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山崎元のホンネの投資教室

2006年10月20日
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■銘柄数

 次の問題を考えながら、以下の文章を読んでいただけると、問題点が分かりやすいだろう。

問題

 銘柄数については、多くの誤解と俗説がある。「銘柄数をどのように決めますか?」という質問で、ファンドマネジャーの運用理解をかなりの程度推しはかることができるくらいのものだ。一般原則と現実的な知恵については後回しにして、銘柄数に関する俗説の幾つかを取り上げてみよう。

 第一の俗説は、「ファンドマネジャーが十分フォロー出来ないので、あまり多くの銘柄を持たない方が良い」というものだ。例えば30銘柄とか50銘柄とかいった具合に、ファンドマネジャーが自分に合う銘柄数を勝手に決めているケースが多い。そして、「なぜ30銘柄なのですか?」と質問しても要領を得た答えが返って来ずに、「フォローできない」という理由が述べられることが多い。

 「フォロー」なるものが業績を指すつもりなのか、値動き等を指すつもりなのか、はっきりしないが、それが「十分」であるためには両方を指すにちがいない。だが、改めていうまでもなく、完璧なフォローは困難だ。少なくとも効果に於いて十分な銘柄のフォローをすることは極めて難しく、この場合の現実的な対応は、銘柄数の絞り込みではなくてむしろ分散投資であるべきだろう。「銘柄数を絞った運用」と言う言葉の響きは「無駄の排除」や「潔さ」(?)に通ずるところがあり、もっともらしく聞こえることがあるが、実際は、ファンドマネジャーの客観性の欠如や、幼稚な自己主張の結果であることが多い。

 「銘柄数を増やすと(100銘柄くらいから言われることが多い)、ほとんどインデックス・ファンドと違わない」という俗説も根強い。こう言う人は、第一に、銘柄数が多くてもアクティブ・リスクが大きいファンドの運用方法が何通りもある事を知らないのだろうが、運用会社のトップや管理職(金融機関や証券会社などの親会社から転属してきた人材は、運用に詳しいわけではないことが多い)あるいは年金基金などのスポンサーがこうした俗説を信じているケースがままあり、結果としてファンドマネジャーに余計なリスクを強いる事がある。ポートフォリオ運用の大原則はあくまでも、意図しないリスク、余計なリスクを取らない事だ。たとえば、利益に対比した株価の割安、といった観点に着目して運用したい場合、時価総額の大小や業種の偏り、個別銘柄の出来不出来などに影響されないポートフォリオを作るためには、数百銘柄を要することがあるだろうし、この場合にも、TOPIXなどのベンチマークに対するアクティブ・リスクを大きく取ることは可能だ。

 「効率的な運用を行うためには、時々保有銘柄の整理(絞り込み)を行う必要がある」というのも、運用会社の社内などで時々聞く話だが、俗説だ。ある運用会社では、こうした銘柄の整理を励行する標語として「筋肉質の運用」という標語があった。感じの出た表現ではあるが、これは感心しない。

 例えば、ある投資銘柄がファンドマネジャーの望む通りに値上がりした、と考えると、この銘柄は、「割安な銘柄」→「普通の銘柄」→「割高な銘柄」という経路を辿ると考えられる。相対的な評価が劣化する過程で、先ず、当該投資銘柄のウェイトを下げる必要が生じるだろうが、いきなりゼロにする必要が生ずる訳ではない。例えば「普通の銘柄」となった状態では、アクティブ・リターンの稼得に貢献しなくとも、その銘柄はリスクの低減に役立つ可能性があり、また、現実には、銘柄の入れ替えには売買コストが掛かるので、別の銘柄と入れ替えるには、別の銘柄に売買コスト分以上の魅力(主に、期待リターン)があるのでなければならない。この辺りの事情は、銘柄の入れ替えその他の行動が、ポートフォリオの効用関数の三つの変数にどのような影響を与えているか、と考えると、良く分かる。

 従って、運用期間の経過と共に、どちらかと言えば銘柄数が増える事が自然な変化だといえる。せっかく売買コストを掛けてファンドの中に入れた銘柄を、必要以上に入れ替える事は合理的ではないし、まして、銘柄数の削減自体を目的化することにも意味はない。(もちろん、顧客の要求やマーケティング上のイメージ作りといった、純粋に運用パフォーマンスのためではない理由が存在する可能性はあるが)

 以上の三つの俗説の検討から、或いはファンドの効用関数から推測できる通り、一般論として、銘柄数は、特にその上限については、あらかじめ制限を設ける必要はないことが分かる。銘柄数は、静態的に考えただけでも、銘柄毎の期待リターン、リスク拒否度、ポートフォリオにおける各銘柄のリスク上の影響度合い、売買コストといった与件に従って、従属的に決まるものであり、動的にはこれらに情報や与件の変化が加わる。ファンドマネジャーに可能な「フォロー」という意味では、銘柄数が増えても十分なポートフォリオ全体の把握とコントロールが出来ることこそが重要である。

 特に売買コストの掛かる現実の世界では、投資判断の材料となるデータの将来の変動についても、考慮する必要がある。この点も含めて、将来のデータの変動がポートフォリオに与える影響を低下させるためには、銘柄数を増やして変動の効果を分散させる事が現実的な対応策になる。従って、実践的な知恵としては、ある一時点のデータをもとに、例えばオプティマイザーが判断した銘柄数よりも、やや多めの銘柄数であっても構わないといえる。オプティマイザーを使う場合には、実際には個別銘柄の上限ウェイトを下げて、個別銘柄リスクの低減をはかる工夫が適当なこともある。分散投資は、予測の当たり外れに依存せずに、ファンドマネジャー自身の意図的な努力でポートフォリオを改善できる有効な手段である。

 なお、機関投資家の運用で、銘柄数と売買コストのについて考えると、金額当たりの委託売買手数料は一単位の売買額が大きくなると小さくなるが、マーケット・インパクトに対する影響は逆であり、また、銘柄を分散しておいた方が将来のリバランス金額を節約できる可能性が大きくなる。銘柄数と売買コストの関係は単純には決まらない。

 個人投資家の場合、少数の銘柄でも、リスクの絶対値を落とすことはできる。たとえば、東証一部上場の数銘柄で、TOPIXと同等程度のリスク(トータル・リスク)のポートフォリオを作ることは可能である。ただし、こうしたポートフォリオは、当然、個別の銘柄選択の当否の影響を強く受けるし、たとえば「割安」といった要素だけを強調したポートフォリオを作ることが難しい(業種の偏りなどの別のリスクが伴うことが多い)。

 個人投資家の場合の現実的な知恵としては、追加投資する時に、保有している銘柄と同じ銘柄、同業種・同傾向の銘柄をなるべく避ける、といった要領で、やはり運用期間と共に(願わくは運用資産額の増価と共に)徐々に保有銘柄数を増やしてゆくことが望ましいだろう。

解答例






最終更新日  2006年10月20日 14時34分46秒

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