中国漁船の領海侵犯事件（政府・マスコミのいう「衝突事件」）について、法務大臣がコメントを発表していたそうだ。
　「那覇地検においては、上級庁の福岡高検、および最高検と協議した上決定したものと承知しております。
　なお、検察当局において、被疑者を釈放することを決定した後、その発表の前に私は報告を受けました。法務大臣として検察庁法１４条にもとづく指揮権を行使した事実はございません。」

　要するに地検が法務大臣、外務大臣、首相の判断ではなく、上級庁の高検、最高検の判断を得て釈放を決定したものであって、政府はそれを承認しただけであるとする。


　その昔、大津事件というのがあった。来日中のロシア帝国皇太子に警備中の警察官が切りつけて軽傷を負わせた。大国ロシアの報復を恐れた日本国政府は、ロシアの要請もあり、犯人を死刑にするよう司法に圧力をかけたが、当時の司法はこれに屈することなく、わが国の法に照らしてこれを無期懲役刑にとどめたという。

　今回の事件は司法の独立を守った大津事件とは異なる検察行政の話であって、全く条件は異なるけれども、現政権下の日本は法治主義に立つ国家であるのかという根本的な疑問を抱かせるに十分な事件であった。