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テーマ:DVD映画鑑賞(14333)
カテゴリ:吹替
![]() しょっぱなから一点豪華ポイントになりますが、72年の「ゴールデン洋画劇場」版の吹替の収録、これに尽きます!! ドロン=野沢那智、ロネ=堀勝之祐、ラフォレ=上田みゆきによる、声の演技がアンサンブルがすばらしく、ファンに最も人気の高い吹替版です。 その他の詳しい仕様については、こちらをご参考ください。→「太陽がいっぱい スペシャル・エディション」オフィシャル・ブログ 権利期間の関係で、09年3月までの限定生産です。仮に、将来他のメーカーから発売されても、特典映像や野沢那智インタビューは権利の帰属が異なるので、同じ仕様で発売されることはありません。ファンの方はお早めにどうぞ。 さて、今回の主題は「昔の放送用吹替の現状」。結論から言えば、“滅亡の一途”です。 まず「太陽がいっぱい」ですが、過去TBS、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビの各局洋画劇場で、60年代末~84年にかけて個別に放送用吹替が制作されています。しかし、現在それら放送用マスターはすべて滅却されていました。そのため、今年7月20日にテレビ東京で放送された「太陽がいっぱい」は、やむなく新規で吹替版が制作されたのです。 今回DVDに「ゴールデン洋画劇場」版の吹替を収録することができたのは、過去の放送を録音されていた個人の方がDVDの企画をご理解くださり、ご好意で音源を提供してくださったおかげです。DVD制作サイドにとっては、本当にありがたいことです。 貴重な吹替版が失われている事態は「太陽がいっぱい」に限ったことではなく、80年代以前の放送吹替のほとんどにあてはまります。事情は、独立系映画会社とメジャースタジオの場合で異なります。 メジャースタジオ以外の洋画は、独立系映画会社(東宝東和、旧ヘラルド、GAGAなど)が、日本の権利を買います。権利行使の期間は、契約で決められています。 その権利に放送権が含まれますが、権利期間が終わってしまうと、放送用マスターも無用のものとなってしまいます。 契約には通常「権利期間が終わると、素材は権利元に返却もしくは滅却」という条項が入っています。返却すると発送費がかかるので、多くの映画会社は“滅却”のほうを選びます。これが、独立系作品の昔の吹替音源が、ほとんど失われている最大の理由です。 実際、独立系映画会社が主に扱っていたマカロニウエスタンのようなジャンルを例にとると、昨年IMAGICAさんから発売された吹替付のマカロニDVDの10作品は「ミスター・ノーボディ」を除いて、個人の方の録画・録音を収録したものでした。 メジャースタジオの場合は、映画の権利は、原則スタジオに帰属します。各国の支社で独自に制作した放送用マスターは、米国本社で一括で保管されている場合が多く、その意味では古い作品の吹替音源も、どこかに保管されている可能性が高いのです。が、放送メディアの変遷が、予期せぬ障害となったようです。 洋画のテレビ放送は、60年代末の洋画劇場登場時から80年代前半まで、映像の収録された16ミリフィルムと音の入ったシネテープが使われていました。しかし、80年代後半から1インチマスターが登場します。この時期、16ミリ/シネテープを1インチにコピーする作業が行われますが、作業に漏れた作品は、その後放送されなくなります。漏れた作品の16ミリとシネテープの多くは、米国のスタジオに戻されることになります。 ところが、ここからが問題。多くのスタジオは、外部のポスト・プロダクションと契約し、吹替素材の保管・管理を委託するのですが、一旦保管されると出てくるまでに非常に時間がかかります。数ヶ月は当たり前で、半年以上かかる場合もあります。吹替音源を引っ張り出すだけで時間を要するため、その作品は放送権を売りにくいわけです。 同時に、現在の放送用マスター(デジタルベータ、HDテープなど)に、シネテープから吹替をシンクロさせるには、技術工程が増えるため費用もかかります。 こうして古い吹替音源は、業界用語で“アリゾナ”(砂漠のように、物(=吹替音源)が見つけにくい場所)と呼ばれるアメリカのポス・プロの倉庫に眠り続けることになります。その間に、放送用吹替の知識のある人々は高齢で引退し、アメリカの倉庫に吹替音源があることすら知らない若手が、現場を仕切ってゆきます。 かくしてメジャースタジオの作品には、吹替音源が存在していながら<封印>され続けるものが、どんどん増えてゆくことになります。その結果、放送されないのはもちろん、DVDにも収録されなくなる(場合が多い)というわけです。 上記のような事態は、代表的な一例にすぎません。国内で16ミリとシネテープを管理しているメジャースタジオもありますし、権利が終わっても吹替素材をちゃんと保管している独立系映画会社もあったりします。 吹替音源が消失する原因には、もっと複雑な業界事情がからんだものもあるのですが、本が一冊かける分量になってしまうので割愛します。 国の事業とは言わないまでも、吹替音源のアーカイブ機関を設立し、過去の貴重な吹替を含めてきっちり保管してゆくべきだと、本気で思いますね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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