朝去きて夕は来ます君ゆゑにゆゆしくも吾は歎きつるかも
住宅密集地。機械的なアナウンスみたいに、君が家はこっち、と言う。
え? あ――うん・・。
ぼんやりと揺れる景色を黙って見つめながら歩く。月面を歩くってこんな感じなのか。
気まずい。しかも、何か、僕に告白をせよと命ずるような、妄想に駆られる。
さっきまで、お互い普通だったのに。
コメントの面積が、心の中を占める。
バック・トゥ・ザ・フユーチャーのマーティがタイムスリップした過去の自分の母親に、
熱をあげられる展開くらい、気まずい。
寺山修司の家出のすすめで、他人の母親を偸みなさいという一行があるけど、
それはないけど、
同級生の彼女と、しかも話したことはない、隣の席の女の子を偸みなさい、みたいな。
眼鏡をかけていて、頭がよさそうで。
電車でたまたま顔を合わせて、挨拶して、あ、同じ駅なんだと思った。降りて、
そうしたら、なんでかわからないけど、ニコッと笑ってきて、
笑う時の眼って可愛いな、そう思った。女性にはフェロモンが出てるって話あるけど、
出てるな、間違い無く。古典の万葉歌集読みながら、テスト勉強してた折りに、
見かけた、あれ何だっけ――・・。
さっきから、もじもじしてる。僕も、大体そのようになってる。
甘酸っぱい。やりきれない。でも、さっきまで普通だったんだ。
多分、夕暮れの魔法のせいだと思う。人どおりがないせいだとも思う。
授業中に消しゴム忘れたの、貸してと言われた時、二つあるからって一個渡したら、
あとで、ジュースを買ってきて、僕にくれた。コーラ。
こいつってコーラ飲むのかな。キャラ的に紅茶じゃないか、そう思いながら、
俺がそういうの好きで飲むって、そう思ったのかなあ・・・。
何だかメルトダウン前に電子ロックするような場面で、というか、すごい妄想だな、
僕は、じゃ、と言って、別れを切り出した。その時の、彼女の何か、切なそうな顔。
あのさ・・、それは駄目だよ、やっぱり、僕がまるで意気地なしみたいじゃないか。
でも――。明日、金曜日。もし、今日みたいなことがあったら、
彼女、デートに誘ってみようかなあ・・。
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詩とArt_Works:
塚元寛一さん &KAMOME_STUDIO
画像素材: イラa。写a