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堀古英司の「米国株式の魅力」

全145件 (145件中 41-50件目)

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2014.07.30
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アメリカの金融市場で今、最もホットな話題と言えばこの、タックス・インバージョン(Tax Inversion: 節税のための本社移転)でしょう。これは法人税のより低い国に本社を移すことによって節税を図る、というものです。アメリカの法人税率は日本と並び、世界で最も高いことで知られていますが、2000年以前から主に、タックスヘイブン(税金がゼロかゼロに近い国・地域)に本社機能を移す動きは散見されていました。しかし今年に入ってからは、特にヨーロッパに狙いを定めたタックス・インバージョン目的と見られる大型の買収が立て続けに発表されています。

現在、アメリカの法人税率は州税を含むと(州税がゼロの州もありますが)、40%近くになります。これに対して、イギリスは2008年に30%であった法人税率の段階的引き下げを実施しており、来年には20%になる予定です。アイルランドの法人税率は以前から12.5%と低いことで知られています。

特にアメリカの製薬大手ファイザーが今年4月に、イギリスの同業アストラゼネカに買収提案を提示したことで、一気に注目度が高まりました。この他にも半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ、ペースメーカー製造のメドトロニック、ドラッグストアのウォルグリーン、製薬のマイランなどのアメリカの会社が次々に、主にヨーロッパの会社を買収することによってタックス・インバージョンを実現しようとしています。そして次の標的はどこか、を探す動きも活発で、実際イギリスやアイルランドの特に医療関連銘柄が大幅な上昇率を見せています。

これに対してオバマ大統領は先週末のインタビューで、アメリカ企業のこのような動きは「非愛国的だ」と非難しました。ルー財務長官も同様の発言を繰り返しています。果たして問題の本質はどこにあるのでしょうか?

私は、現行の枠組みの中で個別企業がこのような行動を取るのは当然で、口先で止められるものではないと思います。むしろここ数年の法人税を巡る議論を見ていると、オバマ大統領の方に問題があるとしか思えません。というのは2年前の大統領再選を賭けた選挙で、法人税減税の28%への引き下げを公約していたのは、オバマ大統領自身であったからです。25%への引き下げを公約に掲げていたロムニー候補に対抗するため、というのもあったでしょう。しかし私が度々演説で聞いていたのは、「雇用を海外に移すような愚かな税制は改めなければならない」という主張でした。当時はまだまだ雇用情勢が厳しい時でしたら、当然のことながら、アメリカのビジネス界は、オバマ大統領が再選されれば法人税も引きさげらると見込んでいたと思います。

しかし実際に再選されてから起こったのは2012年末にかけての「財政の崖」や2013年10月のアメリカ国債デフォルト危機です。いずれも法人税減税を求める共和党に対し、オバマ大統領は既に何度も延長されてきた失業保険給付の、更なる延長などと抱き合わせでしか応じない姿勢を貫き、その度に財政協議が暗礁に乗り上げてきたのです。

法人税の引き下げは世界的な傾向です。アメリカ企業は、当然この流れに従ってアメリカでも法人税率が引き下げられると我慢強く公約の実現を待っていましたが、中間選挙が迫ってきて公約は果たされそうに無いので遂に今年、シビレを切らして一気にこのような動きに出てきたのです。そのような意味では「非愛国的だ」と言われても、アメリカ企業にとっては「何を今さら」という感じでしょう。アメリカ企業が非愛国的なのではなく、そもそもオバマ大統領の公約違反が原因なのです。企業は淡々とやるべきことをやっているだけということです。

オバマ大統領の支持率低下もあり、中間選挙では上院で共和党の有利が伝えられています。下院の共和党過半数は間違いないでしょうし、これら一連のタックス・インバージョンの動きがきっかけとなる形で、徐々にアメリカの法人税引き下げ議論が活発化していくでしょう。言うまでもなく、法人税率の引き下げは上場企業全ての資本コストを下げますから、株価の上昇要因となります。

さて法人税引き下げ議論は、日本でも活発になっています。日本の報道でいつも気になる点がありますので、最後に一つ指摘しておきたいと思います。よくあるのは、法人税率が最も高いのはアメリカで40%、次に日本、という図が示されることですが、これはかなり誤解を招く比較だということです。というのはアメリカの会社で法人税がかかるのは、Cコーポレーションという形態を取っている会社のみで、全体の2割に過ぎません(上場企業は殆どがCコーポレーションですが)。他の8割の会社においてはパートナーシップなど、二重課税を避けるため法人税の対象外であることが認められている形態です。ですので確かに法人税率だけを見ると一見アメリカが高いように見えますが、実質的な課税対象を考慮すると、やはり日本の法人税は世界一なのです。法人税率を引き下げて海外に移ろうとする企業を引き留めるだけでなく、海外から企業を誘致して国内の雇用を増やし、経済の活性化を図るか。又は世界一の法人税を維持するあまり、法人税を払う企業自体が日本から居なくなってしまうか。この簡単な二択問題は間違わないようにしていただきたいものです。

(2014年7月28日)






最終更新日  2014.07.31 01:59:26


2014.06.27
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昨年はバーナンキ前FRB議長が議会証言で量的緩和縮小の可能性に言及して以来、5月から9月にかけて10年物米国債利回りが1.6%台から3%まで急上昇する場面がありました。しかし今年に入って低下を始め、ここ数カ月は概ね2.6%前後での落ち着いた動きとなっています。またS&P500指数の1日の変化率が4月半ば以降、1%以下にとどまる日がこれまで47営業日続いています。これを反映する形でシカゴで取引されているS&P500変動率指数も金融危機前以来の低水準となっています。この低長期金利、低変動率は今後の株価動向について、何を示しているのでしょうか。

まず長期金利の低下について考えたいと思います。連銀は今年から量的金融緩和の縮小を開始し、このまま行けばこの秋にも量的緩和は終了する事になります。そして早ければ来年の今頃から利上げが実施されるかもしれません。そのような時になぜ、金利が上昇しないのか。アメリカの景気が再び落ち込む事を債券市場が察知しているのではないか、と言う心配性の人もいます。

しかしよく考えれば、そもそも昨年の長期金利3%までの上昇場面が異常であった事が分かります。第一に、今回はまだ、通常の金融引き締め局面と異なり、金融危機を受けたショックから抜け出すための緊急手段である量的金融緩和が解除に向かっているだけの段階です。実際に政策金利の引上げが始まるといっても1年以上は先の話で、その間、10年物米国債を売り持ちにする債券ディーラーのコストを考えると、同情せざるを得ません。第二に、先日FOMC(連邦公開市場委員会)後に公表されたメンバーの長期目標の中間値は0.25%引き下げられ、3.75%となりました。10年間の中で、少なくとも手前の1年間は0%で、時間をかけて金利が上昇してもせいぜい4%手前までとすると、平均を3%と考えるのは、現時点では比較的積極的に見えます。

第三に、今年に入ってアメリカ政府が発行する市場性債券の金額は1,790億ドルの増加にとどまっています。これは昨年の同じ時期に比べると約半分で、明らかに景気が回復し、アメリカの財政状況が改善している事によるものです。一方で連銀は量的緩和の縮小を始めたとはいえ、今年に入って1,650億ドルもの米国債を購入しています。要するに、アメリカ政府は国債を1,790億ドル分しか新規発行していないのに、その92%を連銀が購入している計算になり、市場の需給がひっ迫するのも当然です。こうした状況を考えると、長期金利の低下はアメリカの先行き景気を占っているというよりも、需給要因によるところが大きい事が分かります。

次に変動率指数の低下について考えたいと思います。心配性の人はこう言います。「危機の前は必ず変動率が低下している。変動率の低下は危機の前ぶれだ。」これはかなり誤解を招く考え方です。何故なら、通常の市場環境では変動率指数というのは10%~15%で推移するものであって、何らかの危機やショックがあった時に30%以上に上昇するものです。なので30%以上に上昇する前は10%~15%で推移しているのが当たり前で、これを危機の前ぶれと考えるのは本末転倒です。例えて言えば、しばらく地震が無い平和の状態を、地震の前ぶれ、と表現するようなものです。

この15年ほど、市場は心配材料に事欠かない時期が続いてきました。ハイテクバブル崩壊、同時多発テロ、イラク戦争、金融危機、米国債デフォルト不安等。確かに今年に入っても新興国通貨不安に始まり、ウクライナ問題、イラク問題など、不透明要因が全く無い状態ではありません。しかし私がこれまでアメリカに21年居て間違いなく言えるのは、それまでの15年ほどと比べると、市場の不透明要因としては取るに足らないものばかりだという事です。そもそも市場に不透明要因が全く無い時期というのは殆どありませんし、現在言われているような不透明要因は市場にとって十分吸収可能であり、それが反映されている結果が現在の低変動率と言えます。

前回、S&P500指数の1日の変化率が1%以内にとどまる状態がこれほど続いたのは1995年で、当時は95営業日続きました。そして当時、同時に起こっていたのが長期金利の安定です。1995年初に連銀が一連の金利引き上げを終了した後、アメリカの財政改善とも相俟って長期金利が低下、その後の株式相場の大幅な上昇につながっていったのです。今から思えば、低長期金利、低変動率は株式相場上昇に向けての土壌をならしていたという事になります。

私はいずれ長期金利は上昇すると見ていますが、実際に金利引き上げが始まるまではなかなか動かないでしょう。また金融危機であれほどリスク回避的になった投資家を株式相場に戻って来させるのに、低変動率は大きな役割を果たすでしょう。いずれも時間が経過すればするほど、ボディブローのように市場に効いてくるはずです。低長期金利、低変動率、本来いずれも株式市場にとって大きな好材料です。素直に受け止めた者が、普通に報われる展開になると考えるのが自然だと思います。

(2014年6月25日記)






最終更新日  2014.07.31 01:58:02
2014.05.28
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フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた「21世紀の資本論」の英語版が先月出版され、経済学者の間で大論争を巻き起こしています。先週はNYタイムズ紙のハードカバー・ノンフィクション部門でベストセラーに躍り出ました。アメリカでこれだけ話題になっている本なので、日本語版が出版される日もそれほど遠くないのではないかと思いますが、私も発売後すぐに読みましたので簡単に感想を述べておきたいと思います。

本の内容を簡単にご紹介しますと、 

  • 資本主義の基本的な第一の法則
資本所得÷所得=資本収益率×(資本÷所得)
例えば資本収益率が5%で、資本の所得に対する割合が600%とすると、資本所得÷所得(資本所得が所得全体に占める割合)は30%。
  • 18世紀以降の主にヨーロッパとアメリカのデータを集め、(資本÷所得)がヨーロッパでは1910年までは600~700%、1920~70年まで300%前後に低下した後、現在500~600%に上昇、アメリカは歴史的に比較的安定していて、400~500%から300%台に低下した後、現在400%台に。日本は80年代後半に700%まで上昇後、現在600%。
  • 資本主義の基本的な第二の法則
資本÷所得=貯蓄率÷経済成長率
例えば貯蓄率が12%で成長率が2%とすると、その国の(資本÷所得)は600%に収束していく、という意味。ちなみに1970年から2010年のアメリカの純貯蓄率は7.7%、日本は14.6%。
  • 世界の経済成長率は21世紀後半に1.5%に低下する一方、貯蓄率は10%前後で安定すると予想。この結果(資本÷所得)は700%近くに上昇するだろう。
  • 先進国の(資本所得÷所得)は1970年には15~25%だったのが、現在25~30%(これ以外は労働所得)
  • 1930年、アメリカの所得上位1%が占める割合は20%前後だったのが、1950~80年は10%以下に低下し、その後現在の18%に上昇。ただこれはアメリカ含むアングロサクソン系の国に見られる「スーパー経営者」の出現によるもの。ヨーロッパや日本では現在でも10%以下で安定している。また所得格差は富の格差に比べると大した事はない。
  • 1910年、上位1%が保有する富の割合はヨーロッパで63%、アメリカで45%、1970年にかけてそれぞれ20%、28%に低下した後、現在24%、34%。富の集中は進行中。
  • 富のある者は優秀な投資アドバイザーを付けられるのでさらに富が膨らむ。
  • 21世紀後半にかけて、資本収益率が4%台前半となる一方で、経済成長率が1.5%に低下する。この資本収益率>経済成長率という状態は長期間に渡って続く可能性が高く、その結果、富を持つ者と持たざる者の格差は広がっていく。
  • 世界は20世紀前半に見られた「世襲資本主義」に戻りつつある。
  • この傾向を止めるのは政府の介入によってしか実現しない。具体的には世界各国協調による毎年最大2%の富裕税の導入、及び累進課税の強化など。

 

2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は「今年、いやこの10年で最も重要な経済書籍」と評価しています。アメリカでは特に金融危機以降、しばしば格差問題が取り上げられる事があり、クルーグマン教授も折に触れてNYタイムズ紙で取り上げてきました。しかし2011年に起こった「ウォール街を占拠せよ」運動でも見られるように、アメリカでは格差問題がそれほど広がりを見せる事もありませんでした。その意味ではこの本は、少なくともアメリカ人に格差問題を考えさせる、という点では大きな成功を収めたと言って良いでしょう。

そしてその理由は上記の通り、18世紀から今まで、ヨーロッパとアメリカをはじめとする全世界のデータに基づいているという点にあると思います。実際、この点は多くの経済学者の高い評価を得ています(最近になってフィナンシャル・タイムズ紙等がデータの問題点を指摘していますが)。また格差問題を論じる際によく見られるのは「金持ち」と総称してしまう事ですが、この本ではまず所得の偏在について調べ、次に富の偏在について調べる、というステップを踏んでいます。さらに投資アドバイザーが富の増加に重要な役割を果たしている事をデータによって示しているのも、他の読み物にはあまり見られない点でした。

ただ本全体を通じて疑問に思う事が多いのも事実で、実際の所、アメリカでの反響も真っ二つと言って良いでしょう。例えばピケティ氏はデータの収集方法やその定義についてはかなり慎重に前置きをしているのに対して、そこから導かれる結論や主張はややデータを離れ、時に感情的と見られる部分も散見されます。またそもそも、なぜ格差が問題なのか、について「このまま格差が広がると革命が起こってしまう」等以外に、特に突っ込んだ問題点を列挙しているわけではありません。さらに現在、格差が拡大傾向にある中で、それが経済に与えてきたメリットもあるはずですが、それらのメリットが殆ど語られないまま格差だけが問題視される内容になっています。具体的には特に金融危機を通じて、リスクを取る人を優遇しなければアメリカ経済は立ち直れない状況にあったからリスクテイカーが優遇されたわけですが、その結果として格差が生まれている経緯については語られていません。

さらにピケティ氏が最後に提唱している、世界が協調した富裕税の導入や累進課税の強化などの解決策を見るにつけ、格差問題の解決は非常に難しく、実現したとしても遠い遠い先の話と考えざるを得ませんでした。そのような世界協調が実現するには、多くの国で財政状態がかなり改善している事が条件になりますが、現状を見るにつけ、そのような状態は少なくともこの先10年や20年で想定できるものではないからです。しかし今回、社会主義に近いフランスの経済学者の本が、資本主義の最先端、アメリカに一石を投じ、格差問題を再考する大きなきっかけとなった事は確かです。将来に向け、皆さんの投資方針を考える上でも参考になる本だと思いますので、是非ご一読をお薦めします。

(2014年5月26日記)







最終更新日  2014.05.28 23:27:58
2014.04.18
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この1年半ほどで、アメリカの株式相場は5回のマイナーな調整局面を経験しました(マイナーな調整は、概ね5~7%の下落となります)。1回目は2012年末にかけて、いわゆる「財政の崖」に直面した場面、2回目は2013年5月、当時のバーナンキFRB議長が議会証言で量的緩和の縮小に言及した後、3回目は実際に量的緩和縮小が開始されると市場が見ていた9月のFOMC前、そして4回目は議会で財政協議が難航し、米国債がデフォルトするかもしれない、と大騒ぎになった10月でした。

いずれの局面も、S&P500指数で見て5~7%下落した後、前の安値を下回らないまま上昇するという、典型的な上昇相場の形となっています。即ち、上記の材料をもって売るのは誤りだった、という事になります。上記4つの局面を大きく分類すれば、1回目と4回目は財政政策、2回目と3回目は金融政策が要因である事が分かります。要するに市場は、財政政策も金融政策も、引き締めになるのを必要以上に嫌がっていた、という事です。それでは何故、このような材料をもって売る事が誤りになってしまうのでしょうか。

ここで簡単に、ここ十数年のアメリカ経済を振り返る必要があります。ここ十数年は、アメリカ経済にとっては非常に厳しい期間でした。2000年のハイテクバブル崩壊に始まり、2001年9月には同時多発テロ、2002年にはエンロンやワールドコムに代表される不正会計問題が市場を覆い、2003年3月にはイラク戦争が始まりました。アメリカ経済はその後数年かけて回復したものの、2007年7月に金融危機が始まり、2008年9月のリーマンショックに至りました。中でも同時多発テロや金融危機は間違いなく「100年に1度」級の大ショックであり、それがこの10年ほどの間に2回も訪れるという、大変な時期だったのです。

このような状況をそのままにしておけばアメリカ経済は恐慌に陥り、人々の生活水準は大きく低下、場合によっては命を脅かされる事態になるかもしれません。当然の事ながらアメリカ政府は、これらのショックを乗り越えるための措置を打ち出しました。財政においては同時多発テロを受けて2001年と2003年、いわゆるブッシュ減税が施行されました。また金融危機のショックを乗り越えるために2009年2月には、いわゆるオバマ景気対策が打ち出されました。また現在FRBが実施している、いわゆる量的金融緩和策が、金融危機をきっかけに始まった事は言うまでもありません。

このように、この十数年の間に実施された財政政策や金融政策は、あくまでも「100年に1度」級の大ショックを乗り越えるための緊急措置であったのです。ですので当然の事ながら、ショックが和らいでくれば解除していかなければなりません。人間に例えるとこういう事です。2001年と2008年、危篤状態で救急病棟に運ばれたものの、次第に体が回復してきた。ICUから一般病棟に移され、薬の量も次第に減らしても大丈夫になってきた。このまま行けば退院もそれほど先の話ではない-。

アメリカ経済は着実に回復してきている。本来はまず、この事実を喜ばなければなりません。アメリカは金融危機以降、870万もの雇用を失いました。しかし2010年以降、着実に回復し、このまま行けば今年5月頃には金融危機以降に失われた雇用を全て取り戻す事になります。特に2011年以降の回復ペースは月平均18万人であり、過去のアメリカの雇用増加ペースと比べても、何の遜色も無い状況です。

ブッシュ減税はもともと2010年末までの時限立法でしたが、オバマ大統領の下で2012年末まで延長されていました。金融危機に対応する形で実施されたオバマ景気対策は前倒し型であったため、2012年で殆どの効果が無くなる内容でした。そして、これら大型の財政政策が同時に失効するタイミングで訪れたのが2012年末の「財政の崖」であり、解決が一部先延ばしになって訪れたのが2013年10月の米国債デフォルト騒ぎだったのです。景気が悪ければ延長された可能性もあったでしょうが、それは必要ない状況です。金融政策も同様です。2013年春時点では既に、金融危機で失われた雇用の8割近くを取り戻し、しかも毎月着実に雇用が伸びている時期でした。量的緩和が金融危機という大きなショックをきっかけに導入された以上、継続していく意義が徐々に乏しくなっていたのです。

しかし市場は、薬の量が減る事、即ち緊急措置としての財政政策や金融政策が解除されていく事ばかりに目が行ってしまっているのです。実際、皆さんもメディアで目にされるのは、そういうニュースが圧倒的に多いと思います。言うまでもなく、財政政策や金融政策が解除されつつあるのは景気が回復しているからです。財政政策や金融政策の解除ばかりに目が行って、景気が回復している、という本質を見誤っていると、それを反映する株式相場の上昇に付いていけない事になるでしょう。

(2014年4月15日記)






最終更新日  2014.04.22 07:42:13
2014.03.12
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これはさる1月13日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2014で講演させていただいた内容を要約したものです。

「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」

2013年10月初旬、インターネットでこのようなニュースの見出しを目にする事がありました。もちろん米国債がデフォルトしたからといって、金融市場にリーマンショック以上のショックが走る事など有り得ません。米国債というのは、米国政府が満期の際に米ドルで返済する事を約束する証文であって、その米ドルを印刷する権限を持っているのは米国政府に他なりません。なのでまず、米国政府の返済能力については疑う余地はありません。

とはいえ当時、法定債務上限の引き上げを巡って議会での協議が難航していたので、実務的な要因で短期的に利払いが遅れる、という意味でのデフォルトの可能性はあったかもしれません。ちなみに元金を全て返済できないのも、短期的に利払いが遅れるのも、デフォルトはデフォルトです。我々は最悪の場合でも考えられるのは、1週間程度の利払いの遅れと考えていました。そしてその場合でも、米国政府は間違いなく、1週間利払いが遅れた分の利息も投資家に返していた事でしょう。なのでもし、利払いの遅れが理由で米国債や米国株式が売られるようであればそれは絶好の買い場であり、実際に我々のファンドでも、その場合の買いのプランを周到に準備していました。

実際には10月中旬に債務上限が引き上げられる事になり、米国債のデフォルトは回避されました。そして上記の「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」のニュースが出た数日後にS&P500指数は史上最高値を更新していったのです。もしこのニュースを妄信してしまって不安になって、10月の安値でアメリカ株を売ってしまった人がいたとしたら、それは気の毒というほかありません。しかしそもそも「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」という、有り得ないニュースが、どうして流れてしまうのでしょうか?それにはここ数年急速に起こっているメディア業界の変化を理解しておかなければなりません。

一昔前であれば、皆さんがアメリカ経済や株式に関する情報を得る先は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオが殆どだったと思います。しかしインターネットが普及するにつれて、それら既存のメディアから情報を得る割合が減少し、インターネットから情報を得るという方が多くなったのではないかと思います。さらにここ数年はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて情報を得る機会も多くなっていると思います。要するに、これまでほぼ新聞・雑誌・テレビ・ラジオに限定されていたメディア業界に、インターネット、SNSという新しいメディアがどんどん参入し、メディア間の競争が激しくなってきているのです。

メディアの大きな収入源は広告収入です。広告主としては、より発行部数の多い新聞や雑誌に広告を出したいし、より視聴率の高い番組のスポンサーになりたいでしょう。同様にインターネットではクリック数の多さが重視されます。それでは、どうすればより多くの人がクリックしてくれるようになるでしょうか。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の研究等でも明らかですが、人々は悲観的な情報により反応します。即ち、インターネットでクリック数が増えるのは悲観的な情報なのです。その意味で、情報の正確性はともかく「米国債がデフォルトすればリーマンショック以上」は、クリック数を稼ぐという点では成功だったと言えます。

これは日本だけで起こった現象ではありません。米国債がデフォルトするかもしれないというニュースが最も盛り上がったのは2013年10月8日でしたが、その日の5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドは、ギリシャが971、イタリアが240、スペインが215、フランスが67、日本が63。先進国の中では、アメリカはイギリスに次いで低い42でした。要するに、米国債がデフォルトする確率は低いし、万一デフォルトしても投資家が被る損失など殆ど無かったのです。しかしこのような市場の状況に対し、アメリカの有力紙であるNYタイムズでさえ、「市場は油断している」との一面記事を掲載してしまいました。

こうして、新しいメディアが悲観的な情報でクリック数を稼ごうとする動きに対抗するため、既存のメディアも悲観的な情報で競争せざるを得なくなってきています。メディア間の競争が激化する結果、より悲観的なニュースが見出しを飾るようになってしまいます。そして皆さんのもとにはより悲観的なニュースが多く届けられるようになります。特にこの数年、私はこの傾向が強くなっているのを感じています。

検索サイト米グーグルによると、10月前半の2週間で「米国債デフォルト」のニュースは6百万件の該当がありました。10月後半はほぼ毎日、S&P500指数は史上最高値を更新しましたが、10月後半の2週間で「S&P500指数最高値更新」のニュースは僅か80万件でした。如何に人々が悲観的な情報に反応しやすいかが「利用」されているのが分かります。しかし実際には2013年、アメリカの株式相場は30%上昇しています。メディアの情報(=総じて悲観的な情報)を目にしていると、そのような上昇を完全に逃してしまう事になってしまいます。

このような事態を避けるために、投資家としてはどのような事に気を付ければ良いのでしょうか?それは今の時代、そもそも皆さんのもとに入ってくるニュースというのは、より悲観的な方向に偏っている事を認識し、自身で本質を見極める目が必要だという事です。それではアメリカの株式相場を見る上で、その本質とは何なのか?次号でご説明したいと思います。~続く

(2014年3月12日記)






最終更新日  2014.03.15 02:25:51
2014.03.04
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これは去る1月13日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2014で講演させていただいた内容を要約したものです。

「何もしない≠ゼロ。何もしない=マイナスの時代」

これは1年前の2013年1月、同じ横浜での楽天証券新春講演会で最初にご覧いただいたスライドです。日本では長い間円高が続いてきたので、資産を日本円で保有している皆さんにとってはこれまで「何もしない」事が、資産を守る有効な手段でもありました。私の講演会にお越しいただいた方には何度もお話させていただきましたが、私はここ数年講演等で「円高は一旦始まると5年間続く。今回の円高は金融危機の起点である2007年7月に始まったので、2012年で終了する可能性が高い。」と申し上げてきました(第288回 日本にとって本当のリスク:円安(2011年11月11日)等参照)。大きな要因は、概ね10年サイクルで動いているアメリカの景気であり、5年拡大、5年縮小を繰り返す中で、「物価の安定」と「雇用の最大化」の2つの使命を持つFRBが、それに応じて金融引き締め・緩和を行っているからです。

アメリカの非農業部門雇用者数(総数)を見ると、金融危機以降失われた870万人の雇用は、これまでに90%回復しています。毎月初発表される雇用統計では前月比の増減を見て「予想より数万人上回った、下回った」と市場は一喜一憂していますが、総数の傾向を見ると、いかにそれがナンセンスであるかという事が分かります。というのは総数は1億4,000万人近い数字であり、数万人というのは、総数から見ると殆ど誤差の範囲の数字に過ぎないからです。月々ではこのように、ほんの少しの凹凸はありますが、総数で見るとかなり着実で右肩上がりの回復を示しているのです。このペースで行くと、今年の秋には金融危機以降失われた雇用を全て回復する事になります。そもそも量的緩和というのは、金融危機という100年に一回のショックに対応する形で取られた緊急措置なのですから、金融危機で失われた雇用が全て回復する以上、続けていく意味はありません。FRBは昨年12月から量的緩和の縮小を開始、今年の秋には量的緩和を終了する方針を示しています。その意味で現在のFRBの方針は極めて適切と言えます。

一方、日本では4月から消費税が引き上げられます。先進国の中でも日本は、今年財政が引き締められる珍しい国の一つです。財政が引き締めに入る以上、その分金融政策には負担がかかる事になるでしょう。既に追加緩和期待も出てきていますが、追加緩和が実施されなくても、日本は比較的長期間に渡って緩和を維持しなければならない時期が続くでしょう。この結果日米金利差が拡大し、為替市場では中長期的にドル高円安が進行しやすい状況が続くと見ています。金融危機後、アメリカが積極的に金融緩和を実施する一方で日本が金融緩和に消極的であった結果ドル安円高が進行しましたが、今は正に、その全く逆の状況が起こっているのです。

日本円を持っている人にとって、これまでは「何もしない」事が資産の保全手段になってきましたが、これからはそうはいきません。むしろ「何もしない=マイナスの時代」に入っていると言えます。実際1年前、このようなお話をさせていただきましたが、それからドル円は25%上昇しています。去年持っていた100万円は、見かけは同じ100万円かもしれませんが、去年80円で買えたドルは100円以上でしか買えなくなっています。実質的に100万円の価値は既に下がっているのです。そして前述の通り、アメリカと日本の景気の状況を考えると、これからますます円の実質的価値が低下していく可能性が高まっていると言えます。

さらに去年、アメリカの株式相場は30%上昇しました。円をドルに換えてアメリカ株を買っていた人の資金は50%以上増えています。「何もしない」人の資金は100万円のままかもしれませんが、そういう人と比べると相対的にはマイナスという事になります。それではこのようなマイナスを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?少なくとも、資産の一部は円以外で持つべきです。これまでアメリカ株に投資するというのはリスクが高いとか、積極的な投資のように見られたかもしれませんが、これからはむしろ、資産のマイナスを防ぐための防御策と考えなければならない時代に入っているのです。

去年は「堀古もそう言ってたし、アメリカ株投資を始めようかと考えたけど、ニュースを見て躊躇してしまった」という方もいらっしゃったのではないかと思います。そして躊躇した理由の一つは、アメリカ経済や株式に関してネガティブなニュースを見てしまったからではないでしょうか。これに関し近年、そのニュースを流す側のメディア業界に大きな変化が起こっている事に触れないわけにはいきません。 ~続く

(2014年3月4日記)






最終更新日  2014.03.08 08:45:24
2013.12.30
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我々が運用しているファンドでは毎月初、運用報告会を行っています。2ヶ月前、その運用報告会で、お勧めの読み物を挙げてほしい、というリクエストをいただきました。昨年来、日本でも株式相場が大きく上昇しているので、株式投資を始めるために勉強されている方も多いのではないかと思います。そこで改めて私が挙げさせていただいたのが、”The Superinvestors of Graham-and-Doddsville”(グレアム・ドッド村のスーパー投資家たち)です。これは著名投資家ウォーレン・バフェット氏が1984年にNYのコロンビア・ビジネススクールで行った講演をまとめたものです。15ページの短い読み物ですし、オンラインでも簡単に入手いただけると思いますので年末年始にでも一読されることをお勧めします。

アメリカでも一時、ランダムウォーク理論や「猿のダーツ投げ」がもてはやされた時期がありましたが、それは昔の話です。しかし日本には、いまだにその昔話を信奉している人達が多い事に驚かされます。そして投資家のパフォーマンスが株価指数を上回ると都合が悪いかのように、運が良かっただけ等の理由を挙げようとします。確かに投資家のパフォーマンスを全て平均するとそうなのかもしれません。しかし我々のファンドを含め長期間にわたって株価指数のパフォーマンスを上回っている投資家が実在するのは確かです。”Superinvestors…”を読んでいただければ、それは運ではなく、そもそもランダムウォーク理論の前提(効率的市場仮説等)が非現実的である事に起因しているのがお分かりいただけると思います。実際ウォーレン・バフェット氏は自らが世界トップクラスの富裕者として君臨し続ける事によって証明していると言えるでしょう。

実際の市場においては、多くの場面で非効率性が散見されます。このうち、我々が運用するファンドの中で今年目立ったパフォーマンスを示したのが、会社名と実際のビジネスのギャップに着目した投資でした。

●Eトレード(ETFC)
2年あまり前、我々は住宅市場の先行指標によって底打ちを示唆したのを確認し、住宅市場の回復のメリットを最も効率的に享受できる銘柄を探していました。そこで有力候補に挙がったのがEトレードでした。Eトレードは楽天証券同様、オンライン証券会社と考えている投資家が殆どだったと思います。しかし実際には、2011年秋時点で330億ドルもの住宅ローン及び住宅ローン証券をバランスシートに抱えていたのです。その多くは金融危機前に顧客向けに提供した、いわゆるサブプライム・ローンで、金融危機によって大きな打撃を受けた後でした。2011年末当時、時価総額が23億ドルしかないEトレードにとって、それは大きな重荷だったに違いありません。しかし大きく業績の足を引っ張ってきた住宅ローンも、住宅市場が回復してくれば、今度は逆に大きな業績の回復要因となります。我々が目を付けたのは、オンライン証券会社の部分ではなく、この大量の住宅ローン及び住宅ローン証券だったのです。我々の目論見通り、全米の住宅価格は2012年1月に底打ち、その後今年秋までに20%近く上昇しています。そしてその間、Eトレードの株価は120%の上昇を示したのです。

●ボーダフォン(VOD)
ボーダフォンへの投資については、これまで講演等でも幾度かご説明した通りです。ボーダフォンは多くの投資家がイギリスの携帯電話会社と考えているか、又はもう少しご存知の方でも世界30カ国近くで展開している携帯電話会社、という捉え方が多かったのではないかと思います。しかしボーダフォンが持つ資産で最も価値が高いのは、アメリカで最大の携帯電話会社、ベライゾン・ワイアレスに出資している45%の株式でした。残りの55%はダウ構成銘柄でもあるベライゾン・コミュニケーションが保有していましたが、同社は固定電話が斜陽産業となる中、配当を維持するために残りのベライゾン・ワイアレスを入手したい事は明らかでした。安く手に入れたい気持は分かるのですが、待てば待つほど価格交渉はボーダフォンにとって有利となり、結局EBIDTA倍率8.5倍という、ボーダフォンの言い値とも言える金額で合意に至りました。この買収は来年初にも完了する予定です。

これらは投資家が実際のビジネスを正当に評価しておらず、あたかも会社名やイメージで株価評価していた事から起こった割安な投資機会だったと言えます。しかし市場では逆に、会社名のみを見て投資家が株価を割高に評価してしまうケースも多々あります。2000年に向けてのドットコム・ブームでは、社名に「ドットコム」が付いていれば何でも買われましたし、2003年以上、社名に「チャイナ」が付いていれば株価が上昇する時代もありました。しかし社名だけを見てビジネスを分析していない投資が上手く行くはずがありません。

そんな事は分かっていても、社名だけを見てビジネスを分析せずに判断をする投資家は、これからも市場に存在し続ける事でしょう。なのでランダムウォーク理論は現実を反映していないし、ウォーレン・バフェット氏の言う通り、今後もスーパー投資家は勝ち続けると思います。そしてそれらを、たまたま運が良かっただけ、と信じたい人達も、これからも存在し続けるのでしょう。

今年もお世話になりました。皆様、良いお年をお迎え下さい!

(2013年12月27日記)






最終更新日  2013.12.31 07:16:13
2013.11.28
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今年もあっという間にこの時期になりました。アメリカでは明日が感謝祭の祝日。明後日の「ブラックフライデー」を皮切りに年末商戦が始まります。今年は特に夏季、個人消費関連の経済指標が良くなかった事や、10月の一部政府機関閉鎖の影響で、年末商戦の動向が懸念されてきました。しかし今年はこれまでS&P500指数が26%の上昇と、10年ぶりの高い上昇率となっている事もあり、ここにきて資産効果から、特に高額商品の売れ行きが絶好調の兆しを見せています。このような中、今年の年末商戦はどんな商品がヒットするのでしょうか?ホリコ・キャピタルでは毎年この時期、株価動向から年末商戦のヒット商品を占うレポートを作成していますので、その一部をご紹介したいと思います。
(ヒット商品、会社名、過去1年間の株価上昇率、の順)

1. テスラ・モデルS(テスラモーターズ TSLA +292%)
資産効果の恩恵を最も受ける会社の一つとして電気自動車のテスラモーターズが挙げられます。今年1-3月期は同価格帯(7万ドル前後)で、メルセデスやBMWを上回る販売台数を記録しました。人気のセダンタイプ「テスラ・モデルS」は最近出火事故で問題になったものの、引き渡しは約1年待ちの状況。同社の株価はここ1年で4倍近くになっています。

2. 次世代ゲーム機(ゲームストップ GME +84%)
ソニーが約7年ぶりに次世代家庭用ゲーム機「プレイステーション4」を米国で11月15日に、マイクロソフトがその翌週に約8年ぶりとなる新型機「Xbox One」を発売、いずれも既に品切れ状態という人気です。次世代ゲーム機の市場投入をきっかけに、買い替え需要やゲームソフトの売上も盛り上がりを見せる見通しです。中古品のハードウェアやソフトウェアの販売を手掛けるゲームストップの株価はこの1年で84%の上昇となりました。

3. フューエルバンドSE(ナイキ NKE +67%)
ナイキが11月に発売。スマートフォンの普及と健康志向の高まりを受けて、リストバンド型の活動量計がヒット商品になりそうです。スマートフォンと連携し、万歩計や日々の運動カロリー消費量を表示させる機能を有しています。価格は100-150ドルと手頃で、アプリの機能も拡充してきていることから、現状においてはこのリストバンド型が優勢と言えます。スマートウォッチ型も発売されつつありますが、現状においてはスマホ機能付き時計の域を出ず、端末価格の高さや対応アプリの少なさから需要は限られると見られます。

4.ハンドバッグ(マイケル・コース KORS +59%)
去年もこのコーナーでご紹介したアパレル・ブランドのマイケル・コース。今年はハンドバッグの売上が絶好調です。高級ハンドバッグ市場におけるマイケル・コースの市場シェアは今年15%に上昇。この市場で長年トップのシェアを維持してきたコーチ(COH)を追い上げています。株価も、コーチの株価がこの1年ほぼ変わらずなのに対して、マイケル・コースの株価は59%の上昇となっています。

5. スターウォーズ・グッズ(ディズニー DIS +47%)
子供向けには例年、キャラクター玩具が人気です。去年末、ディズニーはスターウォーズのライセンスを有するルーカスフィルムを買収しましたが、相乗効果が既に表れてきている形で、この1年間で株価は47%の上昇となりました。ディズニーは今月上旬、映画「スター・ウォーズ」シリーズの最新作の劇場公開が2年後の2015年12月18日になると発表しました。年末商戦に向けての関連商品プロモーションの一環と見られます。

6.アクションカメラ(ガーミン GRMN +35%)
携帯端末以外で急成長が期待できる分野に、モータースポーツやサーフィンなどのアクティブスポーツを楽しむ人々にターゲットを絞った小型・防水・高画質のアクションカメラがあります。GPS端末メーカーの老舗、ガーミンがこの分野に参入し、今年9月から製品の発売を始めました。業績への寄与は来年以降となるものの、アクションカメラ市場は近年急成長を遂げており、同社株は業績期待を織り込むかのように上昇しています。

これらヒット商品を出してくる会社がある一方で、年末商戦の先行きが明るくない会社もあります。例えばアパレルのアバクロンビー&フィッチ。一時NY5番街の旗艦店には、年末商戦でなくても行列が出来るほどの人気でしたが、ここ1年で株価は20%以上の下落となっています。CEOの度重なる問題発言も顧客離れの原因となっているようです。

最後に私個人のイチオシ商品、それは先日発売された「iPad mini Retinaディスプレイ」です。私は日頃読み物が多い事もあり、アマゾンのキンドル発売以降、これまでキンドル3台、iPad4台を買い替えてきましたが、今回が最も満足度の高いアップグレードでした。iPadの高機能を備えつつ、より持ち運びが便利なサイズにもかかわらず、画面が非常にクリアで読みやすいという、携帯端末の集大成と言えるのではないでしょうか。アップルの株価は今年ほぼ横這いですが、商品に対する満足度が高く、財務体質が強固でバリュエーションが低い中、見直される日もそれほど遠くないと見ています。

(2013年11月27日記)






最終更新日  2013.11.28 23:25:47
2013.11.06
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大方の予想通り、オバマ大統領は10月9日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長としてイエレンFRB副議長を指名しました。今後上院での承認手続きが順調に進めば来年2月、FRB初の女性議長が誕生する事になります。米株式市場はイエレン氏の指名を既に好意的にとらえていますが、私は、その好影響はさらに中長期にわたって表われてくると考えています。それは彼女の現状の景気認識及びその処方箋としての金融政策の考え方が結果的に、株式市場そして米国経済にとって非常に優しいものであるからです。

市場ではイエレン氏は金融緩和に積極的なハト派として知られています。しかし90年代にはインフレ抑制に重点を置いた発言や講演も目立つなど、決して常に金融緩和を推進する立場にいたわけではありません。しかし、アメリカ経済は2008年の金融危機をきっかけに大きな調整を余儀なくされ、同年12月以降は実質的にゼロ金利が続いている状況にあります。このような局面においては、ゼロ金利の世界においても有効な政策決定手段を用いて金融政策を進める事が必要です。そのような観点からイエレン氏が注目しているのが「最適コントロール」と呼ばれるルールです。

従来FRBに影響を与えてきた政策金利の決定ルールの一つとして、「テイラー・ルール」が挙げられます。テイラー・ルールとは1993年にアメリカの経済学者、ジョン・テイラー氏によって提唱された政策金利の決定ルールで、以下の通り、比較的単純な式によって求められます。

フェデラルファンド金利(FFレート)=インフレ率+均衡実質金利+0.5×(インフレ率-目標インフレ率)+(0.5又は1.0)×(実質GDPの対数-潜在GDPの対数)

イエレン氏はテイラー・ルールの有効性を認めながらも、そもそも現在のように、ゼロ金利が比較的長期間続くような状況を想定しておらず、従ってFRBの使命である雇用の最大化目標を達成するには不十分であるとしています。特にテイラー・ルールの中には「均衡実質金利」が入っていますが、これは通常、定数であり、経済情勢に合わせて上下するものではありません。2008年以降の金融危機のような場面でもこれを定数としておく事は、金融政策による経済の調整機能を弱めている可能性があります。

この弱点を補強するルールとして、イエレン氏がより重視してきたのが「最適コントロール」です。最適コントロールとは簡潔に言えば、下記によって求められる損失を最小限にするような政策金利の決定ルールです。

損失=(インフレ率-目標インフレ率)2 +(失業率-自然失業率)2 +(政策金利の変化)2

即ち、インフレ率と失業率の目標値からのブレ、及び政策金利の変化の合計を損失ととらえ、この損失を最小限にするような政策金利を求める、というルールです。イエレン氏の2012年6月の講演で使用されたスライドでは、2012年第2四半期から2025年第4四半期のインフレ率、失業率、金利の予想に基づき、政策目標であるインフレ率2%、失業率5.5%からのブレ、及び四半期毎の政策金利の変化を最小限にするような政策金利を求めています。これによると、2017年末にフェデラルファンド金利が3.5%程度になるという結果はテイラー・ルールと殆ど変わりませんが、テイラー・ルールが最初の利上げを2014年後半と示しているのに対し、最適コントロールでは2015年後半と、1年近く先延ばしになっています。

最適コントロールは前述の通り、現在のようなゼロ金利が比較的長期間続く局面において、より有効なルールと言えます。一方でテイラー・ルールに比べて複雑であり、一般の人にとってFRBがどのような判断基準で政策金利を決定しているのか、推し量る事は容易ではありません。また変数にはインフレ率、失業率、金利の予想値が用いられていますが、当然の事ながら、それらの予想値が正確である保証はありません。従ってイエレン氏は、最適コントロールは政策金利決定ルールとして有効であるものの、重点を置きすぎてはいけない、と指摘しています。ただ9月に公表されたFOMCメンバーによる政策金利見通しは最適コントロールにより近くなっています。最適コントロールの考え方が、既にFOMCにより影響を与えている証拠と言えます。

最適コントロールは最小限の政策金利の変化で、インフレ率、失業率のブレを出来るだけ少なくする事を目的としています。このため、現在のような景気回復局面にあっても、引き締めを急ぎすぎて失敗するという事態を避けるために、金融引き締めはインフレ率、失業率が目標から離れない事を十分確認してから、という事になります。従って早すぎる金融引き締めが実施される可能性は低く、逆に金融引き締めが実施される頃には、インフレ率も失業率も、十分に改善方向に向かっている事が確認できているという事になります。

即ち、金融引き締めが従来よりも遅れ気味に実施されるのが株式市場にとって優しいだけでなく、金融引き締めが実施される時は、アメリカの景気はFRBのお墨付きという事になります。金融引き締めはしばしば株式市場のネガティブ材料とされますが、将来イエレン氏の下で金融引き締めが実施される事になった時、それは逆に確実な景気回復という、株式市場にとってポジティブなサインと受け止めて良い、という事になるのです。

(2013年11月5日記)






最終更新日  2013.11.07 00:43:18
2013.09.26
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「半沢直樹」、原作のストーリーのみならず、俳優さん達の数々の名言や名演技、撮影、制作をはじめ、番組に関わった人達のエネルギーがひしひしと伝わってきた、素晴らしいドラマでしたね。私は去年から講演等で「日本の失われた21年※は2012年で終わった」と申し上げていますが、今月初めには「半沢直樹」が米ウォールストリートジャーナル紙にも取り上げられ、アベノミクス、東京オリンピック招致に続いて、日本の復活を象徴するような出来事だったと思います。

個人的にも、ドラマのモデルになったとされる銀行出身である事、自分の父が銀行員現職中に病死した事が職を選ぶにあたって少なからず影響した事、そして何よりも、ドラマの前半の部分は固有名詞以外、自分が銀行で経験したのと全く同じ内容であった事で、とても他人事とは思えず、見入ってしまいました。視聴率が40%を超えたという事なので、学生の方、社会人の方の中には、このドラマが自分の人生を見つめ直すきっかけになったという方が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そしてもしそのような方がいらっしゃたら、このドラマを通して、これだけは誤解しないで欲しい、というのが今号のテーマです。それは金融において、貸す事も重要であるが、実は同時に、貸さないという判断も同じく重要だという事です。経済用語で言えば効率的な資源配分の重要性です。私は常々、この点は日本の金融システムを改善するにあたって非常に大事なポイントだと思っています。

ドラマの中では、半沢直樹の父である半沢慎之助さんが銀行に融資を打ち切られ、担保に入れていたと思われる土地を差し押さえられる事を苦に首を吊る、というストーリーになっています。日本の銀行が貸し渋りをして中小企業が苦しむ、という分かりやすい構図であるのに加え、半沢慎之助さんが自殺する事によって、恐らく視聴者の大半が「銀行が悪い」と印象付けられるシーンだと思います。しかしこれで納得してしまっては日本の金融システムはいつまでたっても「失われた21年」のままです。ここでの問題の本質を理解する必要があります。

第一に、銀行というのは無限にお金を貸せるわけではありません。貸出の元手は基本的には、当然元本保証だと信じている預金者がいつ引き出すか分からない預金です。返済されるかどうか分からない会社に貸出す事は、預金者や納税者をリスクにさらすだけでなく、その分今後日本の経済成長に貢献してくれる優良企業に貸せたはずのお金が貸せなくなる事になり、延いては社会全体にとっての損失となります。

第二に、日本では破綻=終わりというイメージが強過ぎる事です。「ビジネスに貸す」という意識が相対的に小さく、その結果ドラマにあったように自宅を抵当に入れたり、連帯保証人を付けたりする事によって、いざという時に「終わり」になる金融システムになってしまっているからなのです。アメリカで破綻の際に連邦破産法という法律がありますが、これはむしろ「新たなスタート」の意味合いが強く、日本のような暗いイメージとは好対照です。失敗してもまたチャンスは与えられるため、少なくとも経営者が首を吊るなどの事態は考えられません。

第三に、金融を銀行に頼り過ぎだという事です。日本は90年代バブル崩壊と共に、とてつもない不良債権問題に見舞われました。この時日本経済にとって痛かったのは、銀行が損を被ったという事実よりもむしろその副作用、即ちそれによって銀行が貸出を実行できなくなってしまった事です。日本の金融は銀行に頼り過ぎなので、銀行が貸出をできなくなれば、日本国がそのまま沈没していくという運命を辿らざるを得なかったのです。結局三井住友銀行に対してはゴールドマンサックスが破格の好条件で増資に応じ、多くの不良債権は海外のファンドが喜んで安値で買い漁っていく結果となりました。そもそも日本では、銀行に代わる資金の出し手が居ない、又は市場が未熟だからこのような美味しい案件を持っていかれてしまうのです。

第四に、融資の審査において同情は禁物という事です。確かに長年ビジネスを経営していて融資を打ち切られる事は、当事者にとって、その時は大きなショックに違いありません。しかしそれを避けたいがためにゾンビ企業として存続する事はその企業、従業員、延いては社会全体のためになるでしょうか?その資金が他の成長企業に回っていれば、日本経済はもっと早く立ち直れたのではないでしょうか?その企業に居た人材は、もっと成長分野で活躍できたかもしれない機会を失ったのではないでしょうか?半沢慎之助さんはネジ工場経営者としては不適格だったかもしれませんが、現世では見事、日本を代表する落語家として大成功を収めています。「半沢直樹」原作者の池井戸さんが銀行を辞めていなければ、これほどの大作は生まれていなかったかもしれません。

資源(資本も人的資源も含め)がより効率的に再配分される過程においては、一時的な痛みは伴うものです。しかし社会全体がその痛みを避けていては経済の成長は望めません。当然の事ですが、成長が無ければ財政はもちろん、外交も医療も福祉も介護も、現在の水準を維持することすら不可能です。今の日本に必要なのは、そのような一時的な痛みに耐え、「失われた21年」の倍返しをしていく半沢直樹達なのです。
※名目GDPが1991年(476.4兆円)から2012年(475.9兆円)までほぼ横這いである事から、失われた「21年」としました。

(2013年9月24日記)






最終更新日  2013.11.07 00:42:00
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