2017/04/23(日)21:06
当日の午後。
母が倒れた1月5日の午後3時ころ、ぼくは母の病室を訪ねている。
相部屋の病室。
顔なじみになった隣のベッドのおばあさんが、
「あ、息子さんが来た!」
大きな声で言った。
でも、母はベッドにいなかった。
どこに行ったのか看護師さんに尋ねると、お風呂とのこと。軽い肺炎で入院してから1週間ほどたったこのころには、かなり病状も回復していた。
5分ほど待っていると、母が車椅子で戻ってきた。
「ほら、息子さんが訪ねて来てくれましたよ」
車椅子を押すスタッフが、母にそう告げた。
認知症がかなり進んでいた母はぼくが誰かは認識できなかったけれど、体を洗ってもらって気持ち良くなったのだろう、彼女なりの明るい顔を見せた。
病室に戻った母は、いったんベッドに横になり検温。平熱だった。
そして、また車椅子に乗せてもらい、
「さぁ、息子さんにさよならして、リハビリに行きましょうね」
「どこ、行くの?」
「リハビリよ、リハビリ」
「どこ?」
車椅子を押すスタッフとのかみ合わない会話を残して、母は病室から出て行った。
その後ろ姿が、体を起こしている母の最後の姿。今のところは。