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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

2012年04月16日
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カテゴリ:AVEコラボ作品
安田さんの前駆詩「ネリネ」は、嬰児遺棄という難しい題材を取り上げていて、
izchanはストーリー作りが精一杯で、
社会問題への切り込みにも詩的表現の練りにも到りませんでした。
この未熟な状態から、
塚元さんは内容だけでなく新しい手法を導入して表現力を高めています。
結果、詩表現では‘音韻’と‘自動筆記’が注目される詩に仕上がりました。




                      安田 勁さん「病める花々」

                      塚元寛一さん「灯台」

                      izchan「不思議の泉」









              *  *  *






    『ネリネ』 安田 勁、塚元寛一、izchan


 *


 ああ、売れのこったケーキの話をしてもいいかい? ほらあの、クリスマスの・・そうそう
、クリスマスケエキ。あれ、捨てちゃうんだ。でも、何も出来ないんだよ。次の日になった
ら、大特価とかいう感じにするかも知れないけど、捨てちゃうんだ。こう、なんか身につま
される感じで切ないよね。煙草をすいたくなるよね。ベートベンとか聴けない感じだよね、
ほら、泣いちゃいそうだから。下らないことだけど、僕にとってはすごく重要なんだ。ケー
キっていう顔が固有名詞みたいになっててさ、うん、ごめん。こういうのってセクシアルハ
ラスメントとか言うんだよね。さみしいよね。なんだかノイローゼになって機関銃を味方の
兵士にドンパチやってしまう可哀想な感じだよね。うまく言えないけど、ガッツ!だよね・・
ケーキって好きかと言われたから、「いや、嫌いです」と言っちゃう人の感じだよね。空気
読めてないの。でも、正直なことって、外から見たら何もわかってないことで説明できるヨ
ネ。ああ、売れ残ったケーキはゴミ箱にすてられて、ゴミ収集車が持って行くんだ。いや・・
まさか、人の顔に不法投棄なんていうパイ投げ的様相はできないだろう。ああ!でも、そん
な日にケーキを作るケーキ職人の気持ちって知れないよね。プロじゃないよね。プロだった
ら予約しか承らないとかいうべきだよね。うん、ただそれ言いたくてこんなに長話してしま
った。ごめんね、つまらない話だったろ?・・でも、ぼくはアメリカンフットボール嫌いなんだ。



                           『売れ残ったケーキ』より


 *


     ――――――ネリネ、若草の少女。

    ......ネリネ 首の付け根が吊り輪でさ 

   大きなまっすぐたった回転車で吊り下がっている座席

水平に両腕を伸ばして自分自身を支えている『ネリネ』

     ......ネリネ 動揺してる赤信号を無視したみたいに 

   塗り絵で誤魔化そうとしてる

でも本当の所・・気持ちいいだけで、情報が伝わってない『ネリネ』

       ...ネリネ 花の風を見つけよう、――毒舌にカタルシスを覚える、

 隣に座った私服警官みたいに、中吊り広告が、時計をなくして・・る・・・

            4歳のやんちゃな瞳をかがやかせ。

      4歳の ほんのぺえじをかぞえて るようさ『ネリネ』

        ......ネリネ 蚊取り線香が バブルと円高好景気を忘れてる

         野のやさしい歌にスキップする、


      “体温計が揺れて た”


     ――――――ネリネ、陽なたの小説。

     (体温計の水銀を振り下げながら、

            春に生まれた子。

       いま黄金の光につつまれ、

           愛の花をちっちゃな手にかざす。


     “確かに三十九度を示している。体温計

        ――たとえばすぐに寒暖計は忘れ去られた”



いつも、魔法の小箱にはどれか1篇の詩。

      ネリネはきっとスプーンですくいとられた

        アイスクリームみたいだ――


 *

       
  nerine nerine

    nerine nerine


5年前の、映像。

  「日はめまぐるしく変化した。日曜日の商店街のホースが夏の昼下がりの虹になる」

  「トンネルに入ったような気持ちになるアーケードは、飛行機になる」

  nerine nerine

    nerine nerine

おお! 翳りの呪文は、私の氷砂糖・・。

    「電気で犯されたように見えるだろう、スパゲッティーに見えただろう。」

    「小綺麗な箱へ入って・・古い細胞が鱗のように落ちて行った。」


          ............ネリネ  浮遊 する


 「とけない恋のクリスタルはそれでも甘くて。(あなたがくれるケーキの味は何か?)」

春ジョオンの藤いろがやけに切なくて。(・・てのひらの皮が柑橘系の馥りを隠している。

)」・・・nerine・・・・・・ネリネ・・・・・・・・・


     ――――――ネリネ、若草の少女。


幼いシークレットLOVEのさいころ。幼いシークレットLOVEのさいころ。

 幼いシークレットLOVEのさいころ。幼いシークレットLOVEのさいころ。

振ったのは私だったはずなのに、振ったのは私だったはずなのに、

振ったのが彼だったなんて、、、皮肉。

    ( 痛まないわけ


  粗い石で造られた塀、塀にぶつけた膝が透けてゆく


       ( 傷まないわけな


    「な・・」と言ったのは――何の為だったんだろう。・・

       
  nerine nerine

    nerine nerine

          ( 悼まないわけない

  nerine nerine

    nerine nerine


      「一生、悼むよ・・・」


幼いシークレットLOVEのさいころ。

(でも

ほんとうに転がしたのは

ほんとうに転がしたのは・・・、ネリネだった。


     靴下をはいたnerine、まばたきをするnerine、頭の中に各駅停車するnerine、

    頭と全体とのバランスがおかしい『ネリネ』


       ――「こんな名前をつけようってぼくが言ったんだったっけ?」


 *


 「名前なんだけどね、ネリ      ネ、あ、いや、智花《ともか》

  っていうのはどうかな?ん、なんの?って…子どもの名前、お

  んなのこなら。…いや、気が変わったってことじゃないんだ。た

  だ仕事で想定外のことが相次いで対処に追われていて余裕がなかっ

  たというか、取引先に謝って回ってる最中だったしとにかく話をす

  る時間がなかったんだ。そのうえ、持ち山売却の話で親戚からひっ

  きりなしでね、うん、それでケイタイ切ってて。ゴメン。君の気

  持ちも考えなくて。それがね、今日、仕事中にフシギなことがあ

  ってね。突然、パソコン画面に『ネリネ』っていう詩が、うん、そ

  うなんだ、詩が現われてね。はじめはネットの混線かと思ったんだ

  けど、どの画面にしても現われるんだ。それで仕方なくぼんやりそ

  の詩を読んでいたら、君のことが想われて胸が熱くなったよ。そ

  のとたん、『ネリネ』は消えていったんだ。」


     「それとさあ・・・」


         “体温計が揺れて た”


        今日 ネリネを/駅のホームに捨てました/もう二度と

        会う事の出来ないあなたに


        過ちを犯し/それを許せないまま/言葉は落ちて

        あらぬ方向に跳ねてゆき


        風に散りゆく花弁を/そっと数えながら


        コンドームに/穴をあけたのは私だった/さよならネリネ

        もう二度と 会う事の出来ないあなたに


 *


 人生に疲れると、よく公園へ行くんだ。遊具があって、たとえば滑り台とか、ブランコとか、・・まあ
、砂場がある公園ね。木々もある。わりと何処にでもあるけど、都会なんかへ行くと木がないマンショ
ンの公園なんかを見たりしてさ、恵まれてるっていう気もする。恵まれてる公園とかいう、こうして考
えてるとうさんくさいベンチで、僕は道行く車を眺めてる。人を眺めてる。――遠い記憶の切れはしに
、在りし日の僕がいて、小さかった僕は何を考えてたんだろうかと思う。いつか考えるのにも飽きて、
ぼんやりと空を見てる。仕事で疲れたなあ、と思う。ああまたこれから夢を追いかけるのか、と思う。
そしてその挙げ句、人のことを嫌いになってゆくのかと思う。僕はまだ僕を知らない・・多分、人生が長
引けば長引くほど、人は思いこみの中で生きるんだろう。でもこの公園は知っている。何一つ変わらず
、君は無知だと。何故なら、人の心は眠らない・・五官がたとえ閉ざされても、不安と孤独や、ある単純
なイメージのようなものは生涯ずっと消えることがない。そして・・ゆるやかに――そう、ゆるやかに・・
力尽きたように蒼ざめて太陽が沈んでゆく。耳を澄ませば消えてゆく鳥の声・・ひた狂うように鳴く蝉の
声。逃げ惑わずにはいられない!・・強すぎる風も、同じように目を瞑らせる。永遠に安らかな墓地に埋
葬されても魂が昇る!・・そんな、月の光と、僕との間に空がある。小さな浮雲がある。匂う花がある。
いつまでもびろうどのようにやわらかい感触がある。ああ、あてどもなく泣きたい人の住む町で――い
まは春、蒼い震えが森の奥のようにある、――永遠のアドレッセンス期を追憶させるこの孤独な町で、
心は影のように埋もれていた。僕はただ、色褪せた景色に・・蝋燭をまた一本――と・・灯す。



                                  『声』より


 *


     “確かに三十九度を示している。体温計

        ――たとえばすぐに寒暖計は忘れ去られた”



月波よせる草辺、ネリネのぶらんこ。

  幼いシークレットLOVEのさいころ。幼いシークレットLOVEのさいころ。

ゆめのなか。

  振ったのは私だったはずなのに、振ったのは私だったはずなのに、

絵本の馬は、虹色のつばさ。

  nerine nerine

    nerine nerine

 ほしのおはなし。


    ストーブの傍で、体温計が走ってる・・・

     「ねえ、シャンプーの最後って安物の電球みたいに淋しいのよ」

  nerine nerine

    nerine nerine

         ――いつも、魔法の小箱にはどれか1篇の詩。・・








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最終更新日  2015年08月04日 11時47分07秒
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