風狂夜話２

おそらく民主党の圧勝に終わるであろう。

すべての新聞取材が民主党３００議席確保を報じている。

しかし今日の投票行動がどう出るか、私はやや懸念を覚える。

私は基本的に民主党の勝利、政権交代、官僚主導の政治の転換を希望する。

そして国民の鬱積した政治不信は、自民党の長期政権による腐敗・機能不全に原因

があると考える。

昨夜の池袋における自民・民主の両党党首の演説はしかし、私には物足りなく思わ

れた。また聴衆の反応にもしらけたものを感じた。

これは東京という幾分恵まれた都市の、遊興地区での人々の反応といってしまえば

それまでだが、日本という、世界のなかでも群を抜いた自由で豊かな国家の政権選

択というレベルでみても、気の抜けたサイダーを飲まされている感がある。

すなわち聴衆は両党首の弁舌に心からの同意や肯定を覚えていないのである。

豊かな国のもっと上品な、さびの利いた言葉に同調したいのだ。

かれらはすでに浅草のサンバカーニバルを観た帰りのひやかしであり、権力者の鉢

あわせに携帯写真を狙った年金生活者であり、海外旅行を済ませた金融資産家の若

者であったりするのだ。

よれよれのホームレスなどどこにもいない。勝者の宴なのである。

党首の甲高い演説の「天下り絶滅」「子育て支援」「日本国の防衛」はたまた「年

金の最低限保障」にもほとんど関心がない。

ここにいるということで既に十分身分が保障されているのだから。

むしろ権力の絶対者のくせや、失言。演説の巧拙、テレビ画像との異同、応援候補

者との関係などに話題がふれる。

そしてもっとも気になるのは、この選挙イベントの興業的勝負の行方である。

どこどこのテレビ、新聞、警官の数、夜空を舞うヘリコプターの音、そして自分を

含めて選挙カーを取り巻く聴衆の数に酔う。

晩夏を惜しむ最後の祭りという趣である。

「さすがに現役の総理だね、警官の数が半端じゃない。見てよあの信号、全然動か

ないぜ。金がかかってるね」

「なんかあの応援弁士、全然迫力がない。ひいきの引き倒しだぜ。比例候補だから

かな。官僚出のせいか上から目線で気にいらねえ」

「これ、少し聞いてから、あっちに行こう。８時までだから急がないと」

民衆はあくまでも「権力の顔」が好きなのである。

自分を拘束し、呪縛し、右往左往させ、目も心も釘付けにするビロードの法衣があ

くまでも好きなのである。

できれば自分もこの法衣の側で権力の蜜の味を試してみたいと願うのである。

だから常に自分を、どの階級のどの位置にたっているのか値踏みする。

すくなくとも底辺であくせく人に顎で使われたくないという、意地がある。

日本人のけちくさい信条「上をみないで、下みてくらせ」のこころが露骨だ。

私も実は麻生首相が、芸能人まがいのフアッションで見得をきるところが見たい

と思っていた。とうとうここまできたかという。

日本人の民主主義が「権力者の顔」をここまでこきおろすかという瞬間を見たい

と思っていたのである。

酒井法子の弾劾と同じような、風を感じる。