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カテゴリ:紫草詩
紅魚。1~短歌詩50選
紅魚。6.ぽとり。 イラスト:ホングウ セラさん ツイッター:ホングウ セラ@seramo2 詩:紅魚。さん ツイッター:紅魚。@cleo19810402
白昼堂々
、って、ことばが似合う、やさしいむかしむかし。
骨の白の月と薬指の爪のもらい星。
にげろ、にげろ、
耳鳴りが降ってきた。
日差しがちりちりと髪を焦がしてゆくから、春と夏の境目に印画された影になった気持ちがする。
熱い風が耳を遠くする。
カラカラと溺レる。
月曜日って、ゆくところがない。
大きな公園も図書館も動物園もアクアリュウムもみんな、おやすみ。
凍ったゼリィみたいな目をしたウサギが、かろかろに顔を出して、大きな動物に淋しさを滴下してゆく。
分厚い皮がほしかった、なぁ、
二層仕立ての。 昼生まれだから、真昼には、泣きたい。
わたし、淋しくて淋しくて、淋しい。きっと動物園のカバより。
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紅魚。さんが伝説の書き手だということは、いろんなところで再三述べていますが、この詩を見るとその実力がよくわかりますね。月曜の真昼にひとりでいる【淋しさ】に「焦がれる」という心境が、光波に溺れるような情景で描写されています。
まず初連。語り手が、月曜日の白昼のなか、アナログ腕時計を見ている光景が鮮やかに浮かびます。針は午後0時を指していて、文字盤のある手首には月状骨があり、ネイルもしてない(お出かけ仕様でない)薬指にはもらい星が見え、(夜の午前0時へ)【にげろ】と耳鳴りが降ってくる。いわば「午前と午後を反転させたシンデレラ」の心境です。 【月】曜日の【真昼】という曰く言いがたい矛盾に、【春と夏の境目に印画された影】として焼き付けられたような閉塞感。その「焦がれる」抒情のなかで、【凍ったゼリィみたいな(赤い)目をした(光に弱いアルビノの)ウサギ】の、淋しさで死んでしまうような脆さを象る「赤い涙」という幻想が、【動物園のカバ】の流す赤い汗という写実に融けます。【真昼】の淋しさの情景として、目の覚めるような的確な表現です。 カバは皮膚が分厚くて防御力最強と有名ですが、体毛がないのですね。そのため汗が赤い。【分厚い皮がほしかった、なぁ、/二層仕立ての。】とはそういうことだと思います。「身を焦がすような真昼の淋しさ」から身を守るには、カバの分厚い皮膚だけでも、日差しに焦がれる黒髪だけでも足りないということ。抒情詩とはこのように、筆舌に尽くしがたい心境を「情景」で読ませる詩のことを言うんです。 とてもよいものを読みました。 (2016年05月17日 21時15分24秒)
AVE初コメありがとうございます!
こんなに素敵なコメントをいただくと、ますます紅魚。さんとホングウ セラさんのファンがふえて、AVE編集室も大喜びです。深謝!! (2016年05月18日 21時17分32秒)
コメントをありがとうございます。
詩って、読み手に生かされる部分も大いにありますよね。描きたかった情景を受け手が様々な形で掬ってくださるのは、とても嬉しいことです。 この作品というかこの連載は、短歌がまずあって、補足又はリライトとしての詩という、私にとっては特殊な手法を取っています。ですので、成功しているとは言い難いなぁ、という自分自身の感覚なのですが……。 今回に関しても、短歌に用いた“カバ”という単語が強すぎて躓いてしまい、試行錯誤をした上での難産でした。 何か、感じていただけたのでしたら幸いです。 支離滅裂でごめんなさいね。 素晴らしいコメントを、ありがとうございました! (2016年05月18日 21時44分31秒) |
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