イタリアいなかまち暮らし

2008/12/04(木)05:30

MELE FUJIでSTRUDEL。砂糖無し、バター無しで。

イタリアの食べ物(18)

りんごは特に好きでも嫌いでもないが、やっぱり甘いほうがいい。 いつも買うのはFUJIという種類。そう、日本のりんご、ふじはイタリアでも手に入る。定評があるのか、どのスーパーにもいつでも必ず置いているが、なぜか周りの人であまりファンの人はいない。夫の実家でもりんごはいつも出るが、これはみたことがない。 他の、西洋種のりんごは、食感がさくさくほろほろとくずれるようで、若干ぱさぱさしているのに対して、これはしゃきっしゃきでジュワっとジューシー。 それだけではなく、一番違いを感じるのは菓子に使うときで、火を通すと他のりんごはすぐにクタクタと煮崩れていくのに対して、フジはいつまでも形を保ち、食べるとさくっとした食感が残っている。 同じく煮ても形を保つりんごにMELE ANNURCOがある。小さくてワイルドな感じの無農薬風りんごだ。これも実のテクスチャーがフジに似て煮崩れないが、大きな違いは酸味が強いこと。フジはダントツに甘い。もちろんイタリア人は菓子には圧倒的にMELE ANNURCOを好む。 酸っぱいのが苦手な私は当然フジ。フジさまさま。フジ教の信者。小さなスーパーでもちゃんとフジを置いていたら敬意を払う。イタリア人で「フジがすき」という人がいればもう拝んでしまう(夫以外)。 りんごは好きでも嫌いでもないと冷ややかに書いたが、実は火を通したものは大好きだ。生だと半分くらいで飽きてしまうが、火を通したりんごは何個でも食べれる。もちろんさくさくの歯ごたえが残ったものがおいしいと思う。 しかもフジは、もともと甘いので、砂糖を加えなくてもいい。 菓子類に果物を使うときによく感じるのだが、果物の周りの食材の甘みに果物自身の甘みが負けてしまって余計に果物が酸っぱく感じる。砂糖を加えなくてもいいほどの甘みを果物自身が持っているとバランスも取れていておいしい。 去年まではこのりんごの芯を取って冷凍パイシートで包んで焼いた丸ごとパイにハマっていたが、太りたくないためにバターを使わないシュトゥルーデルに切り替えた。 シュトゥルーデルはオーストリア、イタリアにまたがる南チロルの菓子だが、イタリア全土で食べられている。簡単に生地が作れる、家庭的な菓子だ。 バールなどで売っているシュトゥルーデルはパイシートを使ったものもあり、定義に混乱が見られるが、普通はシュトゥルーデルというと小麦粉を水で練った生地を使う。要はピアディーナとかチャパティとか、北京ダックを包む餅(ピン)と同じ類の生地だ。 中身はアップルパイと同じで、たぶん正当なやり方は最初にりんごを煮てから生地で包みオーブンで焼くというものだろう。正当のはりんごには砂糖も加え、シナモン、クルミ、干しぶどうなどいろいろなものが入っている。 我が家の場合フジを使うと砂糖はいらない。私が菓子の中の干しぶどうは嫌いなので、加えるのはシナモンとクルミという必要最低限。さらに脂肪を排除するためクルミも入れないで作ったこともあるが、あっさりしすぎてコクがなさ過ぎで、アクセントもないので飽きやすい味になった。それ以来クルミは必ず入れる。 あと、私はパベシーニPAVESINIという焼き菓子を砕いて入れる。これはそのままだととても軽くさくさくしているが、水分を吸うとスポンジのようにふわふわになる。コーヒーに浸してティラミスの台にもなる。 りんごを煮ずに生で生地に包んでオーブンで焼くと、大量の水分が出てくるが、これを一緒に入れておくとある程度吸ってくれる。これにも砂糖が入っているので、新たな砂糖が要らない理由の一つだ。 小麦粉はイタリアのものだと軟質小麦粉のTIPO 00を使う。日本だと中力粉だろうか。 大きなフジりんご2個を使う場合の作り方。調理器具以外で必要なものはきれいな大き目の布。 小麦粉150gに、水約80g、植物油15g、塩小さじ半分。これらを全部混ぜる。水は小麦粉の質によって入れる量が違うので様子を見ながら作る。手で練って、餅のようによく伸びて柔らかいけどあんまりべたつきすぎないくらいがいい。そういう感じになったらラップをして30分以上寝かせる。 りんごの皮を剥いて、普通に食べるように切って芯を取る。縦4分の1をまた4分の1に横に切る。食感の好みでこれより小さくても大きくてもいい。 生地をもう一度練り直してから打ち粉をしながら麺棒で伸ばす。弾力によって丸く戻るけど、ある程度平たくなるまで一生懸命伸ばす。 それから両手で持ってそっと伸ばす。軽く振って重力を利用してのばしてもいい。次に布の上においてそっと手で引っ張って伸ばす。このような手順を経て、生地は布が透けて見えるほど薄くなる。もちろんムラはあるが。端のほうが厚くなりがちだから最初から端を念入りに伸ばす。 最後の段階で破いてしまったら穴に生地をあてがうなどして補修する。最初のほうで破れたら丸めてやり直したほうがいい。 すでに破れてきてる(爆) これは薄すぎ(爆) 全体に薄く油を引くか、油がイヤなら小麦粉をはたく。 りんごを手前端に横に並べてシナモン、砕いたクルミ、砕いたパベシーニを適量振り掛けて、布の手前端を持ち上げて巻いていく。両端をとじながら巻く。生地の終わりを下にして、オーブントレイかシートに乗せる。 180℃くらいのオーブンで15分前後焼く。オーブンによって違うので様子見ながら。 なんとも見た目のゴツい菓子! ちなみに冷まして皿に分けてから粉砂糖を振り掛けるとなんとかまともに見えるようになる。客に出さない限り必要ないけど。 言うまでもなく一番時間がかかって難しいのはのばす作業。初めてならそんな躍起になって薄くしなくてもいい。何回も重ねるうちに薄くできたらいい。ちなみに私はよく破いたり丸めてやり直したりしてもたもたとかなりの時間がかかる。 しかしそれも慣れてくると苦にならない。週に1,2回作る(今暇だし)。 味はもちろんアップルパイのようなバターの風味はないが、軽いのでカロリーを気にせずさくさく食べられる。果物を食べているという感覚がより大きい。菓子というよりも、りんごを包んだ巨大餃子という感じだろうか。 作るとさくさく食べてしまうのですぐになくなるが、バターを入れないからって、食べる量を多くしたらダイエットの意味がない。また、砂糖も入れないけど、りんごの中の果糖だって糖分であることには間違いないので。

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