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不思議の泉

不思議の泉

8.紫式部の花

8.紫式部の花



「ヨンデイル・・・、すぐ戻ります。」

キャンドルの妖精は ふっ 消えて。 心の灯までも。

森の朗読会はつづいていましたが、若い物書きの心は虚ろでした。
それは、切ない風の吐息にも似て。
舞台では、紫式部の花の朗読。




【紫式部の花による『メタモルフォーゼ』】


それをなんとよべばよいのでしょう

ゆうかぜにゆれるやなぎのように うつろにゆれるこころ



    いつからか わたしのやさしいしらべ

    いつからか わたしのいとしいしらべ


ことのはもしらぬののはな

てがみすらしたためられずにいて ただはなのいろにおもいを


むらさきはせつないれんぼ

うすももいろのはじらいはうちにひめ

あかくもゆるともあらわさずにいて

るりのなみだをとけこませ ひとりないています



    いつか あなたのやさしいしらべ

    いつか あなたのいとしいしらべ



ゆめにはなをさかせ ことをかなでましょう


とわずがたりをうたうすべとてしらずにいて

つたわるでしょうか


せめてこよいひとよ げっかのびじんになり

あまやかにつきのひかりに だかれましょう

せつなかにやはんのしずくに ぬれましょう


    あおいまんげつのよる

    しきぶのといき むらさきめいて

    まるまどにまつ

    おぼろなるいにしえびとのこいごころ

    さやかにふでにあらわれて





休憩時間になり、、紗なり、、紗なり、、ウサギ屋があらわれました。
キャンドルの妖精がいないのに気づいて。

「浮かないお顔はそのせいでございましたか。合点いたしました。
 このウサギ屋がお連れの方のところへご案内いたしましょう。
 そのまえに…、
 この森では青い満月にこのような言い伝えがございます。
 おききくださいますか。」
 







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