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番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

スポーツ文化?



プロ野球のごたごたに関して、スポーツ・ジャーナリストがこう言った。

「日本のプロ・スポーツ文化を深めなければ」。

日本に「プロ・スポーツ文化」って根付いているのだろうか?
いやいや、そんな文化、この国にあるのだろうか?


--合併の理由? 赤字だからだよ。

なんとも、分かりやすい。

--ちゃんと“経営努力”をしたの?

という、至極当然の疑問はひとまず置いて。

1リーグ制へ移行するという話。

五つという奇数のチームだと試合の組み方に無理が出る、
だからもう2チームが合併し、偶数にした上でセリーグにお願いして1リーグへ。
10チームだと試合がないチームが出ないから、スムーズに運用できる。

ほんとにそうなのか? チーム数が奇数だと、ムリなのか?
この論法、どうも納得いかない。

NBA、アメリカのプロバスケットリーグは全部で29チーム。
奇数だ。それでもシーズンを通し、順調に試合を消化している。
(次のシーズンからは1チーム増えて30チームになる)
NBAにはイースタンとウエスタン、ふたつのカンファランスがある。
14チームのウエスタンに対し、イースタンは15チーム。
イースタンは、当然、試合が行なえないチームが出る。
それでも、プレイヤーやファンが不満たらたら、ということはない。

こうした、ぼくら日本人の“公平の原則”から見れば、
奇妙なことがアメリカのプロ・リーグには多くある。

MLB、大リーグ。
イチローがいるマリナーズが属するアメリカン・リーグ西地区は4チームで構成されている。
一方、ナショナル・リーグの中地区は6チームだ(他の地区は5チーム)。

ア・リーグ西地区は4チームに対し、ナ・リーグ中地区は6チーム。
そこでそれぞれ首位を争い、トップのチームがプレイオフへと進む。
1/4と1/6では確率がかなり違うと思うのだが、
総試合数は同じせいか、「不公平だ」という声はあまり出ないらしい。

こうしたある意味いい加減さが通用するのは、
スポーツを楽しむ側にそれを許容するふところの深さがあるからだ。
それは4大スポーツと呼ばれるプロ・リーグの規模にも見て取れる。

バスケットのNBAは今年から30チーム。
野球のMLBも30チーム。
NHL、アイスホッケーも30チーム。
NFL、フットボール・リーグは32チームある。

この、単純計算122のプロ・チームがひしめき合っていながらも興行として成り立つ。
これはすごいことだ。
スポーツを見て楽しむ側に、それだけ経済的、精神的な余裕があるということだから。

この122チームの中には、経営が苦しいチームも多い。
だが、それぞれのリーグは、まずリーグを構成するチームの維持を図っている。
テレビの放映料をリーグがプールし、各チームに分配したり、
チームや選手のグッズの売上も同様にリーグ経由でチームへ還流する。

また、それぞれのリーグは、“スポーツ”としての振興をも担っている。
野球、バスケット、アイスホッケー、フットボール、それぞれのスポーツ、
その裾野を含め広げていこうということだ。

リーグ側にその姿勢があり、観戦する側がリーグの運営に満足していれば、
プロ・スポーツは大きな利益を生み出す。その利益の巨大さが、
例えば大リーグ、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスの年棒25億円(30億とも)、
バスケット、コービ・ブライアントの7年契約1億3600万ドル(約149億円)というような、
目もくらまんばかりの年棒を可能にする。

そして、今もプロ・スポーツの選手になることが子供たちの“夢”たりえる。


一方、日本はどうだろう。
サッカーの選手になることが、男の子たちの一番の夢だそうだけど。

プロ野球の体たらくを見るにつけ、
100チーム以上のプロ・チームを維持できるだけの余裕が
ぼくら消費者にあるとはとても思えない。

世界第2位の経済大国とはいうものの、それは数字のマジックで、
国民ひとりひとり、一家一家は、経済的にも精神的にも富裕ではないのだ。

たった12球団のプロ野球チームが維持できない。
見せる側は、スリリングな試合を見せることができないのだろうし、
見る側は、応援することで少しずつ育てていこうという気もない。
スポーツニュースに映し出されるガラガラの観客席を見ると、
あぁ、儲かってはいないなぁと実感できる。

利益もあがらない企業に、ひとりで立てと言ってもムリなこと。
でも、球界全体で潤えばいいのだ。
要はエゴを少し引っ込めればいいだけのこと。
オーナー側も、選手側も、そして、観戦するぼくらも。

プロ野球のごたごたで、ナベツネさんの言動があれこれ取りざたされている。
このおやぢの悪口雑言は今に始まったことではないし、
(「たかが選手が」は、ご本人の思考感覚を見事に表す名言だった)
自らの品のなさを垂れ流しているだけだから放っておけばいい。

問題は、ぼくらはスポーツを真に楽しむということを
文化とすることができるのか、ということだと思う。

それは、チーム経営のあり方や、プロ・リーグの運営方法にも左右される。
が、本質は、スポーツを“エンターテインメント”のひとつとして、
心豊かに楽しむことがぼくらにできるのか、それにかかっている。

「経営難により、近鉄とオリックスは合併する」

そう発表されてから、球場へ足を運ぶファンが増えたという。
おかしな話だ。
経営が危ないという話は、ずっと前から知られている。

選手は精一杯にプレーをしていたと言い切れるのか?
ファンを自認する人たちは、今さらなにをおろおろしてるのだろう?

だったら、もっともっと見に行っときゃいいじゃん。

そう思う。

今年の2月、地元の老舗百貨店が経営不振で長い歴史を閉じた。
閉店セールに買い物客があまたつめかけ、店内は異様にごった返した。
最後のシャッターが閉まるとき、「悲しいですね」と涙を浮かべるおばさんもいた。

今、球団の合併に反発している人の多くは、このおばさんといっしょ。
いっときの感傷に浸る名人なのだ、ぼくたちは。

--心底、悲しいと思うなら、毎日買物に行っとけよ!

なくなることが決まってからあばちゃばしても、嘆いても、
ときはすでにもう遅い。

だがしかし、なくなっても格段に困りはしないから、
ちょろと感慨にふけり、さらりと忘れる。

球団が減り、1リーグとなっても、
それはそれでファンにあっさり受け入れられるだろう。

日本のプロ・スポーツ文化指数、あまり高くなさそうだ。



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