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2006年01月06日
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2005年8月19日

■リターンリバーサルとは

 「リターンリバーサル」とは、先行する一定期間に相対的にリターンが悪かった銘柄に大きなウェイトを掛けて投資する投資戦略のことだ。いわゆる「逆張り」の投資戦略だが、市場全体あるいは個々の銘柄が大きく下げた時に株価の平均回帰に期待する「ミーンリバージョン」とは語感は似ているが別種の戦略だ。リターンリバーサルは銘柄相対間の逆張り戦略である。基本的に逆張りの戦略だが、全体の平均的な値上がりが大きい場合には、値上がりした銘柄を買い増すこともある。あくまでも相対的な差が問題なのだ。
 どのくらい有効な戦略であるかは論者によって評価が違うだろうが、日本株のアクティブ運用戦略としては、有力(なこともある)ものの中の五指には入るだろう。
 リターンリバーサルについては、学術的にも、実務的にも、またアメリカでも日本でも、かなりの研究の歴史がある。特に実務界では、日本での研究をバカにできない厚みがある。
 リターンリバーサルの全貌を語るとかなり大がかりな話になってしまうので、今回は、筆者が運用に実務と研究の両面で関わってきた経緯を通じた思い出を書いてみたい。

■投信のフォーミュラプラン

 リターンリバーサルを応用した投資戦略に最初に触れたのは、1985年に投資信託運用会社に入社(記念すべき一回目の転職である)した時だった。当時の日本の投資信託業界には「フォーミュラプラン」あるいは「システム運用」と呼ばれるような機械的な運用をする一群の商品があった。フォーミュラプラン自体は、例によってアメリカに先例があったのだが、当時は日本の方が盛んだったかもしれない。
 代表的な戦略は「等金額リバランス」とか「変率リバランス」と呼ばれるようなものだった。等金額リバランスとは、例えば、100銘柄の等金額ポートフォリオ(1銘柄のウェイトは1%だ)を作り、この投資ウェイトをたとえば3ヶ月おきに等金額に修正するような運用方法だ。その3ヶ月間に相対的なパフォーマンスが良かった銘柄Aのウェイトは例えば1.2%になっていて、相対的に悪かった銘柄Bのウェイトは0.8%になっているかもしれないが、これを1%に戻す。即ち、値上がり率の高い銘柄を売り、値上がり率の低い銘柄を買うことになるから、等金額リバランスはリターンリバーサル戦略の一種なのだ。
 当時、社内の会議で良く見せられた過去データは、日経平均の225銘柄を等金額リバランスで運用すると、通常の日経平均(こちらは等株ウェイトであり、値嵩株のウェイトが高いポートフォリオだ)の運用パフォーマンスをかなり上回るというバックテストの結果だった(当時はバックテストのことを「シミュレーション」と称していたが正確な言葉遣いではないと思う)。
 この等金額リバランスが持っているリターンリバーサル効果をもっと極端な形で利用する戦略が「変率リバランス」であった。これは、たとえば100銘柄の中で、平均よりも値上がり率が2倍大きい銘柄のウェイトを半分にして、平均の半分の値上がり率の銘柄のウェイトを2倍にするといった戦略だった。
 バックテストの結果は、変率リバランスの方が概して良かった。当時、こうしたシステム運用のリサーチをしていた人物が、「わが社はこのように、ベンチマークに必ず勝つ技術を持っているのだ」と言っていた声を、若手社員だった筆者は、何となく反感をもちながら聞いていたのを覚えている。一つには、投資理論の勉強を始めてみるとそう簡単にベンチマークに対して勝てる戦略があるとは思えず、バックテストの方法が杜撰に見えた。もう一つには、現実にその会社の運用する株式ポートフォリオの多くがベンチマークに及ばないパフォーマンスだったからだ。
 等金額リバランスにしても、変率リバランスにしても、当時のリバランス間隔は、主に3ヶ月であった。80年代後半当時の売買手数料では、毎月リバランスを行うと手数料に負けてしまうから、といった理由だった。
 等金額リバランスの場合は3ヶ月毎にきれいなポートフォリオになるが、変率リバランスの場合は、リバランスをするたびに、値下がり率の大きな銘柄のウェイトが増えて、いわばポートフォリオの人相が歪んでゆく。「システム運用なので、自分の相場観を交えずに運用します」と言って運用を始めても、3回続けてシステム通りにリバランスできる度胸を持ったファンドマネジャーはあまり居なかったと記憶している。
 だが、過去のデータにあたってみると、リバランス2回目の後くらいが一番良いパフォーマンスとなっていることが多く、「それなら、架空の等金額ポートフォリオを半年前にスタートしたとして、2回リバランスしたところからスタートしてはどうか」というような細かな工夫が生まれたりもした。
 また、リバランスの方法で、変率リバランスと同じくらいの効果があるとして、「コントラ方式」と社内で名付けられた方法も開発された。これは、たとえば100銘柄の3ヶ月間の相対パフォーマンスの順位が上位20%にあるものの比率を「1」に、下位20%にあるものの比率を「5」にして、1,2,3,4,5の比率でウェイトを付けるものだ。簡単に計算できるし、変率リバランスのように、長期にわたってパフォーマンスの悪い銘柄のウェイトがドンドン増えてゆく怖さがない点はやりやすい。なお、ネーミングの「コントラ」とは逆張り投資家のことを指す英語「コントラリアン」にちなんで名付けられたものだった。
 さて、どのようなリバランス方法を採るとしても、先ずは銘柄を決めなければならない。銘柄の選び方は、1.代表的な銘柄で、2.アナリストが選んだ財務内容と業績がいい銘柄を、3.業種のバランスを考えて選ぶ、という方法が一般的だった。
 ただ、こうした方法は、これはそもそも「最近調子の悪い銘柄が意外に頑張るのだ」というリターンリバーサルの基本思想に反しているので、「逆張り」センスの発達した方は違和感を覚えると思う。
 ところで、どの「システム運用」を選択するにせよ、投資銘柄は原則として固定されている訳で、もっぱら投資ウェイトばかりに注目する点にも意外感を持たれる方がいらっしゃるかもしれない。
 もちろん、銘柄選択は、プロの投資にあっても高いパフォーマンスを目指す(裏目に出ることが半分くらいあるが)有力な方法なのだが、ベンチマークやライバル・ファンドのパフォーマンスと勝負するプロのファンドマネジャーの場合、特に、金額の大きなポートフォリオを運用すると、「どの銘柄を買うか」ではなくて、「当たり前の銘柄をどのようなウェイトで持つか」が勝負所になることが多い。たとえば、今であれば「トヨタ自動車」や「キヤノン」は殆どのファンドマネジャーがポートフォリオの中に持っているだろうが、彼らにとっての問題は、トヨタやキヤノンを持つか持たないかではなくて、どのようなウェイトで持つかなのだ。この辺りは、アマチュアの運用と、関心の置き所が少し違うかもしれない。
 また、運用の理屈上は、銘柄選択とウェイトと両方をコントロールしても良いわけだが、現実の勝負を考える場合には、自分が勝とうとする勝負所を絞り込んだ方が戦略を考えやすいし、実行しやすい、といった要素もある。
 銘柄選択が「逆張り的」でないことが多いことや、相当の期間について固定されること、はこの種のフォーミュラプランを評価する際に、先ず誰でも思いつく難点だろう。これらの他にも、リバランスの間隔は3ヶ月が本当に良いのか、そもそもリバランスの間隔を固定する必要があるのか、銘柄間の相対パフォーマンスが大きく開く時とさほど大きく開かない時に同じようにリバランスして良いのか、といった問題点、あるいは、少なくとも検討のポイントはファンドマネジャーなら直ちに頭に浮かぶようでなければならない。
 今では、これらの問題点の殆どが、銘柄評価の方法を数値化して、売買コストも数値化したうえで、ポートフォリオのリスクとリターンの組み合わせを最適化させるプログラムを使って解決できる。 従って、年金運用など運用方法の説明を要する場合には、プロとしては、こうしたテクニックを使わなければならないが、では、そうやって作ったポートフォリオと割合に簡単なフォーミュラプランのどちらがいいかといえば、結果は勝ったり負けたりで、そう大差はない(もちろんプロにとっては厳密なコントロールが重要なのだが)。 この辺の曖昧さが、運用の面白いところであり、同時に、難しいところでもある。





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最終更新日  2006年02月10日 01時39分42秒
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