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2006年09月15日
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 個人投資家でも、機関投資家でも、通常は、単一の資産だけではなく、複数の資産に分散投資して資産を運用する。一般に、複数の資産に分散投資した状態全体を指して「ポートフォリオ」という言葉を使うが、ポートフォリオをどのように作り、且つ、動かしていくべきなのか、ということに関する、体系的で、且つ具体的な説明は少ない。
 ポートフォリオというものがどういうもので、分散投資の原理やポートフォリオ理論とどんな関係があるかについては、ファイナンスの教科書で説明されていても、たとえば、何資産でポートフォリオを作るか、それぞれの資産の投資ウェイトはどうやって決めるか、買ったものをどのような時に売るか、といったことに対する説明を通常のテキストで見かけることは、まずない。

 そこで、今回から、何回かに分けて、ポートフォリオ運用を行うための、一般的な原則について、なるべく体系的に説明する。
 たとえば、株式ポートフォリオに適当な銘柄数のように、個人の小規模なポートフォリオと、機関投資家の大きなポートフォリオでは(両者の本質的なちがいは金額ばかりではないが)、答えがかなり異なるケースがある。しかし、この問題についても、両者にあって基本的な考え方は一緒だ。

 以下、個人のケースと、機関投資家のケースの両方に目配りして、両者に通じる一般的な原則を述べるように努力する。個人投資家の読者にとって、機関投資家の運用で考慮しなければならない幾つかのポイントは、直接の関係がないと思われるかも知れないが、投資信託など、プロの運用を評価する際に役に立つ知識ともなるので、興味を持って、読んでいただきたい。
 それぞれのトピックについて、冒頭に簡単な問題を出して、その後に説明の文章を続け、トピックの末尾に、冒頭の問題に対する解答例を添付する。
 ポートフォリオの例としては、シリーズ全体を通じて、主として、株式のポートフォリオを例に説明するが、説明内容のほとんどは、アセット・アロケーション(資産配分)など、他の括りのポートフォリオについても共通にあてはまる。また、特に、ポートフォリオの単位で物事を考えることが出来る投資家を意識するので、投資家のことを「ファンドマネジャー」と称する(読者もファンドマネジャーである!)。

 なお、実務家は自分の考えが不十分であることを棚に上げて、「理論は役に立たない」と短絡的に思い込みがちだし、研究者も現実の運用がどのように行われているのかを知らずに理論を語ることがある。しかし、これらは、共に、不適当だ。理屈で説明できないような運用行動は、少なくともプロの実務家の仕事にはなり得ないし、実務を説明できないファイナンス理論は、対象が現実のファイナンス(投資も含む金融全般)である以上、理論自体として不十分なのだ。
 現実の運用をみると、残念ながら基本的な原則と合致しない、実務上の慣習に影響されていることがしばしばあり、これは、金額の大小を問わず、投資家にとっては得でない。


■ポートフォリオの効用関数
問題

 ファンドマネジャーの狭義の仕事は、時々にあって、ポートフォリオの構成銘柄のウェイトを決定することだ。もちろん、この決定にあたってはリターンとリスクの両面を考慮する。これは、ファンドマネジャー個人の好みや運用スタイルの違いに関わらず共通だ。
 さて、ファンドを作る上で考慮しなければならないファクターは複数あるが、基本となるファクターに関して、意思決定を行うための一般的な原則を考えておくと便利だ。

 ファンドマネジャーの仕事は、利用可能な情報を用いて、次に示す関数(「効用関数」と称する事が一般的なので、以下「効用関数」)を最大化するようにポートフォリオの構成資産のウェイトを決定し、これを現実のポートフォリオに実現することだと定式化できる。

 ファンドマネジャーは効用関数を最大化するように意思決定を行うが、ここで肝心なのは、これは「事前の情報」を用いて最善の意思決定をしようとしているだけであって、投資の結果そのものを問題にしていないことだ。ファンドマネジャーの仕事は「事前のベスト」(に対応するポートフォリオ)を、継続的に作ることだ。もちろん、「事後的な結果」が好ましいに越したことはないが、「事前」と「事後」の間には、不可避的に運が介在する(だから「運用」というのかも知れない?)。ファンドマネジャーにできることは、「事前のベスト」を作ることまでだと考えて、その点に集中することが重要だ。

ポートフォリオの効用関数

 ポートフォリオに関する意思決定は、株式のファンドに限らず、全て上記の効用関数の観点から整理することが出来る。資産の運用について考える際には、落書き用のメモのどこかに取りあえずこの式を書いてみる事をお勧めする。具体的な意志決定がこの関数のどの部分にどのように影響するかを考えると、作業の見通しが良くなるからだ。
 先の効用関数は、投資に関する効用関数としては最もポピュラーで単純な形のものだ。効用関数は、個々の投資家によって異なって構わないものなので、必ずしも上記の形で表せるとは限らないが、実務的にはこのような形で考えておけば十分だろう。

 上記の効用関数はポートフォリオに関する価値判断を全て期待リターンの単位に集約したものと考える事が出来るので、ポートフォリオの「修正期待リターン」だと考えると分かりやすい。ここでの最大の工夫は、リスクをリターンに換算し直している事だ。リスクの悪影響は、通常、分散値で測ったリスクで考える。上記のリスク拒否度はこれをリターンに換算する際の係数と解釈することが出来る。

 リスク拒否度は、これに反比例する定数を用いて「リスク許容度」という形で扱われることもあり、例えば、先の式でλ=1/2aとして、この「a」をリスク許容度と称するような形もある。λとaは反比例する定数であり、効用関数としての扱いは同じだ。形として、こちらの方がより単純なので、「リスク拒否度」と表現することにする。なお、売買コストについても、これをどれだけの期間で償却すると考えるかという調整を行って、それぞれの項の単位を年率のリターンに揃える。たとえば、売買一往復のコストをポートフォリオ金額の1%とするとき、年間の売買回転率が200%なら、年間のリターンへのダメージは2%であり、効用関数上の売買コストは2%だ。

<補足>
 この効用関数では、リスクのペナルティーを分散に比例する形で表現しる。いずれにせよ近似的なものだが、こうした形の妥当性について、直感的には、リターンが期待値の上下に対象に正規分布していると考え、且つ資産の限界効用が逓減する(たとえば、1億円が2億円になる1億円の効用の方が、100億円が101億円になる際の1億円の効用よりも大きい)と考えると、将来の富の値は期待値の上下半々にぶれるとしても、同じ幅なら下ブレの方が、効用に与える影響は大きいし、ブレ幅が大きくなるほど、その差は拡大する。従って、標準偏差で測ったリスクの拡大とともに、効用は標準偏差に比例する以上に減少するので、例えば二次関数で近似するのがいいと考えることができる(指数関数などでも記述できるが、二次関数の方が簡単であり、実務上も一般的だ)。
 資産額に関する効用が本当にどの程度逓減するかという問題は難しい問題だが、より心理的な説明としては、プロスペクト理論に従うと、資産額の期待値を参照点と考えたときに、これを下回ることの不効用は、逆に同額上回った場合の効用よりもかなり大きいことが、富の限界効用が低減すると考えることの、サポート材料になる。





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最終更新日  2006年09月15日 13時33分12秒
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