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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

写真詩詩文控え4

【235】



いらっしゃいませ、タラの芽などどうですか? 天ぷらに
ほうほう、・・・ドングリをお求めですか?
いえいえ、滋養強壮エナジードリンクですな
―――自分を欺くな、ですな。子供の頃、キイチゴ
おたくさんは知識がありそうだからフランソワーズ、
はは、・・そう、フランボワーズ、失敬
これを食べるなと、母親に言われたものです。
・・・食べたか? それはもう、率直なご質問
的確に言えば、食べなかったから私がここにいます、
いいですかおたくさん! 自分を欺くな
・・・クリスマス・キャロルのようにね



【236】



夢のなかのあなたは洗面所にある小さな鈴のような声で話す
わたしはカメラマンで誰かに心を奪われたいと思っている



【237】



聖都市から烈しいニヒルや頽廃をもとめて
ドウクツ・ウェ-の頭上を天使の翼をもったミニョンが
・・・筋肉は硬く冷たく、空気は悪い
ケンジュウのようにぶっ飛ばしていく車にミニョンは、
「製作途中のカンヴァスね。うふ・・。」と笑った。
――それをバカという者がいるなら、億万長者にはなれない。
ミニョンの内側にゆがみなく反映するヒトミは
まだそう深くは考えておらぬ、直観なのである。
・・・漆黒の皮膚に虹色のきらめきが覆いかぶさった
「――暫くわづらはしき世より離れて祈らせていただくことを、
感謝いたします。・・・神よ、――あなたのミニョンより」
オゾン層がこころゆくまで破壊され、空気がここまで汚染され、
・・・しかも、平和からはなれてゆくこの街はなんといっても、
イカしてます――! サタンの存在することは、イエスの福音の中でも
とびっきり、・・・とびっきりグレイトなことです。
ミニョンは――飛ぶ、・・・彼女は金箔のゴブレット、ムーンフラワー!
――街中が不死鳥の夢、・・・うずうずとして身震いして、
芸術のアルペツジオやってしまいそうです。
神さま、手でも顔でも真紅に染めて、恋をしてもいいですか
・・・オゥワレテ イル トバリ ヲ ワケテ
ミニョン、肉が剥がされた強烈な昂ぶりにわけもなく酔う。
――サキホド クレタ ユゥヤケゾラガ
どうしてまた、昇るのかしら、天国にはこんなのないわ、
六十年後だって、こんなのないわ、
ひとごみに蝶の鳴き声がもし聴こえたら、それはミニョン、
・・ピロロロロロロロ――。
扨て烈しい風が目に見えぬ大きな塊をごうつと吹き下ろして、
痩せこけた人が、俄に心ぼそくなった。
ミニョンは落葉を攫って、バスの背中をずんずん押すなど、
人が本当は・・・喜ぶことをして―――不安がらせた。
ミニョンは冷たい真実の底からひそひそと湧き上ってくる声なき慟哭。
ひとごみに蝶の鳴き声がもし聴こえたら、それはミニョン、
・・ピロロロロロロロ――。



【238 何にもかえがたいほど美しく思える】



黴くさく 小暗い台所の片隅に、
静かに命をまもる一本の棕櫚の樹。
青い 青いガラス玉が 澄んで かたくなる。
『賢明』と『力』の歌を聞き、喜びに満たされている。
月光を受けて白い屋根がみえる。
木がゆれていた。ゆっくりと葉をふるわせていた。
その慈愛の光にみち、花々は密柑の如くはりつめ、
濃厚な香りを放っている。
その目のうちを見守れば、音はなかった。振り返ることもなかった
――ただ、うっとうしかった、この土地に
おし流すことはできない、『愛情』が旅立ってゆく。
雲と影の匂ひにうなだれて傷ついている道。
「・・・ねえ、君! 万遍なくいま、闇。
すべてが息を殺して、トランプの中のようなふたり。」
そうね、――そうだわ・・と女は肯く。
しツ、でも、・・・だまって、鳥がやってくる、
この骨のような、ところ、に・・。
それから、・・・それから、いま、手許に、一葉の古ぼけた写真
何十年か経ったのだ、そこにふたりの男女。
神殿へ運ばれた病気の子供みたいね、(くすくす、と笑い声)
でも、――甘美なる無為というか、
セイレーンの魔のトライアングルというか、
いいね、流刑の写真みたいだ。家族って実はこうだと思う。
愛って、じつはこんな風だと思う。
嫉妬に燃えるパンドラの箱! アリアドネやジュリエットと
会うこともない、――そして、そして!
マイ・スイート・ローズの風に吹かれて・・。



【239】



 彼と、会う。週末にランチをして、ふたりでランチをして、ランチして。
 週末で、別れて。
 「おしゃれな店・・。」
 でも睡眠不足――、気がつけば・・・掃除洗濯。予定はぎっしりと詰まって
いる、ファッション雑誌、化粧のノリ、――考え出したら際限がない。やは
り土曜。それで日曜。つぎは憂鬱なMonday。1月 January。2月 February・・。
 「美容院に、・・離れの宿。――」
 え? なに? ―――引き込まれて、眼をあげる“恋人”
 一時間以上の長電話、
 やっぱり、どこか、照れてる横顔。
 マンションの鍵をしめて。エントランスを出て。眩しそうに聞こえ始める
ラブ・ソング 。インターネットで調べて 。宿を予約して 。レンタカー
の手配をして 。ロードマップを調べて 。
 でも眼をあげる“恋人”はきっと“友達”
 ・・・大きな眼の奥が笑っている。――隠れたい、わたし。見付けられたく
ない、わたし。
 誰とも会わない、――でも会う? 
 わからない、・・・ぼんやりと彼の顔を想像する。
 「懐かしいな、元気にしてる?」
 週末にランチをして、ふたりでランチをして、ランチして。
 「掃除機の・・・スウィッチを、リビングで消して。」
 わたしは、――専業主婦? それともまだひとりの女?
 咽喉から出掛かっていたことばが止まる。――そうだ、この
家、・・・ふわりとカーテンがふくれて、わたしの胸。
 ―――彼は素直にうれしそうな顔をしてくれる・・。
 


【240】



太陽がもし変質したら、月の出を知らなくたって、
日の出を知らなくたって、
・・・きっと、きみも好きになるよ
呑気に恐怖を実感して呉れたまへ
夢のやうに呆けた朝、
――みずいろの空から、
窓がゼリーになっているのを、
ぷにゅうっ、グチュツ!
――手型が冷静に分析した。
そして誰も知らぬ間に、
世界が数年流れていたことを彼は知る。
数年前、彼は・・・、祈った――。
すべて消せよ、
とかつてお前の情熱が
気ままな波をしていた頃、
覚えていたものは、
窓だけだった!と・・。
異常な展望を見た、外の景色は、
ゆらゆらと陽炎が燃え、
プテラノドンと思しき鳥が
ごう、・・・びゅう、――ばさア
とわが視界に踊る



【241 歴史の中】



 次第に寂しい衣裳に眼をうばはれ、波紋のようにわ
たしを誘ふ声がある。雑木の山のトンネルをくぐり、
うしろを振り返れば秋の去りゆく葉の間を、枯れ色が
透明な風景のなかに腰を下ろしている。ーそして屋根
に雪がとけ、軒先に尖りてつららとなる。わたしは凍
てつきながら、土のにほひを嗅ぎ、混凝土の壁から遠
ざかろうとする。ゆらゆらと公園の隅のブランコが昨
日の風に、ゆられ、こはれた雲が雪を降らせ。線路を
辿る店の音も、川の幅も、タイヤも、足跡も、雪のな
かに埋まつてゆく。わたしはまるで頼りない青空のよ
うに、はにかんでばかりいたから、薔薇いろの夕ぐれ
さえも忘れてしまうのだ。希望は黙つて丘へと鳥をか
へした。路傍には冷たい草々の育なみ。そして深い穴
のなかからわたしの足音がきこへる。北の吐息のつめ
たさに、ひとり膝を抱ひている秋風。たよりない肩か
ら冬の雲がやつて来る。そしてあの公園の隅にあつた
ブランコはどうなつただろう。冬枯れは遊具も雲へと
かへ、うつすらと赤い鳥居のようにみへ、町を通りす
ぎる詩人は青い洋燈になる。ゆつたりと時の流れに身
を置いて、ちようど、あの心の隅ににじんでいたブラ
ンコを探しに行こうかとおもふ。小鳥よ、さへづつて
いた秋の小鳥よ、渋き実の割れた秋空に舞つていた、
わたしといふ小鳥よ。



【242】



断崖に発見された 時間は、夜。朝はゆっくりと中断され
一億年の睡眠を実現する。拷問や孤独、
いついつまでの痛み!
―――陽気な時の歩み! ひとたびは遠く、ひとたびは近く
谷間へと槍の一突き、a傷口の燃焼 b凍結結晶
・・・鋭いひょうをもって私は鷹を歓迎する。
はてなき帳かすかに止まり木をつくり、
白内障の地震なソファーも、ひだまりの水乾き。
彷徨える空色こそ澄みわたれ、瑠璃色なしてうつくしく目に伝われ

●そこへ一人の男

  オイル、印刷された広告、プラスチック花、冷蔵庫のドア、ボトル、
 スタンプ辞書、プラスチックのレプリカ新聞

  + ゆるやかに流れゆく働らき
    密室のなか見えない光が肩を訪ねる働き

●そこへひとりの女

  「・・・冷めはてた圧力に、
  ―――スフィンクスを聞く、飛行の追求」

僕の知っている限り指輪箱から花火があがる、
頭は瓦斯管(エア)過去形から、服を着ていた
――色でその廃棄物は、独自の不滅だが、
・・・珠玉のこの舌はもう知られている
疑いと信仰の間に悲しみのソウル!ソウル!を・・。
緊縛された魂に海蛇の隠れ家を・・。



【243 皇帝の考え】



 無限に繰り返し得る可能性のなかに、皇帝がいない。
青山河のなかにわたしだけが取り残され、みなは、波を
ゆする陽を見、深き穴より球根の白根を見た。赤い旗が
流れ、三角のひと隅にでも消へるように平凡な思想、超
越者、或いはミレーの種まく人のように。浮き上がつた
白鳥の一群。真つ赤にもへる薔薇。この世界といふ、は
てもない稻田の海。いくつもの山脈。それは雲に触れた
霊のように、ある直観のもと、あるいは偶然といふ発見
のもと彼等が只管に積み上げていつたもの。歴史、陸に
あがつた水の人のための階段があり、いやそのどれもが
時間のなかで死を予感していた。だが、わたしは知つて
いたのだ、ある背後の、たとへば大聖堂という括りのな
かでひつそりと生きながらへるものを。思い煩へば紅葉
は散り、雪は焔のようにわたしの頬を灼いたが、輪廻転
生も、永遠の国ともかかはりなく、わたしたちは唯何か
によつて生かされ、何かといふものに、奇妙な感覚を思
ひ出した。生きるための糧、後ろ盾、そしてそれらをひ
つくるめ、迷い道の手を引かれ、時にはひとりで胸を張
つて歩いてきた。邪悪な因縁、天佑、拘束された生命と
いふランプ。まるで絵画のように過去のわたしがそこに
とどまつていた。贋の追憶、生きてゆくということで矛
盾する生活。いくつもの暗示があつたが、所詮は人のこ
と。印刷物がそれらをただよこしまな白紙にかへた。そ
して鐘が鳴る。反響する。みづうみが波紋してゆく。う
つとうしい鼠色の空が遠くかすんで、限り無きものの廣
さで雨を降らせる。雷鳴がくる。狂つたわたしが泣く。
世界へと痛烈に鳴りひびく音楽となり、虚脱し、節奏美
は形式にとらはれることなく心をふるはせる。ああ、神
よ。なぜ、船は趨しる。馬車は風を軋ます。そして人は
何故、いまもあやふやに水のなかを游ぎまはる・・。



【244 わたしは醜く、あなたは美しい】



「――わたしが迷つていると言つたら・・・あなたはどうします?」
女は細長く伸ばされた、少こし首をかしげた、懶い表情で、言う。
いろんな思ひをのせ、着くべきところへ向つて流れる陽射しのなか、
あなたは振り返つていた。
視界の端をふはりとうごくもの。
――ぱつちりとした二重瞼に貝の縁どりによつて円となつた、
その奥のくうきょな穴のように瞳は、次の瞬間・・。ー青い蝶のように、
あわく光つて、すうつと頼りない背中が強張る。
・・・薄倖そうな女だ、――しかも、魔性を奥に秘めながら、
けしてわたしを誑かさぬといふ女だ。
「ベアトリーチェの生まれ変わりかも知れない。」
わたしが、ダンテなら、やはり彼女に恋をする。
肉身をそなへない死者のように、まつたく、あなたは美しい。
みにくいわたしなど、・・・到底好かれるはずもなく、
「――もしかしたら、・・・この子は。」
のつぺりとした顔写真のように、いつまでも、
わたしを魅了する屈折なのかも知れない。



【245】



あなたはあなたの真実を語って欲しい
嘘をついていい
わたしはあなたが
死から生へとやってきたことを知っている
告白しなさい
生まれ変わるため



【246 握つているが、その痛さ。】



 太陽が大空にうかぶ一片の雲を染める時、
ひまはり、ぼくにおくれ、時計を――夜の
部屋にとろける皮膚の赤さ、その古びた調
度品、薔薇のようにもえている。もし、ぼ
くがここで死んでも、しののめの朝はのこ
るだろう、ぼくにおくれ、憂鬱な気体――
鐘の音にもこつそり、なやましい煙幕にと
けいる、無意識の飽和と、造化すなわち天
然と、奇なる魅惑とに各概念に排列するゆ
ふがた、ぼくにおくれ、せめてもの祈りを。
疾つたぼくがいた。立ち止まつたぼくがい
た。閑古鳥が鳴いた。――ぼくは酔いどれ
のように、半ば弛んだ腰紐のように、その
むこふの肉体へと白い手をむけ、人知れず
しづかに赤い眼をし、船のようにはしつた
かも知れない。すつぱさも黄色の、香橙の
うち側よりかおり立つたかも知れない。強
烈なぬくもりを抱いて、ただうつくしい瞬
間に身を焦がしたかも知れない。心がゆら
めく、光や色や、かおりや、またウィスキ
ーがフロアを埋め尽くした夜の湿り気のな
かで哲学へと引き込まれたかも知れない。
でも、ぼくにおくれ、――くらい部屋を、
讃美歌を。強烈な酒を、接吻を。



【247】



十四を抱いた 天にまねかれるような背徳的な目覚め
嵐の中の胡蝶!
十四、永遠にまだ遠い初恋、

十四、十四・・。
野の白うばらを摘み取る
空と樹木と街とを照らすオリオンが

十四を抱いた、それからの太陽は色褪せ
モスグリンの沼となる

十四、十四・・。
あなたとはじめて会った驚き
鳥が水辺で生き血をすするころ
――ひまはりもたねにかはる頃



【248】



わたしはあなたの名が好きです
でもどうしてわたしはあなたの信奉者だと名乗り出ることが出来ないのでしょう
あなたと過ごした或る調和のために手紙を書くこともできずに
下界の寒さに星がかがやいたけれど
わたしの心臓は飛行機に乗れないほど弱っていた
それでわたしはしずかな村を世界中の恋人たちのためにつくりたいと思った
でも彼等はダイヤモンドを信じるくせにわたしの情熱を否定する
銃をにぎればおびえるくせになんという、きちがいでしょう
――鍬をにぎればいいのですか? 
わたしは或る夜とてもロマンティックであったので月に
いきいきした音楽を鳴らしてくれと頼みました
すると世界はかたくておもい錠をはずして
わたしの明るいランプになりました
でもわたしは逃げたまえと言わなければなりませんでした
・・・だってすべての瞳があなたとのことを不倫と言うのですから
かんじやすくてもろい月という窓から官能という裸なものがおりてきて
まるで一羽の小鳥のようにわたしに慰めてほしいと言いました
あなたはきまぐれなのでわたしはどうしようかと言います
――すると月はわたしの知っている、或る女に化けて。
「・・・わたしは服を脱ぎたい――あなたの前だから。触りたいはず・・。
だってあなたの瞳はもうわたしの奴隷。でもちがう、
まずわたしがあなたに恋をする。瞳に、・・顔に――そして魂に・・。
石の美しさも水に濡れなければわからない、陽射しのあたたかさがなければ
―――きっと、わからない。それが真珠でも、鏡でも、たとえナイフであっても
・・・あなたがいなければ欲しくない、――でもそれすらもわからない。」
わたしはすっかりおろおろと弱って、猿轡でもはめられたようになってしまう
――だのに、あなたは続ける。もう幻想なのか、現実なのかの区別がつかない。
「・・・夜の光は、太陽のかがやきを曇らせる。
――わたしは太陽の下では生きられない、永遠の空にわたしという
・・・くすんだ光はない。あなたがたとえ・・。
たとえ、わたしのなかで、光の液をのこそうとしても、
それはやさしく悪いことを見つけることです・・・。――あなたは潔癖な詩人、
おさなさのなかでいまだに夢を見続けている人・・。」
――わたしはあなたの名を書く、失ったすべての物を見るために
そして、・・・、あなたの顔を見つける。そして、・・
あなたの魂がわたしを夜ごと幻惑するたびにあなたの美しさを思い知る。
たとえそれが失うべきもの、繰り返すべきあやまちに答えることだとしても、
わたしはあなたの名を書く、そして、またあなたに振り向く
一陣の風がわたしの骨を冷やそうとも、あなたの優しさはねむらない
――わたしは夢見る、あなたとの日々を。そして、くりかえし感じる、
よるの国の家族の肖像を。永遠の恋人の姿を。



【249】



わたしは靴下になりたい
果実がひとつ成熟するように、つよい風が体内に荒れ狂つていればいい
しかし靴下ははかなければぬけていくので上部をぎゆつと縛らなければいけない
あるいはコルクを詰めなければいけない
しかしもし何かの拍子に外界の中の小鳥という空間であれたら
わたしは頗る嬉しい
――そしてわたしは世にもふしぎな心臓になる
鐘はわたしに鳴るだろう、そしてあなたは好奇心からわたしを手に取る触るだろう
やがてあのつよい風は風船のようにぬけていき、湿り気をおびて、
あるうつくしい窓を這入つて、シーツを濡らしにやつて来る
もしそこにわたしと同じく、うつりかわる仮面劇をくりかえす男がいたら、
妻になつてやりたいとおもふ
道を曲がれば離れて見守る縁の下であつてやろうとおもふ
でもわたしは同性愛ではないし女でもないので
心臓にきれいな羽根がはえていないことも、心臓に毛が生えず、
また美しい妻を見つけてやれないことも嘆き悲しむ
いつしか、わたし、空の青さを見失ふ
・・・わたし聖ニコラウスが嫌い



【250】



檸檬というフォルムが
――しばらく鳶のように円を描いて舞っていた
フィルターのように
いらないものを除去する
眩しかった 檸檬・・。

「――落ちている自分だ」
しゃがんで物を取るダイナミックな遠近表現、濡れ犬
ヒールをはいた形、俯瞰あおり

歩き・走り・振り向き・
しゃがむ、しゃがむ――あなた は
するり と・・・、引く――手を引き合う
「・・・でも、なかなか、決まらないんだ」
――いつものことね オーライ
 伸 び 上 が る 太 陽 の 残 像

一連の動きを見る中で描きたい絵へ
と聖書のように開いたまま 走り寄る・・、
女神はいない、照明がある、
「そ し て 溜 息・・、」

そっと置かれた檸檬を見る
必要に応じて、伸ばしたとき曲げたとき
・・・偽りの表情で署名する
わたしが隠れる
(わたしが身を揺する・・、)

見ないフリして通りすぎた
7mから14mの中遠距離 だれが。
銀河の天にまねかれた。古城の神秘につつまれて
ああ それは月 さざなみに藻はかぼそくゆれ
 藍のいろにみずはたゆたう

この世の闇にきみの肩。きみの腰。 が
燃え尽きる
どこにも逃げ場がない、とこぼれそうになるのを、
 こらえるか、のみこむか――駄目だ。
・・・光の滴。ストロボライトの色に染まった
蒸発する天使の顔
耳の穴に流れこんで
、わたしは蹣跚ける・・。
 音楽室でピアノが鳴っている。

まっくらな夜のかたわらで
「抱かれたい夜もある、・・・のぼりたい夜もある」
――梯子で 金色をあわくする皓歯
 うすくひらかれたきみの鍵盤



【251】



ぶるうらいと いえろおらいと れっどらいと
潜水艦は少し緊張した面持ちでステルス兵器らしい貌をして
ユーモアと無知な叙情性をひきつれて推進してゆく
原子力潜水艦はスピードを上げると音がうるさいので、歯ぎしりしているといわれる
・・・やめろ 歯ぎしり。――そうすると鯨みたいに静かになる
これからもっと世界を、各国を、静かにさせるつもりです



【252】



さむい冬のあいだ、ぼくはストーヴが好きだった
仕事帰りに喫茶店へと立ち寄り、一杯だけコーヒーを注文して帰る
 あの冬の日は次の瞬間その人物がどう動くか、と考えてばかりいた

   季節はめぐり、春が来て、夏がめぐり、秋がやって来る
    駅からのバスを対向車にむかえて、大学帰りのバスを時に追い越して
    ひんやりと湿りながら、昼間の喧騒を、拭い去って

  ・・・でも僕は孤独だった、浅瀬にぼうとしろい炎のように浮かぶ白鳥のように
 つま先立ちで、背伸びをくりかえしていたアウトラインや筋肉、皮膚の流れ
 
   ――僕は大学生になりたかった。ときどき、恋をした女の子のことを思い出した。
    淫らなもの、卑しいもの、、そして血が出るように欲しかったもの、、、
    僕は帰るべきだったのかも知れない、窓のない、光のない家へと・・。
    糸に操られ、形にあった器をさがし、途切れた線路・・・。来ない電車―― 

  ・・・僕は「向こう側」で重なり合った昼の終わりと、夜の始まりを羨ましく思った。
 いつもいつも喫茶店の一隅で、コンクリートの濃い影――夏が死んだ僕の体内で
 誰もいないのに・・、輝いてた、優しかったあの子の首や腰に隠れて
 手にふれるもの、 語ることば 「つめたい」と思いながら

    僕は聴き手に優しい「ヒーリング音楽」「イージーリスニング」「ラウンジ」に
    冬に凍った貝の肉になって、唇にひげがあたって、珈琲をのんで、
    ・・・これから来る夜にそなえた。天井のたかい、閉じられている、この空間で
     子供の恋は知られない、慕情は、――きっと誰にも、知られない・・。

  吐く息のひとつひとつを みんな「・・・指でなぞっていた」――奪いたかった
 たとえ三秒前、残り香をはらんで生命線に重なり合うところで、インクが褪せ
 際限なくうまれてくる、――ぼくの死体が流れていっても
 壁じゅうに花びらがあった、ゆめうつつで・・・君に触れたかった 桜が

     こがねいろの波にのまれる――コンクリートは湿ったにほひがする
    その言葉にまた、・・・舌が 腐ったとしても、麻痺したとして も、
    ・・・夜は長かった 火をつければ食卓がもえる、自分がもえる
    その後には何一つ残らない 道は濡れ 夕暮れはもう夢のほうから蒼い



【253】



うねりくねりしながら 冷たくなった点綴
ぽつ・ぽ・ぽ・つつ
・・・心の穴を埋めたいけれど、眺めていた 何かをつかむために

  壊れた時計の振り子 のよおよ、それとも角砂糖の欠けてゆくさま
   目を弄しながらもてあそぶこころ、・・・思いがけない 不安

 ( 陸上部で記録を超えられずに悔しくて泣いたこと
 ( ほんの少しの行き違いで、両親と、ともだちと・・、

わたしは小さな背をまるめて
乳房の尖端を膝にあて、ムズ痒い痛みをおぼえながら
浴槽に水を溜める音を聴いている
胸、腹、脚、――人体を思い浮かべてる、ロボットやぷらもでる
きっと 色気なんてないだろう、・・・ふぇろもんを出す気もない

  うずくまって、じっとして ただひっそりと
  大切な 何か。を捨ててしまったような錯覚におちいりながら
   混乱 。体温が伝わること 伝わる こ と・・。

 ( ここに在るものは きっと、さびしさなんだ・・・!
 ( そうだと知りながら、なやんでる、痛々しいものなんだ

――社会人になって、上京して、・・・すこし無理を重ねて
でも、めざすのは結婚じゃない――あたらしい自分
いたわってくれる相手がほしかった。・・・たくらみも舌をまいて
すきとおった未来予想図。バラ色の人生・・・歌詞ならすぐに言える
中身がなくて、いいことが書かれていて、嘘ばっかりで――

 ( でもニート、派遣、・・・不況。新聞もニュースも・・
 ( どこにも置き場所がない、さびしさを恋や、仕事や

    ・・・スキルアップという、――習い事で埋めたり
   大して仲良くもない同僚に誘われて、飲みに行ったり・・。
   中身がないのは誰? アハハ、アハハ・・。

「・・・帰りたくなるよ――わたしだって」
擦り切れてなくなってしまうような気がするの朝 目ざましに起こされ
、夕方 仕事を終えて更衣室で服を着替えて・・・これから何しようって
おもう時は いつもなりたいとねがう方向から水音がする
源泉? ちがう、川の音、これからわたしが辿ってゆく人生
美しく見せて 女に化ける・・・分別のよくできたゴミ

  お腹を擦りつけ、マネキンのようだとおもう
   泣き声もあげずに、泣いてしまう癖・・。
   泣いたあとはいつも、悲しくつかれて

 ( 田舎者だと思われるのがこわくて、必死で訛りを直したの・・・!
 ( 気のきいたことをいおうとして、平気で、嘘をついたり

――でもわかったの、お母さん、・・・真面目にやればやるほど、
仕事が増えていくだけなんだって。――そして、みんなに あれよあれよと
嫌われて。・・・仕事をお父さん、辞めようかと思います
これ以上――あの会社で働いていたらノイローゼになってしまいそうです、
でも負けず嫌いで・・・、強がりばかりの、気の強い娘の像をこわすのが嫌で
でも、――戻っていいですか、故郷へ・・・ダーリン――

  ラムネ色をしている、泡。その一瞬の水しぶき。皆既日食
   重なりあった きらきらが。歓声と笑い声・・。
   頼らず、寄り添わず、ひとりで生きてみたかった――で も
   きっと、ダーリン・・、執拗な「問い」はあなたに根を下ろしてゆく

 ( わたしのゴールは何処にあるんだろう、わたしの舞台は・・。
 ( 光反射する だれもいなかった あの夏の日

携帯電話が鳴ってる、・・・とらない、多分、彼だ――
自分を隠すのが嫌だから、お風呂にはいっていたと言う、冗談口で
、女は時間がかかるの、という――でも さびしい
どこかで水音がしている たわむれている水が化粧する入浴剤
、どこか・・・どこだろう ちがう、ちがわない――あたし
親しくしみてゆく どこかで、・・・彼のにほひを思い出す



【254】



・・・夢の中のお話です、ごめんなちゃい、
コンピューターというのは、こういう考え方で作られてるんですよ、
と、神様、どじょうみたいなおひげはやして仙人みたいだったが、
おらおら、おっしゃった。
――ぼく、ちんぷんかんぷんだった。ちなみにぼく、憲法を読むと頭痛がし、
こどもの頃から、教科書を読むと、ねむくなってしまう謎の奇病に・・。
「ばかもん。」
ひええ、比叡山。――それがいかんと言っておるんじゃ、
みょうなダジャレに、わしもタジタジじゃーね。
「おい、おっさん、あんたもやるじゃねえか」
ほれほれ、と神様はぼくになにか言え、といってくる。
ぼくは、アナログ、デジタル、高周波、マイコンとありますよね、
などと少しクールにキメてみたのだが、
「なに、かっこつけておる」
ぼこん、とぼく殴られた。
各種電子部品、物理法則、アナログ回路、デジタル回路、PCとの通信回路と展開され、
最終的に半田ごての使い方まで説明された。
・・・そしてぼくは思った、パソコンってすごい。
共通接続回路ください、―――世界にはコミュニケーション・パワーがあります。
あるのじゃ、と神様は言う。・・・英語も仏蘭西語も、
まず取引先の人、恋人と思ってみなさい。いやでも、耳に飛び込んでくる。
野生の感覚の世界みたいだな、とぼくはおもう、
いやいや、まったくそのとおり、と神様はむすぶ。
この写真の中にあなたの脳がシミュレートを始めている。
――それにしてもキレイなことば、
おっさん、ふつうにしゃべれるんじゃねえか



【255】



「内へ内へ」と入っていってますね、釘は
固定されて動けない状態を教えている

「外へ外へ」と送っていっていますね、扇風機は
拘束したい気持ちのあらわれでしょうか


 + + + + + + + + + + +


ペンキの缶が挨拶をしている 「濡れ、」字が違う「塗れ、」
ということなのだろうが、
ぬれぬれ、だと妙な気持ちになってしまう


 + + + + + + + + + + +


しゃがれた声が助手席に袋を置いている、ぼくは、見ている、
ぼくは、玄関前に置かれている。
―――そして軽トラの荷台に、むぞうさにほうりなげられ、
甘さとやわらかさのなか、はじめて、死を意識する


 + + + + + + + + + + +


世界がふるえるとしたら、ぼくの、死ではない、
ぼくを¥26,600で数年前に買った、主人の庭の池で
鯉が蓮の花のようにくちをあけて、死んでいた時・・。



【256】



そろそろ忘れようとしている 
恋の記憶 

ねえ、・・・ 
僕はこわかったよ 
いつか捨てられてしまう 
そんな気がして 

何の罪もない 
誰もきっと、悪くない・・。 

ただ呼吸がむずかしいだけ、
ただ、・・ 
何を言えばいいのか 
わからない 

蝋人形のような 
ブラウン系シャドーの壁 

ある日、黒いヴェールをまとまった 
異邦人みたいに、―――印象的な 

あなたの指のダイヤが発光する 
そして、薄明の彼方から 
窓に滑り込んでくる 

別れの日の光をあつめて 
誰かに愛された記憶が・・。



【257 不思議な気分】



世界はたまに堅いチョッキ
でも着ているように思う。

奇妙な形のサボテンから、
濡れたオムツの匂いがする。

生暖かく甘酸っぱい息で、
ぱちっ、ぱちぱちと感電する。

アンコウの肝は、
豚小屋のことを
ぼくに想像させる。



【258】



ある日、僕の部屋のドアに卵が投げつけられていた。
――ひどいことをする人もいる。
・・・でもそれから、ヒキガエルの死骸だの、
画鋲をばら撒くだの、といった嫌がらせが続いた。
夜中はもう大変である。
おかあたま、このよーなことが。
そして、恋人には、
もう部屋から出たくないよオ、・・・
泊まっていっていい?

 + + +

でもそんな、ある日、
僕はドアの前でなんと、
嫌がらせをしている張本人と、
遭遇してしまうのである。
―――とは言え、壁に隠れながら、
・・・女か、まあ、そうだよなあ、
と思っていた。
僕はどうやらストーキングされ、
挙げ句このような事態に、
陥っているのだと考えた。

 + + +

僕は帰ろうとする女に、
勇気をふるって、おい、テメエ、
・・・バッと振り返る女
――って違う、男だ
僕はキンタマが縮んでしまい、
このヘンタイ野郎と
言えなかったのだが・・。

 + + +

きゃあああああ、
とオカマは叫ぶと、
砥石のような肌質で、
厚ぼったい曇り空みたいなまなこで、
ものすごい勢いで逃げていった。

 + + +

それ以来、そのオカマとは、
会っていない。
ただ、ときどき、
もしかしたら前の部屋の
住人への、
嫌がらせだったんじゃ、
と思うことがある。



【259】



感動して
涙がでるということは

 パスカルの「考える葦」という履歴書に
 “将来の希望”と書くことです

悩みなさい そして笑いなさい
この星にあなたが必要だと気付くまで

 まだ たくさんの時間が残されています
 あなたが わたしの誇り



【260】



月が まぶしく かがやく夜に
ふたつの心が ほしいと ねがった

人の かなしみや くるしみが
よくわかってくる にんげん 
物欲のかたまりに

優しさを求める その銃声が 
まっすぐで
うそのない ひびきを つくるんだよ

本当は 誰もが
銃をもっているんだよ



【261】



わたしはみている

そっと・・・

みている



【262】



喫茶店には、どんな壁もない
まばたきを忘れた目が
ぼくの代わりにこの子を抱いて
ゆううつな午後
・・・あまやかに付け加えて


 × × ×


表紙をめくったページから
太い針だけがしっかり
五つの青い灯をともした
止まらない心臓のおとが
香水を七つの空に放った


 × × ×


あの、うつくしい青の群れ
あの、泣き声が・・
灼けた歩道に長い影を曳摺ってきた
そして少女は
止まらないカステラの粉


 × × ×


愛することや、
夢を見ることは
震えが止まらないほど美しいことだ
・・・そしてぼくは思う、だれもが
子供の頃の夕焼けを忘れない



【263】



 ペンキの剥げた古い門の前やった気がする。
 俺は自分の傷付いた皮膚を思い出したんや。
 そりゃ本能ばっかりで生きてはいかれへんで、
 これからどうする言うたって答えられへんよ、
 酒だって飲みたいし、勉強だってせなあかん。
 カッコだってつけたいよ、
 でも自分、ちゃんと生きたかってん。

 振り返ったら、夏の空が見えたで!
 太陽だって茹だって、タコみたいやったで。
 都合よおは雨降ったり、曇りにはなってくれへんで。
 でも生きとるからには、太陽みたいに笑ったろ。

 身を卑しくする人もおるよ、軽蔑したい人もおるよ。
 でも周りの意見で、人間の評価くだすのは、
 情けないことやと思うで。
 嫌いやったら嫌いでええと思うで。
 ムカついたら、ムカついたでええと思うで。

 生きるって! ホンマに大変や、
 真剣に生きるって、凄ゥむずかしいわ。
 やけどな、お前の人生やもん。
 何したってええやん。恥ずかしいことしたってええやん。
 何恐れとるん。なに、こわがっとんの、
 人生、泣いて笑ってそれでええやない。



【264 わたしの川柳】



あめりかが好きで
ざりがにを
飼う



【265】



「おれたち」
 ・・・風になれたか

 でも誰も答えちゃ
くれないんだ

「おれたち」
夜のビリヤード台

  少し淋しかったぜ、ウィスキーを
飲んでいても・・・

見つかんなかったな、相棒

「おれたち」の人生を、もし、
メスで切り開いても

 タバコの煙みたいに、渦を巻いて、
 ただ、眼に沁みる。



【266 サーフィンボードをもったまま
      真珠色の光沢を見ていた】



僕はDAY LIGHTも好きだけど、
波音のBLUESが一番好きさ。

僕の家は食堂をしていて、レジスターから、
千円札をかすめ取って、
このバカ息子といわれるサーフィン狂いだった。

もちろんかすめ取ったやつは、
ブーツの中に入れて。帰りに、アイスを二三個。
あとは煙草と、ビール。

どうしてサーフィンするのって聞くから、
音楽がある、と答えた。

フルボリュームで、
trrrrr trrrrr・・・ 電話の呼び出し

帰らないよ、僕は。
みじめな気分で、朝を迎えたから。

でも、とりあえず今日は笑って過ごすんだ。
確かに現実は、バカでマヌケかも知れないぜ。
でも、人間どんな才能があるかなんて、

・・・生きてる限りずっとわからないのさ。
今日より、明日、
明後日より、明々後日、
もっとステキな波を見つけるんだ。

そして海岸では、僕の好きな、
あのLOVE SONGが流れてる。

帰らないよ、これから、
テキサス風メキシコ料理を食べて、
あの子と一発キメるんだ。



【267】



わたし、公衆電話で暮らしていたんですよ
止まり木じゃなくってね、
・・住めば都というけれど、あれは本当だな

どうしてそんなところに巣をと問われることもあるけれど、
長い間の疑い、人間への恐れというのですかねえ、
―――いち度とっくりと考えてみたと言えばよいでしょうか

花は日を経て、さみしく萎れ、
枯れ、朽ちてゆく、――これ自然の摂理というものです
・・・ですが、わたし達だってなにも幸幅を求めないわけじゃない

あなた達のように、わたし達だって、
機械という永遠の生命に、・・・あるいは半永久的なボディーに
憧れたりしないわけじゃない

そりゃたまに空に釘をさすような鳥の翔ぶ姿を
うらやましく思うことはあれど、
・・・自由ってなんでしょう、
次々去ってはまたやって来る未知に
流れ星のようにすうと去来する一感情じゃないですか
だったら、繁栄を望むのは本能のなせる業
――そしてもう、わたし達に外敵はいない

たまに、人びとがわたくしを見にやってきて、
ぱちりと写真なぞ撮って、
ブログでアップしたりすることもあったんですよ
・・・レトロな鳥籠って、ね

でも時代かなあ、撤去が相次いでね、
わたしの家もとうとう、やられてしまった・・。
敵は・・・、実は人間じゃなく、
時代ってやつだったんですなあ・・・。



【268】



額の生え際が牛乳のコップから富士になって、
彫りの深い顔立ちになって、
日本人形の直角で切られた髪はすこしずつ、
でこぼことした異相になっていった。

海のような模様をつくるね、
日増しに硬く鋭くなっていくライン、
ひときわ憂うつさをあらわした皺、
そして、世界は貝のように口を鎖している。

誰の心のどこにでもいるような、
歯が冴え冴えと乾いて覗いている。
首の付け根にはまだ肉はついておらず、
まだ熱い君の頬に触れる。

・・・触れてから、
スリムなプロポーションが、
病的なくらいに痩せていたこと、
猫背だったことをぼくは知る。



【269】



悠揚たる足取りとは...
逃がるることできぬ帰依である.
寂寞は太古以来,まことの道に入らせ給へども,
間遠にざざに風噪ぎ,これ等音訪れとすー.
その時わたしは唖者である.

ー宏壮な茶屋風の大広間,
木彫りの彩色のなまなましさ,...噫! 
小鬼の類か,浮世を厭ふ小さき仏ども.
悉く皆もの言わぬ唖である,緑と白が沁み入るやふな鮮やかさ.
掻き分けて掻き分けて・・・
して,つかゑの者ども,申しもあへず泣きけり.
俥の中のあるじを渡らせ給ひたくよしなに...


結びもあへぬ夢にして
光を射出す光景は煩悶憂苦の搾出と
かひなをかけて引きとゞむ.氷の上をすべるごと
さなりさなり! 目くらみて近寄りて,
神の厳めしき御名より千年昔にゆらぐ罌粟.


それはたとへば獅子舞と,
ゆらぐゆらぐ朝のゆめうつつ...
それは襖のスクリン.極彩色の丹青に
陰をおとす「朝の居眠りッてものは妙ですナ」
「それは異なもの味なもの・・・」
ふとしも眼を瞑り,塔や伽藍の屋根は見ゑるか



【270】



僕は年の瀬から新年へとはち切れそうな希望への堆積
かなわぬ願いや祈りなど物言わぬ風習なら長い冬にある
ミシミシと ミシミシと
生活のなかにあるミシンのことなど思い浮かべる道理もないが
渇いた唇なら懐かしくうるおいのあるジャスミンティーなど

「一日 一日がいとおしい」
・・・ほんとうですか あなたは浄らか
肥沃な土壌さま ・・・荒涼たる海のような僕とお似合いですね
幸せすぎて “ミシミシと”あなたは日ごとに肥っていき
床をぶちぬいてしまったお姫様だっこはある日の姿だけれど
でっぷりしたくらいで女は棄てません

泣き笑い殺し文句のブルースのメロディーが
一斉に散らばってこころなしつっぱって
「あ、氷ってしまった」―――I`mソーリーな僕だけど
冬はしじみの味噌汁にかぎります
“ミシミシ”と浮き玉のような星がいまだ幸せになれない
ああそんな理由など柄にもなく思ってみたりする野暮でゴメンね



【271 やさしさ】



ふしぎだけど
ぼくをみた
ひとがいったよ
「ぼくに似てる」

でもぼくは
せをむけた
かれにいったよ
「わかってるよ」って



【272】



なんだか春だね
すごくすごく春だね
お散歩しなきゃぼくは

たったら、たったら
うふふ

凧みたいに
ぼく、ふらふらしながら

  糸なんか切れちゃって
 ぼく、すこし
 浮いてるかも



【273 火を放て】



傷付いた気持ちが嘘のように消えていく
まるで気分は地上百メートルの展望台
工場の白い煙
その息遣い・・・遠い日、海沿いの防風林
・・・中州のある川をくだって、
ワンド――海の胎内へと沈んでいく
夕陽を見た

それはたとえば鮎の化身であったろうか、
それとも、放心した人魚?
・・・陶然とする巨塔、輪郭と、その影の位置を
わずかにずらしながら、思い出の距離まで
――遠く、遠く、
伸びてゆく・・・この空を仰げば
僕は小さな釣具店のことも、居酒屋のことも、
・・・拍手をして、お辞儀をした紳士のことも、
心地よい声のウェーヴのことも

思い出せる――けれど問うほどに、鮮やかになり、
太陽に向かって手を翳して遮った、
あの眩暈だけが昏い鋼の水を疑問でいっぱいにする
楢や山毛欅、その他の疑問の声・・・
恐怖は祭りのあの日のように、ふるさとの、
ああ、あの少年の熱い想いに託された
・・・あの峠で、ながれてゆく星を見ながら、
命よ、絶えず寄せてくる無情の涙よ、
と言ったあの日の少年に・・・

羊の皮と、その白いひげがパノラマの中で疾走する
天を睨む僕はあらゆる国へのデルタであり、
・・・悪魔のように天を刺す一本の樹である
僕を守護する者! 同胞よ!
またこの祝祭のにぎわいを見せる敵対する者よ
―――軽蔑も貝類の壁のように壊してしまおう
そしてたとえば日没後に見えたオーロラのような白い被衣で
月の女神さま、
龍の背、・・・その尾根づたいに

火山の爆発があって蟻の塔のような噴煙が天までのぼった
雷の首根っこを掴まえにいった
そして空はグレースケールにおおわれ、・・・あえかなエロス
―――または天から降りる身籠りのような悲しい雨を降らせた
でもさ、もう厚化粧なんかやめて、弁当でもくって、お茶でも飲んで、
昼寝でもしませんか・・・?
地層から石器をあつめるような、砂礫でも見ながら
定規の延長と洒落こみませんか

デザインした洋服
オアシスのような、野いちごの花のことなど思い、
鼓動へ・・・虹のひかりを彷徨う国境へ――自由へ
いま地霊の息吹きでもたちのぼらせて
僕は春を呼んで
いま、僕がピンク色の花弁に斑点をつけて
夜の花見なぞ、と君を誘う

かつては怨念が甲走った昼と夜の交差地点で
この淡い湯気のことを思った
死に際に水で手足を浄める、夕映えの産毛のような光の錯覚で
さまざまな幻想が揺れていた
胸で羽ばたく鳥がこの水の星に浮かぶ気配

時間はね、燃え立つような光につつまれる夏の間が一番いい
顔も真っ赤に光って、―――でも長い厳冬のあと
幽冥の世界へと降りこめる生命が腹の底まで沁みてくる
この吹雪が、僕を手の届かない―――それまで折り目のつけられていた
あの違う世界まで運んでしまう
ふたつに切り裂かれた昼と夜・・・に、生命がつながる、
生命は魔術、―――この鳥が白と紫の、あたらしいすり鉢状の階段へ
進化という二重らせんへと銀色の羽根を降らせる
いま、染めてしまう・・・ほんのりと甘く、
おおらかな愛や性と―――またひとつ、傷を負って
この春の消しえぬ心像を君の目に捧ぐ
やさしく揺れていた揺り籃のなかで、やさしくかなでていた心音に捧ぐ
・・・あなたの天然の霊情へこのささめきを、やさしさを
まぼろしの道燈りを



【274】



       太陽が壺の中に消えてしまった
      清明が納め札で封じたのだ
[その時、空の胎に、塑像を鎮めたごとく、
・・・お父様と]ああ、ざぶいはずだよ、
月も星も見えない、こんなスモッグ闇のなかで
ヘドロ清浄バクテリア養殖、
ああ学者さま先生さま
、、、太陽はいらないのですか?


たくあん石、それも根ッ株みてえに
どっしりしやがってよ
・・・噴火させてくんろ!
ああ、雪こ降らねでよがったとと
神さま、言ってくんろ
おいら達・・・、河童はいっぺもぼやいでねえ
いら草のいらいらなど抱くなぞ
藁さまに失礼、石の枕さまにも失礼
・・・寒いならおめえ、
炬燵だちゃ

ヒト、ヒト、ヒヒヒ
ヒト、ヒト、ひひひ

ヒト、ヒト、ヒヒヒ
ヒト、ヒト、ひひひ

ヒト、ヒト、ヒヒヒ
ヒト、ヒト、ひひひ

       はやく生まれ変わってこいよお
    だっこされたアカン坊ども、ネギ棒ども

   これからコンデンスミルク
   ・・・みてえな雨が降るンよ

無明から次々と
おまえらうずもらす
厚化粧なぞすて、まヅたぐむがしの
の日本の姿が落ぢでぐるど



【275】



求めあい、支えあう
お互いの姿を見るため
あなたは溺れる
やがてあなたのために手が伸ばされる
あなたと微笑み合うため



【276】



俺は57回死んだ
人類を救済するロケットをとばして 細菌兵器をもっていく
裁かれるべきか、裁かれないべきか、―――その惑星
まだ未読だ。ファシスト達をのせたロケットが
どこにも高みはないと、聖職者、選ばれた者たち
が横取りを始めるがそれも罪はない
嫉妬の国の切り裂きジャック。逃亡したのか
それとも、―――追放された白鳥の群?
革命歌に放射能汚染、ケロイド、
・・・グロテスクな表現がみち、新たなルイスキャロルの
処刑をする暴君(あれは女だろ! ―――時代さ)
吹雪は幾度小屋を埋めたか、
閂のかかった地下牢で、無意味な一つの数値、
ダダ的滑稽。何度首吊りにパツシイしたか



【277】



苦悩とはそういうものだ

なりゆきとして血が出てくる

見世物小屋の幽鬼だ

水がこぼれても血のにおいは消えない

親のない子は餓える

致死量にいたる骨の色をした埃、錆び、

流氷は紅く燃え



【278】



びちょびちょじゃねえか オラ
   グニュリと奥に当ててやろうか
  ゴリゴリと移動させてやろうか おお コラ

 うらあ。ん うらあ。ん

  うら。そこの変態さん いますぐ公園へでかけよう
   タマってるのは知ってるけど、クルっちゃうぞ
噴水だぞお、森だぞお、生きてるってこれだぞお

   うらあ。

 ナニしてるからナニしよう
   いますぐピラミッドと夕立ち考えよう

 もっとシリたい おしりがうつくしい
むにゃむにゃくのフンスイ



【279 よい旅を】



風が吹いてぼくが握りしめていた
恋文が
空に巻き上げられる自然の様態
サイコロのようにおちる確率
ビニールのように
ぶるぶるびしゃん
僕には見えた
細かくふるえながら
ちぎれていくのが ねえそして、、
影を曳いて、気が違ったように
強い紫外線で変色し
ムラサキガイになって、
ムラサキガイになって食中毒
たえず横揺れ悶絶をくりかえし
花びらのように
花びらのように
ぼくの肛門が



【280】



 1


いざない、いざなわれ
・・・この景色が、
俺の指先から、羞かみのように
こぼれ落ちたのだ

俺は待っていた真っ直ぐに背筋を伸ばして
この問うことに依って静かに這った
俺という力の募り
無力への抗い


  2


本当に血が滴って
そそろ、とろとろ
―――もう、蒼い北への旅


  3


長い間みつめていたら、
・・・穴があいてしまう
ぽっかりと大きな穴があいて、そこから、
俺の切れ切れが
まるで、うぶすなのように、
おちてくるだろう


  4


ねえ、遠くから風がきこえてくるね
・・・苦しかったなあ
石の上に溝を掘って、水を流すような
俺のさびしさ、くるしさ
よく知らないな、
この道の向こう側に高熱があって
きっといくつもの川があって
海があって、俺の血、俺の血
したたってゆくような夕陽を
お前は知らない・・



【281】







の 夢 の 中



  虫

    蝶  蝶
    蝶    蝶
    蝶       蝶



【282】



こどもの泣き顔に弱
くなるぼくはあの日
の自分に言葉がみつ
からない


幸せだから不安にな
るあたりまえのこと
がこれから先もつづ
くということで、あ
る いはつづかないか
もしれないという不
安で

この国には駄目な人
がひとりもいないと
思わせるほどの優し
さであの時はというよ
り自分は



【283】



わす やもり
ワックス わすわす
  あめぬれ こも れ^ひ^


 こた^ ま び
  わすが こうもりなる ひ
こうてい こうて^い
ひひ^くかな



【284】



Abc・・・の順番に續くピラミッド
□が16
ABCDEの阿弥陀籤





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