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山崎元のホンネの投資教室

2006年01月05日
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2005年7月15日

■「仕掛け」としてのアイドル・ファンド

 ここのところ、幾らか理屈っぽい原稿が続いたので、たまには少し軽い話題を取り上げてみようと思います。
 近年、新型の「ファンド」と称する運用商品がいくつか現れて、話題になっています。映画やゲームソフトなどの制作費に投資して後の収入から 分配金を受け取るもの、ラーメン店に出資するもの、さらにはアイドルのキャンペーン費(たぶん)を負担して、写真集やDVDが売れた場合に分配金を 受け取る通称「アイドル・ファンド」と呼ばれるようなものも登場して話題を集めました。
 アイドル・ファンドについては、今までに二回募集がありましたが、投資対象となったアイドル数人の中からプラスの投資収益を生んだアイドルは 残念ながらまだ出ていないようです。しかし、アイデアの面白さが受けたものか、大いに話題となり、マスコミへの露出を宣伝費に換算すると、ファンドで 集めた金額の何十倍にもなったのではないかとも思えました。宣伝のための「仕掛け」としては、アイドル・ファンドは大成功だったと思います。
 筆者は、雑誌の連載コラムでアイドル・ファンドについて取り上げたことがあったせいか、アイドル・ファンドについて何度かメディアの取材を 受けました。取材にお見えになった媒体はTVもあれば新聞・雑誌もありましたし、「これから期待される種類の金融商品だ」と決めてかかった期待満々の 方もあれば、「こんなもので本当に儲かるのか」と懐疑的な方もいましたが、何れも、この商品を、投資信託とほぼ同等の商品のように考えているのでは ないかという印象を受けました。しかし、本当にそう考えていいのでしょうか?


■先ず「保管」、次に「お金の流れ」をチェック

 さて、たとえば、「アイドルの写真集とDVD売上の一定割合を収益金として分配する」といった金融商品に投資する場合には、 何をチェックするといいのでしょうか。アイドルに限らず、この種の新型のファンドもののチェックポイントを考えてみました。
 まずチェックすべきは、払い込まれたお金の「保管場所」と、資金の使途をはじめとする「お金の流れ」だろうと思います。
 いわゆる投信、正式には証券投資信託の場合は、信託銀行に資産が保管されて、運用会社の運用指図に従って主に有価証券に投資されます。 たとえば運用会社が倒産しても、運用資産は保全されていますし、これを詐取するようなことは簡単ではありません。
 これに対して、新型ファンドがしばしば使う、たとえば匿名組合といった形式では、資産の保全に関して投資信託ほど万全とは思えません。 また、投資信託では原則として毎日資産の時価を基準価額として計算し、提供しますが、そういった情報提供もありません。この種のものが投資信託と 似ているからといって、これを投資信託と同一視してはいけないと思うのですが、投信に詳しいと目される専門家で、アイドル・ファンドを 「いわば投資信託だ」と評した方がいて、これには驚いたものです。
 それでは、たとえば匿名組合契約はどのくらい安全なのかということが問題になります。詳しくは法律の問題になりますが、投資としてまじめに 考えるなら、正しいアドバイスは、少々意地悪ですが「匿名組合を理解していない人は匿名組合に出資してはいけない」ということになります。 知らないものに大切なお金を投資するのは感心しませんし、他人に聞いたことを鵜呑みにして投資するのもいいことではありません。
 さて、「保管」が一応大丈夫なら、次のポイントは資金の使途から収益分配に至るお金の流れです。お金がどこの何に支出されて、その次には、 何に対して、どのような形で収益が分配されるのかという流れを具体的且つ正確に理解しましょう。
 アイドルの写真集を製作するというのであれば、ファンドの資金のどのくらいの割合が、写真集の何に、そして誰に支出されるのか、 というイメージを持つことが重要です。たとえば、カメラマンといってもピンからキリまででしょうし、ファンドの主宰者と写真集の制作を請け負う 会社の関係なども重要でしょう。また、写真集の売上をどのように把握して、そこから何パーセント、どのように分配金が支払われるのかといった 収益分配のお金の流れも大事です。


■その次に「収益見通し」

 ファンドが儲かりそうかどうか、このアイドル候補は売れるだろうか、といったことを考えるのは前記のようなことを考えた後です。
 アイドルの写真集が何冊売れると幾らの収益になるのか、それは現実的にありそうな数字なのか、二冊目、三冊目の写真集はどんな条件の下で 発刊されるのか(されないのか)といったことを考えてみましょう。勿論、選んだアイドルが売れなかった場合にはどうなるのか、といった 「失敗した場合」についても具体的な想像を巡らせておくことが肝心です。
 アイドルの写真集やDVDの収益予想は簡単ではなさそうです。しかも、写真集もDVDも、制作費や宣伝費に幾らかけるかによって売上は 大きく違いそうです。この辺がきちんと定められているかどうかも重要な問題です。
 映画や過去に売れたゲームソフトの続編のような対象は、流通経路とお金のフローが幾らか分かりやすいとはいえます。ただ、映画の制作現場の 予算管理がどの程度厳格なものなのかは、大いに疑問のあるところでしょうし、ソフトの「制作費」といっても実態はプログラマーや各種クリエイターに 支払われる人件費ですから、支出の有効性を疑い出すときりがありません。
 筆者は、既存商品でアイドル・ファンドに一番近いのは、競走馬の一口馬主(これは本当に似ている!)だと思いましたが、こちらの方が競争馬の 扱い方や収入(レースの賞金の一定割合なので単純です)が透明な分投資しやすいと思いました。
 実際、アイドル・ファンドはまだ売れていないタレントの、高額な会費のファンクラブというのが実態に近いと筆者は思いました。 投資商品として、まじめに検討対象になるようなものだとの印象は持ちませんでした。


■新種の商品でも売り手の儲けは重要

 「保管とお金の流れ」・「収益」・「(収益の)リスク」と見た後は、「コスト」、即ち売り手の取り分(つまり、 投資としては有効に使われない金額)が重要です。
 払込金額の中から本当に投資に使われる金額は幾らで、仲介者や主宰者が取る手数料(当然ある)が幾らなのかが重要です。 少なくとも投資として考える場合は、「重要事項説明書」や匿名組合の契約書などをよく見て考えることにしましょう。手数料に対する感覚は 人それぞれでしょうが、この種のものは投資として考えるとあまりにも大きいことが多いので要注意です。
 また、「実質的な」手数料コストは、書類に記載されたものばかりとは限りません。一般論として心配すると、投資対象への支出に見えても、 これが主宰者に環流する可能性があります。たとえば、アイドルなら、主宰者の関連会社である広告代理店にキャンペーンのための費用を払い込み、 そこで代理店手数料が発生するような事があり得るかも知れません。アイドル売り出しのような複雑なビジネスで、素人がこれをチェックするのは 不可能に近いでしょう。


■経済常識を働かせる

 最後に、こうした証券化商品を仕掛ける側の「立場と意図」が大事です。仕掛け人の側も、自分のお金を(本当に)出資してリスクを 取るのかどうかも重要ですし、また、自分もリスクを取るとか出資するとかいいながら、実質的にそうではない可能性もあるので注意しましょう。
 また、そもそも、経済常識としては、なぜ銀行借り入れでなく出資を募るのかについて推測する必要があります。普通に考えると、 有望なプロジェクトへの支出で、出資者が相応のリスクを負うなら銀行がお金を貸すでしょうし、また将来の収入が高い確度で見込めるなら、 主宰者は自己資金で投資して収益を独り占めしたいと思うはずです。なぜ、そうならなかったのか、と考えることも重要です。 「これは、投資として有望ですか?」などという子供のような質問(メディアなど、お仕事の人は仕方がありませんが)をする前にこの程度のことは 考えてみるべきです。
 もちろん、仕組みとコストを十分知った上で、楽しみとしてお金を出す、という大人の遊びに対しては野暮なことを言うつもりはありません。 また、絶対に儲からないと決めつけることもできません。お好きな方はご自由に!







最終更新日  2006年02月10日 01時32分28秒
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