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山崎元のホンネの投資教室

2006年09月01日
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■株式投資はギャンブルである!

 株式投資は、世のため人のために行うものではなくて、自分のために行うものです。そして、株式投資は立派な「ギャンブル」です。株式投資をすると、儲けることも、損をすることもあり、この損得の幅は、たいていの場合、実感として、小さくありません。少なくとも、失敗すると、大損する可能性がある、という意味では、一種の「ギャンブル」に参加するのだ、というくらいに考えて、株式投資に取り組むことが望ましいと思います。
 また、株式投資は、少なくとも、技量に差のある相手と行う勝負事(例えば、違法ですが、賭け麻雀など)よりも、先の結果が読めないギャンブルだ、ということも心に留めておきましょう。練習すると上達し、上達すると勝率が上がる、というような単純な世界ではありません。

 有名なファンドマネジャーである、ウォーレン・バフェットやピーター・リンチのような人たちでも、運の良い素人の運用成績には全く敵わない。そんなことが起こるのが、株式投資の世界です。ゴルフのようなスポーツでは、たいていの場合、ベテランは初心者よりもスコアが良いわけですが、株式投資の場合、ベテランが初心者に能書きを垂れることが出来るところまでは同じでも、初心者の方が運用成績(運用業界では単に「パフォーマンス」ということが多いようです)が良いことがしばしばある特殊な世界です。

■払い戻し率がプラスのギャンブル

 しかし、株式投資が、一般のギャンブルと異なるのは、一般のギャンブルが、平均的には胴元(「どうもと」。ギャンブルの主催者側のこと)の手数料分だけ損をするように出来ている一方、株式投資では、たとえば1年間株式を持っていると、平均的なケースの期待値では、たとえば100の投資額が105になったり110になったりするという点です。つまり、株式投資は、プラスの期待収益率を持ったギャンブルだと言えるのです。

 たとえば、競馬を考えてみると、日本の中央競馬会の場合、ポピュラーな連勝式の馬券では控除率が25%なので、100買った馬券は、平均75が払戻金として返ってきます。競馬の場合は、賭け金の25%を主催者が取って、残りの75%を、馬券を買う客同士が取り合う形になっています。残り75%に関する限りは、ゼロサム・ゲーム(参加者の損得の合計がゼロになるゲーム)だといっていいでしょう。

 ちなみに、連勝式ではなくて単勝式・複勝式の馬券は、控除率が20%なので、一見有利に見えますが、たとえば、厳密に計算した払戻金の額が10円未満の端数を持つ場合には、払戻金(勝ち馬投票券100円に対して表示される)は、端数を切り捨てて計算される決まりなので(例えば129円が120円になってしまう)、オッズ(払い戻し倍率)の低い馬券を買う場合には、単勝式・複勝式の方が不利になる場合があります。随分細かなことを気にするものだ、と思われるかも知れませんが、株式投資も含めて、この種の損得のあるゲームでは、僅かな払い戻し率の差が決定的に重要なので、細かな損得に対する感性は大切にして下さい。それだけで勝てるというものではありませんが、1%の差があれば差を感じるという人よりも、0.2%の差でも感じることが出来て、気になる!という人の方が、明らかに株式投資に向いています。
 さて、株式投資の払い戻し率が平均的にプラスになるのは、株式投資が生産活動に対する資本の提供だからです。

 たとえば、トヨタ自動車の株価が6000円で、予想される一株利益が400円だとしましょう。PER(株価収益率)は15倍です。個別には、成長率など勘案しなければならない要素がたくさんありますが、PERは、株式に投資する上では「低い方が良い」のが一応の原則です。現在の日本企業なら、15倍までなら「安い」、20倍を超えると「やや高い」、25倍を超えると「かなり高い」と思うくらいでいいでしょう。

 さて、この状況は、今、6000円投資して、トヨタ自動車の株を持つと、物事が順調に行くと、1年後には、株主のために、トヨタ自動車が400円稼いでいてくれる、ということです。6000円に対する400円は、約6.67%(小数第3位四捨五入)ですから、仮にこれが全部株主に配当されて、また1年前と同じように株価が評価されているとすると、トヨタ自動車の株式に投じたお金を100とすると、1年後には106.67の価値が戻ってくる(配当にかかる税金などを別とすると)、ということです。
 もちろん、一株利益の400円は予想に過ぎませんし、トヨタ自動車の将来の業績に対する評価その他が変化すれば、6000円という株価も変化するので、1年後に必ずこうなる、という訳ではありませんが、「平均的には」こんな感じが予想できます。

 ここで、株式会社の利益は、大まかにいえば、みな株主のものですから、この400円のEPSは配当してもしなくても、株主のものです。なお、厳密には、株式の配当には、通常20%(現在、上場株式の配当には10%の軽減税率が適用されているが)の税金が掛かります。また、株式投資にシビアに取り組むためには、売買の手数料も考える必要があります。しかし、1年後には、100がたとえば約106になる・・・、といった、株式投資が平均的にプラスの収益を生む構造はお分かり頂けるのではないでしょうか。

■投資と投機の経済的性質のちがい

 「投資」と「投機」という言葉は、人によって、いろいろな意味で使われます。読者は、株式に対してはどちらをイメージされるでしょうか。
 たとえば、「投機」という言葉は、投じるお金に対して狙う儲けの額が大きい場合、短期で反対売買をして儲けようとする場合、或いは価格の変動率が大きい対象にお金を投じる場合などに、幾らか非難のニュアンスを込めて、使われることが多いようです。
 しかし、筆者の思うに、「投資」と「投機」という言葉は、それぞれの背後にある経済的な性質のちがいによって使い分けるのが便利ではないでしょうか。たとえば株式投資は、先のトヨタ自動車の株式に投資する場合のように、投資対象先企業の生産活動に参加する資本の一部を持つということですから、「順調であれば」、時間の経過と共に、投資先企業が稼いでくれた利益がリターンとして積み上がります。

 通常、株式を新たに発行する場合を除くと、株式を買ったお金が直接投資先の会社に入る訳ではありませんが、株式市場で取引されている株式を買うことは、誰かが投資していた資本を肩代わりするということなので、自分がその株式を持っている間は、企業に、生産活動のための資本を提供していると考えて間違いありません。
 同様に、債券や不動産などの対象にお金を投じることも、「投資」だと考えていいでしょう。債券の場合、普通の債券だと、クーポンの利率が決まっていて、満期に元本が償還されるといったキャッシュフローが決まっていますが、元本・利息とも変動が少ないだけで、まったく不払いの可能性が無いわけではありません。また、不動産の場合は、賃貸に回すなど、これを活用することによるプラスの収益が、やはり「順調であれば」期待できます。 しかし、競馬や競輪、競艇、オートレースのようなギャンブルでは、賭け金から主催者の取り分を除いたお金を、参加者どうしが取り合うゼロサム・ゲームになっていますし、同様の構造が、外国為替や、商品先物取引のような世界にも存在します。

 ちなみに、外国為替については、為替レートのリスクが、リスクに見合ったプラスの追加的リターンの得られるものではないことが、為替取引の経験がないと、なかなか分かりにくいもののようです。しかし、外国為替市場では、誰かが百万ドル相当の米ドルを買って・日本円を売るということは、別の誰かが、同額の日本円を買って米ドルを売るということであり、これらの両者は、同じ大きさのリスクを持っていますが、お互いの損得の合計はゼロであり、つまり、ゼロサム・ゲームの構造になっています。投資の入門書の多くや、場合によっては、専門家による資金運用関係の諮問委員会のようなものの結論でも、「外貨建て資産は為替リスクがある分、期待リターンが高い」といったことを書いていますが、これらは間違いです。「為替リスクは、プラスの追加的なリターンで報われる『投資のリスク』ではない」と覚えておいて下さい。また、ついでに申し上げておくと、外貨預金は、為替の手数料が高いこともあり、個人の資産運用手段としては、かなり割りが悪いと思われるので、ハッキリ言って、避ける方が良いでしょう(詳しくは、本シリーズの第三十一回「誤解が多い、為替リスクと期待リターンの関係」2006年5月19日をご参照下さい)。







最終更新日  2006年09月01日 17時25分28秒
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