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山崎元のホンネの投資教室

2011年11月04日
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読者の多くは、株式会社SBI証券、カブドットコム証券株式会社、マネックス証券株式会社、および楽天証券株式会社の4社による投資信託の販売協力プロジェクトがあることをご存じだろう(「資産倍増プロジェクト」という名前が付いている)。

このプロジェクトにあって、上記4社は、協同で各種の広報宣伝活動を行ったり、ネット証券専用ファンドの選定を行ったり(第一回、第二回、各3本ずつ)、ネット証券を通じた顧客の投資信託運用を拡大しようとする活動を行っている。

筆者は、楽天証券の一社員として同プロジェクトの関連書籍の作成に協力したし(ダイヤモンド社より刊行予定)、4社協同での公開セミナーに参加する予定になっている(大阪では2011年11月7日、東京では2012年3月18日開催予定)。

投資信託及び投資信託ビジネスについては論者によって様々な意見があり、また、これらを述べるに当たっては、ビジネス上の状況や立場の制約を受ける。筆者もその例外ではないが、以下、ネット証券における投資信託の販売に関して何を期待し、これがどうあるべきだと思うかに関して、正直な意見を述べてみたい。日頃の本欄のレポートもそうなのだが、今回は特に、以下の意見が会社(楽天証券株式会社)の意見を代表するものではない、山崎元個人の意見であることをお断りしておく。

ネットにおける投信販売の二大メリット


ネットを通じた投資信託販売は、顧客に2つの大きなメリットを提供すると筆者は考えている。

第一に、金融機関のセールスマンが介在しないことで、第二に、ローコストであることだ。順番は、本質的には逆かも知れないが、現実的には、この順で強調したい。

日本の投信顧客の多くは、セールスマンが介在し顧客にアプローチすることによって、「不適切なファンド」に投資するに至っている。

「不適切なファンド」を筆者は、(1)ほぼ同じリスクを取るファンドの中で他のファンドに明らかに劣るファンドか、(2)顧客の運用にとって不適切なリスク・内容のファンドか、の何れかであると定義する。

筆者は「高コストでも、イメージや商品性格などに顧客が満足してこれを選ぶなら、価値あるファンドだ」といった誤魔化しは、認めない。お金の運用の場合、目的はお金を増やすことで、インプットもアウトプットもお金だから、ダメなものはダメなのだ。特に、(1)の場合は、「よりまし」な選択肢と実際の選択肢とを比較することによって(例えば、同じリスク=投資対象のファンドなのに手数料が違うようなケースが典型的)、投資家の「愚かさの値段」を金銭的に評価する事が出来る。

例えば、同様の投資対象に投資するファンドの中で相対的に手数料コストが高いファンドや分配金を頻繁に払って課税上損なファンドは(1)の理由で「不適切なファンド」だ。高齢退職者の退職金の大半を新興国通貨のリスクを取らせるファンドに誘導するような場合、このファンドは(2)の理由で「不適切なファンド」である。

この種のビジネスに関わっている方には申し訳ないが、毎月分配型のファンドや通貨選択型の新興国通貨コースのファンドなどは、殆どが投資家にとって「不適切なファンド」であり、銀行、対面型証券会社といった金融機関のセールスマンがいなければ、顧客の多くは、こうしたファンドに投資せずに済んだだろう。

また、高齢者に明らかに本人が理解できないような内容の、しかもハイリスクな商品を販売するようなケースは、明らかに「適合性の原則」上問題があるが、近年、その種の販売事例を、かつては「おとなしい」といわれていた銀行の投信窓販でも頻繁に聞くようになった。銀行窓販は、すっかり「肉食化」した。

投資信託は、顧客が自分で理解し、他の商品とも(特に同類の他のファンドと)広く比較した上で、最も有利なファンドを自分が決めたタイミング・金額で購入すべき商品だ。

筆者は、大学の授業で運用にあって「最も恐ろしいのはマーケットのリスクではなく、あなたの目の前に現れる金融マンだ」と日頃から学生に教えている。特に、近年は、商品の開発にあっても、売り方にあっても、行動経済学的なバイアス(非合理的な判断をもたらす心理的傾向性のこと)を積極的に利用した金融マーケティングが横行しており、その中で、対面型のセールスマンが果たしている(悪い)役割が大きい。

ネット証券で投資信託に投資する場合、セールスマンの影響を受けずに意思決定ができるということは、特筆大書したいくらいの大きなメリットだ。

もう一点、ネット販売による実質的な手数料コストの下落は、顧客の側から見た時に分かりやすいメリットだ。同じファンドを買うにも、対面型の窓口で買うと販売手数料が2~3%かかるのに対して、ネット証券で買うとノーロード(販売手数料ゼロ)というケースが頻繁にあり、投資信託という商品にあっては、既に「一物一価」が崩れている。

このことは、顧客にとって非常に重要な情報のはずだが、まだ世間に十分知れ渡っているとはいえないのが大変残念だ。

ネットを使った販売によってコストを下げて、そのコストを実質的な価格引き下げの形で顧客に還元し、これを競争力として、需要量を拡大する、というビジネス・モデルはネットのビジネス・モデルとしては、最も古典的且つ基本的なものだ。シンプルなだけに強力でもある。

ネット証券各社は、かつて対面型の証券会社が顧客から取っていた分厚い手数料を、ネットを使って引き下げることで「株式の委託売買」というビジネス分野で、対面型の証券会社からシェアを奪う形で今日のビジネスの基礎を築いた。

ネット証券の登場によって、顧客は、株式投資をかつてよりも遥かに安い手数料コストで行うことができるようになった。これは、多少手前味噌になるが、ネット証券の投資家、ひいては社会に対する「貢献」として誇っていいものだと思う。

結論の先取りになるが、これを投資信託に対しても適用することが、ネット証券の投信販売に関する、筆者の期待の中心だ。

率直に言って、対面型の証券会社で売っているようなファンドをネット証券で売ることについては、意欲が湧かない。

期待と現実


先日、資産倍増プロジェクトのイベントに関する打ち合わせで、SBIグループのオフィスを訪ねた。この際に、受付の横にあるモニターに映った同グループのキャッチフレーズ「全力顧客還元主義」という言葉に感銘を受けた。

コストを下げて、そのメリットを顧客に還元することで顧客に報いて、その結果としてビジネスを発展させ、顧客と共に栄えよう、という趣旨だと筆者は読んだ。筆者が、ネット証券の投信販売に期待する方向性そのものだといっていい。

問題は、投信に関して、それぞれの時点で、ネット証券がどの程度までやれば「全力」だといえるのか、ということだろう。

仮に、全てのファンドをノーロードにして、且つ、信託報酬の中の代行手数料部分も顧客に全て還元するとすれば、顧客サービスに関して全力であることは間違いなかろうが、ネット証券は運用会社の大半を自社の傘下に置くのでもない限り(まずあり得ないが)、投信販売ビジネスで収益を得ることが全く出来ないから、投信販売ビジネスを継続することが出来ない。

投信ビジネスに関する限り、資産倍増プロジェクトに参加するネット証券4社は、投信の預かり残高も、投信ビジネスからも収益も「まだまだ全く不足だ」と思っているはずだ(だからこそ、このプロジェクトがある!)。

たとえば、現在、ネット証券が投信に関して受け取っている手数料を半分にするなら、投信の預かり資産残高は、少なくとも、倍以上が期待できる必要がある。これが、ビジネス上の半ば「制約条件」だ。

ただし、かつて株式の売買手数料を各社が競うように引き下げた時にそうだったように、投信の手数料値下げについても、「やってみなければ分からない」面が多大にある。

かつて楽天証券にあっては、「株式の手数料をこれ以上下げるのはもう無理だ」と社員の多くが反対ないし心配する中で、経営陣が値下げを決断して、結果的に良かったという経験が何度かあった。他の3社の事情も似たようなものだったのではないだろうか。

投資信託についても、手数料引き下げの投資家にとってもメリットを十分訴えることが出来ると、手数料の引き下げ率を大幅に上回る預かり資産の増加率が得られる可能性があるのではないだろうか。

何れにせよ、投資家、ひいては社会の目線から見ると、ネット証券の投信販売は、上記のような展開になるのでなければ、大きな意味はない、といえる。

どこまでが「全力」なのか、については、4社各社が考えるべきだし、おそらくは競っていく必要があるだろう。

この「全力」のためには、目先の手数料を一時的に減らす覚悟と共に、既存の対面型の証券会社や銀行と全面的に対決する胆力が必要だが、これは、かつてのネット証券が株式売買ビジネスに於いて発揮したことがあるはずの力だ。

取り敢えずの中間目標としては、手数料率(資産当たりの)を2分の1に、投信の預かり資産残高は4倍に、という両方を早期に達成する、というくらいがいいのではないか。環境的に大変な時期ではあるのだが、「資産倍増」とだけいうのではいかにも夢が小さい。

夢は大きく


ネット証券の投信販売に関しては、これを、投資家にとって真に好ましくて、且つ面白い投資信託商品の登場に結びつけることが筆者の夢だ。

理想をいえば、「不適切なファンド」は売りたくない。しかし、ネット証券はセールスマンを使ってファンドの押し売りをするわけではない。顧客の側で、「不適切なファンド」を避けてくれればいいし、そのことによって、ネット証券、さらには投信の運用会社がより良い商品に注力するようになればいい。

ポイントは、「良いファンド」をどれだけ安く売ることが出来るかだ。

将来の「良いファンド」の中に、広範な市場をカバーする十分に分散投資されたローコストなインデックス・ファンドが入ることは間違いないが、「インデックス」が常にベストなポートフォリオだとは思わない。

インデックス・ファンド並みの手数料のアクティブ・ファンドがあってもいいはずだ。

アクティブ運用は、大きなアナリスト部隊と多大な調査コストが掛かり高く付くのだというのは運用会社の言い訳だ。現実には、社内のアナリストに頼らないファンドマネージャーが多数いるし、システムに対する負荷も、数百・数千銘柄の売買が一気に生じるインデックス・ファンドの方が大きい。

仮に手数料は掛かるのだとしても、投資顧問を見ると運用に対する手数料は資産残高が数百億円単位になると十数ベイシス(前半)だ。たとえば、運用会社が15ベイシス(1ベイシスは百分の1%)、受託銀行が5ベイシス、販売会社が取る代行手数料が15ベイシスで、35ベイシスくらいの信託報酬でもちろんノーロードのアクティブ・ファンドは十分成立するはずなのだ。こうした手数料のファンドでも、残高が1兆円になると、運用会社と販売会社にそれぞれ毎年15億円の収入をもたらす。1兆円という残高は、米国のミューチュアル・ファンドを見ると、それほど非現実的な金額ではない。

また、金額さえ十分に集まるなら、インデックス・ファンド並みの手数料のアクティブ・ファンドがあっても全くおかしくない。

ネット証券に投信の資金が大量に集まるようになれば、ローコストな商品を提供する運用会社は必ず現れる。証券直系、銀行直系の投信運用会社は1番手にはならない公算が大きいが、外資系、独立系など、他にも運用会社はある。先行する1社が大きな資金を集めるようになると、証券・銀行系も追随するはずだ。

「ネットによる証券販売を梃子にして、個人向けの運用商品を根本的に改善すること」。これなら、仕事として十分なやり甲斐がある。






最終更新日  2011年11月07日 19時34分46秒

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