1347222 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山崎元のホンネの投資教室

2006年01月05日
XML
2005年8月5日


■「情報」のどの時点で関わるか

 アクティブ運用の株式投資の考え方は、つまるところ他の市場参加者に対して、「どこで差を付けるか」の問題だ。 「情報」の発生と流通、さらには解釈といった流れに注目すると、アクティブ運用でやろうとすることは、1.企業などの情報の発生を捉える→ 2.情報の伝達で先回りする→3.情報のより正確な解釈を行う→4.情報をより適切にポートフォリオに反映する、の4点に(もっと細かくも分解できるが)分けて考えることが出来る。
 個々の企業の情報収集に関して他の市場参加者に先んじようとすると、個々の企業の一次情報(伝達された情報ではない情報)の発生場所に先んじて出かけることが重要だ。 いわゆる会社訪問を重視するような運用スタイルは、これに相当する。 ある企業の製品や顧客に関する変化、ビジネスのやり方の変化など、投資情報が発生する現場で情報を捕まえることが目的となる。 次の、情報の流れのどれだけ上流に立つことが出来るかというアプローチにも同様のことがいえるが、重要な情報を捕まえた場合、これをもとに実際の投資を行うまで(ポジションを作るまで)は、この情報が広く知られていないことが望ましいが、ポジションを作ってしまうと今度は一転して、情報が早く広まって、株価に影響してくれる方が有り難いという変化が訪れる。 実は、個々にキャッチしたたとえば新製品の開発の情報以外にもその会社の株価に影響を与える要素は多々あり、これは時間の経過と共に増えてゆく。 自分がつかんだ「情報」が有効に作用する前に、他のイベントや情報が生じて、むしろ逆の結果(株価の下落など)に至るリスクは相当にあるのだ。
 そういう意味では、一次情報に近い情報を集めるアプローチ(1.のアプローチ)はポジションを作るまでの「時間差」を有効に確保することが出来やすいが(もちろん、他の投資家が先回りしているケースがしばしばあるが)、このアプローチはキャッチした情報が株価に反映するまでの間のノイズの発生に対して弱点がある。
 逆に、大方の投資家にとって有効な「情報」であるらしいことが確認できているニュースを先に捉えるアプローチ(2.のアプローチ)は、これが有効に機能すると、一次情報を目指すアプローチよりも確実に利益を手にすることができる。もちろん、このアプローチでは、コンスタントに他人に先んじて有効な情報を手に入れることが難しい。

第十二回 図1


 グロース型と言われるような運用のアクティブ・リターンの獲得原理は、1.と2.に近いところにある。ファンドマネジャーは、企業の長期的な成長性に賭けてポジションを作った積もりではあっても、たとえば収益予想の上方修正のような形で「情報」として市場に流通してアクティブ・リターンが生まれることが多い。成功した長期投資の成長株投資は、長期で保有している間に、このプロセスが何度も起こった結果論的な成功であることが多い。成長株投資で成功したあるファンドマネジャーから、「実は、企業の収益予想で着目しているのは平均1年先くらいの数字で、1年半以上先の数字は不確かな要素が大きすぎて、ポジションを取るには心配だ」と聞いたことがあるが、確度を上げようとするとその通りなのだ。
 これに対して、バリュー型のアクティブ運用は、3.のポイントで主に勝負することになる。この場合は、自分の株価評価が正しいものでなければならないが、それが正しいか正しくないかの大きな部分は、実は、市場の参加者の動向をどう読むかにかかっている。
 つまり、バリュー運用の場合、もちろん企業の価値に影響するファクターを取り逃がさないように収集して分析するわけだが、それ以上に、たとえば市場の参加者が低PERの銘柄を近い将来評価するかとか、なぜ低PERに放置しているか、という理由とその変化に関する分析が重要だ。これは、人の心が分析対象になるので、「利益の大きな上方修正を他人よりも先に知った」というような確実にアドバンテージのある情報ほど成果が確実ではないが、ファンドマネジャーはこの的中率の悪さを分散投資でカバーするといったゲームプランを持って運用に臨むことになる。
 4.の「情報の反映」というのは、獲得した情報をいかにポートフォリオに反映させるかというポートフォリオ構築の効率性で差を付けようとするプロ向けの勝負の仕方だ。
 特に大きなポートフォリオになると、主な銘柄にはだいたい投資することになるのであって、銘柄選択というよりは銘柄毎の投資ウェイトのコントロールこそが重要な要素になる。これが上手いファンドマネジャーと下手なファンドマネジャーという区別は確かにあり、この点でのスキルの差は、これだけでアクティブ運用で勝てるというような決定打にはなりにくいし、アマチュアに対しては説明して分かって貰うのが大変なポイントだが、プロにとっては大切な要素だ。


■企業を分析するか投資家を分析するか

 このように考えると、アクティブ・ファンドマネジャーの分析の対象として、「企業」そのものに力点のあるタイプと、「投資家」の行動に力点のあるタイプがあることが分かる。 もちろん、両方を分析の対象としてもいいわけだが、ファンドマネジャー毎に得手不得手があるし、それぞれの情報へのアクセスの良し悪しといった与件の問題もある。
 また、付け加えるとすれば、たとえば、本音では投資家の分析に力点があっても、マーケティング上の「有り難み」という観点で、企業の分析に力点があるように振る舞うこともある。
 見かけと実体を使い分けることは卑怯と思われるかも知れないが、ビジネスとして資産運用を考えると、深く考えるほどに、そのポイントは運用スキルではなくてマーケティング力だということが分かる(この点は、また別の機会に詳しく論じたい)。


■それぞれのアプローチは実は排他的ではない

 グロース運用とバリュー運用というと、運用の内容が異ならなければならないと思われるかも知れないが、アクティブ・リターンの獲得原理を考えると、情報の流れの1・2と3の両方で勝負をしてもいいはずだし、企業の分析と投資家の分析を両方行ってもいいはずだ。
 従って、年金運用の世界などで、運用コンサルタントがファンドマネジャーに対して、運用スタイルの明確化を迫ることがしばしばあるのだが、運用そのものに忠実に考えると、ファンドマネジャーが運用コンサルタントのレベルまで降りて自らの運用を分かりやすくパターン分類しなければならないいわれはない。しかし、現実には、「私は小型株中心のグロースマネージャーです」といった分かりやすいレッテル貼りを行うことがビジネス上重要な場合が多い。
 アクティブ運用については、まだまだ言い足りないことがたくさんある。たとえば、運用スタイルの適切性は固定的なものではなく、時間と共に変化する。これをどう理解し、判断するかというテーマなども興味深いと思う。また、別の機会に、このホームページに書いてみたい。


以上







最終更新日  2006年02月10日 01時38分12秒
[ 「ホンネの投資教室」] カテゴリの最新記事


PR

プロフィール


ホンネの投資教室

ニューストピックス

カレンダー

バックナンバー

2020年05月
2020年04月
2020年03月
2020年02月
2020年01月

コメント新着

コメントに書き込みはありません。

日記/記事の投稿


Copyright (c) 1997-2020 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.