さっちゃんと9人家族

2010/09/06(月)00:16

堀米ゆず子ヴァイオリンワークス5(2)

音楽&パフォーマンス(416)

   午後から『堀米ゆず子ヴァイオリンワークス5』のコンサートに下のAを連れて行ってきました。最初の曲は大好きなフランクのソナタです。弦楽器の独奏を聴くにはちょうどいい大きさのホールの後ろの方で聴くこととなりました。というのも開場10分前、つまり開演40分前には着いていたのですが、それでももう満杯に人が並んでおられて、開場とともに前の方から次々と埋まってしまったのでした。  非常にソフトな音色で最初のフレーズが奏でられてから、影があり光がもたらされ、エネルギーが注ぎ込まれ、激しい中にまた明るい暖かさが生み出され・・・フランクにしてもそのあとのフォーレにしても曲の中に波のようなうねりがあって、それはとてもおとなっぽいアート、複雑な心情を表しているように感じます。そういう点が子どもたちにはちょっと難かったように思います。  プロデューサーの吉竹さんは一生懸命、子どもたちに本物の音楽を知ってもらいたい、聞かせてあげたいと思って、本当に超一流の演奏に触れられる良い機会をつくってくださったのだけれど・・・Aは家で私が弾いているVnなんかに比べると、ダイナミックスあり過ぎてちょっとしんどかった、と言いました。 確かに、そうかもしれないと思いました。  ゆず子さんが全身全霊で演奏されていることは、少し大きくなった子どもたちには、その凄さや素晴らしさを受け取ることは大いにできると思うのですが、小さな子どもたちが日常出会う世界というものは、普通、穏やかで包み込まれる暖かな優しさのある世界です。そうでなければならない。 コンサートで出会う音楽というのは、TVやゲームのように現実離れしていることを前提としているものではなくて、まさしく実際に今ここに体験しているので、そこに作曲家の心情や演奏家のあふれる音楽性が子どもたちの心にとって過剰になることは、大いに考えられる、と思いました。 逆に言えば、それぐらい素晴らしい演奏をゆず子さんはされていました。 けれども一番ご自身が楽しんで弾かれたのはアンコールでなさった、サンサーンスの「ハバネラ」とサラサーテの「カルメン幻想曲」ではなかったかなぁと思います。 確かに、両曲とも超絶技巧を見せる曲ではあるのだけれども、私も 「あんなふうに弾ける技術を持っていたらなぁ」 と思わして下さる演奏だったのです。そこはとても素敵なところです。CDにおいてもコンサートにおいて、「すごいなぁ、素晴らしいなぁ、美しいなぁ」と思うことはできても、それはとても自分とは結び付かない遠く離れた出来事としか感じられないことがほとんどです。でもゆず子さんの演奏は違った。 このきちんと小さな時から練習を重ねることもできず、タラタラしていて、そして現在も練習に没頭できるコンディションなど、到底持てそうにない私にも、何かしら「まだもう少しやって行ったらできることがあるのじゃない?」 と思えるような、そんな希望を渡してくださる演奏でした。そう、あのアンコールは超絶技巧であったからすごかったのじゃなくて、彼女が喜びの中で選んだ曲があの2曲だった、ということが私に希望を与えてくれているのです、きっと。 

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