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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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2016年01月05日
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カテゴリ:AVE予告篇
※ ネット発表のものは、出版された詩集とは異なる箇所があります。
※ 本篇の、詩誌AVENUEによるレイアウトは作者校閲を経ています。






世俗的な嘘がどうして精神により高度なビジョンをもたらすことができるのか、ルーにはおぼろげに理解できた。芝居や小説は比喩を使ってそれを行っている。そして比喩的な意味としては、今度のハプニングは、単なる事実の達成を期待する文学的叙述より、精神的に真実の本質に近いビジョンを世界に提供するだろう。

(ノーマン・スピンラッド『星々からの歌』デウス・エクス・マーキナ、宇佐川晶子訳)

  スザンナという名はどんな女性にもふさわしくない。パーブロはまちがいなくパーブロで、独自のものを持っていた。いまは不安そうに前かがみになって椅子に腰かけている。しかし、人殺しには見えない。われわれはみんなそうだ。

(マイクル・コニイ『カリスマ』9、那岐 大訳)

    「いやあ、これは本当に驚いたなあ」、とギョームは言った。   

(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』6、菅野昭正訳)

  彼は土地使用料を扱う担当者に任命され、その遊園地を目にするたびにロビンのことをつい思い出し、ロビンに会うたびについカーニヴァルのことを思い出すようになってしまった。

(シオドア・スタージョン『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』3、若島 正訳)

  スミザーズさん、二つの悪をお選びなさい

(ウォルター・デ・ラ・メア『シートンのおばさん』大西尹明訳)

    「聖人の群れに加えられるか否かは」ラドルファス院長は頭を高々ともたげ、語りかけている会衆のほうは見ずに、アーチ形の天井に視線を向けて言った。「われわれの理解しておるいかなる基準によっても決せられるものではない。聖人の群れが、罪を犯したことのない人びとからのみなるということはありえない。なぜなら肉体をもつ者のうち、一人だけを除き、ただの一度も罪を犯したことがないといえる者はおらぬからである。   

(E・ピーターズ『門前通りのカラス』11、岡 達子訳)

  しかしエルグ・ダールグレンは心の底ではそうではないことを知っていた。そして何か別のことを心待ちにしていたのだった。傷つきやすいものへの一瞥、女王も近づけない、彼が”自我”と名づけた本性への。

(フィリス・ゴットリーブ『オー・マスター・キャリバン!』26、藤井かよ訳)

  フェリックスはあえぎながら木の根元に横たわった。眩暈がしたし、すこし吐き気がした。自分の大腿骨の残像が、この世のものならぬ紫色に輝きながら目のまえに漂っていた。「ミスター・ラビットに会いたい」フェリックスは電話に向かってそうつぶやいたが、答えはなかった。少年は泣いた。

(チャールズ・ストロス『シンギュラリティ・スカイ』外交行為、金子 浩訳)

  グライアンは空を見上げた──太陽はまだ高く、木々のあいだの熱い空気は動かしがたいように思えた。

(クリストファー・プリースト『火葬』古沢嘉通訳)

  ジャーブはそう感じる、グロールもアイネンもそう感じる、それぞれが別々の心の中で。

(ホリア・アラーマ『アイクサよ永遠なれ』4、住谷春也訳)

  木曜日の午後、ロズは少しの安堵と少なからざる愛惜の念をもって、アイリスを送り出した。何はともあれアイリスは、独り暮らしが情緒的、精神的によくないことをロズに示していったのだ。結局のところ、一人の人間が考えることには限界があり、その考えが他者の意見で修正されることなく募(つの)っていったとき、強迫観念になるのだ。

(ミネット・ウォルターズ『女彫刻家』8、成川裕子訳)

  部屋にふたたび沈黙が訪れ、ジェフズ氏の視線がそこをさまよっているうちに、ようやくハモンド夫人の表情をとらえた。その顔はゆっくりと左右に揺れていた。ハモンド夫人が頭をふっていたからだ。「知らなかった」とハモンド夫人は言っていた。夫人の頭は揺れるのをやめた。夫人の姿はまるで彫刻のようだった。

(ウィリアム・トレヴァー『テーブル』若島 正訳)

 
  スタンダールは私の生涯における最も美しい偶然の一つだといえる。──なぜなら、私の生涯において画期的なことはすべて、偶然が私に投げて寄越したのであって、決して誰かの推薦によるのではない。   

(ニーチェ『この人を見よ』なぜ私はかくも怜悧なのか・三、西尾幹二訳)

  一瞬、その惑星の名前を思い出しそうになる。だが記憶は、形をとる直前にからかうように消え去り、サイレンスは嫌悪に顔をゆがめた。

(メリッサ・スコット『地球航路』3、梶元靖子訳)

  ニックはこの一瞬のうちに、永遠の美の煌(きら)めきを見た──無邪気に大笑いしているフェイはなんと愛らしいのだろう。卵形の洞窟の中で力いっぱい弓なりになった舌も、ピンクのうねのある口蓋も、全部まる見えになるほど大きな口をあけて笑っている。探るのに一生かかりそうな奥深い心の底の息をのむような暗闇に、天の贈りものともいうべきつかのまの光があったのだ──偶然のいたずらでほんの一瞬かいま見えた美しさが、長年にわたって磨きぬかれた巧まざる女の計算を覆い隠し、彼女をよりいっそうミステリアスに変身させてしまうとは。

(グレゴリイ・ベンフォード『相対論的効果』小野田和子訳)

 
  クロネッカーの鉄則である《構成なしには、存在もない》以来、純粋数学者のなかには構成的でない存在定理にポアンカレの時代以上に熱心でないものもいる。しかし数学を利用するものにとっては、細部がどうなっているかということが、研究を進めていくうえにどうしても必要である。   

(E・T・ベル『数学をつくった人びと III』28、田中 勇・銀林 浩訳)

 



     全行引用詩『ORDINARY WORLD°』 23/10 へ






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最終更新日  2016年01月18日 18時59分55秒
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