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2006年06月02日
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■プロも素人も「ファンドマネジャー」

 実は、久しぶりに、運用の専門書を書いてみようと考えている。専門書といっても、プロのファンドマネジャーにとって役に立つ本という意味での専門書であって、一般の個人投資家が読めない本にするつもりはないし、以下の理由で、多くの個人投資家に読んでもらいたいと思っている。
 それは、プロのファンドマネジャーにとって必要な基礎知識・基礎技術と、個人投資家にとって必要な基礎知識・基礎技術の内容が、おおむね重なるからだ。たとえば、個人投資家は、自分の資産の何パーセントを株式投資に向けるか投資配分の比率を決めなければならないし、株式投資をするとした場合には、どんな戦略で投資銘柄を選び、どのような組み合わせやウェイトで株式に投資するかを決めなければならない。これは、プロの世界で言うと、「アセット・アロケーション(資産配分)」や「投資スタイルの選択」、「ポートフォリオ構築」などと呼ばれるような作業に相当するが、これらの際に行っていることの本質と、必要な基礎知識は、プロのファンドマネジャーと全く変わらないといっていい。
 違いを探すと、プロは顧客に対する説明責任、もっと平たく言えば「言い訳の用意」が必要だが、個人投資家の場合は、これがいらない、という程度のことであって、行うことの難しさは本質的には変わらない。
 たとえば、個人投資家が、千株ずつ5銘柄に分散投資している場合、厳密なポートフォリオのリスクの測定や、プロのファンドマネジャーがよく行うポートフォリオの最適化計算と呼ばれるコンピューター(といってもPCで十分だが)が必要な作業はたぶんいらない。しかし、自分のポートフォリオが、プロが運用する投資信託のようなものとどの程度リスク水準がちがっていて、総合的にはどちらがよくて(コストを考えると、個人投資家の方が良さそうだが)、次に資金を追加するときには、どのような銘柄を買えばいいか、といったことについては、「理屈」に関しては正しい知識を持っていて、大まかな数字の見当をつけながら、自分で考えることができることが望ましい。そして、その「理屈」はそんなに難しいものではない。
 もちろん、国や会社が趨勢的に個人の生活の面倒を見られなくなっていることや、確定拠出年金の普及などで、個人が、自分の老後のための資産運用の問題に直面することになったことなどが、「個人は自らのファンドマネジャーでなければならない」という状況を加速していることも重要だ。今や、必要な理解の上で、プロのファンドマネジャーと個人投資家の間に差はない、というのが実態なのだ。考えてみると、株式投資であれば、勝負の場は、共に、東証であったり、大証であったりして、同じ場に、対等に参加しているのだから、個人だってプロと同じ基礎知識を持っている方がいい。
 ちなみに、現時点での本のタイトル案は、「1億人のファンドマネジャーに捧げる本」である。もちろん、これは、変わるかも知れないが、なるべくコンパクトで(たぶん新書版で)、かつ分かりやすい本にしたいと思っている。


■読者に是非伝えたい内容

 さて、こうした、プロとアマと両方のための本にあって、必要な基礎知識とはどんなものだろうか。
 基礎知識の範囲を決めるためには、当然、基礎を応用する目的をはっきりさせる必要がある。この本にあって、著者が説明したいと思っている、具体的な内容は、たとえば、以下のようなものだ。
 まず、投資にあたって、「合理的に行動する」とは、どういうことで、どのようにすれば実行できるかを説明したい。たとえば、「ドルコスト平均法」や「損切りルール」がなぜ非合理的か、とか、投資する銘柄数や、銘柄毎の投資ウェイトはどう決めたらいいのか、といった、(プロでも)往々にして勘と経験で無根拠に決められがちな、しかし、現実の運用にあっては重要なポイントに関する、考え方と具体的方法を知ってもらいたい。こうした、知識の応用には、当然、アセットアロケーション(資産配分)が入ってくることになるので、その方法を、エクセルのワークシートが作れるレベルまで具体的に説明したい。これは、個人投資家にはもちろん、ファイナンシャルプランナーにとっても役に立つはずであり、後者にとっては必須の知識になるはずだ。
 また、株式投資の際に必要な、株価のフェアバリューの考え方や、割安・割高の判断方法について説明する必要があるだろうし、配当、自社株買い、株式分割、M&Aなどに関するいろいろな前提のレベルでの理論的な考え方について、幅広い投資家に、知って欲しい。もちろん、バリュー投資(割安株投資)、グロース投資(成長株投資)のような代表的な投資戦略について、その具体的な方法、有効であるとするとその理由(「常に有効なわけではない」という種明かしになっていますが)、どのような場合に有効なのかの、考え方についても説明したい。
 さらに、金融商品(特にファンド)の、パフォーマンス評価の考え方と商品の選び方、さらには、ビジネスとしての資産運用の構造に関しても量的に最小限で、かつ応用の利く説明を与えたい。たとえば、運用手数料の理論的な決まり方について説明したい。
 なお、運用の理論それ自体に関しては、紹介や批判を書いていくときりがないが、資産運用と市場を楽しく理解するために役に立つ理論は紹介したいし、一般の運用の教科書に書いてあるような理論でも、ダメなものはダメと書いておきたい。ダメな理論なのに、たとえば、企業価値評価の実務に使われているようなものもあるから、重要なのだ。
 考えると、いくらでも書きたいことが出てくるが、たとえば、上記のような内容を筋道立てて理解してもらうために必要な、基礎理論編の項目はどんなものだろうか。


■基礎知識項目のリストアップ

 以下、「こういう項目については基礎編で説明が必要だな」と現時点で思っている項目を順不同に挙げてみた。まだまだ、漏れもあるだろうし、削るものもあるだろうが、これが、現時点で考えている「ファンドマネジャーにとっての常識集」だ。もちろん、現在、プロのファンドマネジャーは、知らないものがあると拙いものなので、読者の友人にファンドマネジャーがいる場合、テストに使えるかも知れない。
 以下、項目と、説明上の要点だけ箇条書きで書いておく。


<ファンドマネジャーの基礎的理論知識>


  1. 効用・リターン・リスク
    富の水準と満足度について基本的な効用関数の意味が分かるように。また、リスクの定義と効用関数上の扱い方。

  2. プロスペクト理論
    実用的な理論なので、基礎の一部として位置づけたい。リスクや効用関数を理解する上でも重要。

  3. 平均・分散アプローチ
    一貫した意思決定のフレームワークとして、平均・分散アプローチを使いこなせるように。技術的には、インプライド・リターンの求め方と使い方がポイント。「ミーン・バリアンスは古い」などという人に限って、ろくにアセット・アロケーションも作れなかったりする。説明(時に「言い訳」)の基礎としても重要。

  4. 現在価値の考え方・求め方
    ついでに債券の基礎も説明できるといい。

  5. 株式の理論的な価値
    DDM(割引配当モデル)、EVA(経済的付加価値)、PER、PCFR、PBRなどの理論的な相互の関係について。

  6. モディリアーニ・ミラーの定理
    配当や自社株買い、資本構成の問題などを理論的に考える基礎として外せない。

  7. エージェンシー理論
    MM理論から乖離するケースの説明に必要。増配の効果、などを考える上で不可欠。運用者と顧客の間にもエージェンシー関係がある。

  8. 市場の効率性の「本当の姿」
    市場の効率性仮説がどのように間違っているかを説明。裁定の不完全性、ノイズトレーダー、CAPM(資本資産価格モデル)が誤っている理由、などのエピソードも。

  9. オプション価格の基礎
    基礎知識としてのブラック・ショールズ式。成功報酬制手数料のようにオプション的性質のあるものの価格と性質に関する理解が重要。

  10. アクティブ運用の基礎理論
    どのような基本的原理でアクティブ運用戦略が有効なのかについて、考えるフレームワークを説明する。

  11. パフォーマンス評価の理論
    パフォーマンス評価を行うことの意味。インフォメーション・レシオの限界とその理由。

  12. 金融商品の価値と価格の理論
    金融商品の付加価値がどこにあるかと、その適正価格の考え方。



 さて、これでは、足りないような気もするし、最小限の基礎としては多すぎるような気もするので、これから、もっと考えてみるつもりだが、とりあえず、上記については、投資する上で「知っておく方が得」なので、読者にご紹介しておく。





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最終更新日  2006年06月02日 11時51分03秒
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