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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

2016年01月30日
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詩集Link(1-20)
 田中宏輔さんの詩「ロミオとハムレット。」へ




 
AVE写真illus.詩N1252 1504-1AT No.10



新説「ロミオとジュリエット」


あれから二か月後。キャピュレット家とモンタギュー家の和解。
若い二人の壮大な争議のあとの二か月後。
森の中の洋館。バスタブ。湯気。石鹸の甘い匂い。そこに男女が裸で―――。
ふっと、顔がアップになる。
ジュリエットは言った。「偽装自殺・・・うまくいきましたわね。」
ロミオは言った。「そうだとも。」
ジュリエットは肯いた。「あん。そこ弱いの。」
ロミオは、青臭い詩の台詞よりもさらに巧みな指づかいで、
さながらハーレクインの描写のように、
女の隠された秘湯を責め立てた。うほっ。
原始人みたいな声でロミオは、筒井康隆した。
ロミオは言った。「よいではないか。よいではないか。」
(しかしその野性的な様子が、ジュリエットに火を点けるのだ。
二枚目でナイーヴ。だのに、野性的な男というギャップに。)
ジュリエットは悶えながら言った。「でも、そろそろ戻りますか?」
ロミオは言った。「そうだな。そろそろ、金も欲しい。」
ジュリエットは笑った。「―――でも、棺桶を運ばれる時は、どきどきしましたわ。」
ロミオは肯いた。「・・・生きた心地がしなかったな。」
ジュリエットは言った。「あん。いまは――別の意味で・・・」
ロミオは屹立した騎士の剣のようなものを、突き立てた。
頭の中に今日もまた、ささやくような声が聞こえる。
・・・教会で神に祈った時、僕は本当に死のうと思っていた。
ジュリエットと。もうそれ以外に道はないと。
心中。しかしあの時、われわれの元に、悪魔が現れた。
おお、若いお二人さん、そんな運命を選ぶなら、どうです、
ズルい話聞いてみやしませんか。巧みな話術に、にこやかな笑顔。
悪魔は、自殺を偽装して、隠れろと言う。万事こちらにおまかせあれ。
睡眠薬。そしてロミオとジュリエットそっくりの蝋人形。
驚く僕に、悪魔は言った。なあに、こんなの、
死ぬお二人さんの苦悩に比べれば軽い仕事で。
しかし、と僕は聞いた。お前に何の得がある? 
いえいえ、得はありますよ。二ヶ月後にね。
ロミオは果てたあと、ジュリエットに言った。
「・・・あれはどういう意味だったのだろう?」
――二ヶ月後、両家にロミオとジュリエットが現れた。
あれは偽装自殺だのと、言いながら説明するが、
身振り手振りで真剣に説明するが、この気狂い野郎めと、
ぼこぼこにロミオは殴られ、ジュリエットはあやうく犯されそうになった。
二人は路頭に迷って、教会へ来た。
そこに、悪魔は、はじめからわかっていたように言った。
「ああようやく来ましたか。ああ、ひどい目に遭いましたね。
お可哀そうに。」
ロミオとジュリエットは怒りそうになったが、堪えた。
本当に怒るべきは、何も話を聞いてくれなかった、あいつらだと思えたからだ。
「・・・わたしはね、あなた方ふたりを、悪魔にスカウトしたいんですよ。
どうです? これから、あの嘘つきのキャピュレット家とモンタギュー家を、
破滅させてやりませんか。親なんてもういらないでしょう。あなた方、
ふたりは愛し合ってる。愛のための聖なる戦いだ。どうです?」
悪魔は、とても残酷に笑った。
「・・・悪魔ってのはね、本当は天使のことなんです。
どうしてわたしが、こんな見た目をしてると思います?
それはね、本当に心があるからですよ。心があるから、
外面なんて気にしない。そういうことですよ。」
でもしかし、親を破滅させる、親殺しをするというのは――。
悪魔はけたけたと笑った。
「じゃあ、あなた方は死ぬんで? それで、一切何の恨みもないんで?
でしたら、どうしてここへ? 人がもし、親や子というなら、
人がもし、愛だの平和だのと言うなら、どうして、
お二人は泣いてるんで? 辛い人生の場面に立つんで?」
 








原画サイズ/特大サイズ

素材: (イラa。写a)  写真詩・イラスト詩:塚元寛一さん


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最終更新日  2016年02月01日 20時34分06秒
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