記憶は何も語らない/僕は僕で何も語らない/でも高度な資本主義が
そうであったように/いつかの僕が記憶を語り始める/永遠はそのようにして
生まれた/意味や理由を繰り返す/消えやすいその飛沫/魂はそんな車
輪を求めた/蒼穹のごとき沈黙に飛ぶ鳥/傾斜を辷る貧しい慰め/不毛
な性の話/青い部屋の中の気の狂れそうな時間/そして薔薇の残酷/
陶然とした鐘鳴り/頭の中に誘蛾灯のような白く冷たい光があってかげ
ろうのように周囲に燃えたっている/僕はくわえ煙草に火を点けている/
眼を開けると三十年間の知識が切り刻まれたような一つの詩が生ま
れていた/水は匂い/風は揺らめき/時は尽きていた/しかし相変わらず
僕の記憶は何も語らない/そこで僕は三十年間をまったくどうでもいい
ものにしたいと考え始める/いつからだろう? 僕は石鹸の泡に埋もれ
ながら浴室の鏡みたいに存在していると感じはじめたのは/芥子粒よ
り小さくなりたいと考えている/必要のないものは地獄ではなく天国で
あるのかも知れないとも思う/もうすぐ夏の嫌な季節が終わる
原画サイズ/特大サイズ
詩とArt_Works:
塚元寛一さん &KAMOME_STUDIO
画像素材: イラa。写a