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不思議の泉

不思議の泉

17.祖国の花

17.祖国の花



待ち合わせ場所に、銀狼。
領主の館へと。
  市場を見下ろす高台のうえ。
  裏手には、入り江の砂浜。




      キラメキましょう
      キラメキましょう

    あなたは波のように
    チャッチャおどけて、わたしを誘うの

    ゆめみるダンスシューズ
    すこしだけ、履いてみてもいいかしら

      キラメキましょう
      キラメキましょう

    風は潮の香り
    2人のステップも、軽いわ




シェーラザードはとても美しい奥方でした。
西域風の顔立ち、マリンブルーの瞳。
しなやかな肢体、気品ある身のこなし。

ブランチは、海側のテラス。
お手製のキッシュにハーブティー。
食後は、香しい薔薇園へ。


「こちらよ、可愛らしい妖精さん。」


そう言って、
シェーラザードがキャンドルの妖精の手にふれたとたん、
それは、皆のまえに・・・突然に。

薔薇園の向こう、
一面の花畑あらわれて。明色の小さな花々。




    触れようとして、、き、える、、蜃気楼の花畑//


      どうか私の悲しい記憶もつれていって、

      赤い擦りガラスのむこう残像をとどめているのに、

      炎には彷徨い人の影と止めようもなく崩落する壁画、

      描かれていたはずの邸宅に咲き乱れる季節、

      すべて砕け散る嘆きの肉片にかえて


    //時代という、、き、えない、、血塗れた刻印

    、、くり返し喪われて、、き、こえない、、愛という言葉。




シェーラザードの頬を涙が流れて。
それは、祖国の花。
喪失の歴史は耐え難くて。


「妹がいたのです、炎上する楼閣のうえに。
 隣国の王子と恋仲だったのです。
 突然の砲弾が襲い、二人の待ち合わせ場所も・・・。」




        炎上する楼閣。

        立ち竦み擁き合う二つの影。

        あれは時の彼方の敵そして味方。

        喪われて、ただ遙か呼び合う魂。

        ふたたび廻りあう点へと流離う、

        あわせ人。




「どうか泣かないで、シェーラザードさん。
 お二人とも生きておられます。
 ただ、時の宝箱のなかで長く眠っておられたので、
 10代のときのままです。
 妖精のメタモルフォーゼがおきたので
 箱が開いたのです。
 今宵、花畑の中に降りられます。」


キャンドルの妖精の頬にキスする、シェーラザード。
妖精は、恥ずかしそうに若い物書きの肩に。









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