457552 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

2015年04月05日
XML
カテゴリ:詩集Link
 124189-2.jpg





 エスカラス (ジュリエットを見て)そなたの方は?


        田中宏輔「ロミオとハムレット。」より


   *


  
 新説「ロミオとジュリエット」


 あれから二か月後。キャピュレット家とモンタギュー家の和解。

 若い二人の壮大な争議のあとの二か月後。

 森の中の洋館。バスタブ。湯気。石鹸の甘い匂い。そこに男女が裸で―――。

 ふっと、顔がアップになる。

 ジュリエットは言った。「偽装自殺・・・うまくいきましたわね。」

 ロミオは言った。「そうだとも。」

 ジュリエットは肯いた。「あん。そこ弱いの。」

 ロミオは、青臭い詩の台詞よりもさらに巧みな指づかいで、

 さながらハーレクインの描写のように、

 女の隠された秘湯を責め立てた。うほっ。

 原始人みたいな声でロミオは、筒井康隆した。

 ロミオは言った。「よいではないか。よいではないか。」

 (しかしその野性的な様子が、ジュリエットに火を点けるのだ。

 二枚目でナイーヴ。だのに、野性的な男というギャップに。)

 ジュリエットは悶えながら言った。「でも、そろそろ戻りますか?」

 ロミオは言った。「そうだな。そろそろ、金も欲しい。」

 ジュリエットは笑った。「―――でも、棺桶を運ばれる時は、どきどきしましたわ。」

 ロミオは肯いた。「・・・生きた心地がしなかったな。」

 ジュリエットは言った。「あん。いまは――別の意味で・・・」

 ロミオは屹立した騎士の剣のようなものを、突き立てた。

 頭の中に今日もまた、ささやくような声が聞こえる。

 ・・教会で神に祈った時、僕は本当に死のうと思っていた。

 ジュリエットと。もうそれ以外に道はないと。

 心中。しかしあの時、われわれの元に、悪魔が現れた。

 おお、若いお二人さん、そんな運命を選ぶなら、どうです、

 ズルい話聞いてみやしませんか。巧みな話術に、にこやかな笑顔。

 悪魔は、自殺を偽装して、隠れろと言う。万事こちらにおまかせあれ。

 睡眠薬。そしてロミオとジュリエットそっくりの蝋人形。

 驚く僕に、悪魔は言った。なあに、こんなの、

 死ぬお二人さんの苦悩に比べれば軽い仕事で。

 しかし、と僕は聞いた。お前に何の得がある? 

 いえいえ、得はありますよ。二ヶ月後にね。

 ロミオは果てたあと、ジュリエットに言った。

 「・・・あれはどういう意味だったのだろう?」

 ――二ヶ月後、両家にロミオとジュリエットが現れた。

 あれは偽装自殺だのと、言いながら説明するが、

 身振り手振りで真剣に説明するが、この気狂い野郎めと、

 ぼこぼこにロミオは殴られ、ジュリエットはあやうく犯されそうになった。

 二人は路頭に迷って、教会へ来た。

 そこに、悪魔は、はじめからわかっていたように言った。

 「ああようやく来ましたか。ああ、ひどい目に遭いましたね。

 お可哀そうに。」

 ロミオとジュリエットは怒りそうになったが、堪えた。

 本当に怒るべきは、何も話を聞いてくれなかった、あいつらだと思えたからだ。
 
 「・・・わたしはね、あなた方ふたりを、悪魔にスカウトしたいんですよ。

 どうです? これから、あの嘘つきのキャピュレット家とモンタギュー家を、

 破滅させてやりませんか。親なんてもういらないでしょう。あなた方、

 ふたりは愛し合ってる。愛のための聖なる戦いだ。どうです?」

 悪魔は、とても残酷に笑った。

 「・・・悪魔ってのはね、本当は天使のことなんです。

 どうしてわたしが、こんな見た目をしてると思います?

 それはね、本当に心があるからですよ。心があるから、

 外面なんて気にしない。そういうことですよ。」

 でもしかし、親を破滅させる、親殺しをするというのは――。

 悪魔はけたけたと笑った。

 「じゃあ、あなた方は死ぬんで? それで、一切何の恨みもないんで?

 でしたら、どうしてここへ? 人がもし、親や子というなら、

 人がもし、愛だの平和だのと言うなら、どうして、

 お二人は泣いてるんで? 辛い人生の場面に立つんで?」










最終更新日  2015年04月06日 08時41分37秒
コメント(1) | コメントを書く

■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:詩集Link(1-20) 田中宏輔さんの詩「ロミオとハムレット。」へ 写真詩:塚元寛一さん(04/05)   AVENUE2010 さん
これで、終わりにする。
ブログの方でも、報告はしない。
(いつもは大体そうだけど、ここで、
そういう挨拶をしておく。)

田中さんにはお世話になった。
こういうの、シンデレラ・テニス状態、
といって、上級者とテニスをすることで、
下級者が、急に鋭いボールを打ったり、
動きがよくなったりする。

まあ、謙遜しておく。
僕本来は、自分の詩を上手いとは思ってるけど、
それで? と、よく思う。
こういうのって、本当に、
どうしようもないところにある。

田中さんの詩は、そういう僕に対して、
明確に別の答えを有してる。
そこらへんが個性の違いとなって、
あらわれているようにも感じられ、
僕も今後に活かしていかなくちゃと思う。

ただそれは僕の勉強だし、課題なので、
内緒にする。作品としても、
こういうスケールでやってるのか、と、
学ぶところはあった。やるやらないは別として、
日本の詩が歩まなければいけない歴史の授業を、
なんだか、受けさせられているみたいで、
楽しかった。

でも、それは田中さんがすごいだけじゃなく、
日本の詩人がサボリすぎなんだよ、と、
思いたい。そういうのを期待しなくなったら、
毎日何やってるかわからないものな。

本来なら田中さんよりも前の時代で、
出ているべきだったんじゃないか、と思った。
そういうのが全部、小説や漫画に含まれ、
詩はと思った。

僕の勝手な意見だ。
(でも僕はみんなが思うより、
さみしさやむなしさを、詩に感じてる。)

つまらん人間のつまらんたわごとを聞かされ、
つまらん人間にさせるような、
スポイルを平気でしておいて、
何が詩だ、と、まあいつも思ってる。

まあ、僕の勝手な意見だ。

でもまあ、そういうのって本当に、
下らないことだと思う。
折角の人生が本当に台無しになる。
でも詩の話をすると暗くなるばかりで、
嫌な気持ちになる。

まあなんにせよ、
いい詩人と一緒に仕事をしているみたいで、
本当に楽しい作業だった。かしこ。
(2015年04月06日 02時31分54秒)

PR

カレンダー

サイド自由欄


  Art詩スライドショー

  作へ

  注目作へ
   紫苑1~水原紫苑の歌によせて
     新たなイラストの扉がいま開かれた!




    詩誌AVENUEの 掲示板

    詩誌AVENUEの 私書箱

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

日記/記事の投稿

カテゴリ

フリーページ

塚元寛一のお部屋★


創刊に向けて


コラボ詩の心得


顔文字詩


『ふろいど』のために


311


オリジナル意訳詩


TITANのお部屋★


『ふろいど』


動物さんたち 1


動物さんたち 2


作家の部屋★


poet 塚元寛一さん


poet 田中宏輔さん


poet 香鳴裕人さん


artist 羊谷知嘉さん


poet samleさん


reviewer 澤あづささん


poet NORANEKOさん


poet 天野行雄さん


poet 黒木アンさん


poet はかいしさん


poet 紅魚。さん


poet しぇりーいすちゃん


poet 泡沫恋歌さん


e-shi トラ太郎さん


e-shi 黒沙鐶ミイカさん


e-shi コマさん


artist ホングウ セラさん


reviewer 藤一紀さん


reviewer 水野英一さん


poet メビウスリング詩人会勉強会


poet 僻猫さん


artist 美々婆々さん


poet カニエ・ナハさん


ミュージシャンのお部屋★


hiroyuki


森 ミキ


編集室★


ブックマーク★


Home


room 1 企画


room 2


box 1 ✔


box 2 ✔


box 3 ✔


box 4 ✔


box 5


pro1 陽気なこまどり


pro2 coffee


pro3 花のやうに


pro4


pro5 


PBook 1


PBook 2


PBook 3


PBook 4


PBook 5 ✔✔


PBook 6


PBook 7


PBook 8


PBook 9


PBook 10


PBook 11


PBook 12


PBook 13 ✔


PBook 14


PBook 15


長編詩投稿サイト


日本人 カモメ7440


水深九十八メートルの夜



月舞の宴 (コメント付)


1~71行詩


今日の写真詩:詩文by塚元寛一


No.1


作品


十一次元の詩人たちへ


青いレモン


『青いレモン』の前駆詩


古井戸の底に浮かぶ


オリジナル意訳1    by塚元寛一


オリジナル意訳2


オリジナル意訳3


オリジナル意訳4


オ意ロートレアモン1


オ意ロートレアモン2


オ意ロートレアモン3


オ意ロートレアモン4


オ意ロートレアモン5


写真詩詩文控え1   by 塚元寛一


写真詩詩文控え2


写真詩詩文控え3


写真詩詩文控え4


写真詩詩文控え5


写真詩詩文控え6


ひろやすさん写真詩詩文控え1 by 塚元寛一


ひろやすさん詩文控2


ひろやすさん詩文控3


ひろやすさん詩文控4


ひろやすさん詩文控5


wa!ひろさん写真詩詩文控え1 by 塚元寛一


wa!ひろさん詩文控2


wa!ひろさん詩文控3


wa!ひろさん詩文控4


イラスト詩文控え1  by 塚元寛一


イラスト詩詩文控2


イラスト詩詩文控3



Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.