Phos Graph カフェ1 イエメン (詩:NORANEKOさん)
詩:NORANEKOさん ツイッター:NORANEKO@NORANEKO_AOKI 惑星のように傾き回る濾布に敷かれたマタ リの眠りへ、万有引力の鳥かホーローの鶴口 を垂れる湯の一滴は托身の円さに満ち満ちて いる。 羊歯に帰り花の落ちて結ばれた実が、つい に渇き種を焦がすに至る記憶は多孔質のなす 層であり、琥珀のような記録は濾布の底に沁 み、やさしい遠心力に凝る。濁りなき蜜は恩 寵のように垂れる。 ワイン ジャスミンそれは鼻腔における葡萄酒と茉莉花の結婚。 檸檬水晶の風に吹かれて無限に伸展する衣裳 スカートの襞が頭蓋を越境する開花への恍惚。 それが波をたてて引いたあとには一人、ぽつ ねんと取り残された湖畔の静けさがある。金 色の水面を飽かず眺めて佇めば、岸辺を歩い てくる輝かしい御姿がある… … 。