私の問題解決の考え方 第1章第1章 はじめに-まず始めてみましょうー <人生いろいろ、問題いろいろ> 人生は問題解決の連続です。問題解決には苦労も多いですが、かなり面白いものです。逆に、問題のない人生はつまらないのです。問題がなくて、楽ばかりしていると、太るばかりです。苦労はあっても、目の前に現れてくる問題を次々解決して、元気で、楽しく、感謝して生きて行きたいではありませんか。 <これは一応論文です> この「論文」は、ハウツー(HOW TO)ものでも、ノウハウ(KNOW HOW)ものでもありません。読んだら何かができるようになるなどとは言いません。いろいろな学会に出しても受理されないかもしれませんが、論文です。これは、「理由をあげて自分の意見を述べた文章でもあるし、研究の結果をまとめた文章でもある」のです(三省堂国語辞典)。 これは、私の、長年の理工学研究(半導体関係)の各種問題解決で気がついた「面白い」ことに発して、他の日常の問題解決についてもいろいろと考えを巡らせ、 「問題解決には基本的な考え方がある」 という結論に達するまでの過程をまとめたもの(または、その考え方で解決したいろいろな問題の紹介)です。 <役に立つかな?> この論文を読んだからと言って、問題が解決するわけではありません。私が書いていることが、少しでも、皆さんが問題に遭遇したとき、自分で考える助けになればいいと思っています。でも、本当は、もう一つ心配があるのです。 私は、会社では研究がほとんどでしたが、会社をやめてから、いろいろな職業の、いろいろな人達と付き合ったり、相談に乗ったりしています。 最近、私達日本人がだんだん「馬鹿に」なっているのではないかと思わせるような、いろいろなことに気づくのです。「考える」能力がなくなったというのではなく、大事なことについて、ちゃんと考えなくなってしまったような心配があるのです。世の中が豊かで便利になって、いろいろなことを考えなくても生きていけるようになったからでしょうか。人間、物や情報が増えて、前より複雑な世の中になり、考えることが多すぎるようになってしまったからでしょうか。私の論文が、このようなときにも役に立つかもしれません。一緒に考えて下さい。 [2011年の大震災・原発事故で、ますますこの感が強くなりました(2014)。原発事故を起こしてしまったこと、それから、事故への備えをしていなかったこと、事故の収拾が進まないことなどです。さらに、当事者である国や電力会社が、嘘、ごまかしと隠ぺいを駆使して、責任逃れをしていること。その上、素直な反省なしに、原発の再稼働や輸出まで考えていることです。全て、人災です。] 以下は、いろいろな仕事で、問題解決がうまく行かないようなときに考えることです。 <このようなことがありませんか?> 生きていく上で、何が大事かが分からなくなっていませんか。 それを自分で考えて、判断、行動できますか。 新しい仕事をなかなか始められないということはありませんか? なんとなく無意識にいろいろなことをやっていないでしょうか? 注意力が足らず馬鹿な間違いをしたりしていないでしょうか? 楽に生きられればいいと思うだけで仕事をしていないでしょうか? 自分でじっくり考えるのがいやになっていませんか? 言われた通りにやるのが一番楽だと思っていませんか? 失敗するようなことには挑戦したくないと思っていませんか? 言われたことを鵜呑みにしてしまうことがありませんか? 分らないときに質問できますか? 何かに感動できなくなっていませんか? 仕事が楽しいですか? 仕事に集中できますか? 仕事に熱中できますか? 元気とかやる気が不足していると思いませんか? 活発な討論ができますか? 職場の雰囲気が暗くありませんか? 本気になれますか? 好奇心がなくなってきたと思いませんか? 今日はこれをやったとか、これが分かったとかいうような興奮がありますか? 忙しく働いているのに、自分は何をやっているのだろうと思ったことはありませんか? 仕事とは、多くの場合、自分や家族が生きていけるように、お金をもらってやるものです。そのようなとき、仕事が楽しくない、それに集中できない、熱中できない、その環境がいやだ、などということがあるのです。そういうとき、お金をもらっているのだということを頭におき、ある程度は耐えなければいけません。いやな仕事を与えられたと思っても、まず始めてみる、つまらないと思っても、できる限り頑張ってみる、などです。とにかく始めて、倦まず怠らずに働いているうちに、結構面白くなってくるのです。 しかし、実際には、こんなことだけでは解決しない問題も沢山あると思います。 読者のツマラナイさんから質問が来ています。 >今の会社に入ってから3ヶ月経つのですが、毎日同じことばかりで仕事が面白くありません。どうしたらいいのでしょうか? 私の答えです。 >ただ同じ作業を同じようにやるだけではつまらないでしょう。しかし、それでお金がもらえるなら、仕事はそのようにほぼ無意識にやり、そうしながら、いろいろ自分の考えごとするというのも一つのやり方でしょう。一方、作業にミスはありませんか、作業のやり方を改善できると思いませんか、作業そのものを変えた方がいいなどと思いませんか?もしあるなら、この作業なら俺に任せておけ、と言えるくらい、この作業を効率よくできるようになって下さい。そうなると、つまらないと思っていた仕事でも、そうでもなくなるかもしれませんよ。 もう一つ、マイッタさんから来ています。 >仕事の量が多すぎて、体が持ちません。やめたいと言っても、やめさせてくれません。 私の答えです。 >これは、やめるか、仕事を減らしてもらうかの、どっちかです。上司に自分の体調を説明して、対処してもらうよりほかありません。だめなときは、誰かに、職を斡旋したところ、ハローワークとか、自治体などに少しでも早く相談した方がいいです。でも、堂々と退職届を出していいのですよ。会社にはやめるのを止める権利はありません。 <一緒に考えてみませんか?> うまく行かないときに相談されても、私だって適切な助言ができないのではないかと思います。 私なら、とにかく、問題にぶつかってみます。なるべく白紙状態で。実践です。自分でやってみることです。そして、いろいろな問題点を洗い出して、第2章で説明するような、「基本的な考え方」で問題を解決しようとするでしょう。 そして、大事なことは、「自分で考える」クセをつけることです。さらに、どうせ考えるなら、大事なことを、役に立つように。それから、判断と行動です。 この論文を読みながら、一緒に考えてみませんか。 そして、「基本的な考え方」を、今自分が抱えている問題に応用してみませんか。 いや、自分はこうするのだということを見つけてもらった方がいいです。 できたら、その検討例をお寄せ下さい。論文の中で、他の方も交えて議論できれば理想的です。成功例は勿論歓迎ですが、うまく行かなかったことの方が成功例より勉強になることが多いです。 <論文の内容> この論文では、理工学の研究だけでなく、日常私達が出会う、いろいろな種類の問題解決のやり方についても考えます。 これは、ここ約7年間の、私の研究(問題解決について考えたり、経験したこと)の結果をまとめたものです。 [いや、その後、この論文の執筆中に発生した問題の解決や、分かったことも含まれています(2014)。] 一方、これは、私の人生(各種問題解決あり)の3分の2以上[ほとんど全部かもしれません(2014)]の期間に、どのような考え方で、いろいろな問題を解決してきたかを一つの話にまとめたものでもあります。 私は、長い間(30年以上)、ある会社の研究所に勤めていて、半導体関係の材料の研究をしていました。ほぼ10年前、数十の私の研究論文を一つの解説論文(1)にまとめる機会を得たのがきっかけで、研究の進め方について、意識して考えるようになりました。 その論文を書きながら気づいたのは、 「自分の、かなり多くの、いろいろな対象の違う研究でも、それらを進めるときの考え方がよく似ていた」 ということです。私は、これが「面白い」と思ったのです。 そう思って、自分のやってきたことを振り返ってみたら、さらに面白いことに、研究以外の問題にも似たような考え方を使っていたのです。そして、それまで、そのことをあまり意識していなかったのです。これも面白いではないですか。 ということは、もしかしたら、子供のときだって、同じ考え方をしていたのかもしれません。また、私の人生を、「問題解決の基本的な考え方が同じ」という共通点で、一つの話にまとめられるかもしれません。しかし、残念ながら、小さいときの、自分の頭の使い方についての記憶は全くないのです。いや、私は、高校3年ぐらいまでは、本気になって、何かをやらなければとか、重要な問題を解決しなければとか、について真剣に考えていなかったのです。 しかし、こういうことが「面白い」と思うのは私だけで、多くの人には、あまり面白くないことかもしれません。(実は、私の場合、こういうことがよくあるのです。2年ちょっと前の本荘(今は秋田県由利本荘市)でも、寒いのに、私一人が美味しいバッケ(フキノトウ)を探すのに夢中になっていたところを、友達に、「なんでこんなことが面白いのか分からない」と言われました。) 皆さんは、この論文を読んだら、 「ああそうですか。」、 「そんなの当たり前よ。」、 「だからどうだって言うの?」、 「人間が同じなら考え方も同じよ。」、 「本当に?」、 「同じ人間だって、問題によって、いろいろ考え方を変えるのではないの?」、 「それは、問題と人によるのです。」 など、いろいろ反応されると思います(多分はじめの二つが多い)。 その反応について、どうこう言うことはないのですが、この「面白いこと」を意識するようになってから、私自身の問題解決の成功率が確かに上がったような気がするのです。 しかし、問題点はまだ沢山あります。物だけが相手ならいいのですが、特に人間の「考え方」とか「行動」が関係している場合は分からないところが多いです。 <話の進め方>[実際には、書きながら変わっています。2014記] この論文での話の進め方をまず述べましょう。なお、ここ2年あまり、秋田の人達との楽しい付き合いが増えたので、秋田弁がときどき出てきます。 第2章では、 私が見つけた、研究を進めるときの「基本的な考え方」を説明します。私の理工学研究を振り返ってみて、様々な研究(問題解決)の間に共通点を見つけて、さらに、その他の、人生の問題解決においても、同じような共通部分を見出したのです。この部分は、口で言え、文に書くことができる部分です。というか、私の頭で整理できる部分です。この部分をまとめて、「問題解決の基本的な考え方」としました。 まず、理解できる、なるべく大きな目標を持つこと まんずやってみれ!んでねば、やる気も出てこねえ! いろいろ試して、解決のために苦労する、経験する 知る勇気を持つ 問題点を洗い出す 頭を使う(要因の解析) 問題の理解(問題の構造は?) チェック機能を考える(やっていることの良悪の判断と解析) そのとき、なぜ悪いかを調べられるか?(解析手法) どうすべきかの判断と行動(洞察力) 後は、「倦まず怠らず、」こつこつと続けること(2) この最後の言葉は、古事記の研究で有名な本居宣長翁の200年ほど前の言葉です。 たゆまぬ努力により、答えが「ほがらほがら」(朝日が出てくるように)と出てきて(2)、 「えがった、えがった!」(秋田弁で「よかった」という意味。「いがった」とも聞こえるかもしれません) ということになるのです。 第3章では、 「問題解決」というか、「考える」ことの理論みたいなこと、確率論(統計学)に触れます(3)。 あまり難しいことは書きたくないし、ほとんど独学なので、正しく伝えられるかどうかも自信がないのですが、知っていた方がいい、とても大事なことが含まれていると感じています。 世の中には分らないことが多いのです。神様(全知全能の;神様にもいろいろあるらしいですが)でもない限り、分らないことだらけです。人間なら皆確率論のお世話になっているのです。確率論というのは博打の研究から始まったのです。ですから、人生は博打だ、とも言えます。 分からないことの度合いを数学的に言い表そうとしたのが確率論(統計学)なのです。(どの要因が問題解決にもっとも効いているかとか、問題解決できそうか、とか、数字にしなくても、確率論を私達は無意識に使っているのです。) そして、「私の問題解決の考え方」は、確率論から考えても、もっともな考え方です。 第4章、(ここ以下は実際の目次(上記)と違います。2005年当時のもの) 「私の経験してきた問題解決」 で、上記の基本的考え方を具体例で説明します。 この基本的考え方は、問題解決にとって、私が大事だと思うことなのですが、これを読めば問題が解決するという保証は全くありません。わが問題解決研究所では、これまで、いろいろな問題の相談を受けてきました。そして、私は、馬鹿の一つ覚えで、上に示したような基本的考え方で助言をするのですが、効果がないこともあるのです。一方、予想以上に効果が出てしまうこともあります。 反省してみると、相談に来る人がいろいろ違うのです。困っているという点では同じですが、「元気、やる気とか勇気」など、気の持ち方が大きく異なっているのです。要因は様々あるのですが、初めのうち感じたのが上記の3点だったので、「気の要因」と名づけようと思ったのですが、「心の要因」と言った方がいいかもしれません。 これらの、なかなか言い表しにくく、実行しにくい、大事なことについて、 第5章の、 「うまくいかないとき」 と 第6章の 「その気になればできる!」 で、 考えてみたいと思います。この部分は、論文を書きながらまとめていくつもりです。 最後に、第7章でまとめます。 まだ、はっきりしませんが、 「子供の心」を持て、 ということになりそうです(4)。 <結局、言いたいことは?> まんずやってみれ! チェック機能(5) 子供の心で、自分で考えて、判断、行動しよう! 感謝の心で、元気で、楽しく。 そして、素直で正直に。 また、私の問題解決の考え方の基本的な部分は、大村はま先生の教育の書(6)の中のいろいろなところに見つけることができます。勿論、文献1)から4)の中にもあります。 [以上の第5章以下については、2005年にそう思っただけで、書きながら変わっていきました(2014記)。実際の目次は冒頭にあるものです。] 参考文献 1) S. Iwata and A. Ishizaka: “Electron spectroscopic analysis of the SiO2/Si system and correlation with metal-oxide-semiconductor device characteristics,” Applied Physics Reviews (J. Appl. Phys.), 79(1996), 6653-6713. (ここで、Applied Physics Reviewsというのは、1980年から、将来、そのときどきの重要な題材について、深く突っ込んだ解説論文を集めた雑誌を作る目的で、当面、古くからあるJ. Appl. Phys.に、巻頭論文として、載せられてきたものです。そして、2014年にめでたく念願が叶って、その雑誌ができました。 そして、ありがたい縁のお蔭で、私の研究の主要部分を上記論文にまとめることができたのでした。というか、執筆のための検討の中で、私の研究がさらに進んで、その分を含めた上記論文となりました。) 2) 本居宣長:「宇比山踏」、伊勢松坂 柏屋平助、(1800). (宣長翁は「古事記伝」で有名な国学者であり、「宇比山踏(うひやまふみ)」は、学問を始める人のために、亡くなる直前に書かれた、手引書です。この本には、問題解決にとっても大事な記述が各所に見られます。驚くべきことは、その内容が分かりやすく書かれていることで、私は、原書の書体のまま(影印本)読んで、かなり理解できました。なお、私は、なるべく原書の状態で本を読みたいと思っています、翻訳すると変わってしまうような気がするのです。) 3) E. T. Jaynes: "Probability Theory The Logic of Science," Cambridge University Press, (2003). (この本は、初心者の私にとっては難しすぎるものですが、ところどころに、私を惹きつけることが書かれていました。そういう部分だけを理解しようとしたり、それについて勉強したりした結果、「確率」の意味が分かってきたと思います。哲学の本を少し勉強したのもそのお蔭です。この本の翻訳本はまだないと思います。従って、これも原本で(というか原稿状態でネット上に公開されていたもの)読みました(部分的ですが)。) 4)Antoine de Saint-Exupery: "Le Petit Prince," Librairie Gallimard, Paris, (1946).(星の王子さま) (初心者のフランス語しか分かりませんが、この本も原書で読みました。この内容も、問題解決のことを考えるときにとても参考になりました。) 5)岩田誠一:「半導体プロセスにおける密着性」(薄膜の力学的特性評価技術、第3編、第2章)、リアライズ社、pp.448-479(1992). (この研究の中で、私が「チェック機能」の重要性について気づいて、そのことから、私の問題解決の考え方をまとめようと思ったのでした。人間誰でも使う問題解決法は試行錯誤法です。その効率をよくするのが、やっていることの良し悪しを判定する「チェック機能」なのです。これは日本語で私が書いた解説論文です。) 6)大村はま:「新編 教育を生き生きと1,2」、筑摩書房、(1994)。 (中学生の国語の先生であった著者が、生徒が卒業したら、社会で暮らしていけるように、独自の考え方で、子供達一人ひとりに合うように、いろいろ工夫した、教え方をまとめたものです。その内容は、問題解決の手法の手引きとしても使えると思いました。この本はとても分かりやすい日本語で書かれていて、大変参考になりました。そのお蔭で、将来、教育についての私の考えをまとめたいと思っています。わが国を良くしていくには教育が絶対に必要ですが、良くない状態が数世代も続いているので、今のままの先生で、大事なことを教えるのは難しいと考えます。今、なんとなく、こういうことを考えています。) 2005記 |