詩: izchan
ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1
※転載:詩集『不思議の泉』p.83-84 より
イラスト: トラ太郎さん
ツイッター:トラ太郎 @torataro123
登録スタンプ:トラ太郎のクマさんとうざちゃん
「コロックルの林 1.落ち葉の道」
落ち葉の道には。
みえない
( 働き者の
みえる
( 足あと
みえない
陽だまりの林には。
きこえる
( 働き者の
きこえない
( 口ぶえ
きこえる
ソレは誰でしょう。
コロックルは、いつも落葉の季節にはそのようでありました。
どんぐりがリスにもゾウ虫にもうまくいきわたるよう、
翌年の芽生えのことも考えて、
林床の落葉落枝の量をほどよく調節したりして、
忙しかったのです。
コロックルは、働き者の森の妖精でしたが、
まだ300歳に満たない若い妖精に定められた
雑木林の管理を森の仕事以外にもしなければならず、
とても忙しかったのです。
それでも、ちょっとばかしのお昼ねは欠かしませんでした。
お昼ごはんにヒカリゴケの光を食べた後はとっても眠たくなりましたし、
なにより森の妖精が守らなければいけない‘決まりごと’でしたから。
ある日のこと、
大風族のグリゴールがそばを通りかかり、コロックルに挨拶しました。
「やぁ、コロックル、元気かい?」
コロックルが挨拶しようと顔を上げた途端、グリゴールの顔が歪んで、
「ハ、ハ、ハックショーン!」
雑木林がワッサワッサゆれて、木の葉がザワンザワンとんで、
どんぐりがボロボロとびちりました。
「や、失敬。今朝はアレルギーがひどくてね。
マスクを忘れてきたのは失敗だったな、クシュン!」
そう言うと、グリゴールは大風族の村の方へひきかえしてゆきました。
コロックルはというと、
グリゴールのくしゃみに吹き飛ばされたものの、
辛うじてコナラの木の枝に引っかかって
1まいの葉っぱみたいにユ~ラユ~ラゆれていました。
上から見下ろすと、
いたるところ剥き出しになった禿地ができ、
大きな吹き溜まりには、木の葉や、小枝や、どんぐりが。
そこだけ満員電車みたいで。
コロックルは引っかかっていた木の枝から飛び降りると、
大急ぎで吹き溜まりを崩して林床を整えてゆきました。
あっちの吹き溜まり、
こっちの剥げ地、
休まず働き、なんとか作業が一段楽した時には、
午後3時近くなっていました。
コロックルはすっかり忘れていました。
お昼ごはんも、‘決まりごと’のお昼ねも。
女の子がトコトコ雑木林の中の小道を歩いてやってきました。
女の子はコロックルをみとめて声をかけました。
「あら、妖精さん、こんにちは。」