『ガガーリン 世界を変えた108分』
人類初の有人宇宙飛行となったボストーク1号の宇宙飛行士ガガーリンを描いたロシア映画である。 正に、国家の威信をかけた「敵」との戦いである。その任務の重圧たるや。しかも、人類史上初であり、犬での成功経験は積んでいるとは言え、当然ながら、生命の危険を大きく伴う任務である。 3,000人の軍人の中から選りすぐられた20人による訓練と、その中からの宇宙飛行士の選抜。同志であり競争相手でもある20人。もちろん選ばれたくはあるけれど、その一方でやはり不安もあり、なかなか微妙な心情。その希望と不安の濃淡は人により異なる。そこが、ガガーリンが選抜された際の対応の仕方にも大きく反映されているのではないだろうか。 そしてまた、その宇宙飛行士候補達の家族の思い。 飛行士だけでなく、開発スタッフも相当の重圧であっただろう。 そんな状況が、画面を通じてひしひしと伝わってくる。 それにしても、ガガーリンの帰還は、あんなに剥き出しの状態だったのかと、ビックリしてしまった。 今日からすれば、コンピュータの性能も格段に貧弱な1961年当時、108分とは言え宇宙空間を飛行し、無事大気圏へ再突入し、生還した。これをやり遂げたことは何といっても偉業である。 しかし、これだけの極限的状況から帰還すると、その後の「平穏な」生活に精神の安定を保つのは、極めて困難なのだろうな、と思う。ガガーリンのその後は、やはり、あまり「平穏」ではなかったようだ。