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山崎元のホンネの投資教室

2006年09月15日
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■「最適」という概念の使い道

 この効用関数は、いわゆる「オプティマイザー」の目的関数の形をしている。オプティマイザーとは、最適化計算を行うプログラムの総称だが、株式ポートフォリオの運用の場合、具体的商品名としては、BARRA社の「BARRAモデル」や日立製作所の「Riskscope」など、ポートフォリオのリスクを計測できるソフトウェアに付随するプログラムで、インデックス・ファンドを作ったり(ごく簡単に出来る)、個々の銘柄に期待リターンを与えてリスクとリターンとを総合的に勘案してアクティブファンドを作ったりできるソフトウェアであり、プロのファンドマネジャーにとっては、必須と言えないまでも、有用なツールだ。特に、ある投資戦略の過去における効果を測定する際に、オプティマイザーを使って、過去の時点時点で最適なポートフォリオを作らせて、そのポートフォリオの振る舞いやパフォーマンスを見ることが一般的だ。
 実務上、特に少額のポートフォリオを運用する個人投資家の場合、オプティマイザーを使うことは、たぶん必要ないが(リスク計測は出来る方がいいと思うが、今のところ、個人向けには、良いツールが提供されていない)、ポートフォリオ運用するにあたっては、一貫した基準のもとに考える事が重要だ。
 ただし、オプティマイザーが便利な道具であるには違いはないが、そもそも前提としてのインプットの信頼性や、オプティマイザーの計算の信頼性まで含めて考えると、計算結果が必ずしもそのまま実用になるものではない。時に、プロの世界でも、自分という人間が条件を考えて入力したことも忘れて、オプティマイザーの計算結果を半ば「神格化」して、結果を人間の手で直してはいけないと考える「システム運用信者」がいるが、これはいささか滑稽だ。当たり前の話だが、曖昧なインプットを厳密に処理しても、曖昧なアウトプットしか得られない。要は、結果として出来上がるポートフォリオが、効用関数の観点から満足なものであるように努力することが肝心なのだ。

 ところで、最適化の結果としてものごとを理解する思考・表現方法は、経済学の得意とする方法であると同時に、他人にものごとを伝えるコミュニケーションの形式として有力だ。特に後者の意味においてプロのファンドマネジャーは「最適」という概念を理解し、使いこなすべきだ。
 例えば、年金を運用するファンドマネジャーが、顧客である年金基金に対して、自分が運用するポートフォリオの中の、ある銘柄の投資ウェイトを合理的に説明するためには(例えばトヨタ自動車を何%持っているか、理由と共に説明するには)リスクとリターンについて考えて、ポートフォリオ全体を最適化した結果として説明する以外に方法はない。

 プロのファンドマネジャーの理解度とポートフォリオのコントロール能力をテストするには、具体的な銘柄のウェイトの決定理由を説明させれば、だいたいのレベルが分かる。
 それぞれの変数の具体的な大きさや決め方は、後で説明するが、右辺の各項は本質的には予想値であり、最終的には、運用者の主観も交えて判断するべきものだ。リターンやリスクについて、判断抜きに客観的に正当化されるような「一般的かつ完全な決定方法」は存在しない。
 もちろん、実際には全てを始めからファンドマネジャーが決めるわけではなく、例えばリスク拒否度やリスクの測り方は、通常は、原則として運用資金の委託者であるスポンサーが決める問題であり、現実的には、ファンドマネジャーはスポンサーがこうした問題について意思決定する際に、手伝いをする事になるだろう。

 個人投資家は、たとえば、ポートフォリオの中で大きな塊になっている銘柄を部分的に売って、別の銘柄に入れ替えたときに、効用が改善するか否か、という形で、効用関数を捉えるといいだろう。或いは、年間の推定売買コストと株式ポートフォリオに対する期待リターンのバランスを考えてみる、というような反省材料にもなる。
 ポートフォリオの銘柄数や、売買回転率、いわゆるリバランスの頻度と程度などを考える際には、背後に、この効用関数の考え方が出てくるので、一般的なフレームワークとして、頭に入れておいて欲しい。

解答






最終更新日  2006年09月15日 13時34分36秒
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