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種子島奮闘記

種子島奮闘記

思い出に残る開業初日

6月3日は記念すべき開業初日。昨日、保健所の立会い検査のはずだったが
先方の都合で本日の11時となった。検査も程なく済み、開設届済証をいただく。

午後からは営業活動した甲斐あって、往診の予約を頂いていたので、
お伺いさせてもらった。これで初日の坊主は無くなりホッとする。

それが終わり、市の繁華街へ営業に行こうと向かう途中、携帯電話が鳴った。
ぎっくり腰の患者さんから往診の依頼があったとのこと、すぐUターンして
まずは自宅へ戻る。

その道中、ぎっくり腰についての思い出がよみがえる。
それは、今は亡き師匠の治療だ。師匠はぎっくり腰にハリを2本、
しかも腰とは全然関係ない手と足に1本ずつしか打たない。

しかしその効果は劇的である。ほとんどの患者は狐につままれたような顔をする。
今までの激痛は何だったのか、というくらいの改善があるからである。
もちろんこれには寸分たがわないツボの正確性が要求される。

これこそハリの醍醐味であり、それを見る私もそのすごさに感動し、
この道に進んで本当良かったとつくづく思っていた。
そして私も何時かハリ2本で、ぎっくり腰を治せたらと夢に抱いていた。

自宅に到着、詳しい話を聞くとその患者さんは義母さんの友人で
家がややこしいところにあるので一緒に付いて道案内をしてくれるという。
この患者さんにハリ2本で治せたら義母さんの顔も立つなあと思っていた。

義母さん案内のもと、患者さん宅に到着。
みると歩くにも手を腰に当てて苦しそうである。咳をするにも腰に響くとのこと。
ゆっくり仰向けに寝かせて診断する。すると右の腰に反応アリ。
そこで左の手足に1本ずつハリを打つ。刺す深さは1ミリである。

ハリを刺したまま5分が経過し、診断すると右腰の反応がなくなっている。
これはひょっとしてと思い、ハリを抜いて患者さんに立つよう指示をする。
患者さんも恐る恐る立ちだした。すると・・・

あれっ、あれっ・・・、
本人は狐につままれたような顔をしている。
一緒に来ていた義母さんも何が起こったのかわからない。

本人もまだ信じられないようだ。私の顔を見て笑みを浮かべるだけである。
わたしはその顔を見てあの感動がよみがえった。

患者さんもこれを表現するのがむつかしいようだったが、
歩く姿がスキップを踏んでいるような軽快感でそれを表された。

開業初日にしては出来すぎである。
これも今は亡き師匠を始め、たくさんの方々から支えられたおかげである。

一生忘れ得ない日となるだろう。


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