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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

2015年05月10日
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カテゴリ:百章物語
                  イラスト詩: 塚元寛一さん
                  ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440
                               イラスト素材;イラストac
                  櫻皮詩集: sampleさん
                  ツイッター:sample @kaibutsu_head
                  詩小説: しぇりーいすちゃん
                  ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1









スタート・ライン 1.目薬




SL1.jpg


autumn


強い眼で睨んでいたら、
眼の端がうるんで、
涙こぼれそうになった。

愛や希望、つなぎとめる。
名づけようのない気持ちに、
胸が痛くなることを重ねた。

物語は始まっていくんだけれど、
まだ先の見えないスタートなんだ。
僕等は勇気が欲しいと思った。
自分を越えていく力が欲しいと思った。




 「今度の点眼薬、どう?」
 「甘くて、おいしい、って感じ。」

 眼に味覚があるわけではないのだけれど、感覚の青信号が点灯する、「合点のゆく説明」
ってあるものだ。たとえば、この((みみうさ))看護師。まるで、っつうか本物のウサギだ
し!なのに、このクリニックで、「看護師さんを、ウサギがしてるんですけどー、マジ、
おかしくないっスか、これ。」とか、「野兎病、うつらないかしら?」とか、「ママ、あ
たしも、こういう動くぬいぐるみ、ほしい。」とか言う奴は誰もいなくて、もふもふして
るお腹を不慮の事故を装いふもふもしようなんて輩もいなくて、兎が月で餅つきするくら
いナチュラル~な写実画でしょって感得してしまう脳回路の理解の浸透を、「合点のゆく
説明」と呼ぶみたいな。

 「ほ、ほ、眼の甘味覚は回復してきたようだな。」
 「眼の甘味覚、ですか、先生。」
 「ふむ、そこで怪訝に覆るとは、まだ眼の苦味覚過敏はつづいておるな。」

 しのクリニックの院長、しの先生は、秋田の角館の出身とかで、小学校の同級生からプ
レゼントされた桜皮の眼鏡ケースを診察室の机に鎮座させている。銀縁エリート遠視眼鏡
をそこから取り出し視界を整えると、電子カルテに何やら打ち込む。

 「先生、ドライ・アイですよね、僕。」
 「愛に乾いた若者発言かね。」
 「・・・。」

 このつかみどころのない若オヤジ・ギャグを、((みみうさ))看護師はあっさり廃棄処分。

 「先生、そういうこと言うと、患者さん来なくなりますから、ぜひ止めてください。」

 処方された目薬、袋には『詩のクリニック』とある。これも若オヤジ・ギャグだろうか…。
((みみうさ))看護師、これもぜひ頼む。クリニックの門脇、ハナミズキの紅い花が高校の
クラスメート志野みずきみたいに口を開く。「私の従兄、詩じゃ食っていけないからって、
お医者さんになったのよ。」そっか、だが、若オヤジ・ギャグは詩ではなくポエムだな…。
「ほら、これが従兄の詩集。学生の時に作ったんですって。貸してあげる。」おい、おい、
志野みずき、美人語録「あげる」かよ。




   『Y字路』 櫻皮詩集より


   電話ボックスの中はとても静かだった
   夜の桜並木を見上げる、扉のすきまから風がすべりこむ
   電話の向こうから聞こえるのは怒り声
   それを心地よく思いながら、まだ未練のある数字に触れていた

   また競馬で財布を空っぽにしてしまったんだ
   だから、歩いて帰っている。もう少し待っていてくれ。
   そう言って、次に僕が話す番になったらどう謝ろうか考えている
   けれど電話は途切れてしまった

   一台の車が横切ってゆき、灯りに照らされる
   僕の頭をたらした姿を真似た影が
   電話ボックスの中でひとまわりする
   よじり合っていたふたつの線が
   ゆっくりとほどけてゆく
   受話器を耳から離す

   繋がっていた線を叩き切るような感覚が嫌だったから
   音を立てないように、そっと受話器を下ろした
   扉を開けると冷たい風が首から肩へと吹き抜ける
   水たまりに月が映っている
   振り落とされた桜の花があたり一面を
   絨毯のようにしきつめていた

   ふり向くと、ふたつに分かれた道が
   ずっと向こうまで続いている
   そういえば僕は、道に迷っていたんだ
   もう賭けるものは僅かだからと軽い気持ちで足を踏みだす
   すると一頭の競走馬が僕の耳の側を通り過ぎてゆくような気がした
   水たまりの月を踏みつけて、足音も立てずに川沿いの道を歩いていった
   僕は煙草に火をつけて、誰もいないシャッター通りをまた
   歩いてゆくことにした

 














最終更新日  2015年05月11日 09時57分34秒
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