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番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

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izumatsu

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2003.10.16
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カテゴリ:テレビ・マスコミ

テレビ局はスポンサーからのCM出稿料で成り立っている。だからどうしてもより多くの視聴者に見てもらえる番組を作ろうとする。
視聴率が気にかかる。

今、大都市ではオンエアした翌日には1分刻みの視聴率が出る。テレビ局はパソコン上にデータを呼び出し、グラフにして一喜一憂する。

福岡には民放が5局ある。それにNHK総合がプラスされ、計6局分の折れ線グラフが1分ごとにカクカクと姿をかえ、交錯する。
上方に安定している折れ線もあれば、底辺をはうものもある。

グラフが右肩上がりになっているのは、他の局から移ってきた視聴者が多いから。裏番組よりも“おもしろい”証拠だ。

右肩下がりだとその逆。下がり方はいろいろで、ガックンと落ちるものもあれば、ゆるやかにくだっていくものも。
どんな下がり方をしようが、視聴者に去られるのは空しいものだけど。

放送時間が長く、たくさんのコーナーをかかえる情報バラエティ番組は大変だ。
自分が担当したコーナーが“ヤマ”になっていたらホッとひと息。
“谷”だと平然としてはいられない。コーナー存続の危機!
「裏ではなにをやってる?」
録画していたテープでチェック。

それが面白ければ納得しつつも悔しいし、つまらなければ、
「なんでこっちの方を見るの?」
理解できない視聴者の行動に首をかしげる。

でも、数字では負けている。プロデューサーはハッパをかけ、ディレクターたちは試行錯誤を始める。

そんな作業が毎日続く、のだろう。
ぼくはデイリーの情報番組に関わったことはないので現場のことはよく分からないのだが、想像しただけで胃が痛くなる。

視聴率も罪なヤツだ。


ぼくは大学を卒業してから2年弱、ビデオリサーチに勤務していた。視聴率を調べる会社である(業務はそれだけではないのだが)。

ぼくがいた頃は“視聴率”といっても、一般的にはほとんど知られていなかった。
それが今では全国紙にも“ビデオリサーチ調べ”として高視聴率番組の一覧が掲載される。
隔世の感がある。年寄り臭いな。

新入社員として入社した4月、研修で東京キー局をいくつかまわった。
ある局に行くと、廊下の壁に
「○○(番組名) 20%突破!」
とか
「××さん(ディレクター名)おめでとう!!」
などと赤マジックで書かれた紙がべたべた貼ってあり、一種異様な雰囲気だ。

制作部に行くと、それが天井から何本もぶらさがっている。
まるでハエとり紙(わかるかなぁ?)が垂れ下がる、いにしえの魚屋状態。

訪ねた当時、この局はそれこそ視聴率が右肩上がりで、研修を担当する部長も機嫌良く社内を案内してくれた。
ぼくは初めてドラマの収録現場を見、普段の顔から撮影用の顔へと瞬時に変化する女優の見事さを知った。


次に訪問した局では、ぼくら新入社員はいきなり会議室に通された。
長い時間待たせたあと、ノックもせずおもむろに現れた某部の部長は、しばらくぼくらをにらみつけ、開口一番こう言った。

「オレは視聴率なんか信じない!」

-なにを言い出すんだ、このオッサン?

「視聴率は単なる比率だ。番組の質を示す数字じゃぁない」

-当たり前じゃん。絶対評価じゃないんだから。指標のひとつにすぎん。
  そのくらいのリクツ、先月まではシロウトだった新入社員のオレだって分かってらぁ。
  そんなことより、早く芸能人に会わせてくれよぉ。

そんなぼくらの心の声が届くはずもなく、この研修担当者は、視聴率がいかにくだらなく、意味のないものかを延々と語り続けた。

-つまらん話。
-視聴率が低いのは番組が面白くないからだろ。オレらのせいにするな。
そう思った。

でも、右肩下がりが続いていたこの局の、この部長の吐露が、研修で唯一、役立つ話だった。
テレビ局が視聴率というものをどうとらえているのか、よく理解できたから。


「提供した番組がどんな人たちにどのくらい見られているかさっぱりわからない」
というスポンサー。

「番組をセールスする時、ターゲットを明確にするためのデータがなにもない」
というテレビ局。

両者の意向を広告代理店がとりまとめる形でビデオリサーチは生まれた。
だから、株主には広告代理店の他に東京キー局をはじめ、数多くのテレビ局が名を連ねている。

必要だから生まれた。しかし、なにかと非難されることの多い視聴率。
生まれながらにして“必要悪”と言ったら気の毒か。

調べる側は視聴率を「善し悪しの判断基準を持たない番組を仮に評価するための指標のひとつ」だと考えている。視聴率は比べるためのものではなく、使うためのものなのだ、本来は。

番組のどのあたりで視聴者が去っているのか、それは番組の流れが悪いためなのか、他に要因があるのか。それらを分析し、次に活かす。
そんな風に使って欲しいと在職中は思っていた。ぼくは視聴率を調べるセクションではなかったのだが。

調査の数字は絶対ではない。
9.8%と10.0%は誤差範囲。逆の結果が出ることありうるし、逆になったとしても間違っているわけではない。

今はほとんどビデオリサーチの独占状態の視聴率。
しかし、以前、ニールセンという視聴率を調べる会社があった。目黒あたりだったような気がする。
ビデオリサーチとニールセン、同じ番組でも違う数字が出ることがよくあった。

勝った負けたが逆の結果になることもあり、「真実はひとつのはずだ」という声も聞かれた。
どちらの数字も正しいのだ、統計学上は。

しかし、現実には出てきた数字が一人歩きする。
10.0%と9.8%。一方は二桁に乗ったと喜び、他方は負けたと落胆する。
意味がない。

意味はないが、その数字で制作現場は動き、営業も動き、編成も動く。
お金も動き、人も動く。

「質のいい番組を作ろう」
そのかけ声の陰で、コンマ以下の数字を追うテレビ局。
おかしいとは思う。
でも、本当におかしいのは局側なのだろうか?


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Last updated  2005.02.07 08:43:21
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幻泉館 主人@ Re:再開。(04/20) こんばんは♪ 大変ですね。 確かに細かい…
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