の経済指標も概ね堅調です。

5. Energy:エネルギー
以前テレビでも申し上げましたが、私は原油価格は中長期的に下落方向に向かうと考えています。ここ数年、OPEC加盟国の石油産出量が殆ど変わらない一方で、シェール革命の影響で、アメリカやカナダの産出量が急速に増加し、需給関係に構造的な変化が生じてきているからです。この影響を受けて最近、比較的損益分岐点の高い石油関連企業の株価下落が目立つのは確かですが、中長期的にはアメリカの消費者に及ぼす好影響の方がずっと大きい事を忘れてはなりません。

6. Election:(中間)選挙
アメリカでは来月初、中間選挙が実施されます。中間選挙については前号をご参照下さい。選挙というのは市場にとって不透明要因の一つですので、そういう意味では選挙前の10月は少しは影響を受けたのかもしれません。しかし2週間後にはこのマイナス要因は無くなり、その後はむしろ、中間選挙後特有の非常に強い相場が期待できることになります。

7. (Quantitative) Easing: 量的金融緩和の終了
量的金融緩和第一弾、第二弾の終了を前後して、いずれも株式相場が下落したことから、今回も第三弾の終了を前にして下落、という説もあります。しかし今回は第三弾の終了を前にしても年初からずっと10年物米国債利回りは低下しており、むしろ株式の割安が目立ってきています。さらに重要なことは、第一弾、第二弾とも、そもそも経済がそれほど良くなっていない時点での終了であった点で、今回とは異なります。また利上げはまだかなり先の話だと思いますが、歴史的に、株式は利上げ局面の方が上昇しやすいことを忘れてはなりません。

8. (Middle) East: 中東の地政学的リスク
8つの“E”の中で、この地政学的リスクだけが何とも予想し難く、分析が困難なものだと思います。しかし考えてみれば、特に今年は新興国に始まり、ウクライナ、イラク、パレスチナ、香港と、中小規模の地政学的リスクがあちこちで頻発していて、既に市場にはかなり織り込まれてきていると考えられます。株式に投資する限り、これは避けて通れないリスクであり、この要因については腹をくくるしかないでしょう。リターンはリスクと表裏一体の関係にあります。リスクを避けるためにリターンも諦めるか、それともリターンを得るためにこのリスクを取るか、これは皆さんの判断に委ねるしかありません。

(2014年10月19日記)
 
【新刊のお知らせ】
堀古英司氏の著書、「リスクを取らないリスク」(クロスメディア・パブリッシング)が発売になりました。
81f6qgctrhl (2).jpg






最終更新日  2014.10.22 03:19:44
2014.10.08
カテゴリ:カテゴリ未分類
11月4日に実施される米中間選挙まであと1ヶ月を切りました。前号でお示しした通り、アメリカの株式相場は中長期的に見て割安な水準にありますが、中間選挙はその割安を修正する、即ちファンダメンタルズから見て株式相場が適正な水準に向かって上昇する、一つのきっかけになると考えています。

簡単に今回の中間選挙の注目点をお示ししておきます。現在上院は民主党53議席・共和党45議席・無所属2議席で、民主党が過半数を占めています。これに対して下院では共和党233議席・民主党199議席・空席3議席と共和党が過半数を占め、上下院でいわゆるネジレた状態となっています。2年に一度選挙が行われる下院では共和党が34議席リードの上、現時点で殆ど議席を守る可能性が高いと見られているため、下院での共和党過半数維持はほぼ確実とされています。

注目は6年に一度の再選を賭けた上院で、今回は共和党が過半数を奪回する可能性が高まってきています。理由は第一に、歴史的に政権を握っている政党は中間選挙では不利とされています。今回再選にかけられるのはオバマ大統領が勝利した選挙で同時に勝利した議員ですが、その一部は単にオバマ・バブルに便乗していた可能性が高いと見られるからです。第二に、今回再選の対象となる共和党議員が15人なのに対し、民主党は21人にも上り、そのうち7つの州は2年前の大統領選挙で共和党のロムニー候補を支持しています。第三に、オバマ政権が推進してきた医療保険制度改革、通称「オバマケア」に対する国民の不満は根強く、また2期目の課題としてあげた政策目標の多くが頓挫していることも民主党にとって逆風となっています。

このような状況を受けて、9月末時点でワシントンポスト紙が76%の確率、NYタイムズ紙が67%の確率で上院での共和党過半数を予想しています。オンラインのギャンブルサイトではこの確率が80%超えで取引されており、今回の中間選挙では下院に加え、上院も共和党が過半数を占める可能性がかなり高いと見られています。

さてこの通り、上院も下院も共和党が過半数を取った場合、一体何が変わるのでしょうか?結論から言えば、あまり変わりはありません。多くの政策の変更には上院での賛成票60票が必要となりますが、いくら共和党有利とはいえ、今回の中間選挙で15議席も確保するのはほぼ不可能だからです。さらにオバマ大統領による拒否権を覆すのには67票が必要となりますが、これは共和党が、今回再選にかけられる民主党の議席全てを獲得したとしても数字的に足りません。大統領が民主党の下では、上院・下院とも共和党が過半数を獲得したとしても思う通りの政策を実行できるわけでなく、基本的にはこれまで通りネジレと似た状態が続く、ということなのです。

しかし政治の「雰囲気」はやや変わったものになりそうです。というのは共和党としては、国民の支持が高いと思われるトピックについて上下院で法案を通し、オバマ大統領に「踏み絵」を迫る、という戦術が使えるようになるからです。当然の事ながらオバマ大統領には拒否権がありますが、あまり国民の支持が高い法案に対して拒否権を連発していると、2016年の大統領選挙に向けて民主党候補にとって不利に働くことになります。この結果、中間選挙の結果は表向きそれほど変化はないと見られるものの、国民の支持が高い、とりわけ景気にプラスと作用しそうな政策については実行される可能性が高まると見ることができます。特に今年問題となってきた「タックス・インバージョン」(07月30日 第321回 タックス・インバージョンが促す法人税減税 参照)について、その根本的な解決策である法人税減税などは、比較的受け入れられやすい政策の一つだと思います。

歴史的に中間選挙後、大統領就任3年目は大統領任期サイクルの中で最もパフォーマンスが良い年とされています。過去50年のS&P500指数の平均上昇率は大統領就任1年目が7.2%、2年目が0.8%、3年目が17.0%、4年目が7.2%と、3年目の上昇率の高さが際立っています。選挙というのは株式相場にとって不透明要因の一つですので、単に中間選挙という不透明要因が通過するという事実だけでも株式相場にとってプラス材料となります。さらに大統領選挙に向けて、景気に優しい政策が取られるという傾向も影響していると考えられます。

さらに中間選挙後、共和党が上下院の両方を支配したのは過去50年間で3回ありますが、その際の大統領就任3年目の上昇率は平均27%にも上っています。そして今回のケースも、その歴史が示す通りになる環境が整っているように見えます。というのは、年初からしばしば株価が調整しているのはバリュエーションの高い小型株が中心であり、大型株の割安は一貫して続いているからです。歴史的に大企業に有利と言われる共和党が上下院を掌握すれば、大型株の割安が見直されやすい展開になると考えています。

(2014年10月7日記)
 
【新刊のお知らせ】
堀古英司氏の著書、「リスクを取らないリスク」(クロスメディア・パブリッシング)が発売になりました。
81f6qgctrhl (2).jpg






最終更新日  2014.10.10 04:57:07
2014.09.05
カテゴリ:カテゴリ未分類
8月下旬、ダウと並ぶアメリカの代表的株価指数であるS&P500指数が初めて2,000の大台に乗せました。金融危機のときには一時683まで下げていましたから、その後5年半で3倍近くになったことになります。5年半で3倍というとかなり大きな上昇率のように見えますが、年率にすると22%程度の上昇率で、それが5年半続いて3倍近くになったというだけです。

この間、皆さんは「アメリカ株は買いだ」と思いながらも、実際にアメリカ株に投資することを躊躇させるような多くのメディアを何度も目にされたことと思います。特に昨年春、S&P500指数は2000年のITバブル崩壊以来、初めて本格的に高値を更新しました。そしてそれ以降、断続的に最高値を更新する日が相次ぎ、より多くのメディアが「アメリカ株はバブルだ」などという報道を目にされているのではないかと思います。実際アメリカでもほぼ毎日「アメリカ株は今からXX%下落する」という記事や、テレビのコメンテーターを見ます。もちろん報道もコメントも自由だとは思いますが、「03月14日 第317回 何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか」 で述べた通り、その結果アメリカ株への投資を見送ってしまっていたとしたら、とても残念なことです。

このような時代、そもそもアメリカの株式指数はどの辺が適正と言える水準なのか、そしてどの辺からがバブルと言える水準なのか、を皆さん自身で知っておく事は、そのような情報からの防衛手段として非常に重要だと思います。メディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇し、預金のまま置いていたとしても、資産は減らなかったかもしれませんが、本質を見抜いてアメリカ株に投資していた人と比べれば、「相対的に」資産は減少しているのです。リスクを取らなかったことによる損失は小さくない事を再認識し、同じ過ちを犯さぬよう、皆さん自身で割高・割安を判断できるようになっていただきたいということです。

アメリカ株の割高・割安を判断する方法の一つとして、通称FEDモデルと呼ばれるものを私の講演で何回かご紹介してきました。これはS&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りを比較する方法です。例えば現在、S&P500指数採用企業の今年の利益は120ドルと予想されていますが、S&P500指数は2,000ですので、益利回りは120÷2000=6%となります。これに対して10年物国債利回りは2.5%です。株式の益利回りが国債利回りを大きく上回っているので、株式は割安、ということができます。

ここで2つ注意点があります。まず国債と言うのは満期まで保有していれば元本は保証されますが、株式に元本保証はありません。一方で国債の利息は満期まで一定ですが、株式では、企業の利益は経済の成長と共に毎年増加していきます。例えばS&P指数採用企業の場合ですと、ここ5年ほどは年平均9%のペースで増加しています。そしてもし、株式の「元本は保証されない」というマイナス要因と、「利益は成長する」というプラス要因が相殺できるとしたら、S&P500指数の益利回りと、アメリカの10年物国債利回りは同じような水準に落ち着く、という仮定を置くことができます。これがFEDモデルの基本的な考え方です。

シンプルな考え方ですが、このモデルは歴史的にはかなり当てはまっています。要するに、短期的なブレはあるものの、長期的には概ね、S&P500指数の益利回りとアメリカの10年物国債利回りが同じような水準に収束する傾向がある、ということです。一つコメントするとすれば、2002年以降、S&P500指数の益利回りがアメリカの10年物国債利回りを上回る状態(株式が割安な状態)が続いています。これは2000年ITバブル崩壊にはじまり、同時多発テロや金融危機などを経験し投資家がより元本保証を重視するようになった結果、株式を敬遠する一方で、国債を選好するようになっているから、と考えることができます。その結果が、現在のS&P500指数益利回り6%に対して10年物国債利回りは2.5%ということです。

もちろん10年物国債利回りの2.5%という水準は、FRBによる度重なる量的金融緩和の結果であって、金融政策が通常の状態に戻った水準はもっと上と考えるのが妥当でしょう。ただ6月のFOMCで、理事会メンバーによる政策金利の長期的均衡水準は3.75%が中間値となっているので、長期的な10年物国債利回りの均衡水準も4%程度と推定することができます。この推定の下、FEDモデルにおけるS&P500指数はいくらになれば適正と言えるでしょうか?

答えは120÷4%=3,000です。現在S&P500指数は2,000ですが、50%上昇してやっと、歴史的に適正と言える水準に到達するということです。さらに120ドルは今年の利益ですが、経済の成長と共に利益は増加していきます。例えば来年2015年の予想利益は133ドルとなっていますから、来年の適正水準は133÷4%=3325と、時間が経つほどS&P500指数の適正水準は上昇していくのです。一体、S&P500指数がいつになれば3,000に到達するのか見当が付きませんが、到達した頃には適正水準はさらにもっと上になっているはずだということです。

これまでメディアの報道によってアメリカ株への投資を躊躇してきた人にとって悪いニュースは、上昇を逃したことによって「相対的に」資産が減少してしまったことです。そして良いニュースは、今からでも挽回できる可能性があるということ、そして今後はもうメディアの「バブル」報道を気にしなくてよくなる、ということです。

(2014年9月5日記)
 
【新刊のお知らせ】
堀古英司氏の著書、「リスクを取らないリスク」(クロスメディア・パブリッシング)が9月16日発売になります。
81f6qgctrhl (2).jpg






最終更新日  2014.09.10 00:11:19
このブログでよく読まれている記事

全145件 (145件中 31-40件目)

< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ... 15 >

PR


Copyright (c) 1997-2021 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.