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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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2016年01月11日
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カテゴリ:AVE予告篇
※ ネット発表のものは、出版された詩集とは異なる箇所があります。
※ 本篇の、詩誌AVENUEによるレイアウトは作者校閲を経ています。






ヤコービは、彼の数学上の発見の秘密を問われて「つねに逆転させなければならない」といった。

(E・T・ベル『数学をつくった人びと II』17、田中 勇・銀林 浩訳)

  マルグリットを見つめると、少女は動いていないがっちりした機械の上に軽がると敏(びん)捷(しよう)にすわっていたのに、なんとなくその機械の一部みたいだった。

(ブロッホ『夢遊の人々』第三部・四二、菊盛英夫訳)

  ああ、ルシア、ぼくはきみがいなかったらとても寂しいだろう、ぼくは肌に、喉に、その悲しみを感じるだろう。息をするたびに、もはやきみの存在しないぼくの胸のうちに空虚が侵入してくるだろう。

(コルターサル『石蹴り遊び』向う側から・11、土岐恒二訳)

  エディなら、そばにいないときでも姿を忘れることがない。たいした奴ではないかもしれないけど、なんにせよ、いてくれる。変わらない顔というのが、ひとつぐらい必要だ。

(ウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ』15、黒丸 尚訳)

  ラルフィの顔は不安そうだった。彼には二つしか表情がない。悲しそうなのと、不安そうなのだ。

(ウィリアム・ギブスン原案、テリー・ビッスン作『JM』1、嶋田洋一訳)

    「ジェリーを殺したのはきみか?」とダンツラーはたずねた。ムーディにむけた質問だったが、相手は人間に見えず、隠されたメッセージを解き明かさなければならない構図の一部にしか思えなかった。   

(ルーシャス・シェパード『サルバドル』小川 隆訳)

  哲学史のボロトフ教授と歴史学者のシャトー教授の激論の応酬の断片が聞こえてきた、「実在とは存続のことなんだ」とボロトフの声がとどろき渡る。「ちがう!」と相手の声が叫ぶ、「石鹸の泡だって歯の化石と同じように実在しているんだ!」

(ウラジーミル・ナボコフ『プニン』第五章・2、大橋吉之輔訳)

  勇気ということよ、そこをよく考えるのよ。アーサー。わたしの読んだ本によれば、科学の世界では精神の力にもう一度恐れをいだき始めているそうよ。心に合図を送り、じっさいにものを考えさせ、祝福する精神力に対してね!

(ウォルター・デ・ラ・メア『シートンおばさん』大西尹明訳)

  だから、その金で買ったものはなに一つぼくを本当に喜ばせはしない。たしかにぼくはいまはちょいちょい滋養のある食べ物や、一杯のワインで、元気をとりもどすことはできる。でもねえ、ジオルジナ、いつか木がよく売れて正直にもうけた金を神さまがいつもより数グロッシェン多くくださったことがあったねえ。ぼくはあのときの悪い一杯のワインのほうが、よその人がぼくたちに持ってくる上等のワインよりずっとおいしいんだよ。

(ホフマン『イグナーツ・デンナー』上田敏郎訳)

  ステファヌ・マラルメについての思い出を問われるとき、私の答はいつでもこうである。つまり彼は私に、私の意識に入ってくる万物を前にして、これは何を意味するか(、、、、、、、、、、)という問(、)をたずさえて真向うようにと教えてくれた人である。問題は描くことではなく、解釈することなのだ。

(ポール・クローデル『或るラジオ放送のための前書』平井啓之訳、平井啓之箸『テキストと実存』より引用)

 
  何かが信じられるか信じられないかを決めるのに、サリーが何をよりどころにしているのか、ぼくにはさっぱり合(が)点(てん)がいかなかった。いったい、どうしてうら若い女が、頼りになる一束の証拠書類を、まるで湯気くらいに軽く片づけてしまうのか。また、そもそもの出だしからインチキまるだしの広告文を、まるで聖典のようにありがたがって、一杯くわされてしまうのか、ぼくにはさっぱり……。   

(ジョン・ウィンダム『ポーリーののぞき穴』大西尹明訳)

  理由はわからぬながら、このワイルダー・ペムブロウクという男は彼のなかにいっそうの不信と敵意をつのらせていた。「自分のつとめを果たしているだけです」ペムブロウクは繰り返した。

(フィリップ・K・ディック『シミュラクラ』13、汀 一弘訳)

  ダルグリッシュがその車の観察を終えるか終えないうちに、コテイジのドアが開いて、一人の女性がせかせかと二人の方にやってきた。国教の教区に生まれ育った者なら、それがスワフィールド夫人であることに疑いを抱くはずがなかった。まさに田舎の教区牧師夫人の典型だった。大きな胸をして、陽気でエネルギッシュで、一目で相手の権威と能力を見抜き、それを利用することに巧みな女性らしく、少々威圧的な自信を漂わせている。

(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第二部・1、青木久恵訳)

  やがて、おれの目と同時にミリアムの目を通じて、周囲のあらゆるものが二倍もくっきりと見えるようになった。二人の心の内部に、彼女の神経性めまいと、おれに対する愛情と信頼とを感じることができた。公園の花や樹葉の一枚一枚が、ひときわ燦然(さんぜん)たる輝きを放っていた。それは優れた宝石職人の手になる彩飾ガラスの森のようだった。

(J・G・バラード『夢幻会社』26、増田まもる訳)

  「この秋にはイタリア旅行を計画しているんです」とハトン氏がいった。彼は自分がぶくぶくした泡のような、ひょうきんな気持ちの高まりで今にもポンと栓の抜けそうなジンジャー・エールのびんのような気がした。

(オールダス・ハックスレー『モナ・リザの微笑』龍口直太郎訳)

  ジェット夫人はそれから何時間も、人間の目ほどの大きさの、つぼみのような炎をじっと見つめていた。その炎もまた彼女を見返して、さあ、また寝こんで、あんなに取り乱しちゃいけないぞ、と警告しているみたいだった。

(ファニー・ハースト『アン・エリザベスの死』龍口直太郎訳)

 


     全行引用詩『ORDINARY WORLD°』 31/45 へ






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最終更新日  2016年01月18日 19時18分41秒
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