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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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2015年08月13日
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カテゴリ:JOKER
※ 川柳誌『バックストローク』湊50句選PDF
     by湊圭史さん
 に寄せて



                 詩: 塚元寛一さん
                 ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440

                 フォト・アート:羊谷知嘉さん
                 ツイッター:羊谷知嘉 Chika Hitujiya @hail2you_cameo
                 ツイッター:Engineerism @Engineerism

                      画タイトル「Divided in Harmonia」
                        素材:京都の和菓子屋・月餅屋 直正








48 SBS1 20150805 Divided_in_Harmonia.jpg




川柳 DE バックストローク 1.



 すべての物が茹だってしまいそうな真夏の午後のひと時。

 風の絶えた夕暮れ。目を閉じても網膜に焼きつく、ガラス窓の果てのそこに、

 何物も燃やさずにはおかない虹がある。

 それは善と悪について、残酷について、幼な子について、苦しみについて、

 弱さについて僕に語った――。

 四方で崩れてゆく気配、光が水に反射して、僕は白い牙を剥き出しにした、

 魔物を見た。緑の幕がなければ、僕も、泣きたいほどに切なく・・。

 柔らかい雑多な音がやわらかな海の地平に触れてやわらかくとどまり、消え、

 すべてを溶かしそうな熟れた熱気の中、柔らかく澄んだ星の声をとどける。

 身体のどこかが破れてしまいそうな赤ん坊の泣き声が――。

 子守唄のように打ち寄せ、息の詰まりそうな黄が菜の花のように囲む。

 そこに頭上から舞い降りた水銀の滴りが孤独なねばりを僕にあたえる。

 ぎんぎんぎらぎらと白っぽい雲はオレンジや杏の色に染まっているのに、

 僕は昏れかかる海を見ている。光の穂がいくつもうまれてゆく――

 波の音を聞きながら・・。

 造形的混沌のヴァリエーションが編まれ、正方形や、三角や、円形が生まれ、

 内なる球形に胸を締め付けられる懐かしさ、その人恋しさは、

 さながら貝の肉のようにぬるぬると柔らかくありつつも、

 滑り落ちる水晶球のはかなさ・・。

 その弱い神経に触れて、僕は雲の仮面、道化の杖を欲した。

 いつしか生命の伸張を途中で停止したために畸形の手足がうまれたように、

 蟹の甲羅の隙間にびっしりと埋め尽くした不気味なしろい虫を生んだ。

 赤ん坊がもう、しゃれこうべとなり、世界はすっかり、荒廃した。

 玲瓏たる月の光は僕に記号を与える。すすり泣きは静かに吸い込まれ、

 それは左腕に湿り気をあたえ、波をうつようにしなう波との、

 シンクロを可能にした。

 いのちの波へとむやみに近寄れない、人の心――。

 それは闇だから、それは彼岸へと向かわねばならない現世的な容貌だから・・。

 雨が降った先程から、絹のように光りながらも重いその経験や生活の心地は、

 いまこの瞬間も蒸し暑く、ねじりにも似た、めまいの感覚として嚥下される刹那、

 それでも記憶という帯を辿りながら、僕は名前を呼んでいた。

 その感触に揺られたがごとく・・、

 葉に夏特有のむしむしした臭いが無造作に残っている松林に、

 ネオンサインがあたり、飛行機は轟音を立てながら離陸していった、

 ジリジリと音を聞かせている蝉に、もう消えてしまいそうな、

 すがすがしい青の記憶を残しながら。

 この青酸い夏の樹の香りを口腔へと喰らいながら、

 街路灯に、牛の胃袋の中のような美しい思い出が眠っていた。

 ほら、もう眼を開けなければいけない、あたらしい始まり――。
 
 蟻がまた小さな穴へとはいってゆき、栄養を吸った稲の合間を居心地わるそうに、

 蛇が泳いでゆく・・。起伏が、稜線が、デコボコした道が、煉瓦が、

 屋根が浮かび上がってくる、内なるその風を連れて――。

 僕は少年の頃に片思いをしていた女性の愛らしい形を感じた。

 何かの拍子に浮かべる表情、頬の笑窪、耳の形、眼のかがやき、

 それらが一体となりながら、僕はひとしきりこの世界について考えた。

 厚塗りのバターのような人の心。情報戦略・・。

 撃たれた小鳥のように僕は見つめていた、

 そのジャングルジムをまわしながら、屋上の人影が揺れていたみたいに・・。

 宗教や、権力のための争い。自由、それは血よりも強い贖いの感情を刺激する。

 僕は穏やかで深い夕暮れの色にこの星の薄汚れた価値観を見ている。

 僕の眼は薄暮の色に染まり、炎のままに、冷たく、色を閉ざしながら、

 沈んでゆこうとしている・・。

 誰かの心を、ただその人の心を、すっぽりと包むことのできない腕を持ちながら、

 長く別れていた感情のめまぐるしいうごめきを感じながら――。

 甘美な、生の誘惑をおもいえがくたびに、波が打ち寄せる、

 君を呼びながら、僕は、君をいまもうまく見つけられずにいながら、

 それでもいつか、靄の中から形のあるものが浮かびあがってくるように、

 君に触れて、君に本当の生活や、愛や、よろこびについて、もう一度語りたいと、

 心の底から思った。沖合に船がゆき、道路には車がはしっている、

 執着と絶望が寄せては返す象徴的な幸福へのあきらめのシーン。

 それでも、この海沿いの公園で、人を信じる気持ち、許すことについて僕は考えていた。

 夜が明けずにいながら、そして多分今日もうまく眠れずにいながら、
 
 僕はもう一度、魔物がいた場所を見つめる。

 そして今度こそ、深く呼吸をして、射止めてみせようとする、

 そこに君がいる、この鮮やかで、どうしようもない夕暮れのなか。

 その瞳の黒い星の光は奇跡を求めてる、

 でも、ゆるやかな不安とまどいの傾斜をわたりながら、

 僕は君を見つめている――。

 とけてゆくたましいの静けさの中、

 この美しくて切ない景色を、光り輝いているおそろしい虹の橋に変えないように、

 それでも人同士が、毎日を楽しく生きてゆくための何かを思い描いていた。

 波の音がして、叫び声が消えた、海に・・・・・・。









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最終更新日  2015年08月13日 16時58分00秒
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