テーマ:☆詩を書きましょう☆(8289)
カテゴリ:ムーヴメント
235 腐る水
さようならがある小説はいいと思う 別の生地の裁断がある たとえばその時の小説家はほの暗い壺の官能的な花だ たとえ、しがみつく腕が痩せながらも 齢をとることだ・・・名のように白かった花がある 、いまは透明な水のなかに不老の秘密を垣間見る 236 蒼白 不動産仲買の商談で老伯爵の住む古城を訪れる。 葡萄糖液を注射して、ゴム風船のように膨れがあった恐怖が、 月のクリーム色の肌に映えている。 そして――湖、眼を撫でる膚だ・・・ 腰から背の方まで流れてゆく、赤み。 237 女、バスを見送る 心を読まれたように 醜く 黒ずんだ冬の木というのがある 枯れ始める様はうらさびしいが バスが行った後では あの人のすらりとした背丈がさびしい 238 羽ばたきの仕草が誰の眼からも逸れてゆくということがある やはり真理か あとには水の波紋ばかり・・・ 電燈の光とシューズ あとは煽情的なポーズ 239 危険度★ まず、川原で石を拾うところから始まります。適度に重く、万が一の時には武器となるの で、慎重にお選び下さいませ。そしてその石をポケットに入れます。次に、そのまま、不良 の溜まり場高校に行って下さい、さりげなく、“チラッ”と石を見せます。そしてそのま ま、警察署に行って下さい。職務質問された場合は、黙秘権がある、と言って下さい。それ でも、さりげなく“チラッ”と石を見せて下さい。最後に、その石を橋の上から落として下 さい。ぽちゃん、と鳴るのを聴いて下さい。おしまいです――おしまいです・・ 240 駆け足のはづみに 蛍光塗料仕様の肉体になる 踏切を渡れば 電車になれる――心に残っている海を越えられる・・・ 裂ける音がすればハイティーンまで一気! ――社会世相にメスを入れる息遣いは、霧雨 241 レーダーから消えた機影、人形じみた無抵抗さで、航跡が途絶え、 通信も途絶えた――燃え立つばかりの灼熱の夏・・ 30年ほど前に時を止めた時計、白骨化したパイロット、 ブラックホールが日に日に気だるそうに見えてくる、海に現われる ――神隠しだ、命の通っていない非現実的な世界の入口だ。 おかしな穴だ、・・・分厚い雲の先に、悪霊にでも憑り依かれた超常現象がある。 242 兵役 とは サービス残業のことかもしれぬ ・・・固く腕組みしていたブラック企業上司 それに従う、化石化の僕等 、――プロレタリアは甦る、本能的な羞恥と共に・・ 243 おとぎの国へと叱られにやって来た、大人になったアリス! ・・彼女が 、口々に罵っているのがやはりおとぎのキャラクターなのかと想像する―― ぼくの場合・・ぬいぐるみだった――あの“おおいぬ”と呼ばれた安易な着想の名前は いま、まぼろしの耳を剥ぎに来る、「生まれたのね!」・・・こども達よ 君らがいまぼくの家にいる9匹のそれだとはまったく思わないけれど、 そのやわらかさにぼくは胸が痛い――人はみな、初めから大人であったような顔をしてる 244 トムとジェリー お恥ずかしい話、歯医者の待合室で観るまでまったく知らなかった スラップスティック――というより、吹き替え版だったからなのか、 サイレント映画のような印象で・・深夜の映画で見たチャップリンを想像した その瞬間――スタジオジブリの“紅の豚”までタイプスリップしてしまい・・ よくあるように腕組みして、なんだか、泣きたい気持ちになった 245 広口壜を空っぽにすると 飴玉が入った ――なんだか、浮世離れした感じで―― 手のひらへと握ったら消えるのだ、昆虫的なかわいさなのだ、 飴は舐める・・舐めるけれど、雪解雫よ 僕等は泥酔した、バレンタインのハートマークを横目、硝子のビー玉に 246 落葉がひらひらと 息が苦しい木下路に 胸を反らすよう舞い降りた ざわざわと内なるものの―― 「馬鹿。」・・・テレ隠しのせいで、幾筋も執拗に思った 女の髪、浮かせたその形で、しろい手や、指輪や 247 幹も枝も空洞になっているような田舎の木々がある 膿んでいるのだ、――本能的な反感を、突き刺さるような痛みとして 高速道路の傍の木をみるとよく感じる・・・果実のような色と香りの心臓に ねじくれろ。ケバケバしさ、――いつまでも童顔をうしなわぬ無垢な断片は 塵を気にした。いっそう、純潔になった。・・おとろえてゆく不思議、単純、 同感さ! ――と、化石みたいに蝶が離れさる 248 脚線美の女はいい! 悩殺されてしまうのだから、たぶんフェチだろう、 フェチなのだぞ、うひひ――キャラちがうよ! バカニャロー、ニャラというのは、ぷろてくたあのことニャなのだよ ・・やる気なんか全然せん、――ただ透きとおってゆく猫が白昼夢を見た 鈍い重みが広がった瞳だけ、鎖に繋がれていたい、足の筋肉ニャのだよ 249 たまにあらいぐまになろうとおもう あらうのだ、あらうのだ! ・・・けむりになって、そらにすわれてゆく、あめのじょうはつのように わたのようにかるくなった、ぬめりのない、ふく、ふくだとおもう ――たいようの、ゆるやかな、おもみは 250 く、く、くるし い、 にが/にが たばこをすう男の気持ちは 251 たまに 空き缶を見る それとなく、じっくり見る かわいいなあ ひよわでふらふらうごくミケ ミケは酒のまないのか、ほんとかい 252 疑う余地もなく 車に轢かれた動物がいる この凹みは地雷だ お陀仏したのが世にも情けない下等生物だと 言い聞かせる感じで通り過ぎる、お前等 平明な事実も――動物を腕に抱かなきゃ、わからないよ・・・ 253 つよい紐帯があって、 ひとつの幹から大樹のふところにまでゆく 妙なところもある、ほんとに骨ばかりの根だって思う けれども・・・男とも女ともつかぬ、呼び名もつかぬ、 この動脈とも静脈との区別もつかぬ腕に そういえばこの頃あまり使わない“やさしさ”を思ったりするのだ 254 胸いっぱいに よろこびがある ・・・・・・深く秘めて、――。 僕等は色入りの翅を拡げて、けざやかに透きとほつて、 仄かな芸術が蛇を奔らせ、枯葦原の中に、 ジッと蹲ったまま 255 ――「しまった」 と思ったときには、もう遅い。 さす 膝を撫り「悪い道だなあ、」などと言いつつ ・・・マア、つるりとやってしまった羞じらひ恥に赤くなる 《きれいに転んだ時、「しまった」という人は、 よっぽどスケートが好きな人だと思うな》 256 若葉が薫る時、 けむった空気に包まれて聞こえて来た。 ――たった一人で映画のなかに夢を求めなければならない気持ちが こうした感覚はどこから湧いてくるのだろう・・。 吹く風に初夏の訪れが感じられ、 深い灰色でふさがれて遠近感を失った空は、飛行機で満席。 257 彼の胸の中にはようやく、渓に沿った街道と、 街道の傍から渓に懸った吊橋が・・ 燻っていたこと――自分の追い求めていたものが―― 水々しい稲田を沿う平坦な道路を車は走る。 まるでそれを確認するかのように、 、、、 にぎやかな閑けさを破って狐憑きの女の白い眼が光る・・。 258 すべてにすみずみまで貫きわたる(ほらあそこに、いやな犬がいる、) ・・・はるかな点同然に――薄氷を渡るやうな危うい心で――遠ざかりつつあるもの 炭酸の強いイメージの花火のように時たまに閃めかしながら、なんて神経質な顔 ――心は急く、重い軽いに気もつかず、・・・ただ、全身につめたいふるえ 、ますますもって――この世の不幸な墓に魂がもう片脚くらい入った気がする。 梢が日を遮り、いきなり暗闇が僕の上に滑り墜ちた言語の対話を記憶せずに・・。 259 糞ゲー まず観戦料、グッズ収入、コンテンツ販売広告料、テレビ放映料、所属レスラーの芸能活 、、、、 動、飲食店経営、興行権販売――これがプロレスだ。選手が入場する、選手名、身長や体重 ヴァーチャルリアリティー が紹介されてスタートだ。《START》を押して下さい・・、仮想現実で体感できる多人数 参加型オンラインゲームで、プレイヤーはレフェリーにスリーパーホールドをきっちり決め て開幕だ。(さあ、打ちいでてみようか魚らのたぐいの、)唇を――。ゲーム内でトップを ポリゴン 目指すために、さあ、椅子を持って観客に殴りかかりましょう。・・と外国人が―― 260 保険 蟻が紙のやうな手をひろげていた。朝で寝ぼけていたけれど、 、、、、、、 眼についた。・・・僕は歯ブラシをしゃこしゃこしながら、 それが女王の蟻なのだな、と思った。つまり羽根なのだなあ、うむ―― ・・なアんだ馬鹿らしい、という流れだったのに、 それはすぐに違うと気がついた。――「こんにちは、蟻です、 カモメさん、セコムしてますか?」 261 木魚が敲かれ 祖父の声を聴いた ドラムが叩かれ 父の声を聴いた ドラム缶を蹴っ飛ばし 友の声を聴いた ピーターラビットのマグを割って 僕の声を聴いた 262 たとえば今日の犬は夜のスフインクスみたいだった 昼のスフィンクスは・・・なぞなぞの誘惑に負けた―― われわれは考える葦である・・けれど夜のスフィンクスの話となれば事情は違う お腹が減っているのだ! ・・おい、スフィンクスだぞ、おなか減ってるんだぞ、 、、、、、、 という風に、ふてぶてしく朝晩きちんと飯喰って何となく死ぬ。・・ 夜のスフィンクスはほねっこが好きだ・・赤ん坊の手さ、と実はクールに言っていた―― 263 猛獣は火を恐れるというので、・・・森のキャンプで焚火をする、は正しい だからイーゼルの竹下さんは猟銃の免許をとってイノシシと闘おうとしている ――僕はマタギのことを、ハタキのように思っていた 何故って、あれは因習社会の名残り。・・害獣も、たとえばワニも、ヘビもそうなのに 、、、、、 もののけ姫を観て思った。・・氷室から来るような冷気が、人間を山にする ――いまもなお黒いダイヤのかげから、ささくれまでがはっきりと写る、夕暮れ 264 鮮やかでよく眼についた 蜃気楼のようなはかなさ、不定形の砂、・・無限の呼吸をする風 貝殻の裏を覗いたような白い大空が甕となる時、――雨・・、雨が降る・・・ 幽かなせせらぎの音・・「頭に浮かんでくるものが、野原の路ばたなどに見つかる、 一本二本かすかに風にそよいでいる、花――花の名!を・・」 青い葉が一ぱい身体を埋め、やはり浮浪の身にあらせられ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015年11月28日 09時40分39秒
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