テーマ:☆詩を書きましょう☆(8322)
カテゴリ:AVE予告篇
※ ネット発表のものは、出版された詩集とは異なる箇所があります。
※ 本篇の、詩誌AVENUEによるレイアウトは作者校閲を経ています。 「いや、シェイクスピアの再来かもしれない人間は、この劇団にはひとりしかいない。それはビリー・シンプスンだ。そう、小道具のことだよ。彼は聞き上手だし、どんな人間ともつきあう方法を心得ているし、さらにいえば心の内側にせよ外側にせよ、人生のあらゆる色と匂いと音をネズミとりのようにとらえる心をそなえている。それに非常に分析的だ。ああ、彼に詩の才能がないことは知っているよ。でも、シェイクスピアが生まれ変わるたびに詩の才能をそなえているとはかぎらない。彼は十人以上の人生をかけて、劇的な形をあたえた素材のひとつひとつを集めたのではないだろうかね。寡黙で無名のシェイクスピアが、つつましい人生を重ねながら、いちどの偉大な劇的なほとばしりに必要な素材を集めたという考えには、なにかとても胸を刺すものがあると思わないかね? いつかそのことを考えてみたまえ」 (フリッツ・ライバー『『ハムレット』の四人の亡霊』中村 融訳) フェンテスは彼の方法の鍵を私たちに与えています。「ひとりの人物を創るためにはいくつもの人生が必要だ」、というのがその鍵です。(ミラン・クンデラ『小説の精神』第3部・諸世紀の空のもとに、金井 裕・浅野敏夫訳) 「犬、たぶんくたびれて寝てるんだね」とゾフィアはあたしに言った。「悪夢だってたまには眠らないとね」(ケリー・リンク『妖精のハンドバッグ』柴田元幸訳) リタは、思い出のなかにうかびあがってくるのはちいさなこまごまとしたものなのだ、とおもった。わが家のちいさなものはどれもいとおしい。ちいさなものひとつのほうが、テーブルのうえの半ダースもの品々よりも、たくさん口をきいてくれるから。(アン・ビーティ『愛している』26、青山 南訳) わたしが裏口から通りに出たとき、トランクの中で音がし、バァーという声がした。アルベルト・キシュカはかくれんぼをしていた。(イヴァン・ヴィスコチル『飛ぶ夢、……』千野栄一訳) ジェラールに軽々しく扱われたのは、自分で自分を軽々しい扱いに値いする人間にしていたからだ。(P・D・ジェイムズ『原罪』第五章・63、青木久恵訳) 足音がジャーミン通りをゆっくり近づいてきた。そしてはたと止まった。パワーズ船長は目くばせし、シオフィラス・ゴダールはわずかにうなずいた。足音はまた聞こえ始めた。道路を渡ってキーブルの家のほうに向きを変えた。(ジェイムズ・P・ブレイロック『ホムンクルス』1、友枝康子訳) するとスクラトン先生が通りかかった。この人はまったくいいおやじだ。この谷間じゅう捜したってスクラトン先生よりすばらしい男はいやしない。先生のけつは脱腸なんだ。ねじこんでもらいたいときには腸を三フィートものばして相手に渡すのさ…… また、その気になれば腸の一部分だけを落っことして、自分の事務所から遠く離れたロイのビヤホールまで行かせることだってできる。腸は蛆虫のようににょろにょろはいまわってピーターを捜しにゆくんだ……(ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』普通の男たちと女たち、鮎川信夫訳) リーは身動きした。とじたままでいようとして、まぶたがぴくぴくした。しかし意識と明るくなる光とが、むりにその目をあけさせた。(ゼナ・ヘンダースン『果しなき旅路』1、深町真理子訳) ──あの畜生みたいな男の相手をして、さぞ困ったでしょう?」とたずねても、セヴリーヌは答えずに、かえって、熱っぽい笑いを見せた。アナイスの家の女たちは驚いてお互いに顔を見合わせた。彼女たちは今、昼顔が、そのときまで、一度も笑ったことのないのに気づいた。(ケッセル『昼顔』六、堀口大學訳) ヘーゲルにとって、全体とは、各部分の総合以上のものだった。実のところ、各部分の意味がよくわかるのは、それが全体に属しているからなのだ。ヘーゲルはそれをこう定義している。「真理は全体である」(ジョン・T・ウィリアムズ『プーさんの哲学』6、小田島雄志・小田島則子訳) 「個人的には」と、ホーガン社長はいった。「わしは寄せ波にプカプカうかぶプラスチックびんを見るのが好きだ。よくわからんが、なんだか自分が、永久に残るものの一部になったような気がする。きみに伝えてもらいたいのは、この感情だ。さあ、もどって短報の仕事を片づけろ」(フレデリック・ポール&C・M・コーンブルース『ガリゴリの贈り物』浅倉久志訳) そう言ったあと、彼はサモサタのルキアノスが『本当の話』のなかで語っていた言葉を思い出した。”私は、目に見えず、証明もできず、ほかにだれも知らないことを書く。さらには、絶対に存在しないもの、存在する根拠のないものについて書く。”いやでも頭にこびりついている文章だ。(フェリクス・J・パルマ『時の地図』第一部・12、宮崎真紀訳) ピートは人間すべての手をポケットに深く突き入れると、ゆっくりした足どりで外野席に引きかえしていった。(シオドア・スタージョン『雷と薔薇』白石 朗訳) (あらゆる人間と同じように)アレハンドラが具えていた多くの顔の中でも、その写真の顔はマルティンにはもっとも近しい、少なくとも近しかった顔だった、それは深みのある表情、手に入れられないと初めから分っていながら求めずにはいられないでいる人間のいくぶん淋しげな表情だった、まるで切望(つまり希望)と絶望は同時に現れうるとでもいうような顔、先に絶望しているとはいえ願わずにはいられないというような顔だった。(サバト『英雄たちと墓』第IV部・5、安藤哲行訳) 全行引用詩『ORDINARY WORLD°』 32/45 へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年01月19日 18時08分45秒
コメント(0) | コメントを書く
[AVE予告篇] カテゴリの最新記事
|
|