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劇40『リリオム』青山円形劇場(C33)2012年6月2日(土) 話さなくても通じ合える。言葉にすると駄目になる。"あいまいさ"をあいまいなまま共有する関係。
青山円形劇場の大ファンです。 冒頭、真っ暗な舞台の中央に回る筒、その内側に照明があり、筒に「切りぬかれた回転木馬」の形が、円形劇場の客席側の壁にぐるりと投影されて、回っています。 (こんな説明で伝わってますでしょうか?) 非常にロマンチックな演出。 これだけでも円形劇場でやる意味がある。 「回転木馬」のバーのボーイ、リリオムは女中のユリと暮らし始める。 リリオムは、非常に粗暴で、ユリにも普段から暴力を振るうが、ユリは彼にも優しいところがあるといい、周囲の心配にも動じない。 しかし彼は、一向にまじめに働く様子もない。 やがて、二人の間に子供ができると、リリオムは悪友に誘われて、大金が手に入る計画に乗るのだが…。 リリオムは、口下手で要領も悪く、物事を上手く伝えられないために、そのもどかしさが「暴力」としてあらわれてしまう。 そのことを、ユリはよく理解している。 話さなくても通じ合える。 言葉にすると駄目になる。 あいまいさ"をあいまいなまま共有する関係。 二人の関係は、その二人にしかわからない絆があるのかもしれない。 物語は、中盤で、大きく転換し、何と天国で裁きを受ける場面に。 これは全く予想していなかった。 時は過ぎ、リリオムは、少し大きくなった自分の娘と話そうとするが、やはりうまくいかず、彼女の手をはたいてしまう。 しかし、娘は「痛くなかった、叩かれたのに温かかった」と、ユリに話すのでした。 自分の心を上手く伝えられない男の哀しさ、と言いたいところかもしれませんが、 私には、何か、DVの言い訳、DVの加害者に都合のいい解釈、夢の話に見えてしまい、どうも釈然としませんでした。 殴る蹴るは愛情表現で、その後は急に優しくなる、まさにこれまでさんざん聞いてきた夫婦間の暴力の話に…。 美波さんの存在感は、優しくてりりしい。さすがです。 娘役、初舞台の武田杏香ちゃんは、素直で、危うい、透き通ったようなそのままの存在感がよかった。 これは、100年前にハンガリーの作家が描いた話で、ブルードウェイ・ミュージカル(1945年、リチャード・ロジャース/オスカー・ハマースタイン2世)や映画(1956年映画化、20世紀フォックス)「回転木馬(Carousel)」になったとのこと。 その話が、今の日本で上演されているという、なんと「奇跡」のような話だと思う。 ![]() リリオム / サンライズプロモーション東京 青山円劇カウンシル#5 原作:モルナール・フェレンツ戯曲『リリオム』(1909年) 脚色・演出:松井大悟(ゴジゲン) テーマ曲:クリープハイプ(書下ろし) 出演:池松壮亮、美波、津村知与支、中山祐一朗、山田真歩、東迎昂史郎、武田杏香、銀粉蝶 ☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.07.04 20:14:04
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