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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

水深九十八メートルの夜


水深九十八メートルの夜   塚元寛一




かくれんぼをすると  木下闇≪このしたやみ≫で

藁のかげの   あの眼

あの  さびしい肩

はぐれた一匹の鬼が息をころしてる


  ( 新見南吉の”垣根”のように

    ・・・耳をひつぱられた子供のやうに垣根はすると

    くすくす笑っていた蝶をはなすのです。 )


  はりかえた障子に 黒光る皮膚

   それにしてもだんだんと透徹つてくる 蜥蜴の背だ


  ( 新見南吉は”垣根”をこう締括る

    ・・・青い空へはなすのです。 )


もう出て来いという声が  こだまする夕がた

親しみに溢れ  静かに微笑し

あの  共犯者のわらい声

かくれてしまったぼくの友だちよ


   ー 影さへ細る  病葉に  秋やどる
  

  そうして  きんもくせいの匂いがしてたね

   もくもく  焚き火の匂いがしてたね


    ―――かげがゆれる、Amethystのゐろを

して、青磁のゐろをして旋風≪つむじかぜ≫


  キンコンカンコン・・・チャイムが鳴る。鳴る・・・!

  らんぷが灯る。-いっても、・・・いっても、風が鳴る

  ーいくつも、・・・いくつも、家がある

  (・・・それを合図に、世界はまた暗くなる・・・)


   - 暗闇で  花火の時間を  盗む
 

そうして団栗を踏みつぶす音に  枯れ葉を踏みならす音

天高く馬肥ゆる秋  ーそして季節の果ての。・・・うす陽

みいんな、考えていた、はやく、  -夏にならないかなって

あの  ふとい棒ツきれを振りまわして  ぶうんぶう

草ツ原をひとすじにはしりぬけた記憶


  + 消入る許り  消入る許り 

     ・・・吹く  木枯らしに


    ―――あの風は  どこへいくんだろう

何かなつかしいものが  とおい所ー人知れぬど

こかへとながれてゆく。  砂は何故巻き上げら

れるんだろう?  一ひらの雲が、月のところへ

、たぶん太陽のいないところへ・・・・・・


    ・・・どくどくしげに  くずれた  日没
 
    足を噛むピラニア  ぢんぢんと  腹にこたえる風

      、で( ハツと  顔をあげる  気配


   ―――それで?


  名前も告げず住所も告げず・・・大人になる。なる・・・!

  (・・・それを合図に、かくれんぼが始まる・・・)


     、十二ある季節のうちの  十一番目の  命燃え


    ・・・その頃の  、その頃の屈託のない かくれんぼだったら

    「おうい出て来いよ―――」で終わったはず なの に 


はぐれてしまった影が  都会のビルディングで

べろりと  皮膚がめくれたみたい だ。-

ボーツとした  恍惚感をあたえる  ゴースターン

/ゴーストタウン  あの  うしろ姿

手を振って別れた友が  母を  恋しがる


  + 消入る許り  消入る許り 

     ・・・曲がり道のような  慕情です


    ―――深い情けのなんとやら。何かなつ

かしいもの。-なつかしいものが  とおいーい

。めぐまれた子ばっかりじゃなかったぼくの友だ

ちは、離婚するかも知れない。・・・彼はぼそりと言

う「かくれんぼが終わらないんだよ。」・・・


    ・・・沈黙をくぐっ て。空の昏れでまた影を消し て


  キンコンカンコン・・・チャイムが鳴る。鳴る・・・!

  (・・・それを合図に、世界はまた暗くなる・・・)


かくれんぼをすると  木下闇≪このしたやみ≫で

藁のかげの   あの眼

あの  さびしい肩

はぐれた一匹の鬼が息をころしてる   


  ひかり  ひだまり  ひのたまり

    ゆらゆらと  ゆらゆらと

いくらあるいても、  いくらあるいても、

    かくれ場がない。  ちっとも終わりそうにないんだ


      くりかえし―――また、くりかえし・・・


奈落の底の  大海原のこの世界に  飛び込むんだ

そんでまたサラリーマンになって  じつはさあと打ち明ける

家庭にあこがれがあって  うん、あってさあ

すぐ結婚したよ 、  すぐね・・・・・・

あの  きみの声 (  覚えているか、友よ

ぼくをギリギリまで家に帰さなかったきみを


   - もとの  位置から  動かない

   - 走る油  一滴も  ない


  でもさ、何かたのしそうに話しかけていたきみは帰らない

    (ひかり  ひだまり  みずたまり)


    ・・・そして、こんな夜、友を憶って。-


   ―――ちゃぷン、うつわが盥のなかに浮

いて、花びらのシルエットが見える。つよくに

ほふ花、金木犀/台所の窓・・・、砥石でけずられ

たやうに、どたどたとくずれてゆく。-でも波は

来る。・・・だから漂流はつづく


  ふしぎ  かなしみ  ちのひみつ

    ゆらゆらと  ゆらゆらと

いくらあるいても、  いくらあるいても、

    かくれ場がない。  ちっとも終わりそうにない


    ・・・終わ らないんだ よ。-


かくれんぼをすると  木下闇≪このしたやみ≫で

藁のかげの   あの眼

あの  さびしい肩

はぐれた一匹の鬼が息をころしてる  
  

 「やわらかくしみこんでくるさみしさ・・・は、秋のえれじい。

   サアツと頭から血のひいてゆくけはひ・・・・・・」


      、も( ハツと  顔をあげる  気配


   ―――秋のえれじい?


    ・・・ところどころ孔ぼこだらけのー。しかしきれいな月光で、

    ベエトベンをそっとしのばせる頃・・・。グラスの手が。-甲が

    くっきりと静脈を浮かべ、フツと次の瞬間―――骨


  + 消入る許り  消入る許り 

     ・・・吹く  木枯らし


  「おうい出て来いよ―――もうかくれんぼは終わったんだ」

    (ふしぎ  かなしみ  ちのひみつ)


爪はむけ歯もぜんぶぬけて  シャレコウベだ

棺桶をブチやぶり  土をモグラのように掘ってきた

あの  重い石もおしたおして( 冷いしづくが光って

それでも  それでも、・・・にほいひとつしない鬼。ー


  ひかり  ひだまり  ひのたまり

    (ふしぎ  かなしみ  ちのひみつ)


  「もうずいぶん長いこと長いこと・・・いやな夢を覚えてる」

    腕はしびれ、足はふるえ、( 鳴る泡の音もかすか。-


  (( 新見南吉の”垣根”を書きかえる

    ・・・あれはカテゴリーなのです。異界-現実をつなぐ

    暗にうかぶしあわせな日の幻影なのです。 )


  はりかえた障子に 黒光る皮膚( ぼこぼこと隆起がる。-

   それにしてもだんだんと透徹つてくる 蜥蜴の背な・・・。


  ( 新見南吉の”垣根”をこう締括る

    ・・・SOSを打つ勇気はあるか? )


     - お前  はぐれやうと  する

      ふしぎ  かなしみ  ちのひみつ










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