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堀古英司の「米国株式の魅力」

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2019.08.27
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世界でマイナス利回りで取引されている債券の総額は、815日時点で16.7兆ドルと、過去最高を記録しています。マイナス利回りで取引されているのは主に、スイス、ドイツ、オランダ、フランス、スウェーデンとヨーロッパの国債、そして日本国債ですが、とりわけマイナス利回りの先輩であった日本がこの春以降、どんどんドイツに抜かれていくのは非常に象徴的な動きでした。

現在ドイツの指標10年物国債はクーポン0%で100の額面に対して107台で取引されています。そうです、これは10年間利息がもらえない上に、10年後には7%元本割れとなる事が確約されている金融商品です。そして多かれ少なかれ、このドイツ国債のような状況の債券に、世界の投資家が16.7兆ドルもの資金をつぎ込んでいるという状況なのです。マイナス利回りで債券を買う理由は色々言われますが、簡単な話、キャピタルゲイン狙い。これは教科書通りのバブルです。よく「バブルは弾けてみないと分からない」と言われますが、これは珍しく「弾けなくても分かるバブル」でしょう。

ただバブルがいつ弾けるか、というのを予見するのは極めて難しいものです。またバブルに付き物なのが、もっともっと大きなバブルが造成されてからしか弾けない、というパターンです。さらに債券のバブルは、株式のバブルよりもかなりしつこいものになる傾向があります。例えば去年の今頃、「マイナス金利で取引されている債券の総額が8兆ドルにも上った」というニュースで驚いていたのが、1年経った今その倍以上となり、アメリカのGDPに迫る数字に上っているのです。

このような状況では、1.5%も利回りがもらえるアメリカの国債は、世界の投資家にとって非常に魅力的に映るでしょう。近年、世界中の資本はより自由に動き回るようになりましたから、ヨーロッパの国債利回りが低下すると、利回りの高いアメリカ国債に資金が流れると共にドル高になるので、結局ヨーロッパのデフレがアメリカに輸出される結果になります。こうして現在の国際金融システムでは、ある地域にデフレ傾向が出れば、それは金利や為替を通じて瞬時に他国に輸出される構造になっているのです。現在のアメリカ長期金利低下要因の殆どは、アメリカ経済ではなく、このようなヨーロッパをはじめとする世界からの資金流入という、需給要因によるものでしょう。

一方でアメリカ株式の「利回り」はとても魅力的な水準にあります。この30年ほど、S&P500指数の益利回り(純利益を時価総額で割ったもの)は概ね4%から7%の間で推移していますが、現在2020年予想ベースでこのレンジの上に近い6.3%で取引されています。益利回りと10年物国債利回りの差が5%以上開いたのは金融危機とギリシャ危機の時のみでしたが、現在それに近い4.8%の差となっています。またS&P500指数の配当利回りが10年物国債利回りを上回ったのは金融危機、ギリシャ危機、そして大統領選挙を控えた2016年後半の3回のみでしたが、今回再び配当利回り2%に対して10年物国債利回り1.5%と逆転現象が起こっています。そしてこのいずれのケースでも、その後株式は大幅に上昇したことを忘れてはなりません。

とりわけ大手銀行に至っては、6月末に発表されたストレステストでも明らかになったように、史上最も健全と言える財務状態にもかかわらず、配当利回りで約3%、自社株買いで約8%、合計11%近くの利回りが取れる状況です。もちろん短期的に株価が下落すればその利回りも減ってしまうのですが、例えばこのペースの自社株買いが10年続いたとしたら、8割方の株式は市場から無くなってしまうという異常なハイペースです。そして程度の差はあれ、アメリカ株式が現在置かれているのはこのような状況だと言えます。

市場は米中貿易問題の行方に振り回されていますから、今後もニュースによって株式相場は大きく上がる事も下がる事もあるでしょう。しかし短期的に株式の上下があったとしても、マイナス利回りの債券を買う投資家か、それとも「高利回り」の株式を買う投資家か、長期的にどちらに軍配が上がるか、時間の経過がどちらの味方をするかを考えればその結果は明らかだと思います。長期で考える限り、むしろニュースを見ない方が正しい投資判断が出来るのではないでしょうか。

2019827日記)







最終更新日  2019.09.06 03:53:44
2019.04.26
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 ここ数年、日本に行くたびに感じることがあります。それは、米国のリセッション(景気後退)を予想する人が驚くほど多いことです。理由を聞くとそのほとんどが単に「金融危機から10年を超えたので」というものです。確かに米国では歴史的に、おおむね10年に1回の頻度でリセッションが訪れています。しかしこれは私に言わせると、チャートでXX日移動平均線を上回ったとか、RSI(相対力指数)がどうだとか、テクニカルで経済を予想しているのと同じです。本当にテクニカル分析が当たったり、ぴったり10年に1回リセッションが来たりするのであれば、分析という仕事は楽で良いのですが、残念ながらそのような楽な分析に資本主義がご褒美を与えることはないと思います。

 リセッション予想をよく聞くようになったのは、2015年後半くらいだったと思います。金融危機からある程度時間が経っていることに加えて、当時よく理由として挙げられたのが中国経済の減速です。実際、当時は講演させていただく前に来場者からいただいた質問の多くが、米国のリセッションに関するものでした。ダウ平均株価の水準は当時1万8,000ドル近辺でしたが、現在はその1.5倍の2万7,000ドル近辺で取引されています。

 米国はこれまで、海外の経済要因でリセッションに陥ったことはありません。もちろんこれからそのようなケースが出てくる可能性はあるでしょう。しかし、今までなかったことが起こるためのハードルはかなり高いはずで、米国経済に大打撃を与えるようなイベントでもない限り、今後も海外経済が要因で米国がリセッションに陥ることはないでしょう。少なくとも米中貿易問題やBrexit(ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)が、海外要因として初めて米国経済をリセッションに陥れるイベントとは思えません。なのになぜ、日本には海外要因を必要以上に気にする人が多いのでしょうか。

 それは日本がずっと貿易黒字国であって、海外の需要に左右される経済体質にあるからでしょう。金融危機がまさにそうであったように、金融危機など米国のイベントなのに、その半年後には日本経済に大打撃をもたらしました。しかし、忘れてはならないことは、米国が貿易赤字国だという事実です。貿易赤字国であることは海外にモノを売るよりも買う方が多く、海外の景気が悪くなったら、むしろモノが安く買えて有利な立場になります。米中貿易問題は、昔起こったような「世界貿易の減少→大恐慌」を想起させ、メディアが読者を怖がらせ、クリック数や視聴者、購読者を増やすのに格好のテーマなのかもしれません。しかし重要なのは、米国が中国にモノを売っている金額は年間たったの1,300億ドルであって、19兆ドルの米国経済が米中貿易問題からどれだけの影響を受けるか、など数字で考えればすぐに分かることです。

 私は米国で、これまで3回のリセッションを経験しています。そのいずれもが、資産価格の下落(一方で負債額は一定)に伴うバランスシート調整でした。最近は経験していませんが、米国経済がリセッションに陥るもう一つの要因はインフレです。1970年代の石油ショックがこの代表的な例です。もちろん将来、米国経済をリセッションに陥らせる他の要因が出てくるかもしれません。しかし、米国経済の7割は個人消費なわけですから、バランスシート調整やインフレと並んで、個人が財布のヒモをグッと締めようと思える要因でなくてはなりません。現在の状況を見てみると、米国の銀行のバランスシートはこれ以上考えられないほど健全で、インフレも海外経済が不調なおかげでFRB(米連邦準備制度理事会)の目標である2%を下回る状況がずっと続いているので、リセッションを起こそうと思っても困難な状態です。もちろんいつかリセッションは訪れるのでしょうが、リセッションをずっと予想し続けるのは、長生きしている老犬を見て「いつか死ぬ」と予想しているのと同じだと思います。

 私はいつも「リセッションを伴わない株価の下落は買い」と申し上げています。この機会が訪れる典型的なパターンは海外要因です。1997~1998年のアジア危機、ロシア危機がそうでしたし、前述のような2015~2016年の中国経済減速もそうでした。2015~2016年はFRBが金利を据え置いていただけなのでまだマシですが、1997~1998年はFRBが金利を下げたために、その後、株式相場は吹き上がる結果となりました。今年に入ってFRBは当面金利を据え置く方針を示しましたが、私はむしろ、FRBがまた海外要因にだまされて、バブルが発生してしまわないかの方が心配です。海外経済が不振なわけですから海外の株式に魅力はないし、相変わらず日本やドイツ、スイスの国債はマイナス金利でも買われるという超バブル状態ですから、世界の多くの投資家にとって、比較的景気が良いのにFRBが金利を据え置く中で、米国の株式は魅力的な投資対象に映るはずです。そのため、今後世界の超債券バブルが米国株式バブルに移行していく可能性は想定しておくべきだと考えています。

 自動車、航空、住宅建設、金融など、米国経済がリセッションに陥れば打撃を受けると見られるセクターが、軒並み5~10倍の低PER(株価収益率)という、あたかもリセッション真っ只中にいるようなバリュエーションで取引されています。市場のリセッション予想は既に「懸念」でなく「期待」になっていると言っても過言ではないでしょう。ここまで来てしまえばむしろ、リセッション期待が裏切られるリスクの方が大きいと考えるべきです。米国経済は変わらなくても、市場がしばらくリセッションはこないと認識し、バリュエーションが正常化するだけで大きな上昇率となるだろうからです。

(2019年4月24日記)







最終更新日  2019.04.26 19:56:01
2018.12.05
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 124日の市場では、ダウ平均株価は約800ドルの急落となりました。米国債3年物の利回りが高く、5年物の利回りが低くなるという、長短金利の逆転が11年ぶりに発生。これが将来のリセッション(景気後退)入りのシグナルととらえられ、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領追悼で翌日の市場が休場だったこともダウ急落を後押ししました。リセッションによって貸し出しがこげ付いたり、長短金利差の縮小、逆転で金利収入が確保できなくなるとの懸念から、特に銀行株セクターは軒並み5%近く下落しました。しかし、そもそもこの長短金利逆転、本当にリセッション入りを占うにあたって正しいシグナルなのでしょうか。

 確かに過去50年を振り返ると、米国債2年物と10年物の利回りの逆転が起きると、しばらくしてリセッションが訪れるというパターンが繰り返されています。ただ私はこういうパターンが観測できるとき、単に「長短金利逆転=リセッション」と決め付けるのではなく、なぜ長短金利が逆転するとリセッションが訪れるのか、きちんと理解することの方が重要だと考えています。 それでは長短金利が逆転するとなぜリセッションが訪れるのか? それはズバリ「銀行が貸し出しをできなくなる=経済に血液が回らなくなる」からです。

 ご存じの通り銀行というのは基本的に、短期の資金を調達して長期で貸し出すビジネスをしています。通常、短期金利が長期金利よりも低いので、これが銀行の利益につながります。しかし、短期金利が上昇し長期金利との差が縮小すると、銀行は貸しても利益が出ないので、貸し出しを控えるようになります。前段に長短の利回りが逆転すると「しばらくして」リセッションが訪れると申し上げましたが、こうして銀行全体に貸し出しを控える動きが広がり、それが経済に影響を与えるようになるのに時間がかかるので、リセッションは「しばらくして」訪れるようになるというわけです。

 これを理解した上で、米国債3年物と5年物国債の利回りや2年物国債と10年物国債の利回りが本当にリセッション入りのシグナルとなるかを考えてみたいと思います。結論から申し上げると、私は「たまたまそうなっただけと言えなくもない」と考えています。というのは現在の経済状況で、本当に銀行が貸出しを控えていく可能性はあるのか?ということです。米大手銀行の直近の財務諸表を見ると、おおむね、調達金利は1%弱、貸出金利は4%弱というのが平均的な姿で、米国大手銀行は3%近い金利差を確保できています。そして景気が好調なため、金利上昇にもかかわらず貸し出しは順調に伸びています。

 この3年近くでFF(フェデラル・ファンド)金利は2.25%上昇しましたが、銀行の調達金利はせいぜい1%弱の上昇です。その一方で貸出金利はほぼ政策金利に連動して上昇してきましたから、現在、銀行にとっては近年まれに見る、理想的な収益環境なのです。 

 大手銀行の総資産利益率は金融危機以降着実に上昇してきて、直近の決算ではJPモルガンで3.3%、バンク・オブ・アメリカで2.9%といずれも金融危機後の最高水準となっています。実際、その辺の米国の銀行に行っても預金金利はせいぜい0.5%しか付きません。しかし貸出金利は着実に上昇しているのですから、今、銀行の経営者は笑いが止まらないのではないかと思います。貸し出しを控えるどころか、「借りたいならいくらでも貸してやるよ」という状況でしょう。このような状況の中で近々リセッションが訪れるとはとても思えません。

 要するに重要なのは、2.8%近辺の2年債利回りでも3年債利回りでもなく、現在銀行が調達できている短期の金利水準は0.8%近辺なのです。そして、3%割れで推移している10年債利回りではなく、貸し出しできている金利の水準は3.8%近辺だということです。 この先、数回の利上げが織り込まれて高い水準となっている2年債や3年債の利回りを見るのもミスリードなら、銀行に貸出先がなくなって10年物国債でしか運用できなくなっている状況を想定するのもミスリードだということなのです。そして過去、このような国債利回りの逆転からしばらくして、リセッションが訪れたのは「たまたま」その後も金利の動きが行き過ぎて、銀行の調達、貸出金利に影響を及ぼす水準にまで到達したから、と考えるのが自然だと思います。

 株式相場が下落すると、人々は下落している理由を必死に探し始めます。「自分が知らない悪材料を先に知っている投資家が売ってるのではないか」と不安になるからです。そしてその不安はメディアに対する情報提供の需要増加という形で表れます。視聴者も購読者もクリックも増えるでしょう。メディア業界が下落局面を優先的に取り上げるのはこのためです。そういう点では「11年ぶりの3年物と5年物国債の利回り逆転」はそのように不安になった人々の需要を満たすための格好の材料だったのでしょう。

 しかしこのような偽のシグナルにだまされていては、投資家として長期的にリターンを上げることはできません。むしろ注目すべきは今回の銀行株下落によって提供されているバーゲンセールの機会だと思います。JPモルガンの時価総額の6%近くに及ぶ自社株買いと3%近い配当、バンク・オブ・アメリカの8%近くの自社株買いと2.2%の配当などなど。長期的投資の観点から見れば、これらこそ本物のシグナルだと考えています。

201812月4日記)







最終更新日  2018.12.08 04:54:33
2018.09.08
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米国株は歴史的にパフォーマンスの悪い時期を迎えています。20019月には同時多発テロ、20089月にはリーマンブラザース破たんという歴史的なイベントもありましたし、そうでなくても2011年秋にはアメリカ国債デフォルトの懸念が高まったり、2015年秋には中国株安を発端とした世界的な株安がありました。もちろんこのような、メディア的に分かりやすい下落要因もあるのですが、この時期はアメリカの税制が理由で、市場で実際に売りが出やすい時期というのが、第一の理由です。

というのは、アメリカでは12月末が個人所得の決算期末となっていますが、それまでに配当の支払い等を完了させるため、投資信託の決算期末が10月末に集中しています。投資信託会社は個人の税金負担を軽減するために、ポートフォリオ内で損益通算のための取引(含み益と含み損の出ている銘柄を同時に売却)を、それまでに積極化させるのが大きな要因とされています。今年はS&P500指数はこれまでで約7.5%の上昇となっていますが、上昇が一部のセクター・銘柄に集中しているということもあり、このような損益通算による売りが出やすい状況と言えます。

第二の理由として、この時期は2年に1回選挙前ということになりますが、今年は中間選挙があるのでそれに該当します。今回の中間選挙では、下院で民主党が過半数を奪回する可能性が高いと見られています。そしてこれは正に今起こっている事ですが、これを巻き返そうと、共和党も様々な過激な策を打ち出しつつあります。これに対して民主党も、トランプ大統領に対してなりふり構わず攻撃の手を強めています。このように、政治的な不透明感が高まりやすい時期であり、これは株式投資にとってはマイナス要因となります。

第三に、今月後半に予定されている利上げです。アメリカ経済が好調であることは間違いないのですが、だからと言って特にインフレ率が上昇しているわけではありません。むしろ新興国市場の問題もあってドルは上昇しており、これによって私が見ている5年物期待インフレ率は春以降低下傾向にあり、足元ではFRBの目標である2%を下回ってきています。市場では利上げはほぼ確実視されているようですが、利上げを数カ月遅らせたからといって何のデメリットも無いような状況で行われるわけですから、株式市場は「余計な利上げ」と捉える可能性が高いと見ています。

第四に、これはヘッジファンドの成功報酬に関わる税制なのですが、今年から成功報酬に対する課税の繰り延べが認められなったため、納税のためにヘッジファンドが利益の出ている銘柄を現金化のために売却せざるを得なくなるというものです。今年は3月末と6月末に向けて米国株式相場は大きく下落していますが、この税制が少なからず影響していたものと考えられます。とすると、恐らく9月末に向けても同じような動きが出る可能性があると見ておくべきだと思います。

第五に、これらの悪材料を吸収するようなサポート材料が、特に9月は見当たらない事が挙げられます。現在、アメリカの株式相場を支えている大きな要因は企業業績ですが、次回本格的に決算発表が始まるのは10月半ばです。どのような悪材料が出ていようとも、株価評価の本質である業績が良ければそれによって株価は上昇するものですが、そのきっかけがこの先数週間は見当たらないという状況なのです。

このように見てくると、今年もこの時期、調整局面が訪れる可能性が高いと考えざるを得ません。しかし私は同時に、この調整局面が米国株投資にとって絶好のチャンスとなる可能性が高いとも考えています。

というのは上記に挙げた米国株の調整材料は全て、10月に入れば順次無くなっていくものだからです。投資信託による損益通算操作は決算期末のギリギリまでやっているとは思えませんし、選挙直前になれば殆どの材料は相場に織り込まれるでしょう。利上げは必要とは思いませんが、本当にそうであれば長期金利が低下することによって株式相場のサポート材料となるでしょう。ヘッジファンドによる納税のための現金化は9月末がピークと推測されますし、10月になれば恐らく、前年比で今年最高の増益率となる決算発表が始まります。そして何と言っても、来年はトランプ大統領が任期3年目に入ります。歴代の大統領は再選を目指し、任期3年目に経済や株式相場を持ち上げてくる傾向が顕著です。

前号で米国株式のリスクはむしろ「過剰な上昇」だと記しましたが、こう考えてみるとそれが始まるのはそれほど先の話では無いのではないか、そうだとするとこの時期の調整局面はむしろ絶好の投資機会と捉えるべき、と考えています。

201895日記)







最終更新日  2018.09.08 00:38:56
2018.08.08
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米国の第2四半期GDP成長率(国内総生産の成長率速報値)は年率換算で4.1%と、約4年ぶりの高い伸びを記録しました。ブレの大きい純輸出が成長率を1%強引き上げた一方、設備投資がやや足を引っ張る形となりました。

 これはおそらく、昨年末に成立した減税法案の中で、設備投資減税の適用について、企業側が税務当局の通達を待っているのが要因と考えられます。税務当局の通達があると思われる秋以降は、減税のメリットを受けようと、企業が駆け込み的に設備投資に踏み切ってくることが予想され、純輸出に代わる米国経済成長の担い手となってくることでしょう。

 さて、このような米国経済好調の一因は、言うまでもなく、昨年末に成立した30年ぶりの大税制改革にあります。個人所得減税は今年1月から始まっているため税引き後所得が増加し、月を追うごとに個人の懐が豊かになっています。第2四半期は、個人消費だけで2.7%と高い成長寄与となりましたが、明らかに個人所得減税の影響が出始めているということでしょう。

 しかし、昨年末に成立した1.5兆ドルに上る減税の、約9割を占めるのは法人税減税です。これまで先進国で最も高い法人税率であった米国が、英国に次いで2番目に低い法人税率にまで一気に法人税を引き下げたことで、これまで法人税率の高さを理由に、米国を避けていた企業は米国でのビジネスを検討するでしょうし、米国から出て行っていた企業は米国にビジネスを戻すようになるでしょう。中長期的に見れば、このような大きな構造的変化が米国の成長率を引き上げる結果になるでしょう。

 通常、景気を良くするために実行される政策として、このような財政政策はもちろん大きな柱の一つです。しかし、直近のトランプ政権の経済政策を見ていると、他にも次から次へと刺激策が打たれていることが分かります。

 第一に、トランプ大統領就任直後から実施されている規制緩和です。とりわけ就任直後に出された大統領令13771によって、各省庁が新たな規制を一つ設けるごとに、二つの既存規制を撤廃しなければならない事になりました。規制緩和によってパイプラインの建設が促進され、評判の悪いオバマケアの規制が一部緩和され、金融規制が実質的に緩和されつつあります。規制の数で言うと、オバマ政権のピークから既に4割削減されてきており、上記大統領令によって、今後もこの傾向は続く見込みです。

 第二に、今、世間を騒がせている通商問題です。もちろん通商問題は悪化しない方が望ましいのですが、米国は定常的に貿易赤字の国。関税等で圧力をかけたところで、経済に与える影響はほとんどないと見られます。むしろ過去三年間、赤字によって、経済成長率は2015年で0.8%、2016年と2017年にそれぞれ0.3%引き下げられており、貿易赤字が減少すれば、それはそのまま、米国の経済成長率を引き上げることになります。

 今は米中貿易戦争として、市場の不透明要因となっていますが、もし将来、何らかの形で決着がつけば、不透明要因の後退と米国の経済成長率上昇によって、ダブルで市場のサポート材料になりえるということです。

 第三に、つい先月、トランプ大統領がメディアとのインタビューで「金利の引き上げは望ましくない」「ドルの上昇は望ましくない」と発言したことです。とりわけ財政政策に力を入れているような時にドルが上昇すると、その効果が国外に逃げてしまうので、なるべく阻止したい、という気持ちは分かります。しかし、一般に他の条件が一定であれば、金利を低くしドルを安くすれば、これらは景気の押し上げ要因になります。

 要するに、トランプ政権としては、昨年末に大税制改革によって財政政策を打ち出したのみでなく、規制緩和によってさらに景気を刺激し、通商交渉を通じて赤字を減らして成長率引き上げを目指し、金利もドルも上げさせない、という、強烈な景気刺激策を打ってきている状況だということです。

 前述の通り、第2四半期の成長率は4.1%と高い数字になりましたが、これらいずれの政策もフルに成長率に反映されている状況ではありません。今後、時間を追って成長率に反映されてくるとすれば、とてつもない景気刺激になるのではないか、そしてリスクは下方サイドではなく、むしろこれから大きく上方サイドに行き過ぎるリスクなのではないか、と思えてくるのです。

 そして、行き過ぎが金利や為替に反映されないとすれば、株価に反映されるしかありません。2009年以降、景気の拡大が続き「次のリセッションはいつか」との声が日増しに増える中、S&P500指数の2019年予想ベース株価収益倍率は16倍と、むしろ割安感があるくらいで、近々メルトダウン(大きな下落)が起こるというのは非常に考え難い状況です。唯一、メルトダウンがあるとすれば、それはメルトアップ(大きな上昇)があった後のみでしょう。

 現在、多くの人が想定していないからこそ、この先、むしろメルトアップのリスクを念頭に置いておく必要があると考えています。


(2018年8月3日記)







最終更新日  2018.08.08 05:08:05
2018.06.25
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あと3カ月弱でいわゆる「リーマンショック」から10周年になります。米国では歴史的におおむね、景気が良くなると金融規制が緩くなり、景気が悪くなった後に金融規制が強化されるというサイクルが繰り返されてきました。本来逆であることが望ましいのですが、やはり問題が起こっていない時にはなかなか金融規制には手を付けられないものです。リセッションに入って不良債権が表面化し、初めてその融資が不適切であったり違法であったりというのが判明し、関係者が逮捕され、その後その失敗を二度と繰り返さないように規制を強化する、というのが過去のパターンです。

 しかし、この10年間は過去のパターンとやや異なります。逮捕者が出なかったこともそうですが、不良債権の規模が過去と比べて格段に大きかったこと、そしてそれによって格段に厳しい金融規制が導入され、その状態がずっと続いてきたことです。皆さんご存知のいわゆる「ボルカ―ルール」もそうですが、それ以上に金融規制下で監督役を命じられたFRB(米連邦準備制度理事会)による質的な規制は非常に厳しいものでした。トランプ政権が成立したことで、それまでFRBで非常に厳しい監督をリードしてきたタルーロ理事は2017年4月をもって辞任となりましたが、その後も目に見えて金融規制が緩和されるということはありませんでした。

 しかしその状況が、今週6月28日をもって変わろうとしています。これはトランプ政権下で金融規制のトップに就任したFRBのクォールズ理事のもとで、初めてストレステスト結果が発表される日だからです。

 すでに第一弾のストレステスト結果は6月21日に発表されました。それによると、経済成長率がマイナス8.9%、失業率が10%に上昇、ダウ平均が60%以上下落するという、10年前の金融危機を超える大リセッション入りするというシナリオの下でも、大手35行は全て健全性を維持できる、という結果となりました。これは逆に言えば、10年の金融規制が如何に厳しいものだったかを示すもので、端的に言うと、金融機関に無駄に余剰自己資本を積ませている状態がずっと続いてきたことを意味しています。

 6月28日に発表されるストレステスト結果では、各金融機関がFRBに提出した資本計画が承認されるかどうかが判明します。金融機関は軒並み過剰自己資本の状態ですので、承認されれば、少なくとも1年分の利益によって積み上がった自己資本は全て株主に還元されることが予想されます。現在、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍ですが、大手行の株主である限り、この逆数である8.3%から10%が今後毎年得られることになるというわけです。ちなみにこの8.3%から10%のうち、配当で得られるのが2.5%前後、残りが自社株買いによって還元されていくことになると見ています。

 6月22日時点でS&P500指数は年初来3%の上昇となっているのに対して、米国の金融セクターからなるETF(XLF)は逆に3%の下落となっています。前述の通り、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍と割安ですが、割安に据え置かれている理由の一つは、生まれた利益が本当に株主の手に渡るかどうかが投資家にとって不透明だからでしょう。

 しかし6月28日にストレステストの結果が発表された後にははっきりします。10年物国債の利回りが3%を割っている時に、8.3%から10%の利回りというのは、リスクを勘案しても魅力的に見えます。魅力的すぎるので恐らく、株価が上昇することによって適正な利回りに収束すると見るのが自然でしょう。

 金融機関をサポートするもう一つの材料は昨年末に成立した法人税減税の影響です。金融機関は法人税減税のメリットをより多く受ける可能性が高く、その分税引き後利益が増えて自己資本が増加、株主還元を実施しやすい状況になります。また法人税減税によって米国全体の企業の税引き後利益が増加しますので、金融機関の貸出先の自己資本増強にもつながり、与信リスクが低下するという側面もあります。

 一部には金融危機から10年、そろそろまた訪れるのではないか、という声も聞かれます。しかし、金融危機時の大手金融機関のレバレッジは30~40倍、現在は上記の通り、せいぜい10倍。今は金融危機を起こそうと思っても起こせない状態なのです。

(2018年6月22日記)







最終更新日  2018.06.25 22:52:16
2018.05.02
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皆さんの中にも、次世代の成長をリードすると見られる米国の大手ハイテクの代表的銘柄群、いわゆる「FAANG銘柄」(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)に投資していらっしゃる方は多いと思います。当コラムや私の講演等でも、この中でネットフリックス以外についてはしばしばご紹介しています。

 ニューヨーク証券取引所にはFAANG銘柄によって構成されている「NY FANG指数」というものがありますが、この指数は2017年、56%もの上昇率となり、米国株をより広くカバーするS&P500指数の上昇率18%を大きく上回りました。しかし、NY FANG指数は2018年初から3月半ばにかけてさらに24%上昇。さすがに調整なしにそのまま上昇できないペースとなったところで今回の調整を迎えることになりました。

 今回の調整について、「上昇ペースが速い」以外に市場で言われている理由はさまざまです。フェイスブックは大きく報じられたケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩問題、グーグルはこれをきっかけとしたインターネットに対する大規模な規制導入懸念、アマゾンは連日に渡るトランプ大統領からのツイッター攻撃、そしてアップルはiPhoneの売上成長鈍化懸念です。

 確かにこのような理由はあるのですが、そもそも2カ月半で24%と言うと、1年間で115%の上昇ペース。いくらFAANGでも、これは維持は不可能でしょう。そこにちょうど良い調整理由が出てきたというのが、自然な受け止め方ではないかと思います。

 上昇ペースが速かった分、調整も大き目になるのは当たり前ですが、このようなときに大きなサポート材料となるのが、「バリュエーション」です。要するに株価が下落しても、バリュエーションが割安であれば下値は限られたものと見ることができますし、一方で調整後でもバリュエーションが高ければ持ち続けることはできなくなるでしょう。

 このような観点から、FAANG銘柄が現在どのような位置にいるのかを見てみたいと思います。なお、FAANG銘柄のうちネットフリックスは当社として分析の対象外なので省かせていただきました。

●フェイスブック(FB

 確かに今回のケンブリッジ・アナリティカを通じた個人情報漏洩は深刻な問題であり、フェイスブックは責任を逃れられないと思います。ただ今回の失敗をきっかけに、フェイスブックは今後二度と同様の過ちを犯さないような措置を取るでしょうし、中長期的にそれはかえって非常に強固で、安心感が持てるものとなるでしょう。

 1日当たりアクティブユーザー数が15億人に迫るプラットフォームは全メディアにとって脅威であり、今回のスキャンダルを各メディアがより大きく取り上げるのは当然です。メディア報道によってより不安心理が高まり、2019年予想PER16倍台と、S&P500指数平均とほぼ変わらない水準にまで下がっている現状では、悪材料はかなり織り込まれたと思います。

●アマゾン(AMZN

 FAANG銘柄の中で、ビジネスにしている市場規模が最も大きく、そしてそこから予想される成長率が最も高いのがアマゾンでしょう。従って当然のことながらPERも高く、調整局面が訪れたときになかなか下値を読みにくい銘柄かと思います。

 ただ私は今回、トランプ大統領が下値を教えてくれた感じがしています。一企業にとって、世界最強の国の大統領が連日ツイッター攻撃する以上の悪材料はあるでしょうか? アマゾンは3月末にかけて連日トランプ大統領のツイッター攻撃を受けて株価は1,300ドル台。今後よっぽどのことがないと、この水準を下回る状況は考え難いのではないでしょうか。

●アップル(AAPL

 iPhoneの需要が多くて生産が追い付かないと「供給不安」、店頭にiPhoneが並んでいると「需要減少」――これはメディアがアップルについて報道するときの常套手段となりました。私もアップルやiPhoneの売上動向についてはもう10年近く分析していますが、繰り返される一定のパターンがあり、メディアはその波を捉えて報じているだけというのがよくわかります。

 保有する現金から税金を差し引いた時価総額で2019年予想PERを計算すると11倍を割り込みます。ビジネスの上下動をよく理解し、これに耐えられる中長期的な投資家は、引き続き十分報われる状況だと思います。

●アルファベット/グーグル(GOOGL

 検索以外の事業を拡大しつつあり、それによって中身がわかりにくくなってきているのが一因で、比較的高い成長率の割に2019年予想PER20倍と、市場平均を少し上回っている程度です。

 検索エンジンと並んで傘下のYouTubeは「金の成る木」に近い良いビジネスであるほか、現在進行中のさまざまな投資・開発案件が将来芽を結んでくることによって得られる収益はほとんど評価されていない状況です。もちろん割安な株価がさらに割安になる可能性はありますが、こちらも長期の投資は報われる可能性は高いと考えています。

 このように2000年のネットバブル期と異なり、昨年の非常に高い上昇率にもかかわらず、利益成長率も高かったおかげで、今回株価調整後の大手ハイテク銘柄はバリューの観点から見ても、調整前とほとんど遜色のない水準だと思います。もちろん、市場が再び評価してくれるようになるまでには時間が必要でしょうが、その時間を待つ(=リスクを取る)価値はあると考えています。

2018430日記)







最終更新日  2018.05.02 01:56:21
2018.03.14
カテゴリ:カテゴリ未分類
森友の書類改ざん問題を巡っては各方面から「前代未聞」「信じられない」との声が上がっています。もちろん性善説が前提であればそうなるのかもしれません。ただ私のように、金融の世界に居る人間は、何事においても「絶対」という考え方はせず、確率で考えるようにしています。たとえば確かに、財務省が書類を改ざんという行為を行っているような可能性は、限りなくゼロに近かったでしょう。しかし、もともとゼロではありません。しかも客観的に考えて、終身雇用制が前提である日本では、そうでない米国よりも、不正が行われる可能性は高めに見積もっておかなければなりません。

 もちろん米国でも企業の不正は多く起こっています。しかし米国では雇用・被雇用は基本的に自由ですから、不正が起こるのは多くの場合、動機は金銭です。不正を働く人も普通はリスクとリターンのバランスを考えるはずですから、リターンを大きく上回る刑事罰や罰金を設定しておくことによって、多くの不正を防ごうとするシステムになっています。たとえば2008~9年に投資詐欺が発覚したメイドフ受刑囚やサンフォード受刑囚は、いずれも100年以上の禁固刑と共に、巨額の罰金が科せられています。2002年に粉飾決算が発覚したエンロンのCEOは今も服役中です。

 これに対して、終身雇用制が前提である日本で起こる不正は、問題が厄介です。というのは、実際に株主等が被る被害は非常に大きくても、多くの場合その動機は金銭目的ではなく、昇進や評価だからです。しかも日本では裁判等でも「株主のようなお金持ちが被る損失」は優先順位が高くない一方、昇進や評価目的の不正は情状酌量の余地が大きいと判断され、罪が軽くなる傾向があります。与えた損失は巨額でも、日本のホワイトカラー犯罪で、禁固10年以上の刑となるようなケースは極めて少ないのではないでしょうか。

 この結果、日本では不正を働くことによるリスクがリターンに対して非常に甘くなっていると感じます。終身雇用制において、被雇用者が昇進や評価に置く価値は非常に大きなものです。給与や賞与、退職金、年金など金銭的なものにとどまらず、やり甲斐、地位、世間体、名誉などお金で買えない(測れない)大きな価値が入っているからです。

 また上司に不正を指示されたとして、それを拒否したときに想定される不遇な状況も計算に入るでしょう。日本は「就職」でなく「就社」の色彩が強く労働市場が流動的ではないので、もし会社を辞めざるを得なくなったら、などを勘案すると、相対的な価値はさらに大きくなります。このような価値が法的に適正に反映されないことによって、不正を働くことに伴うリスクに比べ、得られるリターンが大きくなってしまっているのです。

 終身雇用制は経営者の判断も歪めます。業績が悪くなっても従業員をクビにできないので、仕方なく粉飾決算に手を染めることになります。幸いゼロ金利がずっと続いているので、粉飾決算は長い間表面化することもなく、ゾンビ企業として生き続けることができます。問題が発覚しても「雇用を守るためにやりました」と言えば、裁判所が情状酌量してくれるだろう、という期待も計算式に入っているでしょう。本来であれば、優秀な人材はさっさとそのような会社を去って新天地でその能力を発揮すべきところが、それを難しくしているのが終身雇用制なのです。

 このような終身雇用制がもたらす問題を考えれば、それを防ぐシステムは非常に強固なものでなければなりません。しかし残念ながら、米国に比べ、多くの日本企業のコーポレートガバナンスは弱いままです。取締役会のメンバーのほとんどが従業員出身者であったり、過剰な買収防衛策を採用していたり、株主優待制度によって相対的に外人投資家を不利にしていたり、多くの子会社を抱えていたり…もちろん、多くの組織は倫理観に優れ、不正とは関係ないのでしょうが、このような要素を一つ一つ積み上げていくと、終身雇用制に伴うリスクは、客観的に判断して、一般的に高く見積もっておかなければなりません。これは実際、オリンパスや東芝など、多くの企業不正が発覚していることによってすでに証明されています。

 何よりも、このような状況は日本経済全体にとって大きなマイナスです。財務省にいるような優秀な人材が、修正液やコピー機を駆使した工作作業のために深夜まで残業を強いられるというのは、資源の大きな無駄遣いです。企業でも不正を指示されるようなことがあれば、サラリーマンである前に、人間であることを思い出していただきたいと思います。終身雇用制と日本のガバナンス体制を考えれば、今のところ、このような不安を払拭できるのは一人一人の倫理観しかないのだと思います。今回、3月2日付け朝日新聞の記事をきっかけに財務省による文書改ざんが明らかになりましたが、リーク元は、倫理観と勇気ある財務省内部であったことを願うばかりです。

(2018年3月14日記)






最終更新日  2018.03.17 00:18:57
2018.02.09
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 2月に入って米国株式市場は久しぶりの調整局面を迎えました。メディアなどでは1月の雇用統計が好調で、特に平均時間当たり賃金が前年同期比2.9%の上昇と8年半ぶりの高い伸びとなり、長期金利が上昇したことが要因とされています。ただ長期金利が上昇したと言っても当日の市場で10年物国債は0.08%上昇しただけであり、このくらいの上昇はいつでもあり得ることです。また賃金上昇率=インフレ率ではなく、実際、現在インフレ連動債から計算した5年物期待インフレ率は1.8%台と、金融危機後のレンジ1.2%から2.4%のほぼ真ん中にとどまっており、直ちにインフレを警戒しなければならない状況でもありません。

 もちろん雇用統計及びそれを受けた長期金利の上昇が調整のきっかけとなったのは事実でしょうが、主因はここ数年積み上げられていた株式オプションを売ってオプション料を稼ぐ動き(一部で変動率指数「VIX <恐怖指数>」のショートと呼ばれる)にあります。多かれ少なかれ、株式相場の下落要因は大きく景気変動要因によるものと、今回のVIXショートにみられるような、リスクの担い手がそのリスクを担い切れなくなることによるものに分かれます。今回の場合は一部、VIXショートに特化したETF(上場投資信託)が閉鎖に追い込まれたことにも象徴されているように、景気変動要因によるものではなく、明らかに後者のほうです。

 米国では株式のオプション(買う権利や売る権利)が盛んに取引されています。オプションはいわば、株価の上下に対する保険のような役割を果たしていて、オプションの売り手はある程度以上の値下がりや値上がりに対して保険金を払う代わりに、保険料をもらえる仕組みになっています。保険においては引き受け手となれるのは保険会社だけですが、オプション市場では基本的に誰でも引き受け手(売り手)となることができます。また保険金が支払われるようなイベントを意図的に起こすのは困難な(または犯罪となる)のに対して、オプション市場では意図的に起こすことは不可能ではありません。たとえば何らかの悪材料が出たのをきっかけに金曜日の出来高の少ない所を狙い、株価を下げて保険金を支払わせようとすることもできてしまいます。とりわけ、米国の景気が好調で、ここ2年近く株式市場でこれといった調整もなく「株価の大きな下落はないだろう」と、多くの投資家が油断してオプションの売り手に回っている状況では、それはマグマのように溜まり、いずれ噴火してしまう確率が高まる・・・今回の調整も正にそのような状況で起こりました。

 オプションを売ること自体は、株式に投資すること同様、市場における1つの有効な投資手段です。多くの人がリスクを回避したいという需要がある中、オプションを売ることによってその需要に応えることは市場を安定させ、ひいては経済の成長に寄与する効果さえあると思います。問題は、保険料に当たるオプション料が適正であるかということです。最近で言うと、オプション料の算定に使用されるS&P500指数の変動率は10%台前半と、歴史的に見て極めて低い水準で推移していました。要するに、保険の引き受け手が、実際のリスクに見合った保険料をもらっていない状態なのです。多くの場合、保険金を払わなければならないようなイベントはすぐには訪れないので、保険料欲しさに引き受け手が油断して、そのような状況が長引くと要注意ということなのです。
 
 これは1987年ブラックマンデーの引き金となったいわゆる「ポートフォリオ保険」や2007年に始まった金融危機におけるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)をはじめ、最近では2015年8月や2016年2月の調整局面でも起こっています。リスクの担い手がそのリスクを担い切れなくなることによって起こるという点で、そのメカニズムはすべて同じです。

 もっとも、変動率が低いからといって直ちにそれがおかしいとか、バブルとかいう話ではありません。ただあまりに変動率が極めて低い水準が長く続くと、前述のようにマグマが徐々に溜まっていきます。残念ながら、そのマグマがいつ噴火につながるかというタイミングを当てることは出来ません。ただ私が行っている分析で、その確率を計算することはできます。簡単に申し上げれば、変動率が低いこと、そしてその期間が長いことが次の噴火の確率を上昇させる要因になります。そしていったん噴火が起こると、一気に次の噴火の確率が下がり、起こったとしても大した噴火とならない確率が高まります。今回も、数週間も経てば市場は落ち着きを取り戻し、次の噴火まではしばらく時間的余裕ができるということになるでしょう。

 基本的には今回の調整もこのような理解で良いと考えていますが、一点、勘案しておかなければならない要因があります。それはFRB(連邦準備制度理事会)議長が交代したことです。バーナンキ氏は2006年に、イエレン氏は2014年にそれぞれFRB議長に就任し、市場では「バーナンキ・プット」や「イエレン・プット」など、要するに株式相場が下がっても、FRBが金融政策で適切な対応を取ってくれるとの期待がありました。2月5日にパウエル氏が新FRB議長に就任しましたが、今後もはたして「パウエル・プット」は有効なのでしょうか?おそらくそうなのでしょうが、今後本当にそうなのかを市場が確信することが必要で、そのリスクは、これまでよりもやや高い変動率という形で市場に反映されることになるでしょう。株式相場が急落した2月2日、これは雇用統計が発表された日であると同時に、イエレン氏がFRB議長としての任期を終える前日であったことを忘れてはなりません。

(2018年2月9日記)






最終更新日  2018.02.15 04:47:04
2017.12.12
カテゴリ:カテゴリ未分類
アメリカで約30年ぶりの抜本的な税制改革が成立間近となっています。法人税減税の20%への引き下げをはじめとする税制改革法案は11月半ばに議会下院を通過、12月2日に上院も通過して、現在上下院で条項の異なる部分について調整が行われており、早ければ議会が閉会する15日までに成立の可能性もあります。年内の成立が無理でもおそらく来年初には成立に持ち込める見通しで、懸案であった税制大改革はついに現実のものとなりそうです。一方で税制改革に対する最近のメディアの報道や市場の反応を見ていると、誤解と思われるものが多々見られます。

 第1に、「来年減税となるのだから、年内は株の売りを控え、来年1月に株を売ったほうがいい」という誤解です。実は今回、株式を多く保有する高所得者層の投資に関わる税率(キャピタルゲイン税率や配当税率)に変化はない見込みです。それだけではなく、上院・下院両方の法案で、連邦所得税からの州税・地方税の控除が廃止される方向です。これによってニューヨークやカリフォルニアなど州税・地方税率の高い地域に住む人にとっては逆に、来年は増税となります。

 さらに現在、上院の案では税法上「株式は先入れ先出し法によって売却しなければならない」という条項が入っています。現在は税法上、投資家はどの株価で買った株かを選んで売却することが認められているので、むしろ自由が利く今年中に売ったほうが有利ということになります。州税・地方税のない地域に住む低・中所得者という一部の投資家を除いては、全体で見れば、もともと予定していた株の売却を来年1月に持ち越す理由は見当たりません。

 第2に、「ハイテクは海外に留保している利益が多いので、減税のメリットをより大きく享受できる」という誤解です。確かにハイテクはグローバルに展開している企業が多く、海外に留保している利益が多いので、海外留保利益を米国に戻す際の減税措置が受けられます。ただその際の税率は当初予想された10%ではなく、上院案では14.49%、下院案では14%と高めになっています。

 また今回は「アメリカの」法人税が減税になるのですから、グローバルに展開しているハイテク企業にとってのメリットは相対的に小さいことになります。さらに今回の上院案には法人税の「代替ミニマム税」が盛り込まれています。これは設備投資や研究開発費に認められている減税のメリットが一定以上となった場合、減税額が制限されるというものです。ハイテク企業は相対的に設備投資や研究開発費を多く使っていますから、この条項はハイテク企業にとって不利ということになります。

 第3に、「税制改革審議の難航で株式相場が下落」という、メディアによる誤解を招く報道です。今年はここまでS&P500指数は18%上昇していますが、セクター別で見て最も上昇しているのは前述の通り、相対的に減税のメリットが小さいはずのハイテクで、36%上昇しています。逆に、相対的に「アメリカの」法人税減税からのメリットが大きいはずのエネルギーセクターはマイナス7%、通信セクターはマイナス10%です。

 要するに、今年株式相場は上昇していますが、税制改革法案の成立を期待して上昇してきたわけではないのです。よって審議が難航したからといって下落する余地など、そもそもほとんどないはずなのです。12月に入って上下院で税制改革法案が通過し、成立の見通しが立ってきたことでハイテク売り、エネルギー・通信買いという税制改革法案成立を織り込むような動きが少し見られましたが、全体としては税制改革による影響はまだまだという状況です。

 要するに、そもそもこれまで市場の税制改革法案に対する期待は高くなかったこともあり、そのメリットが本格的に経済・市場に表れてくるのはこれからです。そして忘れてはならないのは、この税制改革はトランプ政権にとって経済政策の第一歩であり、今後もインフラ投資やさらなる規制緩和などの重要政策が次々と控えているということです。

(2017年12月8日記)






最終更新日  2017.12.12 05:52:29

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